はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
アランヤ村――
「つまり……私は生まれ変わったということ?」
「はい……おそらくは」
「マリーさんやエリーも?」
「はい……あとクライスさんという方もいます」
「校長まで? じゃあヘルミーナ師匠やイングリド先生も……?」
「ヘル……いえ、そういった方はいませんね」
「あ、そう……」
トトリの説明に、アイゼルはようやく落ち着く。
「夫は……ノルディスは?」
「……そういう方もいません」
「そうなのね……とても残念だわ」
「まあ正直、誰がどうしてあたしらを生まれ変わらせたかわかんないからねぇ。他の連中呼べるならあたしだって呼びたいよ。ミューちゃんとかキリーさんとか」
「私も旦那様は呼びたいですねぇ……私が逝くときは生きていたからダメなのかもしれませんけど」
「……それなら夫は、私が逝く前に亡くなっていたので可能性があるけど」
「ああ。ノルディスは、あたしが亡くなる前に亡くなってるか」
そういえばそうだった、とエリーは思いだす。
「うーん……規則性が見えないな。どうなっているんだろ?」
「マリーさんが賢者の石作った時は、何ともなかったんですよね……?」
「丸一日放置したけど、何にも変化がなかったね」
「うーん……?」
「やっぱり、わたしが作ったからでしょうか……?」
トトリがしょぼんとした顔で答える。
その様子を見ていた3人が、クスリと笑った。
「トトリは悪くないよ。許可したのはあたしだし、正直成功する確率が低いから出した結果だったからね。何かの力が働いたのかもしれない」
「そうですね……本来なら、今のトトリには賢者の石を作ることは無理だったはずですし、外的要因があった可能性が否めません」
「私はよくわからないですけど……でも私はあなたのおかげで、友人にもう一度会うことが出来たんです。あなたのせいでなく、おかげで。だから、ありがとう」
「……ありがとうございます」
二人の師匠の考察と、生み出した本人のお礼の言葉に、トトリはちょっと涙目になりながら頭を下げた。
「まあ生み出しちゃったんだからしょうがない。アイゼルもマイスタークラスを卒業しているし、また一人錬金術士が増えたとなれば、戦力が増えたも同然だね」
「アイゼルは戦闘力が高かったから、いろいろできそうですしね」
「……私に何させるつもりなのよ、エリー」
あけすけな言い分に、アイゼルは半眼で応えた。
「ええと……とりあえずコンテナの拡張で、木材はロロナ先生が送ってくれるはずです。わたしはもう一度現地に行くよりも製作にかかった方がいいかと思うんですけど」
「そうだね。とりあえず船体と甲板だっけ。ならトトリは船体を、エリーは甲板かな? アイゼルは……まあ体に慣れていないから、見学と助言かね」
「あ、そうだ、マリーさん。タール液を船体にも塗って腐食を防ごうと思うんですけど」
「それだと重量計算おかしくなるだろう?」
「ええ、だからグラビ石を混ぜてみようかと」
「ああ、なるほど。けど分量計算と検証が大変じゃないかい?」
「そこはほら、ちょうどいい人材が増えましたし」
「ちょうどいい人材って……私!?」
「アイゼルはそういうの得意でしょ。数字に強いし」
「あなたね……」
「体は使えなくても頭は使えるし?」
「ほんとにこの娘は、前と何も変わってないわ……」
アイゼルが頭を振りながら、溜息をついた。
「………………」
「あ、トトリ。そういうわけだから、船体なんだけど――」
「……エリーちゃん。そのタール液、グラビ石混ぜたら軽くなるよね?」
「え? ええ」
「量を増やせばかなり軽くできる。けど重量計算が狂うなら、重くするのにスティム鉱石か剛鉄鋼、混ぜられないかな」
「……いける、かな? 中和剤入れれば、多分?」
「それかアードラの羽でもいいんだけど、特性で丈夫なを入れれば防御力も上げられるかと思うんだよね」
「……計算が必要だね。レシピ作ろうか。アイゼル、そう言う訳だから」
「何がそう言う訳なのよ! ああもう……この子もエリーと同類じゃない」
「そらそうよ」
アイゼルの言葉に、マリーが答えた。
「この子、エリーの弟子だもの」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「ああ、もう! なんで! 私まで! 船作るのに駆り出されているのよ!」
アランヤ村の桟橋で、ミミが板を運びながら吠えていた。
「ご、ごめんね、ミミちゃん。船体を作るのは桟橋でないと……」
「それはわかるけど! 私まで手伝う羽目になったのは! あのバカのせいじゃない!」
「あー……」
トトリは目を逸らして、原因の方を見る。
そこには――
「だ・か・ら! そこをいじると全体のバランスが崩れるんだ! 転覆させる気か!」
「何を言う! 片方に寄ってしまうなら、もう片方に重量を増やすスタビライザーのようなものを作ればいいだろうに!」
「すた……それが何かわからんが、重くするだけじゃスピード落ちるだろう!」
「だったら追加でスピードを増やす動力をつけるか、風の抵抗を減らすように船体を流線形にするとか方法はあるだろう!」
「そんなことをすれば、全体のバランスがさらに崩れるだけだ!」
「だったら構造計算をやり直すだけだ! 幸い時間はまだある! 船体すらまだ作る前なのだから!」
「確かにそうだが……」
「この私! 異能の天才科学者、プロフェッサー・マクブラインが手伝うのだ! 構造計算は完璧に仕上げて見せる!」
「面白い! だったらやってもらおうではないか!」
トトリの父であるグイードと、科学者であるマーク。
性格が似てないようで、実は似ている二人が意気投合して船の設計からやり直し始めたのである。
まさかの作る前からの設計変更であった。
「そのせいで! 私までこうして、手伝う羽目に!」
「ああうん。まあ元はと言えば、わたしが改良タール液を塗ることをお父さんに言ったことが原因でもあるし……」
父にそのことを伝えに言ったトトリ。
そこに一緒にアランヤ村に来ていた護衛だったマークがいたことが、不幸と言えば不幸だったと言える。
「だったらって話が、あれよあれよでこういう結果になっちゃったし……」
「トトリ! 船に武装も載せるからな」
「えええええ!? お父さん、今頃!?」
「そうしないと構造計算できんだろうが! 海竜を倒すなら左右に二門ぐらい積むか!」
「面白い! ならば、船首にも付けましょう。特大のやつを!」
「おお! 強力な武装をつけて必殺技とするか!」
「いいですねえ、必殺技! いっそドリルで突っ込ませてもいい!」
「「 ああ! なんだか楽しくなってきたぁ!! 」」
「………………」
「………………」
グイードとマーク。
会わせてはいけない人たちだったかもしれないと、トトリとミミは思ったのであった。
船が強力になっていきます。
多分原作と違って船自体が強力なアーティファクトクラスになるかも?
なお、改良タール液を含めた詳細は、船完成後で。