騎士王は迷宮都市でひっそり暮らしたいけど、エクスカリバーのビームの撃ち方とかわかりません 作:meiTo
「とりあえず、情報収集と……金だ」
路地裏に戻り、壁に寄りかかりながら現状を整理する。
姿はセイバー。手にはエクスカリバー。
けれど俺は剣道すら授業で数回やった程度のド素人だ。
この聖剣の使い方も、ビームの撃ち方も、「エクスカリバーーー!!」と叫べばいいのかどうかも分からない。
もし叫んで街が吹き飛んだら、即座にお尋ね者になってしまう。
「ていうか、この剣、目立ちすぎだろ……」
黄金に輝く柄と装飾の施された鞘。
こんなの「私から身ぐるみ剥いでください」と宣伝して歩いているようなものだ。
俺は自分の青いマントの端をビリビリと破き(もったいないが背に腹は代えられない)聖剣をぐるぐる巻きにして、ただの棒きれのようにカモフラージュした。
よし、これで少しは安全だ。
目指すはこの街の冒険者を管理しているという『ギルド』。
アニメの記憶が確かならあそこで登録すればダンジョンに入ってモンスターを倒し、お金を稼ぐことができるはずだ。
街の大通りを歩いていると、すれ違う人々の視線が痛いほど突き刺さる。
(うわっ、めっちゃ見られてる……。まあ、金髪碧眼の美少女が鎧着て歩いてたら目立つよな。おっさんの自意識としてはキツい……)
『おい、見ろよあの女……』
『すげえ美人だな。どこのファミリアだ?』
『それに、あの立ち姿……相当な手練れと見たぞ』
周囲のヒソヒソ話が聞こえてくる。
いやいや、手練れって。
俺、つい昨日まではExcelでマクロ組んでただけの社畜ですよ?
立ち姿が綺麗に見えるのはたぶんこの体の元の持ち主(セイバー)の骨格と筋肉のおかげだ。
なんとかギルドの本部に辿り着き、受付の列に並ぶ。
やがて俺の番になり、ハーフエルフの眼鏡をかけた真面目そうな受付嬢(確か…エイナさんだっけ?)が、ニコリと微笑んだ。
「ようこそ、ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「あ、えっと……冒険者の登録、お願いできますか?」
つい、普段の営業スマイルとサラリーマン口調で答えてしまった。
エイナさんは一瞬きょとんとした後、俺の全身(特に白銀の鎧)をまじまじと見つめた。
「あの……失礼ですが、すでにどこかの『ファミリア』に所属されている歴戦の冒険者様に見えるのですが……。新規のご登録で間違いないですか?」
「は、はい。田舎から出てきたばかりのド素人でして……」
ド素人(装備:神造兵装)。
嘘は言っていない。
「そうですか……では、こちらの用紙にお名前とご年齢を。ファミリアにはまだ未所属ですね?」
「あ、はい」
ペンを渡され、俺は手が止まった。
名前? 俺の本名(鈴木一郎とか)を書くべきか? いや、この見た目でスズキ・イチローは無理があるだろ。
「ええと……『アルトリア』……です。年齢は……」
待てよ。セイバーって何歳の設定なんだ?
10代後半くらいに見えるけど、確か中身は結構年いってるとか、成長が止まってるとか、そんな設定をネットの掲示板で見たような……。
悩んだ末、無難な数字を書くことにした。
『名前:アルトリア 年齢:18歳』
中身34歳のおっさんが、18歳の美少女を自称する。
心の中で血の涙を流しながら、俺は用紙を提出した。
「アルトリアさんですね。では、ステータスの確認はまだできませんが初期登録手続きを行います。……それにしても、その背負っている得物かなり大きくて立派ですね?」
エイナさんの視線が、布でぐるぐる巻きにしたエクスカリバーに注がれる。
「あ、いや、これはただの……お守り? みたいなもので。実戦では使いません(というか使えません)」
「はい?お守り……ですか?」
訝しげな顔をされるが、これ以上突っ込まれる前に逃げるしかない。
中身30代のおっさんアルトリアは、迷宮都市オラリオでのなんとか第一歩を踏み出した。
まずは神様を見つけてファミリアに入らなきゃいけないらしいが……果たしてこんなハリボテの騎士王を拾ってくれる物好きな神様なんているのだろうか?