はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
仕事が山積みじゃねえかあ!
静かの林道――
アーランド大陸でタールの実が取れるのは、ここと世捨て人の家しかない。
質としては世捨て人の家の方が多少上ではあるが、ほぼ変わらないとなれば、近場であるここが基本の採取地となる。
エリーはここに、ジーノとメルヴィアを連れて採取に来ていた。
「しっかし、海に行くとはマジかー」
「まあトトリなら納得よね。ギゼラさんを探すためならどこにでも行きそうだし」
ジーノとメルヴィアも、採取を手伝いながら雑談している。
「というか、エリーちゃんたちも行くのね」
「まあトトリの為でもありますけど、普通に海には興味がありますしね。ザールブルクでも海辺で色々取れたんですよ」
素材としてはあまり機会がなくて研究しきれなかったエリーとしては、海の素材からできる錬金術には非常に興味があった。
「結局、有用なものの代表がゲヌーク壺や毒ぐらいだったし、ほかにもいろいろできそうだったんですよね~」
楽しみだ~と思いはせるエリーに、メルヴィアは「さすが錬金術士」と肩をすくめた。
「しっかし、このタールの実だっけか? こんなもんで腐らなくなるってホントか?」
「腐るというか、それの液でコーティングして、そもそも濡れたままにしないことが重要なんですよ。濡れたまま放置すると腐るのも早くなりますしね」
「水をはじく効果があるってことね。な~る」
ジーノの疑問にエリーが答え、メルヴィアは納得した。
「で、どのくらいとるんだ?」
「たくさん」
「たくさん!?」
「船を覆うぐらいの量を持っていかないといけませんから……」
「えええ……籠の容量、足りんのかよ」
「まあ数日かければ。基本は甲板に使いますけど、出来たら船底や側面にも塗りたいんですよ。量は多くなりますけど、水耐性が増しますし」
「……素人考えなんだけどさ。それって重くならねえ?」
「所詮は液ですし、コーティングする程度ですからね。多少は重くなりますけど、液を作る時にグラビ石を混ぜる方向も考えています」
エリーの魔改造癖がここでも発揮される。
そしてエリーの得意技は、オリジナル調合とブレンド調合である。
オリジナルで色々混ぜ、分量を細分化することでその効果を引き上げることを得意としていた。
伊達に『マリー以上の錬金術士』と、アカデミー校長のクライスに断言されているわけではない。
「グラビ石かあ。木材に混ぜたら船浮くかな……?」
「な、なんか怖いこと考えているわね」
「錬金術士ってやつは……」
メルヴィアとジーノは、考え込むエリーを見て、互いに嘆息するのだった。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
古き樹木の地――
「あ、せんせー!」
「あ、トトリちゃん。これから?」
「はい! 先生は……大分貯まったみたいですね」
「うん。ステルクさんとくーちゃんのおかげでね。でもまだまだいるんでしょ?」
「そうですね。最低でも50.失敗や試作を考えると2倍か3倍ぐらいは置いておきたいです」
単純にレシピ通り作るだけでも、木材は50ぐらいはいるのだ。
品質や効果を選別するとなればその倍以上はいるし、試作を含めるとなればとても足りない。
「とりあえず今あるのは、トトリちゃんの秘密バックでコンテナに転送しておこうか」
「お願いします」
ざらざらと秘密バックに材料を入れていくロロナ。
「うーん……コンテナがいっぱいになるかもなぁ」
「選別して不要なものは捨てましょうか?」
「うーん……トトリちゃん。トラベルゲートでマリーちゃんの所に帰れる?」
「え? 今からですか?」
「うん。それでマリーちゃんにコンテナの拡張をお願いできないかな」
「えええ!? マリーさん、コンテナ拡張ができるんですか!?」
初耳だった。
「うん、できるよ。ただ……材料がちょっとねぇ」
「ああ、希少な材料が必要なんですね。何がいるんですか?」
「……賢者の石」
「ええ!?」
賢者の石。
錬金術の到達点の一つである。
そして、エリーやクライスが生まれる原因にもなった物だった。
「材料自体はマリーちゃんが持ってる。ドンケルハイトも二つぐらい分は残っているはずだから。だから上手くすればコンテナが3倍ぐらいにはなるはず」
「……大丈夫、でしょうか?」
「多分……としか」
「う、うーん……」
正直、あまり頼みたくはない。だが、今は保存するコンテナの数が足りないことでもある。
「……わかりました。頼んでみます」
「お願いね」
こうしてトトリはロロナに秘密バックを預け、自身は護衛のマークやミミと共にトラベルゲートで、一路アランヤ村へと戻るのであった。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「……そうきたか」
マリーは頭を抱えながら唸った。
目の前には申し訳なさそうなトトリがいる。
「確かに今のコンテナじゃ容量が足りない。材料もある……けどねえ」
「賢者の石を作ったら、また誰か生まれるかもしれませんし……」
「うーむ……」
むむむむむ……と悩むマリー。
「……マリーさん。賢者の石って、絶対に必要なんですか?」
「……コンテナを拡張するんだろ? 作るのも拡張するのも賢者の石は絶対に必要だねぇ」
「そうですか……あと、クライスさんとエリーさんが生まれる原因になった賢者の石は誰が作ったんです?」
「ええと……クライスはロロナ。エリーはクライスだね」
「……あれ? マリーさんは作ってないんですか?」
「………………ああ。そういえば、あたしは作ってないねェ?」
ふと思いついたことをトトリが呟き、マリーも思い至る。
「マリーさんが作れば、もしかしたら生まれないかも?」
「ええ……で、でも2度あることは3度あるっていうしなぁ……」
「3度目の正直とも言いますよ!」
「ううう……」
トトリの圧に、マリーがたじたじとなる。
「マリーさん!」
「ううううううう……」
「マリーさん!!」
「……わ、わかったよ。いっこだけ、一個だけ試してみるよ……」
マリーが根負けした瞬間だった。
なんか筆が進んで一気に書きあがったので、連載速度戻します。