転生特典は“なんか良い感じの薬が作れる”ことです   作:綾瀬~><

1 / 10
ケツ叩きに分割して投稿……。
ハーメルン初投稿なのでまだ機能や仕組みを理解してません、なにか不手際がありましたら遠慮なくご指摘ください。


第一章・第一幕「運命とか陳腐な言葉は使いたくない」
守銭奴?それ褒め言葉ね


 

 

 人生は最終的にはお金さえあれば何とかなる。

 

 例えば大治療をする必要のある怪我や病気も、小さい頃に受けたかった習い事も、大量の教材による勉強も、ヨボヨボになって働けなくなった老後も、結局は全てお金次第。

 お金で愛は買えないとか何処ぞの誰かは言ってたけど、お金があれば心に余裕が生まれ、心に余裕が生まれれば必然と人は寄ってくる。

 

 心に余裕もなければお金もない奴の傍に行こうと思うような変な奴はそうそういないでしょ?つまりはそういうことだよ。

 

 

 まあ、何が言いたいかって言うと……

 ───お金はどれだけあっても損は無い、ということだ。

 

 

 俺は金もなければ余裕もなくて最期は病に倒れて野垂れ死んだ。

 

 金が足りなくて高校に行けず、中卒で現場職について上司にパワハラされ、これといった趣味もなく彩りのない人生だった。他にも金がない故の苦労をこれでもかと経験してきた。

 薄れていく意識の中、もしも来世があるならばこんな金無し貧乏な生活から脱却したい。そう思うのも当然だった。

 

 そんな俺の小さな願いを神は聞き届けてくれた。

 

 気が付けば俺は生まれ変わっていて少し淡白で放任主義な両親の元、金に困らない生活を謳歌することが出来た。

 何故かずっと夕焼けだけど、金に不自由がないことに比べれば些細なことだった。やっと手に入れた普通を手放すわけには行かない、この生活を成人までは続けるんだ……!

 

 

 しかし、そう上手くは行かないというのが人生というもの。

 

 

 

「はァ〜〜〜〜、やってらんねェ〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

 

 

 ──不肖、緒方庵。齢五にして天涯孤独の身となりました。

 

 クソデカため息を吐いてしまうのも仕方ないでしょ、人生イージーモードかと思えば突然ルナティックモードになったんだぞ。マジないわ〜、希望を持たせてからどん底に突き落とすとかないわ〜〜〜。

 あ、シリアスターンここまでね。俺ってばあんな憂鬱なキャラじゃないから、むしろ金がないからこその陽気さ?がウリだからね。自慢することじゃないってか、ハハ!

 

 そうだよ、空元気だよッ。今世こそ金に困らない生活になると思ったのに、これからありとあらゆる創作物でテンプレと化したカスクズ親戚共に遺産を毟り取られてボコボコでズタボロにされるんだッ。

 

 

「本日はお忙しい中、ありがとうございました」

 

 

 ぺこりとお辞儀をして、解散していく背中を見送る。

 

 全くもってそんなことなかった、勘違いしてゴメンナサイ!

 でも、本当に同じ人間?事務的な事しか話さないし、親戚だから一応参加しましたみたいな顔して来るし、涙を零さないどころか悲しい顔すらしないじゃん。いや別に良いんだけど、流石にそこまで無機質だとちょおっと怖いなぁって…。

 

 あと、これから誰に引き取られるの!?そこだけ教えて欲しいんだけど!

 

 

 

 

 まさかの誰にも引き取られないパターンとかあるんだ。

 

 俺としても好都合だけど、常識的に考えて両親を亡くしたばっかりの五歳児を一人っきりにする?五歳児の生活力舐めるな。俺の中身が大人であることに感謝しろ。

 

 

 ──そんなこんな言っているうちに一週間が過ぎた。

 

 

 早い?うるさい、俺が如何に一人寂しく過ごしてる様子を事細かく描写されても困るでしょ。閑話休題。

 

 あれから、時たま様子を見に来ていた親戚もこの頃になると全くと言っていいほど来なくなった。薄情なヤツらめ。

 いや、薄情というのは語弊があるか。皆、興味のあることにしか食指が動かないだけ。ある意味、職人気質ってやつ?興味のあることにはとことん打ち込んで、興味がないことには最低限の道理は通しはするけど問題ないと思えば放り投げる。

 何より最近ようやく落ち着いた問題で疲弊してるから、自分の子供ですらない他人の子供に割く時間は無いのかも。

 

 

「自分のことで精一杯なんだからしょうがないか」

 

 

 一抹の寂しさを感じつつも、前世では同じ余裕が無い人間だった俺からすればしょうがないことだと思った。

 

 前世振りの誰もいない家はなんだかとても広く感じる、小さくなった手で大きな包丁を握って玉ねぎを切る。あ〜〜ホント玉ねぎ切るの辛いわ〜〜〜目から汗出てきたわ〜〜〜〜。

 そんなどうでもいいことを考えながら切っていたせいで、思いっきり手を切った。エ、めっちゃ血出てるんだけど、マジで痛い、冗談抜きで痛い。何これ天罰?何もしてないのに降ることあるんだ。

 ぐすんと今度は本当に涙が出てくる。

 

 ねぇ、ちょっと踏んだり蹴ったり過ぎない…?

 

 

 後日。

 

 俺は両親が亡くなって初めて書斎室の扉を開けた。

 少し埃っぽくて咳が出る。うわー、これ掃除しなきゃダメなやつだ。めんどくさいな〜…。

 ちょっとした図書館かな?ってくらい膨大な量の本を前に少し腰が引けるが、そうは言ってられない。今日この書斎室の扉を開けたのは用事があってのこと、ここまで来て「やっぱやーめた」は無いでしょ。

 医学系の本がある場所に行き、薬の作り方が載ってある本をなんとか見つけて引っ張り出して、細かい字に目が滑りつつ目当てのものを探す。

 

 そう、俺がここに来た理由は傷薬を作る為だ。

 

 そんなこと?俺にとっては最 重 要 事 項!

 傷が痛すぎて寝れなかったんだぞ、安眠妨害は万死に値するって知らないの?自然に治るまで寝不足とかありえない、でも傷薬なんて家にない。だったら作ればいいじゃない!と心の中のマリー・アントワネットも言ってる事だし作るしかないでしょ。

 一応死んだ両親が医者だったから作るために必要なものは揃ってる。ペラペラと頁を捲り、ようやくお目当てのものを見つけた。ヨシ、あとは作るだけ。

 

 

「──なんか、本と違くね?」

 

 

 俺が作ろうとした傷薬は『半透明の軟膏』なのに、出来上がったものは『黄金色の軟膏』だった。

 

 いや、本当に何がどうしてそうなった。

 衝撃的なビフォーアフターに本と出来上がったものを交互に見る。残念だけど俺が作り方を間違えたってことはない、むしろこれでもかってくらい確認しながら作った。間違えてるはずがない。

 だから、多分これで合ってる……んだよね?半透明と黄金色を間違えて書いてたっていう可能性も無きにしも非ずだし??

 

 ええいままよ!と傷口に薬を塗れば、たちまち傷口が塞がった。ん?塞がった????(困惑)

 

 目を擦ったりほっぺをつねってもザックリ切れてた傷口は綺麗さっぱりなくなって、あるのはつるりとした肌だけ。

 なんだこれ、傷薬の効能?いや、本を読み返しても効能は化膿予防と保湿のみ。間違っても速攻で治るほどの効果はない。

 不意に頭に一つの可能性が思い浮かぶ。

 

 

 ──まさか、これが俺の転生特典?

 

 

 ただ転生しただけかと思っていたけど、まさか転生特典付きだったなんて思いもしなかった。

 ガタ!と立ち上がり、薬を作れば効果が倍になる…名付けて転生特典“なんか良い感じの薬が作れる”が、いったいどこまでの範囲に適応されるのか片っ端から試してみよう。そう決意した。

 

 俺の金がないからこその行動力は伊達じゃないってとこ見せてやる。まあ見せる相手誰もいないんだけどね!

 

 

 そして、また数週間後。

 

 

 色んな薬を作って試してみたところ、分かったことは3つ。

 全部飲んで効果を確認するのは中々の苦行だったけど、こんなの前世に比べたら百倍マシだ。それに、得られたものはかなりデカかったしね。

 

 まあ、薬のちゃんぽんで身体は健康だけどなんか気分が良くないケド。

 

 俺が作る薬はちゃんぽんしても、むしろドンドン健康になって行く。効果は重複式してるっぽい。

 でも前世で薬のちゃんぽんは逆に体調が悪くなるって読んだせいか知らないけど本当に気分が悪い。あ〜、このエグ味のある味はどうにかならないのかなぁ。味で気分が悪くなるというか、なんというか……。閑話休題。

 

 

「…効果はピカイチだし、文句言っちゃダメか」

 

 

 その一、作りたいモノのイメージを強く持つこと。

 

 これは例えば傷薬を作る時、俺が『とっとと傷が無くなりますよーに!』と強く思いながら作ったことで一瞬で治ったんだと思う。反対に『あんますぐ治ってもなー』と思いながら作った薬は、わざと作った擦り傷に塗っても数時間ほど経たなきゃ治らなかった。

 魔法はイメージってよく聞くけど、転生特典もイメージに左右されるんだ……。

 

 その二、人体の仕組みを出来るだけ理解しておくこと。

 

 胃薬とか頭痛薬とかを作った時、どういう仕組みがあってどうやって効くのか出来るだけ理解した方がよく効いた。理解する前に作った時は、強いイメージを持って作ったにも関わらずあまり効かなかった。だけど、理解してから作った薬は速攻で効いて治った。

 つまり、ある程度の知識は求められるということだ。

 

 その三、薬の範疇を超えるモノは作れないこと。

 

 例えば惚れ薬とか二次創作でよくある薬も作れるけど、薬の範疇を超えるような第三の目が開眼する!とか腕を生やす!とかは無理。要するに薬の範疇を超えた効果を出すことはできないということだ。

 まあそれでも動物化する薬とか作れるあたり、結構ガバガバっぽいけど。

 

 

 かたかたと手が小刻みに震える。人が持つには過ぎる能力で恐怖した?いいや、これは武者震いだ。

 ある程度の制約があるとはいえ、手順を省略したり雑だったりしても確実に“なんか良い感じの薬が作れる”ってのは魅力的すぎる。ああ、もう本当に……。

 

 ──これは、お金になりすぎる!

 

 上手くやれば医者として一攫千金ガッポガポ!

 若い内に稼ぎきってしまえば老後は不労所得でお金に困らない生活間違いなし!!アーッハッハッハ!!!

 

 

「絶対にしわくちゃのジジイになるまで生きる!」

 

 

 今世こそ病に倒れずしわくちゃのジジイになって眠るように死ぬんだ!!!

 




★緒方 庵(5)
 前世は極貧生活Lv999。とにかくお金関係で苦労してきた。
 お金にがめついというより生きるために欲しい。医者=稼げるという認識を持っている為、色々と都合のいい転生特典「なんか良い感じの薬を作れる」を持って生まれたので今後乱用しまくって行く予定。

☆両親
 台詞も何もなく速攻でナレ死した。
 生前は医者だったらしい。特筆する点はなし。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。