転生特典は“なんか良い感じの薬が作れる”ことです   作:綾瀬~><

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第一章・第二幕「独学で叩き上げられた矜恃を舐めんな」
同じ船に乗っかったならソレはもう仲間


 

 昨日の内に夕又を発つ準備を済ませた俺たちは、今じーさんの家にいる。別れを告げる為ってのもあるけど、それだけじゃない。

 

 どうやら神晃殿は色んな宇宙船を乗り継いで夕又にやって来たらしく、これといった交通手段を持っていない。

 それならば、ちょうどいいと思って連れてきたのがじーさんちだ。

 

 俺は穂希を拾う前まで頻繁に宇宙を放浪していた。そして乗り継ぎじゃあ行けないような場所まで足を向けれるよう、マイ宇宙船を持っているのである。これが持ってると中々便利なのよ、運賃もかからないしね。

 家に置いといてもいいんだけど、コンパクトサイズとはいえ宇宙船が置けるほど庭は広くないし、何より診療所から近い場所だから偶に来るお金と権力が有り余ってる天人に見られたら面倒だからね。大した病状でもないくせに星まで来てくれなんて言われたらたまったもんじゃないし。

 

 

 とにかく、俺と神晃殿はこの宇宙船で夕又から洛陽まで向かう。見た目はちょいとボロいけど速さは保証する、マジでひとっ飛びだからね。

 早速乗り込もうとすると、じーさんに呼び止められる。

 

 

「庵」

「なに?じーさん、まさか直前になって寂しくなっちゃったの?」

「寝言は寝て言え阿呆。ペンダント、ちゃんと着けてんだろうな?」

「あーはいはい、着けてるよ、ホラ」

「ならいい、言っとるがペンダントは──」

「──肌身離さず、寝る間も着けとけ…でしょ?耳にタコができそうなくらい聞いてるから覚えてるよ」

 

 

 この人、いっつも俺がペンダント着けてるのか気にするよなぁ。

 数年ほど前に誕生日プレゼントで貰ったペンダントは、赤と青が入り交じった水晶玉が綺麗な代物だ。高そうだし何より俺を想ってくれた物、嬉しいし肌身離さず着けているけどさ……いちいち、お前は俺のメンヘラ彼女か?ってくらい聞かれたら鬱陶しいと思うのもしょうがなくない??

 

 分かってるよと生返事をしながら、シッシッと手を払う。

 

 すると、とんっという軽い衝撃が腰に来る。視線を下に落とせば、見慣れた赤錆色が交じった亜麻の頭が見える。

 普通の子供よりしっかりしてるとはいえ、穂希はまだ8歳だ。やっぱり寂しいのかな、冷静に考えたら幼い子供を遺して出張に行くって仕方がないとはいえ酷い親だよな…。

 ヨシヨシと頭を優しく撫でれば、ゆっくりと顔を上げる。

 

 

「父上、行ってらっしゃい。俺、ちゃんとやるからね!」

「頼りにしてるよ、一番弟子さん」

 

 

 キュッと顔を引き締めて拳と拳を突き合わせる。

 

 ニッコリと微笑んで「じゃ、行ってきマース」と片手を上げて宇宙船に乗り込んだ。後から続いて来た神晃殿が危うげに乗り込もうとするので、手を差し出せばすっごいバツの悪そうな顔をされた。なんで…。

 

 

 宇宙船の中は一人用にしては広い内装になっているし、嵩張りそうなデカさをしてる神晃殿も悠々と過ごせると思う。俺がチビってワケじゃないからね??

 とりあえず操縦室に向かって目的地を設定しなければ。じーさんは機械系に詳しくて、この宇宙船を作ったのもじーさんだし、大体世間に出てる機械類もじーさんが作ってる。あの人何ができないんだろうね。ほんと。

 

 

「目的地は洛陽だから…」ピピッピッ

 

 

 液晶画面をタッチすれば軽快な電子音が鳴り響く。

 この音を聞くと、これから宇宙に行くんだな〜〜〜!ってな感じでテンションが上がる。やっぱり俺も男だから、こうSFっぽい感じには弱いんだよね。

 俺の後ろから画面を覗き込んでいる神晃殿も心做しかそわついてる気がする。このカッコよさが分かる人に悪い人はいない。いや嘘、結構いるかも。

 

 

《──設定(セットアップ) 自動運航(オートマチック)超速設定(バーストモード)定期休憩(レストタイム)進路上の危険無し(オールクリア) 完了(コンプリート)

《 目的地:夕又→洛陽 》

 

《それでは快適な宇宙(そら)の旅をお楽しみください》

 

 

 液晶画面から鳴り響く中性的な機械音声に神晃殿が肩を跳ねさせる。ちょっと噴き出したら背中を強めに叩かれた。ごめんて。

 いや、気持ちは分かるよ。俺も初めて聞いた時は思いっきりビビったし、大興奮してじーさんに殴られたもん。

 

 

「しゃ、喋った!?!?」

「やっぱり初めて見たら驚きますよね〜」

「オートマティック……もしかして、この宇宙船は自動運航なのか?見たところ椅子もないし」

「ええ、そうですね。俺も宇宙船を動かすことを習ったワケではないので、じーさんに無理を言って自動運航機能をつけてもらいました」

「はぁ〜…なるほど、そりゃ凄いな。バーストモードとか言ってたが、普通の宇宙船より早いのか?」

「良いところに目をつけましたね」

 

 

 いやぁ、ホントに良い着眼点だよ!

 

 

「なんと、この宇宙船──……」

「ゴクリ……」

 

 

 少し勿体ぶりながら、俺はニヤリと笑う。

 手をバーンと広げて操縦室から見える宇宙の壮大な景色を背景にして神晃殿を見る。聞いて驚け、見て笑え。あのじーさんの発明は凄いんだぞ。

 

 

「──通常であれば一年半かかる洛陽までの道のりを大幅カット、半年で辿り着くことが出来ちゃうんです!」

「通販のテンションで言っていい凄さじゃないな!?エ、本当に半年で行けるの?このコンパクトサイズな宇宙船が??マジで???」

「大マジです。なんか特別製のエネルギーブースターがうんたらかんたらって説明されたような気がしますが、とりあえず凄いぱぅわーでスピードアップしてるらしいです」

「絶対重要な説明だろソレ」

「大丈夫ですよ、何年もこの宇宙船を使ってますがなーんにも問題ないので」

「それはそれで心配なんだけど」

「甘いですね、神晃殿…昇天ペガサス盛りパフェよりも甘いですよ…──この宇宙船『スーパー飛べるんです』を舐めてもらっちゃあ困ります」

「名前ダサくねェか????あと昇天ペガサス盛りパフェってなんだよ!!」

 

 

 ダサいとはなんだ。良いネーミングセンスの間違いだろ。

 

 それと、昇天ペガサス盛りパフェは昇天ペガサス盛りパフェだよ。それ以上でもそれ以下でもない、甘さの変わらないただ一つの昇天ペガサス盛りパフェ。

 俺の答えに納得がいってないのか「おーい、聞こえてる?無視は酷くね?」とツンツンされて流石に鬱陶しくて拳骨で黙らせた。15分もよく飽きずにやるよ。

 

 

 これからこの宇宙船は洛陽までの半年間自動運航をする。

 

 食糧補給の為、一ヶ月周期で最寄りの星に止まる以外はこの男と旅をする。降り立った星で一緒に旅をした人はいても、宇宙船という密閉空間で旅をするのは初めてだ。

 一抹の不安は残るけど、神晃殿も悪い人じゃないし案外楽しい旅路になるかもしれない。

 

 

「さて、まだまだ先は長いことですし……ス〇ブラでもしますか?」

「この宇宙船、ス〇ブラまであんのか…」

「移動途中は暇ですから娯楽はいっぱい積んであるんですよ。それより、やらないんです?」

「やる」

「ですよね」

 

 

 まあ色々と考えたいこともあるけど、交友を深めるならス〇ブラでしょ。

 




★緒方 庵(28)
 マイ宇宙船を持ってる宇宙旅行()ガチ勢。
 コンパクトサイズとか言ってるけど、そこら辺の宇宙船よりは良い代物だし一人用なのに二人で乗船出来るくらいには広々としてる。
 誕生日プレゼントに貰ったペンダントは口には出さないけど凄く嬉しいし、言われずとも寝る時には絶対外さないくらいお気に入り。でもいちいち聞かれたら流石にウザイ。
 ネーミングセンスはない、むしろ皆無。穂希の名付けは珍しくネーミングセンスが輝いた瞬間だった。

☆神晃
 宇宙船に乗り慣れていないのではなくボロすぎて怖かっただけ。
 今まで乗ってきた宇宙船とは全く違う設備で少年心が疼く。シンプルに超スピードは凄いと思うけど、宇宙船のネーミングセンスはどうにかならなかったのか気になる。
 スマ〇ラはやるけど、昇天ペガサス盛りパフェってなんなの??

★緒方 穂希(8)
 庵の代わりに診療所を舵取りしてる。
 子供でも夕又じゃ年齢は関係ない、誰しもがある意味平等なのだ。彼もまた夕又の子、庵の右腕という称号は決して伊達じゃない。

☆名嶋 彰(?)
 機械技術士。世の中に出てる大半の機械類も大体作ってるらしい。
 何が出来て、何が作れないのか分からない。


★宇宙船『スーパー飛べるんです』
 庵の愛船。八年くらい乗っている為、見た目はボロい。
 設備はじーさんが「今までで最高傑作」と言うだけあって、かなりのオーバーテクノロジーが採用されたとんでもない宇宙船。

☆昇天ペガサス盛りパフェ
 それ以上でもそれ以下でもない。
 甘さの変わらないただ一つの昇天ペガサス盛りパフェである。
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