はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~   作:遊佐

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アーランドの街、冒険者ギルド――

 

「ミミちゃん!」

 

トトリは振り向きざまに、声をかけてきたミミに駆け寄る。

 

「ミミちゃん聞いてよ! ひどいんだよ!」

「ちょ、まち、まちなさい! いきなりなんなのよ!」

「あー……わり。今のトトリはちょっとな」

 

頭を掻きながらジーノが声をかける。

 

「ミミちゃんも他人事じゃないよ! もう本当に……」

「わかった。わーかったわよ! とりあえず場所変えましょう。ここじゃ、人目が凄いわ」

「だな。ついでに飯食いに行こうぜ」

 

何がどうでもブレない男、ジーノであった。

 

 

 

   ―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――

 

 

 

サンライズ食堂――

アーランドの街で、美味い、安い、早い――かどうかはわからないが、人気のある店である。

 

「でね、そういうわけなの!」

「ああ……まあ、あのマリーさんと同程度の新しい錬金術士の子を高いランクの冒険者にしたと」

「そう!」

「それは――しょうがないんじゃないかしら」

「えー!?」

「だって、仮にもこの国最高の錬金術士であるロロナさんの師匠が、あのマリーさんなんでしょう? そのマリーさんと同程度というなら、むしろ最高ランクを与えてもおかしくはないと思うのだけど」

「うう……でも、エリーちゃんはまだ」

「あの子の身長とかで見くびり易くなっているのはしょうがないけど、その実力を知っているのでしょう、あなた」

「う……うん」

「なら、何も問題ないじゃないの」

「うううう……」

 

ミミの言う正論に、小さくなるトトリ。

 

「もぐもぐ……こいつは家でも一緒に住んでるかんな。一緒にいるから、つい保護者みたいになってるんじゃねーのか?」

「でしょうね。マリーさんもそうだけど、話に聞く限りはあの方も見た目の年齢ではないのでしょう?」

「……うん」

「だったら、普通に認めなさいな。あなたのは、単なる癇癪みたいなものよ」

「うう……みみちゃんまでひどいぃ……」

「まったく……」

 

ミミが溜息をつくと、お替りがコトっと置かれた。

 

「なにかすみませんね。話を聞いてしまいました」

「クライスさん……」

 

そこにいたのは、エプロンを着たクライスだった。

 

「お、サンキュ! お前……あ、いや、兄ちゃんも歳食ってるんだっけ」

「まあ、そうですけど。気にしないでください。むしろ若く見られる方が嬉しいですからね」

「くすっ……達観してらっしゃいますね」

「ええ。まあ二度目の人生ですからね……さて、トトリさん」

「……はい」

「エリーは世界最高峰の錬金術士であるマリーが、自身の相棒として足りると見込んだ女性です。マリーだけでなくエリーにも教師として学院に就いてもらえるように、再三私が頼み込んだほどの人ですよ」

「あら、そうなんですのね」

「そうです、ミミさん。部分的にはマリーよりも上だった人です。結婚されていたので無理も言えずに、最後は諦めましたがね」

「エリーちゃんが……」

「マリーが天才肌ならエリーは秀才肌で、マリーが作る作品を万人が使いやすくするのを得意としていました。アトリエでの評価はエリーの方が高いくらいです」

「そんなに……」

「はい。発想力も大したものですよ。確か空とぶほうきを作ったのは、マリーでなくエリーだったとも聞いています」

「そら……とぶ?」

「ええ。ですから、あなたが彼女に師事するというロロナさんの考えは正しいと思いますよ、私は」

「………………」

 

クライスは、トトリの頭にポンと手を置いた。

 

「トトリさん。あなたはエリーに師事して彼女の錬金術を学びなさい。それこそが、あなたを何倍も大きくしてくれることでしょう」

「クライスさん……」

「今回のことは、むしろラッキーと思いなさい。あなたの冒険に付き合ってくれる偉大な錬金術士が増えたのだと」

「……はい」

「……兄ちゃんすげえな。まるで先生だ」

「ふっ……あはははは。一応、私は校長先生でしたからね」

 

そう言って手を振って、カウンターへと戻っていくクライス。

 

「……なんか役どころが取られた気がするけど。まあそういうことね」

「……うん、わかった。ありがとう、ミミちゃん」

「べ、別にいいわよ。大したことじゃないわ」

「ふふ……」

 

トトリとミミが笑い合う。

 

「さーお腹空いたわね。ご飯を……あら」

「え? ああ! ご飯がない!」

 

二人は、空になった皿を見て、ばっとジーノへと顔を向ける。

 

「もぐもぐ……おお? わりぃ、食っちまった」

 

この後の騒動は、お察しのとおりである。

 

 

 

   ―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――

 

 

 

冒険者ギルドからロロナのアトリエへの帰り道――

 

「しかしまー、本当に規約を暗唱させるとは。クーデリアの嬢ちゃんは、冗談が効かないんだから」

「……冗談でないほどのことをしていると思うんですけど」

 

長年連れ添っただけに、気安い感じのマリーとエリーである。

こういった会話は慣れたものだった。

 

「そういや、あのトトリって子、どうなの?」

「んー……スジはいいと思いますよ。錬金術に関しては実践で鍛えているおかげで優秀です。ザールブルグでもそうでしたけど、評価を受ける実戦形式は経験値が違いますから」

「そうだねえ。ただ万人向けではないってイングリド先生も言ってたな」

「そうですね。才能があり、適正がある子を急激にレベルアップさせる方式ではあると思います。ただ、成長度合いは本当に規格化はできませんね」

「あー……そうだねえ。成功もあり、失敗もあったからねえ。ザールブルグでも」

「はい」

 

マリーとエリーも長年、錬金術を学ぶ人を見てきた。

成功した人も多いが、冒険心を出して失敗した人もいる。

取りこぼしがなく、とはいかずに学院を去る子もいた。

 

「今この国には、あたしらの他にはロロナとトトリ……まあ、あと一人はいるかいないかわからんのがいるけど。大体二人しか錬金術士がいない」

「うーん……ここが未来だとすると、錬金術が衰退したってことなんでしょうか?」

「というか、行き過ぎて崩壊したってのに近い世界かもしれない。参考書が残っているのに、こんなにもいないのが逆に不自然すぎる」

「それは……悲しいですね」

 

エリーの言葉に、マリーは苦笑した。

 

「そんな大陸にあたしが生まれて、クライスやエリーが来た。これはあれかね、錬金術を再興しろって神様のお告げかね」

「神様って……マリーさんが信じるのがちょっと意外です」

「まー……あたしも昔なら信じなかったけどね。でも、自分がこの体になっちゃうとねえ……」

「ああ……」

 

エリーもマリーも、自身の手をじっと見た。

どちらもぷにぷにした、小さい手がある。

 

「……本当に。この世界はどうなっているんだろうねぇ」

 

その問いに答える者は、誰もいなかった。




ちなみに……なんですが。
公式がはっきりとは出していませんが、この世界、ザールブルグと同世界の節があります。
ただ、お祭りゲー要素の部分もありまして……はっきりしません。というか意図的にぼかしています。

なので公式がはっきりしない以上、この作品では独自設定にて進めさせていただきます。
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