銃を持つ少女たちと死に損ないのブルーアーカイブ   作:蒼雲しろ

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第0編の展開の変化という、小さな変化に1週間ほど付き合わせてしまい申し訳ございませんでした。

これより、第1編の幕を上げます。


第1編 終わらないアビドス
行こう


「これがどうかした?」

 

 先生が、タブレットを右手で持ち上げている。

 

「ああいや、特に。タブレットだとはわからずに。すみません」

 

 そんな俺の言葉に、「大丈夫」と一言返した。

 

 それにしても、どうしてこんなところに。

 俺が知る限り、あれは本来ロストテクノロジーによって作成された物――オーパーツに分類されるはずだ。

 俺の聞いた話が違ったのか、それとも――

 

 まあ、今考えても仕方ないから一旦それは後回しだ。余裕ができた時に詳しく聞こう。

 

「それで、カナメさんとホシノ先輩はどういう関係?」

「私も気になります~☆」

「わ、私も気になります!」

 

 結局この話題に戻って来ることに。

 ……年頃の高校生だから、このくらいの興味はあって当然なのか?

 

「私も気になるな」

「先生まで……?」

 

 ホシノと目を合わせる。

 この二年間、一蓮托生で生活してきたのだ。

 言いたいことなどわかるに決まっている。

 お互いが小さくうなずく。

 

「この人はうちの卒業生でさ~」

「そうそう!ホシノは後輩だったんだよ!」

「たまにこうして顔を見せに来てくれてるんだ」

「俺がいた頃より格段と人数が増えて嬉しいよ……!」

 

 よかった……年齢を言わなくて本当に良かった~。

 自己紹介で何も言わなくてよかった~。

 

 先ほどまで後悔していた自分を褒めてやりたい気分だ。

 危うく、取り返しのつかない事態になる可能性があると思うと、冷や汗がとまらない。

 

「卒業生……?」

「そうだったんですね~」

「ってことは、先輩が一年生のとき?」

 

 銀髪で獣耳がぴこぴこと動く少女、シロコさんがそう聞いてくる。

 確か二年生だった彼女は、ノノミさんと同い年。

 ノノミさんにはどこまでばれているかわからないが、今は隠し通すことしかできない。

 

「そうですね。皆さんが入学してくるときには卒業してしまったのでね」

「ん、なるほど。……?」

 

 一度頷いたが、すぐに首を傾げた。

 声色的にも、確実に呑み込めていない。

 

「ノノミ、見たことあるんだっけ?」

「――はい。私は見たことありますよ」

 

 ……話を合わせてくれた。

 もしかしたら突っ込まれるかと思っていたが、杞憂だったようだ。

 運がいいのか、それとも配慮から来るものなのか。

 

 こちらを見て、何やら微笑んだノノミさん。

 後で、話を聞きに行かなければいけなさそうだ。

 

「じゃあ、私たちとは無関係ではないってことね?」

「まあ、そうだね」

「ふーん?」

「ちょっとセリカちゃん。なんでそんなにツンツンしてるの……」

 

 アヤネさんに宥められたセリカさんは「別に」と、一言告げただけだった。

 彼女も彼女で、何か俺に思うところがあるのだろう。

 

 ホシノの方を見やる。

 何やら胸をなでおろしながら、引き攣った笑みを浮かべている。

 ……君の後輩はキャラが立ってるね、と言ってやりたいところだが、ぐっと飲みこむ。

 

「と言った感じで、何か他に聞きたいことがあれば。答えられる範囲で答えますよ?」

「じゃあ、私からいいかい?」

 

 まさかの先生から。

 先生にとってはどういう存在なのだろうか。

 

「さっきヘルメット団を倒していたけど、あの人数を二人で倒したんだよね?」

「まあ、そうですね」

 

 ホシノと俺……正確には殆どが俺による制圧だった。

 これに関しては、1年前辺りから確立させた最も迅速な対処方法だった。

 俺が戦えるようになってからは、ホシノととも地域の暴力団を何度も沈めて来た。

 

「ヘルメット団に関しては、ここ最近の出来事じゃないんですよ」

「そうそう。昔から何度も悩まされててねー」

「なるほどね。じゃあ、戦闘には慣れてるってことか」

「そこまでではないですけど、やれはしますって感じですね」

「あの人数を二人で制圧できる実力があるのは、大分すごいと思いますけどね……」

 

 アヤネさんからの声が飛んでくる。

 

「まあ、この頃は頻度も増えてきてるから、流石に大変になってきちゃってねー」

「しつこいもんね、あいつら。ほかにも問題は山積みなのに嫌になっちゃう」

 

 各々が渋い顔をしている

 ……補給もなく、この人数で対処するのには中々精神がすり減るだろう。

 

 そんな中、ホシノは声を上げた。

 

「だから、おじさん考えたんだよね」

「え?ホシノが?」

「ホシノ先輩が?」

「え?ええっ?!」

「……いくらなんでも、その反応はちょっと傷ついちゃうな~。カナメさんはあとでお話ね?」

 

 一人だけさっきから当たりが強すぎる。

 俺ら初対面じゃないよね?

 ……仲良くなりすぎたから扱いが雑なのか、後輩の前だから雑なのか分からないな。

 

「それで、ホシノはどういう作戦を?」

「聞いて驚け。返り討ちにした今なら、あいつらは痛手をおってるわけだよ。さらに、何度も何度も襲撃してるから、そろそろ消耗してきてるんじゃないかなーって」

 

 そろそろ俺もうっとおしいとは思っていたので、いいタイミングだと思う。

 ……ホシノとパトロールに行ってる感じ、徐々に勢いが減少しているのも感じていた。

 

 話しに聞き入る皆を見つめ、ホシノは続けた。

 

「このタイミングで仕掛けて、相手の前哨基地を襲撃するのはどうかな?」

「い、今?!」

「そう。今なら先生がいて補給も問題ない。さらにカナメさんまでいるから、戦力も申し分なし」

「ん。それなら早速行こう」

 

 銃を持ち、ドアに向かって歩いていくシロコさん。

 今すぐにでも出ていこうとするシロコさんをアヤネさんが静止する。

 それと同時に先生の方を振り返る。

 

「えっと、先生はどうですか?」

「みんながいいなら大丈夫。倒せるうちに倒した方がいいだろうし。カナメくんは?」

 

 ここで俺に振ってくるのか……。

 特に反論することもないので同意する。

 

「同じくっす。後輩たちのためならいっちょやったりますよ」

 

 俺の言葉に皆それぞれの反応を示している。

 と言っても、頷いたりしているので悪い反応では無さそうだった。

 

「みんなの賛同も得られたことだし、行っちゃおっかなー」

「ん。善は急げ」

「よし、出発しよう」

「しゅっぱーつ!」

 

 

 ――――――――

 

 

 各々準備を済ませて向かった。

 俺に関しては、予備のハンドガンしか持ってなかったため、家に置いてきた愛銃を取りに戻ってから合流した。

 

「カタカタヘルメット団のアジトがあるエリアに入りました!」

「ん。アジトを襲う」

「襲うぞー!」

「襲うぞー!」

「シロコちゃんと先生、カナメさんはノリノリですね……」

「まあまあ、それだけやる気があるって事でいいじゃん」

「襲撃するのにノリノリってのはどうなの……?」

 

 普段から襲ってくるやらに仕返しできる機会なのだから、テンション上がるだろ。

 みんなも上げていこうよ。

 

「半径15km以内に、敵のシグナルを多数感知しました」

「ありがとう、アヤネ」

「はい!おそらく敵もこちらが来たことには気づいているでしょう。ここからは実力行使です!」

 

 その言葉に、場の空気が引き締まる。

 初めてのアビドス全員との戦闘。

 しかし、あまり不安はない。

 何せこのアビドスで耐え凌ぐ力も持ち、加えてあの小鳥遊ホシノの後輩たちなのだ。

 それだけで、信頼が置ける。

 

「よし、みんな。行こう!」

「「「「「「おー!」」」」」」

 

 先生の掛け声に、皆が返す。

 そうして、目の前からやってくるヘルメット団。

 

 双方の銃撃とともに、戦闘の火蓋が落とされた。

 

「アヤネは私のサポートをお願い!」

「はい!」

「ホシノ、カナメくん!二人は前線をお願い!」

「「りょーかい!」」

 

 二人して敵陣営に突っ込んでいく。

 盾を持つホシノは盾を構えながら、銃撃が止んだタイミングを見計らって詰める。

 そのまま白と黒のツートンカラーで色付いたショットガンで一撃。

 敵はヘルメットごと撃ち抜かれ、ゆらゆらと地に沈んでいく。

 相も変わらず軽やかな銃さばきだった。

 

 一方の俺は、手に持っている黒一色の()()()()()を構える。

 

 俺の戦闘スタイルは、単純明快なものだった。

 キヴォトスに来て二年、ホシノとの訓練や様々な体験をして、身につけた力を使って、生徒と同じように戦うことだった。

 

 頭上のヘイローが揺れる。

 

 目の前から飛んでくる銃弾を寸前のところで交わし、敵に突っ込んでいく。

 一瞬の隙に詰め寄ったことで、敵から「は」と短い声が漏れる。

 その声が聞こえたと同時に、至近距離でハンドガンを五発連発する。

 それぞれ、脚、腕、ヘルメットを被る頭に一発ずつ。

 ――この距離なら、外すことはない。

 敵は力が抜けたように後ろに倒れた。

 

「カナメさんナイス〜」

「俺のことはいいから行ける所まで詰めてきなよ」

「うへ〜厳し!私、か弱い女の子だよ〜?」

「はっ」

 

 何を言いとりますかな、か弱い女の子は銃を使わんって。

 

 

 ――――――――

 

 

 私たちは、その光景に目を奪われていた。

 

 余りに無駄のない詰め方に、制圧スピード。

 着実に一人、また一人と地に沈んでいくその眺めは、正しく異様に感じた。

 

「先生!私たちにも指示を!」

 

 ノノミの声で我に帰った。

 

 ……あまりにも、慣れている。

 銃の扱いに、ではなく戦闘に、だ。

 キヴォトスだから、そう考えれば何一つおかしな所はない。

 

「ノノミは右から弾幕を!セリカは左から遮蔽裏の敵を狙って!」

「はーい☆」

「わかった!」

 

 返事と同時に、二人はすぐに駆け出していく。

 

「シロコは、中央から二人に混じって突破の手伝いを!」

「ん。……もう終わりそうだけど」

 

 そんな呟きとともに、銀色が流れる。

 

 私の指揮が止まっていたのも、たかが数秒。

 その隙に、敵のほとんどを殲滅仕切っている。

 残っているのは、遮蔽に隠れる二、三人のみ。

 二十人強の人数を、先程同様二人で。

 

 と言っても、ここから見ている限り、殆どがあの青年――カナメくんの手によって無力化されている。

 ホシノは盾によって一度敵の攻撃を防いでから、近距離でショットガンを撃っている。

 しかしカナメくんは一度として止まることなく、弾丸を避けながら、そのスピードを持ってして接近し、確実に当たる距離で仕留めている。

 

 バイタル、異常なし。

 両者、被弾なし。

 

 圧倒的な戦闘スキル。

 

「カタカタヘルメット団の撤退を確認!」

「並びに、敵のアジト、補給所、弾薬庫の破壊を確認しました!」

 

 ヘルメット団との戦闘は、またしても二人の活躍により猛スピードで終了した。

 

 

 ――――――――

 

 

「うへ〜。疲れたよ……おじさんにはハードな戦闘だったみたいだ〜」

「何言ってるのよホシノ先輩!めちゃめちゃ余裕そうに戦ってたじゃない!なんなら一発も受けてないでしょ!」

「ん。完璧な戦闘だった。カナメも」

「ほんと〜?照れるなぁ〜!」

 

 シロコさんは俺の方を向いて、親指を立てた。

 純粋な褒め言葉をもらい、嬉しい。

 この二年の頑張りが無駄じゃなかったと思える機会はそうそうなかったので、こういう事を言ってくれる子がアビドスにいることにも嬉しさを覚える。

 

「みんな、お疲れ様」

「先生もお疲れ様です〜☆」

「お疲れ様です」

「ん。お疲れ様」

「まあ、こんなもんよ!」

 

 先生からの労いの言葉を受け、それぞれ返事をしていた。

 

 数段表情に余裕の色が戻ったアビドスの皆。

 勝利の余韻に浸り、これでヘルメット団による脅威が減ったことから、気分が上がっているようだ。

 

 ノノミさんがこちらに近づいてきた。

 ……先程のことだろうか。

 そんな考えは見事命中し、質問された。

 

「先程の嘘は、後でお話しましょうね☆」

「……わかりました」

 

 胃が痛い。

 後回しにしすぎたことが今日だけで多い気がする。

 

 これで勘弁して欲しい半面、まだ終わらないのも事実。

 入れ替わりでシロコさんがこちらに向かってきた。

 

「カナメ、その銃だけど……」

「これ?がどうかしました?」

「……敬語はいらない。それ、学校で持ってたやつと何が違うの?」

「敬語に関しては……まあ、慣れたら外しますよ。それより――」

「うへ……」

 

 ……まさか、そんなことを言われるとは。

 ため息が漏れてしまった。

 その反応に、シロコさんは不安そうにこちらを視線を送ってくる。

 

 説明せねばならない。

 俺の銃について。

 

「シロコさん」

「え、えっと……何か気に触ってたら、ごめん」

 

「見てよ、この銃。まず、塗装が違うでしょ?」

 

「え?」

 

 シロコさんと俺の様子を途中から眺めていた皆とシロコさんが固まった。

 ホシノは頭を抑え、ため息を着いている。

 ……なんだよ。言いたいことがあるなら言えよ。

 

「ホシノ?なにかある?」

「……いいえ〜?」

 

 まあ、いい。

 今はシロコさんに説明しなければならないのだ。

 

「塗装が違うことはわかった?」

「……ん、ん」

「さっき持ってたのは、通常のなんの変哲もないモデル。今使ってるのが、外見だけ同じ形をしていて、塗装がマットブラックになってるの」

「敬語……というか、どっちも黒って――」

「違う!」

 

 思わず声を張り上げてしまった。

 ただの黒じゃない、マットブラックだ。

 少し仰け反ったシロコさんに謝罪をし、咳払いをしてから続きを話す。

 

「何より、このハンドガンはそんじょそこらのものとは違うわけ。まず、フルオートとセミオートの切り替えができる上に、弾速も変化させられる。電磁誘導によって簡易レールガンみたいな作りになってるわけだよ。そんでもって――」

「わかった、カナメありが――」

 

「爆発機能がある!」

 

「「「「「なんで?!」」」」」

「おじさんもそう思うよ……」

 

 何に驚いているのだろうか。

 

 もしかして……

 なんでこんなに機能が!ってことか。

 そういうことなら単純明快。

 ただ、最高の技術者と出会っただけだ。

 彼女がいなければ、今頃俺は悲惨な結末を迎えていたかもしれないと思う程に、彼女には感謝してもしきれない恩があるのだ。

 

 一応……もし、自爆機能についての疑問ならば、一応答えておかねばならない。

 

「もしかして、爆発機能があることについて不思議思ってる?」

「当たり前でしょ?!なんで自分の持ち物にそんなのつけてるの?!」

「まさか、思ったよりキャラが濃かったなんて……」

「ノノミ先輩と同じくです……」

「ん、同じく」

「やっぱりみんなもそう思うよね〜……。おじさん今でも疑問に思ってるもん」

 

 皆が頭を抱え、項垂れる中。

 

「え?みんなどうしてそんな反応するんだい?」

 

 ただ一人、首を傾げる者がいた。

 この場において最も歳を重ね、俺との共通点が多い彼。

 

 彼だけは、異なる反応を示した。

 

「先生?」

「まさか、なにか理由がわかるの?」

「さすが先生」

 

 アビドス組は何やら輝いた眼を先生に向けているが、先生の視線は俺に固定されている。

 

「簡単なことだよ!ね、カナメくん!」

「……やっぱり先生ならわかってくれるか……!」

 

 ガッチリと握手を交わす。

 この人は、悪い人ではない。

 そんな確信を得られただけでも、今日の功績と言えよう。

 

 そうして、我らが求る願いを声を揃えて叫ぶのだった。

 

「「ロマンだよ!!」」

 




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