天獄の救世主様っ!   作:弥代海月

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12話

昨日ミカエルと話してからどこかぼんやりしているルシファー。

響の登校中はルシくんも着いてきたものの、授業中や昼休みの後も姿が見えなかった。

たまにふらっと居なくなる事はあれど、一日中いないというのは珍しい。

お散歩でもしているのだろうかと楽観視していた響は、下校時刻になっても現れないルシくんに流石に違和感を覚える。

仕方無いので一人で帰ろうかと荷物をまとめていると教室内がざわつき始めて顔を上げる。

教室の扉の前にサタナキアが立っていた。

「サッ……遙斗さん……!?」

思わず声が漏れた響をクラスメイトが見つめる。

「知り合い?」「誰?」と聞いてくるクラスメイト達を躱して、サタナキアの元へと駆け寄る。

「子守り担当じゃないんだがな……」

言いながら歩き出したサタナキアを追いかける形で響は帰路に着いた。

 

「あの、ルシファーは……」

「俺も知らん。お前のこと迎えに行ってくれって頼まれただけだからな」

先を歩くサタナキアの背中を見つめながら響は足早に歩く。

「お兄さん今ヒマ〜?」

途端に横から女性に声を掛けられ、思わず立ち止まった響の腕を引きサタナキアは足早に歩く。

「え、無視?ねぇお兄さ〜ん」

「ヒマじゃない。見て分かるだろ」

「釣れないこと言わないでさ〜」

小さく舌打ちをしたサタナキアは、そのまま響を抱えて走り出した。

「あ、あの……!」

「舌噛むから黙ってろ」

「ちょっとお兄さんってば!」

「しつけぇ……!」

追いかけて来る女性を見て、走りながら携帯を素早く操作し、セーレに電話をかけようとしたところではたと指を止めるサタナキア。

そこから少しだけスワイプしてベルゼビュートに電話をかけた。

数回のコールの後にだるそうな声がする。

『遙斗?なによ』

「助けてくれ」

『またぁ〜?』

「いいから早く、今日は坊ちゃんの子守りもあんだよ」

『ちょっと待ってなさい』

「移動は続けるぞ」

プツンと切られた通話画面を確認し、携帯をポケットにしまったサタナキアは言った通り走り続けた。

暗い路地に差し掛かったところで「遙斗」と呼び止める声がした。

声のした方に顔を向けたサタナキアは「ナイス!」と言いながら声の主を引きずり出す。

肩で息をしながら、声の主であるベルゼビュートを盾のようにして振り返る。

「悪いな、先約がいる」

サタナキアを執拗に追い回していた女性は、それを見て去っていった。

響を地面に下ろし、大きく溜息をついたサタナキアはその場に座り込む。

「マジでダルい、魔界帰りたい」

「おつかれ〜」

響はその様子を不思議そうに眺める。

ベルゼビュートは、サタナキアの後ろから覗いている響を振り返って声をかけた。

「あら、また会ったわね。今日はルシファーはいないの?」

「あ、はい……それでサタ……遙斗さんが迎えに来てくれたんですけど……」

「ははぁ〜ん、そりゃルシファーの人選ミスだわ」

家までの道を歩きながらベルゼビュートは話し始めた。

「もしかしてルシファーとかラファエルが『固有スキル』使ってるとこ見たことない感じ?」

初めて聞く単語に響は首を傾げる。

「なんですか?それ」

「まぁあの二人はもしかしたら教える気無いかもしれないわね」

ベルゼビュートは続ける。

「天使と悪魔はそれぞれ得意としてるスキルがあってね。アンタ達人間の言う魔法の種類みたいなものなんだけど例えばアタシだったら炎系の魔法、セーレはワープ系の魔法」

「そんで俺は自分の意思と関係無く人間の女性を惹き付ける」

「難儀よね〜」

「あ、それでさっきの……」

「そういうこと。で、人間と契約することでそういう得意な魔法がちょっとパワーアップするのよね、これをアタシ達は『固有スキル』って呼んでるの」

へぇ〜、と興味津々な様子の響を見て微笑むベルゼビュート。

「ま、興味あったら聞いてみなさい。ラファエルくらいは教えてくれるんじゃない?」

 

三人が響の家に着いた頃にはルシファーもラファエルも家に居た。

「ごめんねご主人、迎えに行けなくて……」

ぱたぱたと慌ただしく玄関口まで駆けてくるラファエル。

ルシファーも玄関先で微笑んでいる。

二人の姿を確認した響は、ベルゼビュートとサタナキアの方を振り返る。

「じゃあ……あの、ありがとうございました」

後ろからルシファーが声をかける。

「今度菓子折りでも持っていきます」

「またかよ」

「要らないってば」

呆れたようにその場を去ろうとしたベルゼビュートとサタナキア。

少し歩いたところでベルゼビュートが振り返る。

心なしか目付きがいつもより鋭い。

「アンタ、ほんとに気を付けなさいよ」

今日の帰り道で何を感じ取ったのか釘を刺すベルゼビュートに、その言葉の真理が分からない様子の響は不思議そうな顔をしながら「うん」と軽く返事をした。

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