はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
アーランドの街。
「魔力のラインがこうなって……こんな細いラインなのに驚くほど強い流れの痕跡がある……?」
「トトリ。テスターの準備はできたよ」
「ありがとう、エリーちゃん」
アトリエでトトリは、ひかる円盤の解析に精を出している。
「やっぱりだ……この光る円盤の特性は電気。しかもその電気のマナの流れの伝導率がとんでもない。ほとんど劣化がないほどスムーズに流れてる……」
「火や水、風や土のマナの伝導率も調べておいた方がいいね」
「うん。多分電気ほどじゃないけど、伝導率は凄いと思う」
「となると……四属性全般に強い作用するアイテムが作れそうだね」
「……四属性、それぞれのダメージを与えるアイテムとかできそう」
「逆転させたらそれを防ぐ耐性アイテムもできる?」
「……これ、可能性がかなりある素材だね!」
トトリの横にいたエリーと二人で解析している。
ちなみに、マリーの世話はロロナがしていた。
「トトリ。マリーさんの盾については……」
「あ、それは大体わかったの。マリーさんの盾は、グラビ石の浮遊効果と、竜の爪やウロコの防御効果、あとひかる円盤に取り付けられた小さな集積回路がネックみたい。この集積回路がすごく大変だったけど」
「集積回路……」
「ひかる円盤を凝縮させて電気信号に命令を与えるように組み込んでる。問題はその命令信号なんだけど……エリーちゃん、これなんだかわかる?」
「うーん……これ、アロママテリア?」
「アロママテリア?」
「私たちの世界で賢者の石の素材になるアイテム……そうか。マリーさんはこんなものをこっちの世界で完成してたんだ……」
マリーやエリーたちの世界での作成物の存在に、エリーは驚く。
まさか遠く離れた土地でアロママテリアを見るとは思わなかった。
「どうやって作るの?」
「これの大元は虹色の聖水という、特殊な加工した液体がいるんだけど、それは液化溶剤とコメートで作れるの。作るときの魔力の変質で出来るから、多分こっちでもできるとは思う」
「なら再現は可能だね……とりあえずは、アロママテリアを作るところから始めてみようか。コメートはわたしが作るとして、液化溶剤というのは……」
「あ、それなら私が作れる。レシピも魔法の絵の具の先に進めたものだし、そんなに難しくないからあとで教えるね」
「ありがとう。じゃあ手分けして作ろう」
本来の歴史でなら、トトリが液化溶剤に出会うのは数年以上先の話だった。
だが、エリーという師がその時間を縮めたことにより、彼女の錬金術は急激にレベルアップしていく。
「このアロママテリアって小さいけど凄いマナを持ってるよね。記憶媒体の性質もあるみたいだし」
「元々、私たちの世界だとこれに火竜系の舌、世界霊魂を精製した精霊の涙、ドンケルハイトとアロママテリアを組み合わせて賢者の石を作るんだけど、このレシピの肝は四属性の属性値を最大に取り込んだ上で、霊子の力を加えて作るんだよ」
「つまり素材に由来しないで、要は四属性と霊子を取り込んで纏め上げたものが賢者の石になると……?」
「元々四属性自体が反発しやすいのと、霊子との相性が悪いの。だからそれを混ぜ合わせることは通常だと上手くいかないのだけど、魔力を使って変質させつつ混合させると……」
「相反している素材を魔力で結合させる……」
トトリはふと気づいたことをメモする。
「エリーちゃん。これ、多分関係ないけど爆弾にも使えそうな性質だね」
「ええ……? なんでそっちに思考がいっちゃうの……?」
「相反する素材をまとめて、混合した際の力……」
「トトリ……トトリ? だめだ、聞いてない……」
集中して別の公式図を掻きだしたトトリに、エリーは嘆息する。
アーランドの錬金術士は、みんな爆弾娘の素養が高すぎる。
そう思ったエリーであった。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「じゃん! 先生! できました!」
「おお! じゃあ遠近自在盾が……」
「新しい爆弾です!」
「うええええええ!? なんで!? なんで爆弾!? 盾じゃなかったの!?」
ロロナは、思わずエリーを見る。
エリーはもはや呆れて肩をすくめただけだった。
「作成中に爆弾のレシピがひらめいたんです。多分ものすごい効果があると思うんです」
「こんな小さな爆弾が……?」
「なので試そうかと思ったら、エリーちゃんからアーランドでやるなと……」
「概算だけでも多分、今までの爆弾をはるかに超える爆発力が出そうなんだよね。下手すると自分たちも巻き込まれるぐらい」
「ええ……それって昔。私がテラフラム作った時に師匠にダメ出しされた奴じゃ……」
「あ、先生も作ってたんですね」
「いや、私の場合もアトリエで効果試そうとしたら師匠に頭叩かれて止められたの。アーランドふっとばす気かって」
「ええ……?」
「範囲縮小効果付けて味方にまで来ないようにしたら使いやすくなったけど……これってそういうのは?」
「してないね……」
ロロナとエリーが、トトリが持つ爆弾をじっと見る。
トトリが冷や汗をかいた。
「え、ええと。と、とりあえず起動してから検証してみようかと……」
「「 ダメ!! 」」
「あ~う……」
「最低でも範囲が狭いの特性をつけて起動実験しなさい。ついていないのは誰もいない所で山1つ吹き飛ぶつもりでやんなさい」
「山って……さすがにそこまでは」
「いい!?」
「はいっ!」
エリーの剣幕に、トトリの身がすくむ。
「(こしょこしょ)エリーちゃん、そんなにヤバいの?」
「(こしょこしょ)無茶苦茶ヤバいよ。本当にアーランドが吹っ飛びかねない。そんな爆弾、副次効果含めて何があるかわからないし」
「(こしょこそ)それって師匠に絶対に作るなって厳命されたやつでは……エリーちゃん、レシピ見せて」
「(こしょこしょ)待ってて。すぐ用意する」
「あの~それじゃあ、わたしは起動実験に……」
「「 ダメ! 私たちが同行するからそれまで待ちなさい! 」」
「ええ~……」
数日後――
とりあえず爆発の副次効果はほとんどないと確証が取れ、念のためと人のいない熱砂吹く原野まで来たのだが……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――――
範囲縮小効果もある改良版を中心部で起動したにもかかわらず、原野全体を覆いつくすほどの爆発が起こった。
「「「 ……………… 」」」
ロロナはやっぱり、と肩をうなだれ。
エリーはこれはヤバいと頭を抱え。
トトリはひっくり返って失神した。(ちょっと漏らした)
そうしてこの試作爆弾は封印されたのである。