縁が集いて   作:山岡鮎太郎

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こいつ思ったより面白くならなかったな……って思いながら書きました

他の作品で察してらっしゃる方もいると思いますが、一人称視点苦手なので短いです()


実は複数主人公

某は馬である。名前はまだない。本当にない。

 

かつて、某は人であった。名前もあった。職はなかったが。

 

某は戦争の最中、とある武家の末裔に生まれた。

それなりの家に生まれた故、生活に不自由はなかった。

地元の名家として地域の柱となる我が家だったが、しかしそれは過去の栄光に追い縋っているに過ぎなかったことに、某は気づいていなかった。

 

某が14になった年、突如として邏卒どもが家に押し入り、父上を捕えた。母上と兄上、そして某と妹も粗雑に抑えつけられた。

 

 

父上の罪は贈賄であった。

 

 

この贈収賄事件では最終的には内閣の過半数が辞任することとなったが、父は贈賄側の中でも特に厳しく追及を受けた。

我等一家は安家に移り住むことを余儀無くされた。

 

母上と妹は煩かった。

「食事の質が低い」「使用人がいないのはおかしい」「服の質が低い」…

兄上と某は女たちの喚く声に辟易していた。

 

兄上は立派な御仁で、父上のこともあり不利な扱いを受けながらも一心に働いた。一家を養うほどの稼ぎを得てきていた。

 

 

某は──

 

 

某は働きもせず歌に小説、女遊びに耽っていた。

 

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ある朝、嫌な予感がして目を覚ました。

 

妹の泣き叫ぶ声が聞こえた。

「虫でも出たか、いくら女子といえど臆病が過ぎるぞ」と考えながら居間へと出た。

 

そこには刀を握り締めて立ち尽くす兄上と──

 

 

 

 

血塗れになって床に転がる母上と妹の姿があった。

 

 

 

母上はもうとっくに事切れている。絶望に見開かれたその眼は脳裏に焼き付いた。

妹も隙間風のような息を漏らして蹲っている。某が居間に出るまでの間に正面から一閃されたようであった。

 

そして。

 

兄上は、当然、振り返った。

 

 

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目を覚ますと、そこにはいやに大きな馬がいた。かなり痩せてはいるが、どこか雄大な雰囲気を醸し出していた。

 

「ブフ、フボフゥ(何をジロジロ見ているんだ馬)」

 

「ブヘ(ぬ?)」

 

 

自身が発した言葉、否、鼻息のような音に驚愕した。

視界も異様に低い。

それに、この空間には馬用と思しき寝藁が敷かれている。

 

そして、目の前の巨馬が《まるで叱りつけるかのように》脚を踏み下ろした。

 

パカン!と乾いた蹄の音が空間を劈いた。

反射的に、そして本能的に身を竦ませる。

 

某は今、目の前の巨馬に《叱られた》のだ。

そして某は、目の前の巨馬が自らの母であることを悟り、同時に。

 

自らが畜生道に堕ちたことを悟ったのであった。

 

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馬に転生してそれなりの年月が過ぎた。

 

某の生活は驚愕に満ち溢れていた。

 

まずは待遇。

馬畜生だというのに、妙に良い生活を送っているのである。

 

食事を用意されるのはまだわかるし、身体を洗われるのも人としての生でも見たことのあるものだ。しかし、それが毎日。代わる代わる複数の人間に世話されるなど、馬としては破格の待遇だろう。

 

 

そして、時代の先進性。

……わりと生まれてすぐに「よもや」とは思ってはいたのだ。

1週間ほど経つ頃には確信していた──この世界は某が人として生きた世界よりも進んだ未来の世界である、と。

 

ランタンなどとは比較にならない明るさと手軽さを実現している照明器具。財閥傘下の工場にすらあるかわからない高度な機械。人間たちが使う電話──まさか、電話を持ち運べるというのか??信じがたい話である。

 

 

また、環境も産まれた頃とは変化している。

 

某は乗馬や農耕馬ではないようなのだ。この細い身体で農耕馬は無理だとは思っていたが、乗馬ですらないとは。

 

もちろん、食肉馬ではない。

どれだけ速く走れるかを競う、競走馬という馬なのだ。

 

英国や仏国では貴族の遊びとして馬を競わせる文化があるようだが、目に入る文字を見る限りここは日本。未来では日本にも競馬があるようだ。

 

ということで、某も競走馬として成功すべく日々鍛錬に精を出しているのである。

 

まぁ、今日は休養日のようだが。

放牧地をゆったりと歩く。誰が好き好んで走るか。

 

 

──その声は唐突だった。

 

「(へいそこのボーイ!俺と遊ぼうぜ〜!)」

 

 

え、にほんご?

 

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日本語で(といっても実際は馬の鼻息でしかないが)話しかけてきたのは焦茶色の馬だった。

 

2頭による情報交換が始まった。

 

目の前の馬は牧場では「シュン」と呼ばれていると言っていた故、某も彼のことはそう呼ぶこととする。

 

シュンも某と同様、馬に転生した元人間なのだという。

語る際に度々人の生における後悔を滲ませているのは正直鬱陶しかったが、聞いている内に気になった点も出てきた。

 

シュンが人間として生きていた時代だが、恐らく某とは違う時代のようである。電話を持ち運ぶのはシュンにとっては当たり前のことらしいのだ。

 

それに、日本が戦争に負けて、勝利国によって支配されかけていたという話も聞いた。某が生きた日本という国は圧倒的な強国の筈だが、それでも負けるとは……。戦争というものは不思議で恐ろしきものである。

 

ちなみに、某の家名を知っているか聞いたところシュンは知らないようであった。まぁこの男、愚鈍な印象であることだしな(クソ失礼)

 

とはいえ、愚鈍なだけではないこの男。なんと、競馬について詳しいのである。某が生きた頃は日本には競馬が根付いてはいなかった。この男が語る「競馬とは何か」は非常に糧になる話であった。

 

 

シュンは「アンタのことはもうダチだと思ってるからな、また会ったら話そうぜ!」と言っていた。「だち?とは何だ」と尋ねると「友達……友人ってことだよ。よろしくな!」と快活に答えた。

 

友人──か。

 

 

某は、自分が笑っていることに気づいていなかった。

 




今んとこ主人公2人ともそこそこにカスなのは何?

次回は女の子です!!!!!!!!!
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