はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
アランヤ村――
「この度は、たいへん、たいっへん! 申し訳ありませんでした!」
ツェツィが土下座している。
その前に、マリーとエリーが座っていた。
ちなみにロロナとちむも一緒に来ている。
「と……まあ、さすがにお姉ちゃんも反省しているし。二人も許してあげてほしいんだけど」
「……私はそこまで怒ってませんからいいですけど。マリーさんは……」
「……いいよ」
「マリーさん!?」
まともにしゃべったマリーに驚くエリー。
「まあお世話にもなってるし、あたしがポンコツになってる間にエリーやトトリ、ロロナにも迷惑かけたしね」
「よかった……マリーちゃん。元に戻ったんだ」
「まだダメージはあるけど、何とか普通に会話できる程度には、ね」
しばらくぶりにまともに会話できるようになったマリーに、トトリがほっとする。
「冒険はしばらく勘弁してほしいけど、日常生活は大丈夫。ちむたちにも世話になったね」
「ちむー……」
「はあ、よかった……お姉ちゃん。次はないからね?」
「はい……ごめんなさい」
再度、マリーとエリーに頭を下げるツェツィ。
一件落着と、誰もが思ったその時に――
「ぐ、グイードさん!」
バンッと扉を開けてきたのは、ペーターだった。
「フラウシュトラウトだ! フラウシュトラウトがでた!」
「なに!?」
ペーターの言葉に、グイードが立ち上がる。
「ふらう……? なにそれ?」
「トトリも知らないの?」
「知らない……お姉ちゃん、知ってる?」
「ええと……」
トトリの言葉に、ツェツィはためらうように口ごもった。
「この近くまで奴が来ているらしい! 港の船が何隻か沈められてる!」
「まずいな……活動期に入ったか」
「しばらくはギゼラさんのおかげで大人しかったのに――」
「ペーターさん!」
ペーターの言葉に、ツェツィが声をあげた。
「え? あ、トトリ! やべっ!」
「……お母さん? お母さんがどうして出てくるの?」
「い、いや、その……」
「トトリちゃん! あっちに行ってなさい!」
ツェツィが打って変わったように鋭い剣幕で、トトリをアトリエに押しやる。
「ちょ、ちょっと待って! お姉ちゃん、お母さんのこと――」
「いいから! 今はアトリエに行きなさい! マリーちゃん、エリーちゃん、ロロナさん! お願いします!」
「ええと……」
「……とりあえず大事みたいだし、一旦はアトリエに行こうか」
「そうだね……トトリちゃん。とりあえずは行こう」
「……はい」
ロロナに促されて、トトリはアトリエへと引き下がるのだった。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
夕暮れ時――
ペーターと話した後に、グイードとツェツィはゲラルドのバーへと向かい、そこで話しあって帰ってきていた。
「お父さん、お姉ちゃん。説明して」
「ええと……なんのことかしら?」
「とぼけないで! フラウシュトラウトって何? お母さんとどういう関係? 活動期とか!」
「ええと……さ、魚の事よ。大きな魚。それが暴れているって――」
「嘘! そんなんでお母さんが出るはずがないもの! モンスターのことなんでしょ!? どういうことなの!?」
「………………」
「……はあ。ツェツィ、もういいよ」
「お父さん……」
「トトリももうあの頃のような幼子じゃない。ちゃんと理解できる年頃になったんだ。なら知っていた方がいい」
「けど……」
「大丈夫だよ。昔の弱いままのトトリじゃないさ」
グイードの言葉に、ツェツィが引き下がる。
「ええと……私たちも聞いていいことですかね?」
ロロナがそう言ってトトリの横で呟く。
その後ろにはマリーとエリーもいた。
「ああ……皆さんも聞いていてください。フラウシュトラウトというのは海竜の事です」
「海竜……」
「昔、フラウシュトラウトが暴れたことで、この村の漁業が壊滅的な打撃を受けたんだ。この村は漁業がなければ成り立たない。けど、冒険者も海の上での戦いには慣れていない。ほとほと困り果ててね」
グイードは言う。
フラウシュトラウト討伐の為に、ギゼラがグイードの作った船で単身戦いに出て、行方不明になったと。
「戦いの傷があったのだろう。フラウシュトラウトはあれから大人しかった。だが、どうやら傷が癒えたらしい。また暴れだしたというわけだ」
「……わたし、全然覚えてない」
「あの時、トトリはまだ小さくてね。ギゼラが帰ってこないことで毎日泣いて、半分廃人みたいになってしまった。その後はきれいさっぱり忘れてしまったようなんだ」
「だから無理に思い出させないように村中で隠すことにしたの……」
「トトリが家から出るようになって、ちょうどその頃だったかな。ロロナさんと出会ったのは」
「ロロナさんのおかげで、トトリちゃんは錬金術という夢中になれるものが出来た。だからお母さんのことを思い出させないようにしていたんだよ」
「そうだったんだ……」
お母さんがどこにもいないわけだ。
ギゼラは大陸でなく海にいた。
「あいつがねぇ……まあそういう無鉄砲なところがあったからなぁ」
マリーがしみじみと語る。
「あれから数年。多分ギゼラはもう――」
「何言ってるよ、お父さん!」
「トトリ?」
「お母さんは生きてるに決まってるじゃない!」
「トトリちゃん……」
「多分帰れないんだよ。船が動かないかなにかで。ということはどこかの島か、別の大陸にいるんだと思う」
「いや、しかし……」
「島とかなら多分連絡も取れないし、別の大陸もフラウシュトラウトがいたんじゃこっちに来れない……よし!」
ガタン、とトトリが立ち上がった。
「わたし、フラウシュトラウトを倒します!」
「「 ええええええええええええええ!? 」」
トトリの宣言に、グイードとツェツィは驚き。
3人の錬金術士は、まあそうなるよね、と深く頷いた。
やーっと船作成。
トトリは船を作ってからが本編な気がします。