銃を持つ少女たちと死に損ないのブルーアーカイブ   作:蒼雲しろ

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投稿頻度がおちるんじゃぁ……
勘弁してネ……
文字数も増えましたヨ……


一人で

 私たちは物陰に身を潜めた。

 

 郊外を更に進んだ、砂漠寄りに存在していた住宅街。

 そこでヘルメット団を待ち伏せていた。

 

 どうやら、先回りできたようだった。

 

 セリカの情報がわかった後、学校を飛び出した生徒たちについて行こうとするも。

 生徒たちの走力には追いつけるはずもなく、途中からしっかりとシロコに負ぶってもらった。

 なんと情けないことか。

 

 一人で悲しさを噛み締めている時、小さな声が聞こえる。

 

「トラックが来ます」

 

 アヤネの声に、空気が締まる。

 遠くを見やれば、ぼんやりと明かりが広がっている。

 

「数は?」

「一台です。――それ以外は今のところ確認できません」

 

 護送もなしで走っているとは、随分と不用心な誘拐犯だ。

 それか、問題なく運べる手立てがあるのか。

 

 だとしても、私たちはセリカを救出するために戦いに挑むしかない。

 

「皆、準備はいい?」

「はい!」

「勿論です!」

「ん。任せて」

 

 各々がやる気に満ちた表情を見せてくれる。

 

 大丈夫、問題はない。

 

「ノノミは車の正面へ。弾幕を張ってトラックを止めてほしい」

「了解しました~!」

 

 ノノミは自身の(マシンガン)を大切そうに持ち上げて答えた。

 

「シロコは後ろに回って。トラックが止まり次第、セリカの救出を」

「任せて」

 

 力強い頷きとともに、銃を持ち上げ準備を始めた。

 

「アヤネは周囲の索敵と私のサポートをお願いね」

「わかりました!」

 

 赤縁のメガネを持ち上げ、手に持っているタブレットで周囲の索敵を始める。

 

 準備が整った頃、トラックの姿がはっきり見えるほど接近していた。

 

 ――準備していたノノミに、合図を送った。

 

 瞬間、影から飛び出しトラックの正面に立ちふさがる。

 同時に、急ブレーキ音が鳴り響く。

 その音がやむのを待たず、銃声が重なった。

 弾幕がフロントガラスを割り、中にいたヘルメット団は逃げ場もなくもろに食らった。

 身体から力が抜け、動かなくなったヘルメット団。

 

 その隙にトラックの後部に回り込むシロコ。

 銀色が月光を弾きながら流れる。

 

 後部扉をけ破ると、ロープで拘束されているセリカがいた。

 壁際で丸まりながら、静かに声を押し殺していた。

 

 そんなセリカは、不意に光が入ってきたことに驚く。

 目を細めながら、恐る恐る光の方向を見れば。

 人影が見える。

 頭の上には、揺れる耳が見える特徴的な影。

 

 徐々に明らかになるその姿は、紛れもない――

 

「先輩?!」

「ん、泣いてる後輩(セリカ)発見。」

「は?!うるさい!な、泣いてないわよ!」

 

 シロコによって拘束が解かれた。

 するとすぐに、無理やり目元を拭う。

 

「いや、泣いてた。この目でバッチリ確認した」

「あーもううるさいってば! 違ったら違うの! 黙れ!」

「素直じゃないですね~」

 

 正面から回り込み、様子を見に来たノノミが茶々を入れる。

 それに反論できず、真っ赤な表情で口をパクパクさせている。

 

 そのままシロコが手を引いてトラックから外に出てくる。

 私とアヤネも共に様子を見るべくトラックに近づいた。

 

「というか、なんで先生まで……」

 

 私に矛先が向かう。

 だが、奇妙な質問だった。

 

 私がここにいる理由など……一つしかない!

 

「伊達にストーカーじゃないからね。このくらい余裕だよ!」

「なっ――ふざけないで!この変態教師!」

「……元気そうでよかったです」

 

 アヤネの安心したような、呆れたような笑みが月明かりに照らされる。

 これで目的は達成。

 

 ――だが。

 

「まだ油断は禁物。トラックは制圧したけど、まだここは敵陣のど真ん中」

 

 その声に、少し和やかになった空気が再び引き締まる。

 

「人質を乗せた車両が破壊されたって知ったら、敵たちは怒り狂って攻撃してくるよ」

「――前方にカタカタヘルメット団の兵力を確認!」

 

 シロコの注意喚起を見計らったようなタイミングで、増援がやってきた。

 皆で顔を合わせる。

 

「それじゃあ、行こうか」

「「「「はい!」」」」

 

 大切な仲間に傷をつけたヘルメット団に、一泡吹かせるため。

 まだ、戦いは終わってなどいない。

 

 だが、少しここでは見通しが良すぎる上に、遮蔽物が少ない。

 

「取りあえず、この人数で一本道だと厳しいから――移動しようか」

「アヤネ、近くに十字路はある?」

「えっと……はい!ここから数分の場所に!」

「行こう。指示は動きながら出すね」

 

 私には、生徒たちのような力はないけど。

 

 戦術指揮なら誰にも負けない。

 

 そう自負しているくらいだ。

 その力を出すべく時が、今だろう。

 

「えっと……このトラックは……」

「あ、持っていくよ。使えるものは使わないとね」

 

 

 ――――――――

 

 

『来ました――!』

 

 耳に装着したの端末から、アヤネの声が聞こえる。

 

『よし、後は作戦通りに』

 

 私が声をかけた数秒後。

 

 視界にカタカタヘルメット団が映る。

 十字路の対角線を結ぶように設置されたトラックからは、まだ離れた位置にいた。

 

「クソ……どこだ?」

「トラックはここにある。この辺だと――」

『シロコ、セリカ。射撃開始』

『『了解』』

 

 団員の一人がトラックを指さしたのを皮切りに、指示を送る。

 車体下、そして、荷台の隙間からの射撃。

 

 第一に、トラックを利用した攻撃を行う。

 

『シロコは移動をお願い』

『ん』

「アイツ等、トラックの後ろから攻撃してきたぞ!後ろに隠れてる!」

「両側から回れ!それと、トラックに向かって砲撃を――」

 

 その瞬間。後ろの戦車(クルセイダー)から乾いた音が鳴り響く。

 操縦席の入口から、微かに立ち上る煙。

 

 煙の根元――入口に立つ銀が輝いていた。

 

『シロコ、セリカ、移動。アヤネ。発煙弾を』

『はい!』

 

 間髪入れず、攻め続ける。

 戦車を退場させたところで、更なる困惑をもたらす。

 

 発煙弾がドローンから落下する。

 地面に衝突すると、周囲に煙が広がった。

 

「なんだ?!」

「クソッ!待ち伏せされて――」

『ノノミ』

『はい~☆』

 

 気がついたのだろうか。

 でも、この時点で既に術中だった。

 

 煙の中目掛けて、弾幕が広がる。

 どこから攻撃されているのかも曖昧なまま、圧倒的弾量に必死で耐え凌ぐしかないヘルメット団。

 

「まずい!このままじゃ……」

「トラックの裏はどうなってる?!」

「回り込むぞ!」

『シロコ、セリカ。もう一回』

 

 回り込もうとした敵の背中や脇腹に襲い掛かる銃弾。

 当然、敵はトラックの裏にいると思っていた彼女らは気づくこともなく着弾する。

 

 既に移動していることなど知らないヘルメット団にとっては、いるべき場所に人がいないという、不可解な現象に立ち会った。

 

 そこからは一瞬だった。

 対策委員会はトラックを起点に、住宅の軒下や屋根上を移動し続ける。

 

 発煙弾による視界の不足。

 対角線を結んだトラックによって、十字路なのに向こう側の通路が見通せず。

 位置が定まらず、どこにでもいるように思える彼女らに成すすべなく。

 

 数分もすれば、音が止んだ。

 

 地に倒れ伏した敵に対して、一度も攻撃されることなく戦い抜いた対策委員会。

 

 紛れもない、完全勝利だった。

 

『戦闘終了。みんな、お疲れ様』

『まさか、この人数で勝てるなんて』

『先生!最高の指揮でしたよ!』

『まあ……今回は先生のおかげかも』

『先生!ありがとうございます!』

 

 耳元から聞こえてくる喜々とした声に。

 思わず頬が緩んだ。

 

 アヤネによる敵と周囲の確認も終わり。

 トラックより、少し離れた道で集合した。

 

「セリカちゃん、怪我はない?」

「うん、私は大丈夫。見てよピンピンして……」

 

 笑顔を見せたセリカが、崩れ落ちる。

 それを支えるように、横から入り込んだノノミ。

 セリカの様子を見れば、随分と疲労の色が顔に滲んでいた。

 

「相当無理をさせちゃったね……」

「今は休ませてあげましょう。私が運びますね」

 

 そういったノノミがセリカを背負った。

 銃や持ち物といった類は、アヤネがまとめて持ち上げた。

 そしてそのままの勢いで、こちらを向く。、

 

「先生。改めて、ありがとうございました」

「うんうん、先生のおかげでセリカちゃんの居場所を追跡できました。やっぱりすごいです」

「確かに、ただのストーカーじゃなかった」

 

 真っ直ぐ、心からそう言ってくれる彼女たちに。

 心が暖まるのを感じながら。

 

「いいや。私は大したことはしてないよ。みんなの力さ」

 

 私一人では何もすることができない。

 生徒たちがいなければ、何も成し遂げられないのだ。

 だから、いついかなる時も。

 彼女たちがすべてを解決する。

 それに私が手を貸すだけで、彼女たちは簡単に乗り越えていく。

 

 それこそが、彼女たちの力なのだと。

 

 私は信じている。

 

 

 そんなこんなで。

 

 学校へ向かおうかと声をかけた時、少し待って欲しいとアヤネから。

 

「皆さんこれを見てください。」

 

 タブレットの画面を向けてくる。

 三人で寄って見れば。

 

「戦闘中に回収した散らばった戦車の部品を確認したところ、キヴォトスでは使用が禁止されている違法機種と判明しました。」

「違法機種?どうやってそんなものが?」

「わかりません……もう少し調べる必要がありますが、わかることとしてはヘルメット団は自分たちでは入手できない武器まで保有しているようです」

「流通ルートを分析すれば、ヘルメット団の裏にいる存在が分かる?」

「はい。ただのチンピラがなぜここまで執拗に私たちの学校を狙っているのかも明らかになるかもしれません」

「わかった、調べてみようか」

 

 ひと段落着いたところで、学校に向けて歩き始める。

 

 セリカを手当して休ませた後、カナメくんの方へ向かわなければ行けない。

 休む暇もないが、まだ一人行方不明の生徒がいる。

 

 手に持っているタブレットからモモトークを開く。

 

 発信相手は、今もなお一人でいるカナメくん。

 

 

 ――――――――

 

 

 着信音が二回鳴った。

 

 少しだけ走る速度を落とす。

 息を整えながら返事をした。

 

「……はい」

「カナメくん。セリカを保護できたよ」

「そうですか!……よかった」

 

 その言葉を聞いて、肩の力が少し抜ける。

 

 セリカさんを救い出せた。

 後は、ホシノのみ。

 

「そっちは?」

「今も向ってる途中です。……大分遠いみたいで、まだ基地は見えてないので。ホシノが見つかったら連絡します」

「無理はしないでね」

「――先生には言われたくないですよ」

 

 少なくとも、先生には。

 

 そこで通話を切った。

 

 砂を蹴る音だけが、暗い砂漠に続いていた。

 その中でも、スマートウォッチの画面が薄く光り、相変わらず地図を映し出している。

 

()()、基地まであとどのくらい?」

『現在の速度を維持した場合、およそ4分です。ただし』

 

 少し間があった。

 

『警戒網が予想より広範囲に展開されています。正面からの突入は推奨しません』

「迂回するのと正面はどっちが早い?」

『正面の方が、10分ほど短縮になるかと』

「……推奨しないってことは、できないわけじゃないよね」

『……推奨しません』

「じゃあ正面から行く」

 

 また間があった。今度は少し長かった。

 

『……承知しました。リアルタイムで敵の位置を送ります』

「ありがとね」

『無茶は、しませんように』

「努力はする。努力は。どうせ傷ついても戻るんだし」

『ですが、恐怖の消費は避けられません』

「それはまあ、しばらく休めば治るもんだし大丈夫でしょ」

『……おすすめしないと何度もつけているのですが、なぜ無茶をするのでしょうか』

「こういう時に使わずしていつ使うのさ。それこそ宝の持ち腐れでしょ」

 

 やっと、自分の力の使い道を見つけたんだ。

 やれる事は全力でやるさ。

 

 

 ――これ(恐怖)には随分苦労したものだ。

 キヴォトスに流れ着いてから、初めは何度も苦しめられた。

 勝手に修復されるわ、感覚が気持ち悪いわ。

 

 それなのに、使わないと生きていけもしない。

 誰にとって得な力なのかと思いもした。

 

 でも、必要だった。

 俺がこの世界で生きていくにはなくてはならないもので。

 今じゃ、心の底から離したくないと願う力。

 

 銃弾を受けたら死ぬ存在に、生きる方法を与えた力だった。

 

 

 前方に、明かりが見えてきた。

 カイザーPMC基地。

 複数の建物が立ち並び、外周には柵と監視台が設けられている。

 想定していたよりも大きかった。

 それでも、足を止めない。

 

「メイ、監視台の人数」

『二名。東側の死角から接近すれば、気づかれずに柵まで近づけます』

「りょーかい」

 

 東へと迂回する。

 砂の上を、音を殺して走った。

 

 柵の前に辿り着く。

 金属の編み目を見上げ、一息つく。

 

「行くか。サポートお願い」

『お任せを。戦術支援プロトコルを展開。――思考同期を開始しました』

 

 柵を掴まずに、一気に飛び越えた。

 音は――ない。

 

 そのまま砂の上を駆けていく。

 

 最初の兵に気づかれたのは、基地内に入って三十秒後だった。

 

「侵入者だ!」

『――C.B.T.P.(対弾軌道予測システム)起動。』

 

 それは、メイの声が脳に響くのと同時だった。

 視界に表示されるのは、赤色の直線。

 

 銃声が響く。

 胴体に伸びている線から外れるように、横に移動する。

 

 飛んでくる弾丸は、線をなぞるように進んでいく。

 驚くように目を見開いた兵に向かって詰め寄る。

 銃口を頭につきつけながら、弾丸を脳天に2発。

 相手は崩れ落ちた。

 ロボットのようだったので、銃を受けたところでどうということはないだろう。

 

 周囲を見渡して敵が見えない事を確認したつもりだったが、警報が鳴り始めた。

 

「メイ」

『東の建物から八名、正面から六名接近中です。挟撃される前に建物内へ』

「どこに?」

『右手の扉です。鍵はかかっていません』

 

 鉄で作られた重厚な扉に向かって走る。

 レバーハンドルを蹴り下げながらドアを開け、中へ飛び込んだ。

 

 

 内部は薄暗い廊下が続いていた。

 配管がむき出しの天井に、網のような薄い足場。

 どこからか反響して聞こえてくる、足音。

 扉のある位置の壁は少し窪んでいたので、まだ身を隠していた。

 

『内部情報を表示します。直線廊下であるため、索敵範囲を広げます。挟撃には注意を』

「隠れ場所がないね」

『はい。――左方向から敵兵二名の反応』

 

 足音が近づいてくる。

 銃を構える。

 

 廊下の奥から二人が飛び込んできた。

 

 一人目に詰め寄りながら銃を放り、もう一人へ左肘を喉元へ突き刺す。

 ほんの一瞬、動きが止まったその隙に銃を戻して二発。

 二人が倒れた。

 

 一息ついてマップを見遣れば、明らかに広い空間が別階層に存在した。

 そこにある一つの、生体反応。

 これがホシノなのだろう。

 そこに向かってナビが伸びていた。

 

 メイの案内で、地下へ進むための道を進んでいく。

 

 進んでいるときは、一度も止まらなかった。

 止まれば包囲されて終わってしまう。

 動きながら道を作り、ホシノの元へと向かう。

 

 その間に、メイが敵の位置を先読みして流し込んでくる。

 敵が来ればC.B.T.P.(対弾軌道予測システム)をもとに動き、銃で制圧しては進んでいく。

 

『この先右折です。その先から四名が接近中』

「飛び出て同時に銃を打つ。被弾は2発までで行く」

『わかりました』

 

 曲がり角を飛び出る。

 それと同時に、身体に刺さる四本の赤線。

 胴体に二本、左足と頭にそれぞれ一本。

 避けられるだろうか。

 

 右斜めへ、赤線から逸れるように前進した。

 銃声が一つ鳴り、元いた場所に流れていく。

 残りの三本が移動する。

 頭以外なら最悪大丈夫。

 

 銃のダイアルを一つずらして、フルオートに移行する。

 そのまま、敵に向かって右の壁際から走る。

 赤線は依然として身体に刺さっている。

 頭に一と胴体に二。

 

 銃声が二度鳴った。

 どの軌道か確認する時間もないので、頭だけ線から逸らしながら銃口を敵に向ける。

 そして、俺の銃の銃口から伸びる青線。

 俺の弾道にも適応されるC.B.T.P.(対弾軌道予測システム)には頭が上がらない。

 引き金を引きっぱにして、銃口を横にずらす。

 フルオート機能により、17発の弾数は一瞬にして消し飛ぶ。

 それと同時に、脇腹に二度の痛みが迸る。

 

 俺が打った銃弾は三人には命中したが、残り一人には命中せず。

 銃口を向けてきているそいつに向かって行く。

 引き金を引かれる直前に銃底で側頭部を打ち付け、敵の銃を奪って引き金を引いた。

 

 最後の一人が音を立てて倒れた。

 

 一息つく。

 少しの疲労感と、達成感が生まれる。

 

『お疲れ様です。半径200メートル以内の生体反応、無し。暫くは安全かと』

「よーし。流石に一息付きたい」

 

 砂漠を走り、基地でもほぼ止まることなく動いていた。

 上がった息を整えながら、マガジンを差し替える。

 それと同時に、恐怖で脇腹の修復。

 身体を駆け巡る嫌悪感に吐き気を感じつつも、気にしないようにする。

 

『残量、現在99パーセント。消費量、身体共に問題ありません』

「了解」

 

 メイによる恐怖の量の確認が入る。

 回復はするが、すぐに回復するわけではない。

 

 ゲーム風に言えば、マナのようなものだと認識している。

 

 ビナーとの戦闘で無限に使えるわけではないと理解した恐怖。

 それから管理を行うように努力をしていたが、メイのお陰でとてつもないほど分かりやすく数値化された。

 それによって修復回数もわかり、使い所も工夫しやすくなった。

 

 C.B.T.P.に加え、消費性の恐怖。

 ゲームのような戦い方に、初めは現実か疑った。

 

 そして今の戦い方では、九割をメイに頼っている。

 本当にメイ様々である。

 ……そうじゃなきゃ、たかだか二年で戦えるようになんかならない。

 チート使ってなんぼ。

 勝てばいいわけだし。

 

 マガジンの差し替え後、深呼吸をしてから行動を開始した。

 後は走るだけだったので、メイのナビで進んだ。

 そして、遂に地下へと続く道まで辿り着く。

 

『――この先、広場になっています。基地の物流ターミナルとして機能しているようです。ホシノさんの反応がある場所まで進むにはここを通るしか道はありませんが……敵性反応です』

「敵は?」

『……待ち伏せされているようです。先ほどの索敵時よりも人数が大幅に増えております。増加人数、四十六名です』

「流石に厳しいか……このまま行った場合勝てる見込みは?」

『総敵人数、七十八名。武装状態、配置からシュミレーション開始。――100戦100敗、勝率0パーセントです』

 

 0パーセント。

 負けが確定している状態で、戦いに挑むのか。

 

 助けるならば、ここで歩みを止めてはならなかった。

 

 でも、足が止まった。

 このまま力尽きれば、何もできない。

 

 ……流石に突っ走りすぎただろうか。

 

 いや、何かがあってからでは取り返しがつかない。

 動けるなら動いておくべきだった。

 

 ホシノを置いて引く選択肢は、少なくとも頭にはない。

 

 地下へと向かう道を見つめながら、思考を巡らせる。

 

 ――増援を求めるのがベスト。

 ――ここで……敵陣で待つか。

 ――一度、撤退すべきか。

 ――それは……ない。

 

 ホシノの安全を確保できない状態で引くことが引っかかる。

 現実と理想のせめぎあいで、頭を悩ませていたとき。

 

『敵性反応。地下からこちらに向かって十名の反応。加えて、同階層からこちらに向かって六名の反応。挟撃される恐れがあります』

 

 本格的に危機に瀕した。

 もうホシノの場所まで突っ切るか?

 ――一旦は、凌ぎきってから考えたい。

 

 足音が聞こえ始める。

 狙うは、六人から。

 道を作る事を最優先に、両側に敵が見えたら終わり。

 

 六人側に向かって走り、対面する。

 安全圏まで一度抜け出す。

 

 こうして、再び戦いの火蓋が切って落とされた訳だが。

 

 そこで初めて、数に押された。

 初めはそもそも六人という数に対しての、一本道での戦闘。

 弾幕を貼られ、全弾避けるなんてことはできずに、只々被弾する。

 

 大した有効打を与えられず、背後の部隊も姿が見えた。

 ――二方から挟まれ弾幕が重なる。

 避けきれない弾が更に腕を掠め、足を貫いて、脇腹に食い込んだ。

 痛い。

 でも、気にしてられない。

 

『残量、96パーセント。六名方向から三名、増援です』

「……撤退。被弾覚悟で地上まで逃げる」

『――わかりました。ナビを……開始します』

 

 痛みを飲み込み、修復された身体で敵の上を抜けていく。

 頭を飛び越えながら、弾を打ち切る。

 それと同時に、銃弾身体を突き抜ける。

 

 地面に着地するときには、傷はすでに塞がっていた。

 気持ち悪い、とは思えなかった。

 

 まだ、生きている。

 

 そのまま、背を向けて遠くに見える曲がり角に向かって全力で走り抜ける。

 背中に銃弾が4発刺さる。

 

『残量、95パーセント』

 

 加えて、何発か脚を掠め、腕を二発貫通した。

 

『残量、90パーセント』

 

 曲がり角が、迫る。

 あと……100メートル。

 

 銃弾か左腕を貫いた。

 

『残量、89パーセント』

 

 80メートル。

 

 足を撃たれ、力が抜ける。

 その場で前へ体が傾いた。

 

 立ち上がろうとしたときには、足に三発もらっていて。

 手を地面につけば、腕が貫かれた。

 

 そこから、足、背中、腕を更に銃弾が十数発通過して。

 

『残量、……72パーセント』

 

 這いつくばりながら、進む。

 

『残量、63パーセント』

 

 立てない。

 やむことのない鉄の雨に、恐怖の消費量も落ち着くことがなく。

 只々、動かぬ的には弾が集まるだけだった。

 

 60メートル――

 

 修復しても、痛みがやむことはなくなった。

 

 まずい。

 まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。

 

 フルオートの射出速度に修復速度が間に合わなかった。

 タイミングを見計らって全修復……出来ない。

 

 今まで、量で押されたことはあった。

 しかし、その時は問題なく立ち回って勝つことができた。

 だからこそ、今回も多対一でも勝機はあると思っていた。

 ……一本道での戦いがここまで厳しいとは思ってもみなかった……!

 

 思いあがっていたのだ。

 

『残量、47パーセント』

 

 急激に減った恐怖の量に。

 息が詰まる。

 

 甘く見すぎていた。

 

 ここは軍事基地。

 戦闘に長けた兵がいて、武装があって。

 

 まずったなぁ。

 

 曲がり角は見えてるのに、動かない身体。

 後、少し耐えられれば――

 

『――!600メートル先、生体反応!個体名――黒服』

 

 ……黒服?

 

 うつ伏せになってるおかげでまだ機能を保っている喉を使う。

 

「道は?!」

『――ID認証式のドアが多数。秘密裏に繋がっている道のようです!』

「開けられるか?」

『はい。しかし、システムへの強制介入なので、持って数秒――』

「それでいい!タイミングは頼んだ!」

 

 進む道先外から黒服の元へ変更する。

 

 右腕を修復する。

 

 ここには黒服がいる。

 糸を引いているのはカイザーだと睨んでいたが……そういうことか。

 

 問題なく新品になった右腕。

 その親指で、掴んでいた銃のダイアルを回す。

 

 そのまま、後方目掛けて投げつける。

 

 カイザー兵は最後のあがきとでも思ったのだろうか。

 持っていた銃を使って、俺の銃を弾き飛ばした。

 そして、もう一度鉄の雨が降りそそぐかと思ったそのとき。

 

 

 網膜を焼き尽くさんばかりの、暴力的なまでの白。

 鼓膜を直接ハンマーで叩いたような衝撃と、脳に迸る痛み。

 

 

 銃は、爆発した。

 

 音は、狭い廊下を反響し続ける。

 視界もしばらくはまともに機能しないと思う。

 

 その隙に、足と左腕を修復。

 右の壁に手を這わせながら、走る。

 

 壁を曲がったあたりで、聴覚の修復。

 スマートウォッチを触りながら、声を出す。

 

「メイ!」

『はい!もう視界も晴れてきました。今なら大丈夫です』

「ありがと!」

『視野が回復し次第、案内を再開します』

 

 視界の修復を行う。

 視界に映るマップと、道のりを再び理解する。

 

『残量、11パーセントです』

「何とか耐えたな……」

『無茶はせぬようにと……』

 

 そりゃ無理な相談って奴だろうに。

 

 スピードは変えずに走り続ける。

 まだ、感覚的には恐怖はある。

 足りるはずだ。

 

 それにしても、まさかこんな所でロマンが役に立つとは。

 ……案外、職人のお遊びも命を救うらしい。

 

 今度会った時にお礼でもしよう。

 どうせ壊れた銃を作ってもらわなきゃ行けないわけだし。

 

『そのまま進んでください。右手に見える――あの扉です』

 

 視界に表示された赤枠。

 それが、前方に多少見える扉にくっついていた。

 

 走って、走って、走る。

 

 背後からの赤線は、まだ見えない。

 

『推定到着時間、残り十秒。扉の解錠準備を開始します』

 

 通路を駆け抜けて……扉に辿り着く直前で。

 

『扉、解錠しました』

 

 という声とともに、目の前の扉が開く。

 右に身体を傾けて、転がり込んだ。

 身体が通り抜けるのと同時に、扉は下に降りた。

 その後、ロックがかかったような音が響く。

 

 何とか逃げ切った先で、床の冷たさを感じる。

 天井を見れば、廊下よりも多少明るい空間であった。

 

 首だけで周囲を見渡せば、もうひとつの扉があって。

 

 ドアノブ付近の機器が赤色の光を発していたところ。

 

 ピピ。

 

 その光が、緑に変わった。

 ……空いたのだろうか。

 

「扉は?」

『解錠されています。加えて、先の部屋には武装道具が確認できません。危険は限りなく無い状況です』

「……誘われてるのか」

 

 開ける前に、一息つく。

 第一優先はホシノの安全。

 それだけだ。

 

 扉を開けて、中に入れば。

 廊下とは対照的な、妙に明るく音のない空間だった。

 部屋の正面には、重厚な木製のデスクが鎮座している。

 その奥で、年代物の革製の椅子が微かな木の軋みを上げ、一人の異形を乗せていた。

 

 黒いスーツは、皺一つなく仕立て上げられていて。

 影のように深い闇の顔には、罅が入っていた。

 その隙間からは揺れる光が零れていた。

 

 こちらを迎え入れるように腕を拡げた人物は、こう告げる。

 

「まさかここまでいらっしゃるとは……何が起こるか分からないものですね」

「嘘つけ。ここに誘導したのはそっちだろうに」

「はて……なんのことでしょうか?」

 

 白々しい。

 それに、こんな話をするような間柄でもない。

 

「どうせ、ホシノの件はお前の仕業だ」

「……それはどうでしょうかね」

「しらばっくれるな。素直になってくれるならいい話でもしよう」

「……ほう?それは、何を?」

 

 勿論、決まっている。

 それを叶えるために、わざわざここに来る決断をしたんだ。

 

「契約だ、黒服。大好きだろ?」

 

 そう告げるのだった。

 




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