はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
アーランドの街。
馬車で帰ってきたトトリとマークとちむが、ロロナとすったもんだの問答があった一週間後。
アトリエで作業していたところに、ステルクが訊ねてきた。
「邪魔をする」
「あ、ステルクさん。いらっしゃい」
「あ、ステルクさん。また薬ですか?」
ちょうどロロナも作業していた手を止めて、ステルクに応対した。
「うむ。今回は少し遠出をするつもりだ」
「どこに行くんです?」
「灼熱の荒野だ。あの小僧の修行がてらにな」
「あ、ジーノくんの」
ジーノが弟子入りしてもうすぐ一か月経つ。
「元々、実戦はしていたからな。型と注意事項を伝えて基礎鍛錬は施した。後は実践で鍛える」
「なるほど……」
「なんなら君も来るかね?」
「いいんですか?」
「うむ。今のあの弟子の状態を見ておくのも悪くない」
「あー……でもお仕事が」
ちらっ、とやりかけの鍋を見る。
「行っといでよ、トトリちゃん。」
「ロロナ先生……」
「お仕事は私の方で片付けておくから。幼馴染のことなんでしょ?」
「……いいんですか? すいません」
ぺこっと頭を下げる。
「じゃあ、そう言う事でお願いします」
「うむ。では、準備をして一刻後に門に集合で頼む」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「トトリぃ……」
「わ、ジーノくん。なんかボロボロ……?」
「し、師匠の修行がきつくてなぁ……」
「そ、そんなに?」
「傷なんぞ、灼熱の荒野に着く前に治る。まずは実践だ」
「へぇーい……」
そう言って、ふらふらと歩きだすジーノ。
「……思った以上に大変そうだった」
「なに、こんなもの。騎士団の訓練に比べれば児戯だ、児戯」
そう言ってステルクも歩き出す。
「……どうしよう。大丈夫かな? ちょっと心配……」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
灼熱の荒野――
本来ならば暑さでまともに立ち入れないような場所である。
トトリたちはアイテムのおかげで内部まで探索はできるのだが。
「どりゃあー!」
そんな場所で、ジーノはモンスターと戦っていた。
「ぜーぜー……」
「大丈夫、ジーノくん」
「と、トトリ、み、みず……」
「ミミズはないなぁ」
「………………」
「じょ、冗談だよ。はい」
トトリのボケにも応対する元気のないジーノは、渡された水を浴びるように飲んだ。
「あー……きっつ」
「大丈夫……?」
「まあ、なんとかな……」
座り込んだジーノの手当てをするトトリ。
と、ステルクが天の水傘を差しながら歩いてくる。
「ふむ。まあまあだな。だがまだ甘い」
「うっ……」
「お前に強い一撃で圧倒するような剣技は無理だ。力任せに切るのではなくもっと手数を増やせ」
「手数……」
「ジーノくん、ミミちゃんの必殺技を俺でも使えるかって言ってたじゃない。ああいう連続攻撃の事じゃないの?」
「!! そうか!」
トトリの言葉に、ガバッとジーノが立ち上がる。
「そうだ、そうだよ! 俺が目指していたのは、ああいう連続攻撃だ! つまり、連打技か」
「うむ。多段の攻撃で敵を圧倒しろ。的確に相手の隙をとらえ、弱点に当てろ。それを突き詰めるのがお前の技となるだろう」
「なるほど! よし、メモメモ……」
ジーノが手帳に色々と書き込んでいく。どうやら彼の技のノートのようだ。
先ほどまでの疲れが嘘のようなジーノに、トトリは目を丸め、ステルクは深く頷いた、
「ふむ。では、その技の試し打ちにあれでも狩るか」
「あれ……?」
「あれだ」
そうしてステルクが指差したのは、巨大な魔物。荒野の魔獣である。
「うええ!? いきなりあれですか!?」
「必殺技なのだろう? だったら相手に多少の耐久がなければ効果がわからん。なに、ヤバそうなら私が手助けする。行ってこい」
「おう!」
「えええ!? ジーノくん、本気!?」
トトリが声を上げる間に、ジーノは荒野の魔獣へと突っ込んでいく。
「ちょ! 一人でやるの!?」
「いくぜ! まずはオレ流必殺の一撃! うりゃあ!」
ジーノの攻撃が荒野の魔獣へと当たる。
だが、荒野の魔獣はほとんど意にも介さず攻撃してくる。
「あいて! まだまだ! 次はこいつだ! オレ型クリティカル! 見てろよぉ!」
ジーノの確定クリティカル攻撃が、荒野の魔獣をとらえた。
これは多少痛かったらしい。
怒り狂った荒野の魔獣は、大旋風を繰り出した。
「くそ! もうちょいなのに!」
「ジーノくん! これを!」
後ろから追いついたトトリが、妙薬ドラッヘンを使う。
ジーノの傷が回復し、一時的に攻撃力が上昇した。
「さんきゅ! よっしゃ! 今だ!」
ジーノはノートを取り出して確認する。
「えーと……よし! いくぜ!」
ジーノは荒野の魔獣の懐に飛び込み、逆袈裟で薙ぐ。
その反動で今度は袈裟斬り。
またその反動で振りかぶって唐竹割り。
「ほい! てい! たああああ!」
反動を利用しての連続攻撃が、次第にスピードアップしていく。
とそこで息切れした。
「ぜいぜい! なろお!」
後ろに走ると、距離を開け――
「必殺! アインツェルカン――」
突撃したジーノは……
つまづいた。
「だああああー!」
剣が宙を舞い、ジーノは荒野の魔獣の足元に転がる。
思わずそのジーノを見る荒野の魔獣。
しかし――
ジーノの手からこぼれた剣は宙を舞い、くるくると天から無防備な頭上へと突き刺さった。
そう、荒野の魔獣の弱点である後ろ首に。
「「「 ……………… 」」」
荒野の魔獣は倒れた。
「……ステルクさん。これっていいんですか?」
「……言うな」
トトリの呟きに、ステルクは手で顔を覆った。
そしてジーノは、突っ込んだ荒野でもがいていたのである。