転生特典は“なんか良い感じの薬が作れる”ことです   作:綾瀬~><

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荒療治でも成功させたらそれは普通の治療

 

 俺はいきなり容態が悪化してもいいように夜以外は家に定住することになった。

 一応理由としては寝る時くらい家族水入らずにしてあげたいのと、薬を作るなら設備が整っている宇宙船が良いから。いくら医者とはいえ四六時中一緒にいたら鬱陶しいでしょ。

 

 それこそ、今でこそ子供二人……兄の神威くんと妹の神楽ちゃんとは打ち解けられてるけど最初はかなり警戒されていた。

 

 ああ、いや神楽ちゃんはご飯作ってたらいつの間にかひっつき虫になってたな。警戒心で言えば神威くんが断トツだった、それこそ拾ったばかりの穂希を思い出させる視線の鋭さだった。

 物陰から何か変なことをしてないかって凄い見られてたし、家に知らない人がズカズカ入ってきてかなり警戒されていた。三日くらい話しかけられず遠巻きに見られていたんだから、神威くんの警戒心の強さが分かるだろう。

 

 しかし、四日目になっていきなり神威くんは俺の前に現れた。

 

 

「──本当に母さんの病気治せるの?」

 

 

 ア、これ返答ミスったら終わるな。

 直感的にそう思った、がこういう試し行動のような問いかけには慣れている。穂希も似たようなことを何度も何度もやってきた。

 

 俺はその問いかけに素直に、そして真摯に応えた。

 

 

「──俺が医者になった時、五つの誓いを立てました

その内の一つが『患者に対して決して嘘をつかない』ということです。俺は優しい嘘も、残酷な真実も患者に対して余すことなく伝えてきました

それこそが最も誠実な医者としての在り方だと俺は思うからです」

「なので、心配せずともこの緒方庵が江華さんの病を治してみせます。まだ不安なら……そうですね、指切りげんまんでもしましょうか?」

 

 

 スっと小指を立てて微笑んで見せれば、何かに合点が行ったのか神威くんは一つ頷いて同じように小指を立てた。

 

 

「約束ダヨ、絶対破んないでね」

「ええ、もちろんです」

 

 

 そのやり取りの後からは今までの四日間は何だったんだ、と思ってしまうくらいフレンドリーに話しかけてくるようになった。

 あまりの変貌っぷりに神晃殿が「お前ら何があったの?何があってそんな仲良くなってるの??」と思わず言ってしまうくらいには警戒心の欠片もなくなっていた。ちなみにそれには「男同士の秘密です、いくら神晃殿でも教えられませんね」と言って誤魔化しておいた。

 俺も男……ってうるさかったけど黙らせた(拳骨を落とした)ので無問題。

 

 多分、俺がヤブ医者じゃないか警戒していたんだろうな。

 

 あれはアルタナへの理解が深くなければ、大抵の医者が江華さんは不治の病と断じて匙を投げる。俺が来る前までは頻繁にそういうことがあって、酷い時はヤブ医者が金を取るだけとって逃げたってこともありそう。

 これは絶対に治して、俺は他の奴らと違うってことを知らしめないと。

 

 そんなふうに俺が密かに決意を固めながらご飯を作っていると、そんなことを知ってか知らずか、不意に神威くんからビシッと箸を向けられ真剣な表情で聞いてくる。

 神威くん、それ刺し箸だから辞めようね…。

 

 

「ねぇ、なんで庵センセーはずっと敬語なの?」

「ああ、患者に関わる時は敬語でいるのが俺なりの流儀なんですよ。オフの時でよければ敬語はいくらでも外しますが?」

「じゃあ外してヨ、今」

「え?今ですか??」

「んぐ!当然ヨ、今はご飯中アル!仕事じゃないアルよ、いおりんセンセー!」

「な、なにその理論……」

「ア、敬語取れた。庵センセー、そっちの方がいいよ」

「ウンウン、ずっと敬語は気持ち悪いアル」

「その調子でくんも外してよ」

「時代は敬称略アルよ」

「いいけど、神楽はどこでそんな言葉知ったの???」

 

 

 まさかの気持ち悪いまで言っちゃう??

 

 俺もいい加減ずっと敬語なのキツいと思ってたけど、気持ち悪いまで言われたら流石に傷つくんだけど。今まで敬語キャラが一番温和な雰囲気を醸し出していて、医者っぽいから徹底してたけど気持ち悪かったのか……。

 ううん、ちょっとショックだけど、これからは診療の時は敬語だけにしてオフはタメ口で行こう。

 

 

「お、俺の半年間の葛藤は一体っ……!」

「そういう腹の探り合いみたいなことは慣れていないんじゃない、だからこそ子供みたいに純粋で直球な言葉の方が効くのかもよ」

「子供に負けたってワケか……」

 

 

 神晃殿は何やってるの?

 何故か床に手をついてワナワナ震えている神晃殿に首を傾げる。ばっちいからやめた方がいいよ、それ。

 

 

 ──そんなこんなで一週間が経過した。

 

 

 愉快な家族の日常の傍らで俺はしっかりと薬を作っていた。マジで重労働だった。ん?薬の作り方?それはちょっと……教えたら飲みたくないって言われそうだからナイショ。

 

 今回作ったのは『魂を繋げる薬』を二つ、それから『アルタナとの繋がりを切る薬』と『仮死状態にする薬』を一つ、そして万が一の場合に備えて『アルタナと繋がりを作る薬』を一つ用意した。

 ぶっちゃけ、これからやることは錬金術に片足を突っ込んでいるようなものだけど、俺は断固として薬による原因療法だと言う。俺の超次元的な魔法は信じることが力になるんだ。プリキュアや戦隊モノでもそうでしょ、応援されたり信じてもらったら力が出る。それと同じだよ。

 ……これ、全国の児童から非難されそうだな。

 

 内心苦笑しながら、神晃殿と江華さんの前に五つの瓶を置いて説明をする。ちなみに飲みやすさ重視で液体薬にした、味はちょっと度し難いケドね。

 

 

「コレが治療の要となる『魂を繋げる薬』です、これは対になる薬を飲んだ者たちの魂の深い部分を繋げます

そしてコチラが江華さんが飲む『アルタナとの繋がりを切る薬』と『仮死状態にする薬』です。一時的にとはいえ生命線を切るのですから万が一があってはいけません、なので仮死状態にして心肺蘇生の余地を残して置かなければなりません。もしも失敗しても、再び体内に残ったアルタナと繋げ直せるように『アルタナと繋がりを作る薬』で蘇生は可能です」

 

 

 そして、一度言葉を区切り人差し指を立てる。

 

 

「ここからが重要ですので、よく聞いてくださいね

初めに神晃殿と江華さんが『魂を繋げる薬』を飲みます。江華さんは追加で『仮死状態になる薬』を先に飲み、その後に『アルタナとの繋がりを切る薬』を飲んでください

 

何事もなく進んだら……

──神晃殿は江華さんに接吻してください」

 

「は????いやいやいや文脈どこいった??????」

 

 

 まだ説明途中なんだから話を遮らないでくれませんかねェ。

 内心ピキりつつ、キスさせる理由を説明する。急いては事を仕損じるって言うし、丁寧に説明するに越したことはないでしょ。ワガママな神晃殿が受け入れるかは別として。

 

 

「『魂を繋げる薬』はあくまで補助ですから、本当に繋げるためにはお互いが触れ合う必要があるんですよ。手を触れ合うだけでも構いませんが、ぶっちゅーってした方が確実性があります

なので、俺のことは気にせず思いっきりKissしちゃってください」

「気にするだろォ!!見られてるのにキス出来るかァ!!!」

「俺はその、あれです、小人だと思ってください」

「俺ァ、眠り姫を起こす王子様ってか!?!?」

「あながち間違いじゃないですね」

「神晃、あまり我儘を言うな……そんなんだからハゲるんだよ」

「短気は損気とも言いますし、だから髪も離れていっちゃうんですね」

「ハゲは関係ねェだろ!?!?」

 

 

 本当に弄りがいあるな、この人。

 揶揄うのはここまでにしておいて、もちろん見るつもりなんて最初からサラサラない。他人のキスシーンなんてドラマや映画でも気まづいのに、よく知ってる人たちがキスしてるところなんて見たくもないしね。

 

 

「まあ、見られたくないのであれば俺は目を閉じて背を向けておきますよ。もしもがあった時のために『アルタナと繋がりを作る薬』は神晃殿に預けておきますね

 

おふたりは、ただお互いのことだけを考えてくださいね」

 

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