転生特典は“なんか良い感じの薬が作れる”ことです   作:綾瀬~><

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同族意識は時として人を生きづらくする

 

 あれから23年。

 俺は28歳になり立派な医者になっていた、そして当初の夢を実行するようにガッポガッポ稼げて…──なかった。

 

 医者ってさ、案外稼げないんだね。

 

 元々医者という職業がそんなに稼げないのに加えて、患者の数の割にお金が逃げていく。その原因なんて分かりきっている。むしろ思いっきり自業自得。

 でもさぁ〜、見捨てられないんだもん。しょうがなくない?

 

 

「お代はいくらでも払います…なんでも致しますので……!」

「そうですねぇ……経過観察の際に果物でも持ってきてくださいよ、息子と二人で食べたいんでね」

「先生、本当にありがとうございます…!!」

 

 

 …──ああ、ほら、またやっちゃったよ。

 

 この世界、どうやらSFが混じっているらしく海外渡航のノリで宇宙を渡ることができるのだ。

 宇宙にある数多の星に住まう宇宙人のことを天人と呼び、それぞれの部族に分かれている。俺やこの星に住む人達も天人の部族に分類される。つまり人間じゃない(ガチ)だった。

 そして、俺たちが住まう『夕又』という星はかなりの辺境にあるそう。簡単に言えばド田舎の惑星、いくら腕の良い医者がいるとしてもわざわざド田舎まで向かうヤツはいないということだ。

 それでもそこそこの数は来てくれているけどね、なんてったってよく効く天下の『緒方製薬』を経営する社長医師の本拠地なんですしおすし。閑話休題。

 

 ──俺のところに来る患者は大きく三つに分けられる。

 一つは金も権力も無駄に有り余ってる天人、一つは縋る場所がここしかない貧乏人。あとは……まあ今はいいだろう。

 

 残念ながら比重は後者に大きく偏っていて、この患者も同様に藁にもすがる思いで俺のところにやって来たらしい。

 ぶっちゃけ慈善事業じゃないんだし、お金を取りたい気持ちもあるんだけど、前世は同じお金に困って病院に行くことの出来なかった身としては「ウンウン、お前も大変だよな。お代は負けてやるよ、お大事にな」ってしてやりたいんだよ。

 

 そ れ に、たまーに来るお金がありそうな天人からは取れるだけとってるから赤字になるどころか黒字なのよ。無問題、無問題。

 

 

「はい、お大事に〜」

「父上がやりたいようにしたら良いとは思うけど、少しは金を取らなきゃダメだよ!付けあがらせちゃうよ!」

「あまりにもボロボロだったから、穂希と出会ったばかりの頃を思い出しちゃって……それに、お金なんてのは有り余ってる天人から取れるだけ取ったらそれでいいの。貧乏人から搾取しちゃならない、情けは人の為ならずってヤツだよ」

「はぁ……さっきの患者で最後だし、今日は早めに閉めよう。昨日からあんまり寝てなかったし、医者の不養生は良くないよ!」

 

 

 むっ!とした顔をして宥めてくるのは、息子の緒方穂希だ。ちなみに今年で5歳になる可愛い盛り。あ、養子だから嫁はいないよ。

 それどころか恋人なんて前世も今世も居たことないもんねッ(悔し泣き)

 

 下にある丸い頭をヨシヨシ撫でながら、ふと穂希と初めて会った日のことを思い出す。あんなにガリガリでズタボロだったのに、今じゃこんなに元気になって……。

 

 

 ──時は二年ほど前まで遡る。

 

 

 あれは俺が26歳になり、医者として軌道に乗り始めた頃だった。

 早朝に診療所で準備をしていたら、外からドシンっとデカい物音が聞こえてきた。何事!?と慌てて外に出てみれば、門の前に5~6歳くらいの小さな子供がズタボロになって生き倒れていたのだ。

 そりゃもうビックリしたよ、まさかの子供が診療所の前で死んでる!?ってね。

 

 

「大丈夫か!?生きて、いるな。よーしよしよし…大丈夫だ、俺が絶対に助けてやる。だから目ェ閉じるなよ、目ェ閉じたら死ぬぞ」

「は、なせ!クソジジイ!」

「じ、ジジイ!?俺のどこがジジイだ!どっからどう見てもピッチピチのお兄さんだろうが!!ああもう暴れんな、傷に障るぞ!──って、お前力強いな!見た目の割に元気じゃねぇか!」

 

 

 ぐりぐりとズタボロな割に強い力で頬を押されて、コイツ実は元気なんじゃね?と疑ったところで突然意識を失った。流石に死んだかと思った。マジでビビった。

 キャアアア!と生娘同然の叫び声と共に診療所に駆け込み、普段使わない即効薬を使って手当てした。俺の知らないところで誰が死のうと構わないけど、流石に目の前で死なれたら気分が悪い。頼むから起きてくれよ〜〜…。

 

 そんな願いが通じたのか、子供は程なくして目覚めた。

 

 が、目覚めてからが大変だった。死ぬほど暴れるし死ぬほど物壊すし死ぬほど食べる。まるで手負いの獣みたいな有様に「アレ?拾ったの子供だったよね?」と首を傾げてしまうほど。

 拾ったなら最低限面倒を見る、それが俺の信条だ。ガリガリの骸骨みたいなほっぺが子供らしく丸くなるまで俺は面倒を見た、その頃になると俺の手がなくとも大丈夫なくらい子供の凶暴さもマシになっていた。

 

 ──俺は普通の家族という形を知らない、愛するということが何か知らない。だから、最後まで子供の面倒を見切れる自信がなかった。

 ちゃんと大人に育てられるか、お金は大丈夫なのか、色んな心配事が尽きなくて、あの日初めて決意したのだ。子供を施設に預けるということを。

 

 

「ヤダ!イオリせんせといっしょがいい!!」

 

 

 ひしっと足にしがみついて、泣かれてしまった。

 子供は歳の割に力が強く聡明だった、だから事情を話せば分かってくれるんじゃないかと思っていた。そう、その予想は正しかった。

 

 でも、子供は分かった上で俺を選んだ。

 

 

「…──俺は医者で、色んな人を救ける仕事をしている。だからあんまり構ってやれないかもしれない、親子らしいことも出来ないかもしれない……それでも、俺がいいの?」

「かまってくれなくてもいい!おやこらしいこともできなくてもいい!いっしょがいいの!!イオリせんせじゃなきゃヤダ!!」

 

 

 そうだよ、俺は絆されたんだ。

 子供の温もりに、子供の素直な感情に、絆されたんだ。

 

 ──この日から、俺は子供と家族になった。

 

 養子となった子供には『沢山の希望が稲穂のように実る』という意味を込めて『穂希』と名付けた。

 稼いでも稼いでも食費に消えていくけど、元気に育ってくれるなら父親の俺は痛くも痒くもないってわけ。ちゃんと父親になれてるのかは分からないけどね。

 

 

 過去に浸っていたら、頭を撫でる手が止まっていたみたいで、穂希が顔を上げて訝しげな表情をする。あっ、眉をひそめてても可愛い。

 親バカ?なんとでも言え。可愛い息子に可愛いと言って何が悪いんだ。

 

 

「父上?ぼんやりしてどうしたの?こんなところで寝ちゃダメだよ」

「初めて穂希と会った時のことを思い出してたんだよ、見違えるくらい元気になってくれたな〜ってね」

「あの時の僕は本当に生意気だったから思い出さないで欲しいんだけど!!」

「あー!一丁前に黒歴史語ってるな?あんなの子供の可愛い悪戯だよ、大人の俺には痛くも痒くもなかったしね」

 

 

 うりゃうりゃと穂希の頭を撫でていたら、バタン!と派手な音を立てて誰かが入ってくる。この時間に来るなんてどこのどいつだ?

 

 

「──すまん!!まだやっているか!?!?」

 

 

 蹴破るようにして入ってきたのは、中々にワイルドな顔立ちをした綺麗な黒髪が特徴的な男。ただし、顔面どころか身体中に包帯をぐるぐる巻きにしている、という注釈がつけられる。

 

 ──ヤッベェ奴が来やがった。

 

 俺と穂希の心がひとつになった。

 いや、包帯ぐるぐる巻きなら大怪我をしているんじゃ?と一瞬思ったけど、こんな大怪我してるのに腹から声が出る訳ないしベッドの上から動けないでしょ。よって、必然的にミイラ男に仮装してる変態ということになる。

 

 

「やってない!今日はもう終わりだ!父上の睡眠時間を邪魔すんなハゲ!ミイラ男!!ジジイ!!!」

「コラッ、いくら事実でも患者に本当のこと言っちゃダメでしょう!いきなり現実を突きつけてしまうのは可哀想だよ、こういうのはゆっくり受け止められるように伝えてあげなきゃ」

「俺はまだハゲてないですぅ!!まだまだフサフサですぅ!!!この綺麗な黒髪が見えんのか!!!!」

「俺は医者だから分かります。貴方が将来ツルッツルにハゲることなんて俺にはツルっとお見通しですよ、ハゲだけに」

「何だそれ!?いったいアンタには何が見えてんだよ!?医者とハゲの関連性一ミリもねェだろ!!あと、上手いこと言ったみたいな顔してっけどなんにも上手くねェから!!!

それと、しれっと味方撃ちしてくるな坊主ゥ!!ミイラ男の意味は同じ夜兎族なら分かるでしょ、なんで味方撃ちしてくるの!?泣いちゃうぞ!?」

「俺知らなーい。坊主はお前だろ、勝手に泣いとけオッサン」

 

 

 やと…──野盗?

 まさか盗みに来たのか??こんな堂々と???

 

 

「や、野盗?うちには薬しかないんですよねぇ、盗るにしては旨みがないので狙うなら他所を……」

「夜の兎って書いて夜 兎!!盗っ人じゃねェ!!こんな辺鄙な所に来てまで盗みを働くワケねェだろ!!」

 

 

 まさか、厨二病…!?

 この年齢まで続いてるなんて可哀想に、きっとご家族に送り出されてきたんだろう。でもいくら俺が凄腕の医者だとしても『馬鹿を治す薬』が存在しないのと同じで『厨二病を治す薬』も作れないのだ。残念だけど諦めてもらうしかない。

 

 

「すみません、厨二病に効くお薬は無くて……」

「ちっげェええええ!!!まさかお宅、夜兎族知らない!?お子さん夜兎族だよね!?!?俺ってそんなにおかしなこと言ってる??なんでこんな哀れまれてんの???」

「俺知らなーい。父上、この人本当に何しに来たの?」

「俺もさっぱり分からないよ……穂希はあんなまるで毛根がダメな男、略してマダオになんてなっちゃダメだよ」

「俺の毛根は今日も元気いっぱい生きてますが?????……って、俺ァはこんなことしに来たんじゃねェんだよ」

 

 

 ハッとしたように、現実を思い出したのか男の表情は重苦しいものに変わった。そして、旋毛が見えるほどに頭を下げて悲痛な叫びをあげた。

 

 

 

「──どうか、俺の嫁を助けてくれないか…!」

 

 

 

 俺のところに来る患者は大きく三つに分けられる。

 一つは金も権力も無駄に有り余ってる天人、一つは縋る場所がここしかない貧乏人。

 

 

「……穂希、門を閉めてきてくれ」

「はい、父上」

 

「お話、詳しくお聞かせください」

 

 

 ──もう一つは誰かを救ってほしくて焦燥している者だ。

 




★緒方 庵(28)
 極貧生活で守銭奴化しただけで、本来は超がつくお人好し。
 医者として安定した収入を得たら、奥底に眠ってたお人好しが目覚めて前世の自分と同じ貧乏人を見捨てられなくなった。サービスサービスゥ!(不本意)
 とはいえお金持ちには容赦しない。けつ毛までむしり取ってやる気概でたいおうする。
 26歳の時に拾った子供 穂希を養子に迎えた、今は弟子として看護師の技術を教えている。
 前世にコンプレックスがあるせいで一度穂希を手放しかけたけど、全力で拒否られたので2人で手を取りながら「家族」を模索している。
 素で銀魂世界に適応出来てるボケ野郎。

☆緒方 穂希(8)
 何故か穂希の家の前で倒れてた謎の子供。
 転生特典マシマシの薬を使っても、右瞼に傷跡が残ってしまった。視力は問題ないらしい。
 庵以外には割と辛辣で暴言も息をするように出る、的確に相手の急所を射抜くことができて相手は確実に呻く。
 夜兎族疑惑が浮上しているが、本人曰く「俺知らなーい」とのこと。

★謎の包帯男
 嫁を助けて欲しくて来たらしい。
 誰なんだろうね?(白々しい)


☆夕又
 日夜問わず夕暮れの星。
 かなりの辺境にあるド田舎の惑星らしい。技術の発展はド田舎の名に反比例して極めて高い。

★緒方製薬
 庵が経営する製薬会社。
 やんわりと転生特典を使って作られた薬を卸しているのでよく効くと評判。会社の軌道は悪くないらしい。
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