はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
残念ながらアニスは不参加です。
まあ、ナンバリングもない外伝扱いだしなぁ
アランヤ村――
「トトリちゃん! この子頂戴!」
「だめー! ちむちゃんはわたしの!」
「……やっぱりこうなったか」
「まあ、わかってました……」
トトリはマリーとエリーを連れて、アランヤ村へと戻っていた。
ちむの紹介のためである。
「ずるい! ずるいわ、トトリちゃん! エリーちゃんやマリーちゃんだけでなく、この子まで獲っていくのね!?」
「ずるくないよ! この子はわたしのお手伝いさん! エリーさんは師匠! マリーさんは……」
「マリーさんは?」
「……なんでもない!」
トトリがぷいっと顔を背ける。
「あたしが……なんだって?」
「口には出さないけど、ひどく失礼なことを言いかけましたね、多分」
「……まさか、あたしらをここに連れてきたのは」
「……身代わり? 避雷針?」
「トトリぃ……」
マリーがこめかみに怒りマークを付けてトトリに迫る。
エリーが額に手を当てて首を振る。
「な、何で何も言ってないのに怒るのー!?」
「口を開かなくても失礼なことはいくらでもあるんだよ?」
「口に出さないだけ少しはマシになったかとは思ったのに……」
さすがにマリーは足代わり(じゅうたん)です、とまでは口が裂けても言えないトトリだった。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「やあ、トトリくん!」
「あれ? マークさん、まだ……ゴホン! アランヤ村はどうしょうか?」
「………………ぎりぎりだったね」
「? うむ。なかなか風光明媚なところで楽しんでいるよ。それはそうと……君、弾む石とピュアオイルはないかね?」
「はい? アトリエに行けばあると思いますけど……どうするんです?」
「うむ。実はあの馬車を改良してやろうと思ってな」
「改良?」
トトリは馬車を見る。
そこには頭を抱えたペーターがいた。
「もう疲れたよ……」
「ご愁傷様。んで? マークくんはそれでどうするのさ」
「いい質問だ、マリー君。馬車の摩擦係数が著しく悪い状況の改善と、乗り心地の緩衝に使おうと思ってね」
「あー……なるほど」
メリーの言葉にマークは得意げに答え、その内容にエリーが推察する。
「確かに速くなりますね。今だと馬に無理を強いていますし」
「え? そうなんですか?」
「この馬、体つきからしてもっと速いはずなんだよ。けど、馬車が重くてあまり力が出せていないみたいだから」
「なるほど……」
「今だと筋力増強のギプスつけて走ってるようなものかな。それがなくなればかなり速くなれるとは思うよ」
「ううん……そういうことなら、すぐに持ってきますね」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「さて、改良したぞ! 試運転だ!」
「大丈夫だろうなぁ……よっと」
「とりあえず、トトリ。馬車の後ろの乗り心地も見ちゃどうだい?」
「……そうですね。ペーターさん、私も乗りますね」
「ああ、いいよ」
ペーターが馬車に乗り、トトリも乗り込んだ。
そして軽く鞭を入れる。
すると――
「お? かなりスムーズ……」
「摩擦係数はかなり減少したね」
「あんまり重さを感じていないみたい……?」
ペーターが乗り心地に気づき、マリーとエリーが車輪の動作を確認する。
「あ、凄く乗りやすい。振動がほとんどかんじませんね」
「おお、こりゃあ、いい……って、あれ?」
ペーターが喜んだのもつかの間。
気分を良くした馬がドンドンスピード上げていく。
「ちょ、おま! まて! どうどう! だーとまらねえ!」
「ちょ、速い! はやすぎませんか、ペーターさん!」
「う、馬が、馬が止まんねえ!」
「ええ!?」
「「 わあああああああああああああああああああああああああ!! 」」
「「「 ……………… 」」」
ガラガラガラとすごい勢いで街道の彼方へ走っていく馬車。
「……そーとー重かったんだねェ」
「……あの馬、無茶苦茶スピードもスタミナもあるみたいですし」
「……ちょっとモンスターの血が混じってるのかもしれないな」
三者三様に感想を言う。
ちなみに。
その日の夕暮れまで、二人は戻ってこなかった。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「ところで……」
「ちむ?」
次の日。
アトリエに顔を出したマークが、ちむを見つけた。
「この子は誰のお子さんかね?」
「あー……」
「ふむ? 見た感じ知り合いの誰とも似てないんだが、年齢からするとロロナ君かな?」
「まあ、その……いろいろありまして」
「こんな小さな子をほおっておいて、彼女は何しているのかね?」
「いえ、ロロナ先生はアーランドに……」
「なんと!」
マークはぐりん、と驚いた様子でトトリを見る。
「まさか、自分の娘を放置してアーランドにいるというのかね!」
「いえ、その、娘って……」
「いくらなんでもそれはあんまりじゃないかね! ネグレクトだ! 虐待だ! こんな幼子を放置するなど!」
「いえ、ですからちむちゃんは……」
「こうしてはいられない!」
ガバッとちむちゃんを抱き上げるマーク。
「ああ、ちむちゃん!」
「君もきたまえ! 今すぐアーランドに帰るぞ!」
「ええ!? ちょ、ちょっとまって! マリーさんもエリーさんも外に出ているし、急に帰るとか!」
「いかん! 子供は母親と一緒になくてはならんのだ! なに、馬車代など私が出す! 急ぐぞ!」
「あああ! ち、ちむちゃんが、ちむゃんが攫われちゃう……ど、どうしよう!」
と、ちょうどそこにツェツィが帰ってきた。
「ただいまートトリちゃん」
「あああああ! お姉ちゃん! マリーちゃんとエリーちゃんに先にアーランドに帰るって言っといてー!」
「ええ?」
「ごめんね、お願いー!」
そう叫んで、トトリは家を出ていく。
しばらくツェツィは、ぽかんとしていたが。
その後、とても、とても悪い顔をのぞかせた。
「……そうなんだ。マリーちゃんもエリーちゃんも、今はフリーなんだ。うふ、うふふふ、うふふふふふふふふ……」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「「 !? 」」
マリーとエリーは得も知れない悪寒に身を震わせたのは言うまでもなかった。
となるアレとあれとあれが参加っと……