はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
お盆? なにそれ?
アランヤ村――
「マリーさん、エリーちゃん!」
トトリが家の扉を開けると――
「………………」
「……お帰り、トトリ」
「うわあああああああああああああああああああああああ!」
ゴスロリに全身包まれてこれでもかと装飾されたマリーと、ぬいぐるみのパジャマを着て、山のようなぬいぐるみに埋もれたエリーがそこにいた。
「あらトトリちゃん、お帰り! さー今日は新しい服を作ったのよ。どうかしら?」
ツェツィが出してきたのはドレスである。
ただし普通ではない。
ものすごくごてごてした装飾に、背丈は小さいのに異様にスカート部分が長いドレスだった。
「これ着て、家の屋根に上れば、家の大きさの特大ドレスになるわよ。楽しみね」
……それはどんな〇林〇子だ。(メタ)
「お姉ちゃん! いったい何してるの!」
「何って?」
「この三か月、二人に何してたの!」
「普通にしてたけど?」
「これが!?」
マリーはもはや目が死んでいて何もしゃべらない。
瞳孔が開いて呼吸しているかも怪しい。
エリーはまだ耐性があるようだが、完全に悟りを開いたような顔をしていた。
「うわああああ……これはひどい」
「すっげえな、おい」
ロロナが二人の惨状に目を覆う。
ついでにと付いてきたジーノが、珍しく冷や汗をかいていた。
ジーノがドン引きする状況は非常に珍しい。
「マリーちゃん、しっかり!」
「………………」
「これは……エリーちゃん」
「マリーさんは意識を飛ばしていますから、多分今日は戻ってこないかと」
「ひえええ……」
恐るべきはホムンクルス殺しのツェツィであった。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
次の日――
「あー……あたし、生きてる」
「マリーちゃん……」
「あたしって誰だっけ」
「マリーちゃん! しっかりして!」
「ここまでマリーさんが壊れるのは本当に初めてですね。ちょっとこれは静養した方がいいかも」
「とりあえず黒の紅茶を山ほど作って、精神回復薬を……」
「トトリちゃん。私のパイノートあげる。甘いものは精神に効くよ。あと、確かモンブランとかが状態回復に効果あったはずだから、それ作ろう」
「ありがとうございます。すぐ作りますね!」
トトリとロロナが精神に効くようなものを片っ端から作っていく。
「エリーちゃんは大丈夫?」
「私はまだ耐性ができていたのでなんとか。でも後一か月もしてたら同じになってたかも……」
「うわあああ……ごめんなさい」
「トトリは悪くないよ……トトリはね」
エリーが暗い笑みを浮かべている。
「エリーちゃんもとりあえず黒の紅茶飲んでて。あとで甘いもの渡すから」
「うん、ありがとう……」
「うう……なんでこんなことに。もはや怒られるとか以前に大惨事だよ」
トトリは、非常に申し訳ない状況になったことに天を仰いだ。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「それは大変だったわねぇ~」
「大変だったもんじゃないですよ……」
トトリはパメラの店に来ていた。
「あたしもね~トトリの家に一回行ったのよ? その時にもかわいい服着てたから『あら、かわいい服着てるのね~』ってマリーに言ったんだけど、マリーは何も言わずにへらへらしているだけだったから、いいかな~って」
「それってもうかなりヤバかったんじゃ……」
「あらそうなのかしら~?」
「……いや、パメラさんのせいじゃないですけどね。全部お姉ちゃんが悪いんです」
トトリは、はあと溜息をついた。
「そういえば、そのツェツィはどうしたの?」
「お姉ちゃんには、ゲラルドさんの店に泊まり込んで一ヶ月間、強制的に働いてもらうことになりました」
「あら?」
「この三か月、まともに働かなかったそうなので。ゲラルドさんと話して強制的に」
「あら~……じゃあ、トトリやおじさんの食事はどうするの?」
「お父さんは、ゲラルドさんのお店で食べることになりました。わたしはどうにでもなりますから」
「あらあら~」
しばらくは、マリーとエリーをツェツィから物理的に離すしかない。
そう考えたトトリの苦肉の策であった。
「しばらく静養したら、二人を連れてアーランドの街に戻ります」
「ご愁傷様ね~」
「はあ……あ、そうだ。パメラさん、生命の水って持ってますか?」
「生命の……? えーと……ああ、昔ロロナにもらったやつね。まだあるわよ?」
「すいません。それ売ってもらえますか? ちむちゃんの素になるので」
「いいわよ~私じゃ、どう使うのかわからなかったもの」
パメラが奥に引っ込むと、大事そうな小箱から赤い種を取り出す。
「ありがとうございます。あと、この魔法の鎖の登録をお願いします」
「はいはーい」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
数日後――
「マリーさん、マリーさん。大丈夫ですか? 帰りますよ?」
「あーうー」
「……本当に大丈夫かな?」
「ここでは落ち着かないでしょうし、これ以上回復しなさそうなので」
「温泉でもあればいいんだけどねえ」
「残念ながらそう言うのは見たことないですから」
言葉を発し、ようやく少し歩けるような状態になったマリーを馬車に乗せる。
「じゃあ私たちはアーランドに行くね。ジーノくんはメルお姉ちゃんと一緒に、お姉ちゃんの監視をお願いね」
「まあ……俺はほとんど役に立たないけどな。ともかく、メル姉には言っとくよ」
今回の件の詳細を知ったメルヴィアも、さすがにツェツィを庇わずに監視している。
まさかの大惨事となったマリーとエリーのアランヤ村での三か月は、もはや拭いきれないトラウマとなったのだった。
こ、ここまでひどいことになるとは思ってもいなかった(いやマジで)
おっかし-なー……