転生特典は“なんか良い感じの薬が作れる”ことです   作:綾瀬~><

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運航日記“レストタイム”

 

 最初に止まったのは水源の多い星だった。

 

 漁業が盛んらしく、現地の人の許可を経て俺たちは釣竿片手に海へと向かった。

 ここに生息する魚たちは食欲旺盛で針を下ろせばすぐに引っかかると太鼓判を押された。地元民の言うことに間違いはない、実際その通り針を下ろしてすぐ強い力で引っ張られた。

 

 

「見てください、神晃殿!大物ですよ!!」

「うおおおおお!!何やってんだ、ソイツはえいりあんだぞ馬鹿野郎ォォォォォ!!!」

 

 

 デッカい魚を釣り上げた。

 と思ったらえいりあんだったらしく、神晃殿が場外ホームランでえいりあんを星にした。お見事。

 あの後しっかり食べられる魚(見た目はちょっとキモイ)を釣って刺身と塩焼きにして食べた、そしたら存外美味しかったのか神晃殿がいい食べっぷりを披露してくれた。

 穂希も美味しいものへの食いつきが半端ないから、よく食べてるところを見るとニッコリしてしまう。

 

 

 ──洛陽まであと六ヶ月。

 

 

 次に止まったのは少し小さな至って普通の星だった。

 

 果物がよく採れるらしく、市場には色んな果物が叩き売りされていた。

 甘い!瑞々しい!採れたて!の売り文句に恥じぬ味で、神晃殿が市場のカモになってた。俺が渡した資金を使い果たす寸前まで買っていたから、今度からお金の管理は俺がしようと思う。

 

 

「お婆さん大丈夫ですか?あまり無理はなさらず……大量の林檎は無駄に嵩張るその男に持たせてください。ささ、俺の背中に乗ってください。家まで送っていきますよ」

「エ、いま無駄に嵩張る男って言った??緒方先生、俺のことそんな風に思ってたの???」

「ありがとうねぇ、別の星から来たのに二人とも優しいのねぇ」

「あ、拒否権ない感じ?別にいいけどさ」

 

 

 そこで市場で出会った大量の林檎を運んで腰をやったお婆さんを家まで送った。

 お礼よ、とほけほけ笑いながら大量の林檎を渡された。お婆さんは痛えと言いながら湿布が貼られた腰を摩って家に入った。もしかして押し付けられただけ?と二人して微妙な気持ちになって手元の林檎を見下ろしてしまった。

 ちなみに林檎は美味しかった。林檎タルトは正義。アップルパイは邪道。

 

 

 ──洛陽まであと五ヶ月。

 

 

 その次に止まったのは少し荒廃した星だった。

 

 何やら孤児が多いらしく、少し歩けば孤児院が沢山あった。

 内戦が頻繁に勃発しているようで、たまに流れ弾が飛んできたりチンピラに絡まれたりするけど神晃殿がバッタバッタと薙ぎ倒していくせいで何の問題も無かった。その様子を見ていたのか、えらくカッチリとした服装の人に呼び止められた。

 

 

「か、神晃殿…俺が診察している間、感染してない子供たちと遊んでたんですね……良かったじゃないですか、仲良くなれて……ふ、ふふふっ」

「どっからどう見ても子供たち“と”遊んでるんじゃなくて、子供たち“に”遊ばれてるだろ!!庵先生、アンタの目は節穴か!?!?我慢してるつもりだろうけど、思いっきり肩震えてるし笑い堪えきれてねェぞ!!!

──ア、やめて髪引っ張らないで!ブチって言った!?ねぇ今ブチって言わなかった!?!?」

「ヒィ!もうダメっ!!お、面白すぎるっ!!!アーッハハハハハハ!!!」

 

 

 神晃殿が子供に遊ばれてた。

 俺たちを呼び止めた人物は孤児院の院長で、流行病によりパンデミック状態となった孤児院の子供たちを診て欲しいと頼まれた。好き好んで白衣を着るヤツなんて医者以外いないとアタリをつけてのことだったらしい。あってるけど複雑だな…。

 そしたら、診察が終わって神晃殿の所に向かえば無事だった子供たちに人間ジャングルジムにされてた。さすがに笑った。

 しかも髪の毛がブチってちぎられててもうダメだった。あの後しっかりぶん殴られた。酷くない?

 

 

 ──洛陽まであと四ヶ月。

 

 

 また次に止まったのは緑豊かな星だった。

 

 辺りを散策しても痕跡があるばかりで人はいない。

 食糧になりそうな果物や山菜は豊富に採れたから罪悪感はあるが無断で持っていくことにした。そして突然、背後からグルルル…という唸り声が聞こえた。なんか嫌な予感がして、二人でブリキ人形のように振り返ってみれば恐竜がいた。

 

 

「庵先生ェ!!アンタよくこの状況下で笑えるな!?!?」

「アハハハ!たまにはこういうのも悪くないとは思いませんか!ハッピーな人生を送るためには多少の刺激的な体験が必要なんですよ、神晃殿!!」

「今まさに人生がデッドエンドを迎えそうになってんの!!ハッピー以前の問題に直面してんの!!!うぉっ!アイツ、ビームまで撃てるのかよ!!」

「ビーム!?凄いですねェ、神晃殿!!ビームといえば男のロマンじゃないですか!!ああっ、もう少し小さければ捕まえてペットにでもしたかったです!」

「呑気だなオイ!!!」

 

 

 どうやらこの星はえいりあんの群生地だったらしい。

 えいりあんたちの被害により原住民たちは皆出ていくか殺されたかの末路を辿ったようだ。そこに事情も知らずノコノコとやって来た俺たちはえいりあんの縄張りを踏み荒らしてしまったワケだ。

 俺としてはジュ〇シックワールドみたいで楽しかったけど、全てのえいりあんを葬る為に奔走してた神晃殿にはどつかれてしまった。解せぬ。

 

 

 ──洛陽まであと三ヶ月。

 

 

 更に次に止まったのは自然と共存する星だった。

 

 可愛くて無害な小動物が多く生息しているもふもふ天国。

 人馴れしているのか足元に群がる勢いでじゃれてくる、抱き上げてみればくてんと身体を預けてくる姿はプライスレス。あっという間に可愛い包囲網が完成してしまった。

 

 

「は、はわっ……もふもふ、ちいさきいのち…かわいい……」

「……前回との温度差で死にそうなんだが?」

「?良かったじゃないですか、今度はえいりあん群生地じゃなくてふれあい動物園系の星で」

「なんでだろ、素直に喜べねェ自分がいる」

 

 

 神晃殿は微妙な表情をしていたから動物が苦手なのかもしれない。

 良い人は動物に懐かれるというし、何とも言えない表情をしている神晃殿にも小動物が群がっている。あ、髪の毛食べられてる。

 もちもちと無心で撫でてたら思った以上に懐かれてしまったのか、宇宙船に戻る時にどうしても離れない子がいた。困っていたら管理人のような人が「よければ引き取ってくれませんか?」と誓約書とともに言われた。癒しがほしかったので即サインした。

 ネリタンタンみたいな小動物改めて『チコ』が仲間入りした。

 

 

 ──洛陽まであと二ヶ月。

 

 

 また更に次に止まったのは真夏のような星だった。

 

 太陽が燦々としていて辺りには薄着の老若男女がパーリーしていた。

 満面の笑みを浮かべた小麦色の肌をした現地人たちが、この星では寧ろ厚着な格好をした汗ダラダラな天人たちに絡んでる光景が目に入った。何ここ、パリピの星じゃん。

 

 

「あづ〜〜〜〜〜!!!!!オイオイ、太陽テカリすぎだろ!!もっと夜兎族に優しくしろよ!!冗談抜きに溶けるだろうが!!」

「さながら真夏のサマービーチですね、事前情報がなければ熱中症になる方も少なくなさそうです……神晃殿、冷感タオルと日焼け止めいります?」

「ください……」

 

 

 あまりの暑さに神晃殿が溶けてた。

 もちろん俺も暑さでやられてたけど、その倍くらい汗ダラダラのビッショビショ。流石に熱中症の危険があるので、チコと一緒に待っててもらおうとしたが間髪入れずに断られた。何故に…。

 何人か熱中症患者を診てから宇宙船に戻ったら、エアコンが効いてて生き返ったような心地になった。もう二度と行かない。

 

 

 ──洛陽まであと一ヶ月。

 

 

 コトリとマグカップを置く。

 

 ドタバタとした半年間の思い出を話していたら、いつの間にかお互いの子供の話へと変わっていた。

 そういえば江華さんの話を聞いたことはあってもお子さんの話は聞いたことがなかった。一人の親としても興味深くてつい前のめりになって聞いてしまった。

 

 

「へぇ、8歳と4歳のお子さんなんて可愛い盛りじゃないですか!きっと元気いっぱいで可愛らしいんでしょうね、子供は元気が一番ですから

それにしても一番上の子が8歳なんですね。うちの子も8歳なんで、もし会えたら仲良くなれるかもしれませんね」

「あの坊主、8歳だったのか……しっかりしてっから、もっと上かと思ってた」

 

 

 あの歳にしては穂希は大きくてしっかりしてるから、よく10歳くらいだと間違われることがある。最初はガリガリだったあの子が大きくてしっかりした子供と見間違えられるのは何だか安心するものがある。

 ニコニコしながら話を聞いていれば、不意に神晃殿の雰囲気がガラリと変わった気がした。

 

 

「……それにしても、庵先生。アンタ、いつまで知らないふりを続けるつもりだ?坊主と一緒にいて何も気づかないほどアンタは馬鹿じゃねェだろ、噂のひとつやふたつくらい耳に入ってんじゃねェのか?」

「心配には及びませんよ、神晃殿。全て承知の上です、あの子を拾ったその時から覚悟してきたこと。心配される由はありません」

「そう楽観視できる問題じゃねェんだぞ!ただでさえ同族同士でも共食いが耐えないんだ、別の種族が育てるなんて到底──」

 

 

 チョン、と人差し指を神晃殿の口元に当てる。

 それ以上は口に出すな、と言うように微笑んで見せた。

 

 

「──それでも、ですよ。あの子が自分から話してくれるまで、俺は知らないふりをします

だって、それが親というものではありませんか?」

 

 

 まあ買い被ってくれてるところ悪いけど、本当に知らないんですけど。

 突然シリアスぶち込まれたから、そっちがその気なら俺だって出来ますが??という謎の対抗心でそれっぽいことを言っただけで、現状は何も把握できてないんだけどね。

 なんなんですか?親である俺が知らないあの子の話を知ってるんですか??は???ジェラったんだけど。

 

 ──洛陽まであと…。

 




……日記はここで終わっている。
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