はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
アーランドの街――
「あー……空に大きな星が点いたり消えたりしている。アハハ……」
「マリーさん、今は昼ですよ……」
「……これは」
「そーとー重症ね」
アーランドの街、そのアトリエで帰ってきたマリーを見たステルクとクーデリアの第一声がこれであった。
虚ろな状態のマリーをエリーが介護している。
「しばらくは静養が必要なんだよね……」
「そうね……これはちょっと手に負えないわ」
ロロナの言葉に、クーデリアが頭を抱えた。
「あのギゼラと真っ向から戦ったマリー君が、まさかこうなるとは……そんなに恐ろしい目にあったのか?」
「……ある意味?」
ステルクが冷や汗をかきながら呟く横で、トトリが目を逸らしながら答えた。
「でもどうしましょう。マリーさんがこんな状態だと、先生やエリーさんも介護でアトリエを離れられませんし……」
「うーん……護衛はミミちゃんかマークさん辺りに頼む?」
「それしかありませんね……」
「ふむ。トトリ君は護衛が必要なのかね?」
「あ、はい……もうすぐ昇格しそうですし、そうなると新しい採取場所にも行かないといけませんから」
「そうか。では、私が付き合おう」
「え!?」
ステルクの申し出にトトリが驚く。
「ステルクさん、お忙しいのでは!?」
「なに。最近は先輩が帰ってきたので、そちらに護衛と捜索は半分任せられる。毎回必ず、とはいかないが、ようやく時間が出来た。私も君の力になれるだろう」
「わ、わ! トトリちゃん! ステルクさんが護衛してくれるなら助かるよ! 多分、共和国でも1、2を争うほどの戦力だもの」
「ほえー……じゃ、じゃあお願いしま――」
「ああ! で、でも! お金には気を付けてね! ものすっごく高いから!」
「ええ!?」
「いや、ロロナ。私は……」
ロロナの言葉に、トトリが驚き、ステルクが声を上げる。
「だってね! 私がまだぺーぺーだった頃、爪に火を点す様な思いでお金を稼いでいたのに、いざ護衛に雇おうとしたら、ステルクさん、1回で200コールも取るんだよ!」
「ええええ!?」
「いや、だからそれは……」
「あの時、それはもう泣く泣く払ってたんだから! また取るんでしょ? 今度は300? 500!?」
「いい加減にしろ! 私は金など取らん!」
「うっそだぁ!」
「嘘ではない!」
ロロナの言葉に、があっ、と叫ぶステルク!
「あ、あの、私そんなにお金は……」
「だからいらんと言ってる! そもそもあの時は相場を知らずに騎士の給料で換算していたからだ。そもそも君が高いと言ってくれればいくらでも安くしたんだ!」
「言えるわけないでしょう! 護衛してもらうのも気が引けるのに安くしてだなんて! そもそも、師匠なんか1万コールも取ってたんですよ!?」
「それは……あのバカに払ったのか?」
「払うというか雇えるわけないでしょう! 1万コールですよ!?」
「……1万と聞くと、200コールが安く感じちゃいますね」
「あーだからな? 私は金はとらん。だから普通に誘ってくれ」
「あ……はい。よかったぁ」
トトリが胸をなでおろす。
だが、ロロナはまだ怒っていた。
「……私の時はあんなに取ったのに。ステルクさん、ずるい」
「まだ言うか」
「ふーんだ! ステルクさんなんか知りません!」
「あわわわわわ……」
「はあ……やれやれ」
ロロナとステルクに挟まれたトトリがあわあわとしている。
そして――
「……どうでもいいですけど、ここでやらないでほしいかなぁ」
「もうあれよね。二人ともサッサと結婚しちゃいなさいよって感じだわ」
「彗星かな。違うなァ。彗星はもっとバーって……」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「はい。ダイヤモンド。免許更新よ」
「やったぁああ!」
次の日、冒険者ギルド。
そこでトトリは、冒険者ランクをついにダイヤモンドまで上げたのだった。
「おめでとう。これであんたもいっぱしの冒険者ね」
「はい! ありがとうございます」
「ってわけで、これはボーナスよ」
クーデリアが出してきたのは参考書だった。
「参考書?」
「そ。ロロナとマリーに頼まれてたのよ。ダイヤモンドになったら渡してくれって」
「そうなんだ……」
「あんたならそこに書かれた道具も作れるだろうって。がんばんなさい」
「はい!」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「先生! 本、ありがとうございます!」
「あ、トトリちゃん。それもらったってことは……」
「はい! ダイヤモンドに昇格しました!」
「やったね。その参考書はマリーちゃんと一緒に作った新しい移動道具だよ」
「移動道具……空とぶじゅうたんみたいなものですか?」
「そう。あれほど万能じゃないけど、なんと拠点へ一瞬でワープできちゃう魔法陣なの!」
「うええええ!?」
トトリが驚く。
「トトリちゃん、マリーちゃんのじゅうたんが気になってたでしょ? 同じものはトトリちゃんが頑張って作るとしても、すぐには無理だと思うからね。だからとりあえずの手段」
「ロロナ先生……ありがとうございます!」
「うん、がんばってね。まずは材料探しからだけど」
「はい! 早速、ミミちゃんとステルクさんに護衛頼まなきゃ! 先生、わたし行ってきます!」
「はいはい。いってらっしゃい」
「よーし! やるぞー!」
トトリの元気な声がアトリエに響き渡った。