はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~   作:遊佐

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「ふああああああ……」

 

朝――窓から差し込む木漏れ日に目を開けるロロナ。

体を起こして大きく伸びをすると、隣で寝ているマリーを見て頭をなでる。

さて、朝食を作らねば!

 

 

 

   ―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――

 

 

 

「さてと! 依頼があったから作っちゃわないとね。マリーちゃんは遊んでてね」

 

そう言ったロロナは奥にある大釜と向かう。

その様子をじっと見ているマリー。

 

「これと……これをいれて……ぐーるぐる、ぐーるぐる」

 

その手つきは駆け出しなれど慣れた様子で釜を掻きまわしていた。

だが――

 

「ロロナ」

「ん? なーに? マリーちゃん」

「そのままだと失敗するよ」

「え?」

 

思わず振り替えるロロナ。

 

「中和剤、入ってないと思う」

「え? ああ! 忘れてたぁ!」

「あ、全部一度に入れると失敗するから1/4ずつね」

「え、あ、うん……」

 

ロロナは焦げ始めていた中身に慎重に中和剤を入れていく。

そうして調合は何とか完成した。

 

「よ、よかったぁ! 少し焦げて品質さがったけど物は問題ないみたい」

「作る前にレシピは確認した方がいいよ。物によってはすぐ爆発するから」

「あ、はい……え? ま、マリーちゃん!」

「?」

「れ、錬金術出来るの!?」

「うん」

「!?」

 

ロロナの眼が驚愕に開かれる。

マリーはソファーから降りると、テーブルの上を見回した。

 

「見たことない素材も多いけど、やり方は知っているのと似ているし、錬金術の構成はほぼ同じ……多分、レシピがあればできると思う」

「ええー……じゃ、じゃあこれで何が作れるかな」

 

ロロナが出してきたのはニューズだった。

 

「うん……乳鉢借りるね」

「あ、うん……」

 

ゴリゴリと潰して鍋に入れ、土台を持ってきて杖を借りる。

そして魔力を加えながらかき混ぜると――

 

「はい、クラフト」

「はわ! はわわわ! 凄い、高品質!」

 

ロロナは驚いた様子でマリーを見る。

 

「すごい! マリーちゃん天才!」

「あ……うん、そんなこともないけど」

 

(今更クラフトごときで天才って言われてもなぁ)

 

マリーとしては初歩の初歩。なんなら学院で中和剤の次に教えるような内容である。

 

「マリーちゃんのお父さんってもしかして錬金術士!?」

「えー……えと……そう、かな」

「すごーい!」

 

(本当は全然違うんだけどね)

 

とも言えず、頬を掻くマリー。

 

「えっとね……ロロナ。あたし、少しだけ思い出したんだ。あたしのこと」

「え?」

「あたしね、どうやら飛ばされてきたみたい」

「え?」

 

 

 

   ―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――

 

 

 

――王城。

 

「つまり彼女はどこか遠くの土地から親の錬金術の失敗で転移させられてきた、と?」

「うん、マリーちゃんはそう言ってます」

 

ロロナの言葉にステルクは頭を抱えた。

 

「まさか迷子どころか転移してきたとは……で、思い出したといったな。記憶喪失だったのか?」

「転移の影響で記憶が混乱していたみたい。寝て起きたら落ち着いて状況がわかったみたい」

「なるほど……家の場所はわかるのか?」

「それが……街の名前だけは。ケントニスっていうらしいんですけど」

「知らない街だな……」

「このあたりじゃないみたいだから、もしかしたら海の向こうかも」

「おいおい……それじゃあどうしようもないじゃないか」

「そうなんです……」

 

ロロナとステルクがそろって溜息を吐く。

 

「どうする?」

「どうするって……どうしたらいいんでしょう?」

「うーむ……迷子の捜索はとりあえず打ち切るとして、街の名前を何とか照会するしかないな」

「ですよねぇ……」

「誰かほかの街や国に詳しいものがいればいいんだが……」

「他の街……あ!」

 

 

 

   ―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――

 

 

 

「で、僕らに聞きに来たと」

「まあ、いろんなところを回ってきましたけど」

 

ロロナが思いついた当てとは、タントリスとリオネラだった。

イクセルの食堂で、二人に尋ねている。

 

「で、お二人はケントニスって街、知りません?」

「私が行った街ではそういう所はありませんでした」

「僕もだねぇ……少なくともこの大陸じゃなさそうだけど」

「やっぱりそうですか……」

 

二人の言葉にがっくりと肩を落とすロロナ。

その横から料理を手に持ったイクセルがあらわれる。

 

「まー焦んなよ。出自がわかっただけでも進展したようなもんだぜ。ほい、イクセルプレートお待ち!」

 

イクセルが料理を配る。

 

「本当にいいの? おごってもらって」

「あ、うん。お二人に話を聞くのもだけど一緒にご飯食べたかったのも本当だし。今日は依頼で懐も温かいから」

「それはありがたい。じゃあいただきます」

 

気を遣うリオネラと遠慮せずにおごられるタントリス。

実に性格が出ている。

 

「へへ。まあ代金はちょっとサービスしとくよ。んで、あの子のことどうすんだ?」

「うん。それなんだけど……うちで雇おうかなって」

「え? 雇う? 保護でなく?」

「うん……だって、私より錬金術の知識が豊富なんだもん」

「マジかー……」

 

イクセルが唖然とした顔でロロナを見る。

目の前にいる二人も同様だった。

 

「師匠もあの子のいた場所との素材の違いでの無知はあるが、確実にお前より上だって」

「あの人がそう言うってことは、かなりの錬金術士ってことか……」

 

タントリスが肉を片手に思いふける。

 

「こりゃ、親父が思うようにはいかねえなぁ……」

「タントリスさん?」

「いや、独り言さ」

 

そう言って肉を口に運ぶタントリス。

 

「まー見た目5歳ぐらいだろ? さすがに師匠というぐらいじゃないけど……ロロナ、姉弟子みたいなのができたな」

「イクセくん! ちがうもん! あの子は妹! 妹弟子なの!」

「お前よりの腕がいいのに?」

「ううううううう……」

 

ロロナが悔しそうに突っ伏す。

勝った、とイクセルが誇り、リオネラがあたふたとして、タントリスが溜息を吐いた。

 

「やれやれ……あと1年だというのに、嵐のような展開になってきたなぁ」

 

 

 

   ―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――

 

 

 

「というわけで、新しい従業員のマリーちゃんです」

「「 よろしくお願いします。仮マスター 」」

「か、仮?」

「ほほう、面白い」

 

ロロナのアトリエで、アストリッドやホム達にマリーを再度紹介するロロナ。

マリーはいいのかな……と思いつつ、頭を下げた。

 

「ええと……頑張ります」

「うむ。ロロナもわからないことはマリーに聞くといい」

「えー……そこは師匠じゃないんですか?」

「いやだ、めんどくさい」

「ひ、ひどい!」

「うーん……この人も初めてのケースだなぁ」

 

そうしてロロナのアトリエは3年目に突入するのである。




もしかしたら書いてすぐでなく、数話まとめて投稿って形にするかも……?
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