はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
アーランドの街
「……というわけで、残念ながら成果はなかった。危険もないということで、熱砂吹く原野周辺の侵入禁止は解除された。ただ、十分気を付けるように」
「……わかりました」
ステルクが熱砂吹く原野の調査の結果を、トトリたちに報告していた。
まあ、わかっていたことではあるが……
「ともあれ、これで冒険者の拘束も解除された。私も護衛に復帰する」
「ありがとうございます。さっそくですけど、明日からお願いできますか?」
「わかった。では明日、門の前で待っている」
「はい、お願いしますね」
そう言ってステルクは帰って行った。
「よかったね、トトリちゃん」
「はい。ようやく探索が再開できます」
「次はどこ行くの?」
「前回、北回りで行きそびれた世捨て人の家を探索しようかと」
「そっか。いいものがあるといいね」
「はい。ミミちゃんも誘って行ってきますね」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
世捨て人の家――
熱砂吹く原野の南に位置するこの場所は、はるか昔は湖だったことを想像させるアイテムが取れた。
「湖底の溜まりが取れるってことは、干上がっちゃったのかな……?」
「硫黄系の臭い石も取れるからそうかもしれないわね」
ミミとともに採取するトトリは、周辺を探索している。
ちなみにステルクは周囲を警戒していた。
「トトリ。あそこに宝箱があるわよ」
「あ、なんだろ……よいしょっと」
トトリが箱を開けるとそこには……
「あ……これ」
「あら、綺麗ね」
そこに入っていたのは瑠璃色の羽だった。
「どおってことのない羽ね。これを見つけた冒険者もどうでもいいから放っておいたのかしら?」
「とんでもないよ、ミミちゃん。これ、大事な素材だよ!」
「あら、そうなの?」
「うん。これがあれば先生からもらったエンゼルチャームも作れるし、なによりトラベルゲートが作れるよ!」
「トラベルゲート?」
「簡単に言えば、アーランドとアランヤ村を一瞬で移動できるの」
「ええ!?」
ミミが驚きの声をあげる。
「よし! 周辺を採取してすぐに戻ります! ステルクさーん!」
トトリはステルクを呼び、周辺の採取をしてすぐにアーランドの街へ帰るのだった。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「できました! トラベルゲート!」
「やったね、トトリちゃん!」
半月後、急いでアトリエに帰ったトトリが、トラベルゲートを完成させた。
「起点はコンテナに連動させたのですぐにでも行けますよ」
「アランヤ村か……そういえばお姉さん、どうなったんだろうね」
「あ~……」
そう言えばそうだった、とトトリは額を抑える。
ちらりと見れば、ちむちゃんにお世話を受けているマリーが見えた。
だいぶ回復してきており、多少ではあるが反応も返ってきているので、ロロナやエリーが付きっきりでなくとも良くはなっていた。
「……そうですね。ちょっと、一度見に行ってきます」
「大丈夫? 私も行こうか?」
「ええと……今回はすぐ帰ってくるので、先生とエリーちゃんはマリーさんの傍にいてあげてください」
「そう? わかった。エリーちゃんが帰ってきたら伝えておくね」
ちなみにエリーは買い物に出ている。
「お願いします……さすがにエリーちゃんも連れていけないし」
「まあ、ねぇ……」
アレは早々治るモノでもないと思っている師弟だった。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
アランヤ村――
トラベルゲートでアトリエに転移したトトリは、リビングを覗く。
そこにはツェツィの姿があった。
(ああ、よかった……元に戻ってるっぽい)
ほっとして息を吐くトトリ。
「ただいまーお姉ちゃん」
トトリは元気に声をかけた。
と、ツェツィは――
「オカエリナサイ、トトリチャン」
「……?」
「オカエリナサイ、トトリちゃん」
「……お姉ちゃん?」
「オカエリナサイ、トトリチャン」
「……え?」
繰り返し片言でカクカクと呟くツェツィ。
ちなみにツェツィは、トトリに向かって言っていない。
台所で料理しながら、ブツブツと呟いているのである。
「え? なにこれ? こわ!」
「……相当堪えたみたいだからねぇ」
「わ!? お父さん!? びっくりした!」
唖然としたトトリの横に、突然グイードが現れて声をかけてくる。
久しぶりの父の神出鬼没さに、トトリは素で驚いた。
「……お姉ちゃん、どうしちゃったの?」
「お前たちがアーランドに行ってから、メルヴィアに散々怒られてね。今回はさすがに反省しろって、ツェツィの私物を全部取り上げたんだ」
「……そんなんでこんな風になるの?」
「お前のお古の服とか小さい頃の思い出の品とからしいぞ」
「なにそれこわい! え、だけどそんなもん? あのお姉ちゃんがそれ取り上げたぐらいで?」
「いやね……実はまだあるんだ。メルヴィアは――」
と――
バンッ!
「ツェツィー! 今日も来たわよ! 今日はこのフリフリの幼児服にキラキラのリボンをつけて花束持ってみようかー!」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
メルヴィアのセリフに、耳を塞いでその場にうずくまるツェツィ。
トトリは目を点にしている。
「……なにこれ」
「あんまり反省しないツェツィに業を煮やしたメルヴィアが、ならお前もああいうの着てみろって毎日毎日、無理矢理ツェツィを着せ替え人形にしていてね……」
「お姉ちゃんがマリーさんやエリーちゃんにしていたことを……」
「そう。あれからずっと毎日あれこれと着せ替えて村を練り歩かせているんだ。もう村中がツェツィの話題で持ちきりだよ」
「……すごい、お姉ちゃんに効果はばつぐんだ!?」
「いや、もう外歩けないって引きこもってもメルヴィアが無理矢理外に出すからね。すっかり村の名物になっちゃってねぇ」
グイードがポリポリと頭を掻いている。
「さすがに止めたんだが、これは罰だからとメルヴィアも止まらなくてね。ゲラルドのバーも休んでいるし、どうしたもんかと」
「うわぁ……」
「ちなみに服は、パメラさんが毎日とっかえひっかえ用意しているらしいぞ」
「パメラさんまで巻き込んでるんだ……」
まあ、事情も話してあるしなぁ、トトリは思った。
「最近じゃ練り歩く姿を、嬉々として写生するペーターくんとかいてねぇ……毎日泣いて喜んでいるが」
「ああ、ペーターさんじゃねえ……」
こういう所が実に変態的なペーターであった。
お前、そういうところだぞ、と普通にトトリも思う。
「もうそろそろいいと思うんだがなぁ……」
「……うん。さすがに止めようか」
これ以上はもう再起不能になる。
そう思ったトトリは、メルヴィアを止めるために声をかけるのだった。
朗報:ツェツィが反省した