天獄の救世主様っ!   作:弥代海月

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13話

夕食を食卓に並べて主人と天使を呼んだルシファーは、足元に魔法陣が出現したのを発見した。

見覚えのある召喚陣だった。

呼ばれた二人は食卓に向かう道中に、ルシファーの足元で光る魔法陣を見てギョッとして立ち止まる。

ラファエルがなにそれ、と聞くより先にルシファーが口を開いた。

「ちょっと空けますね」

その言葉を残して跡形もなく消えたルシファーに「ちょっととは?」と二人は顔を見合わせ、ひとまず夕食を片付けることにした。

 

夕食を平らげ、並んで食器を洗う二人。

「ルシファー今日中に帰ってくるかなぁ」

「あいつの言うちょっとがどのくらいなのか分かんないけど、私今魔力量減ってるからさ、悪魔の対処ちょっと不安なんだよね……」

「え、天界戻る?」

「ご主人一人にするのはまずいからな〜……夜遅いけど緋奈の家行こ」

 

緋奈の家に着いてインターホンを鳴らすと、もう話が通っているのか快く迎えてくれた。

リビングに案内されると、そこには大量のお菓子がぶちまけられていた。

「こんな時間からお菓子ですか……?」

「しかもこんな大量に……」

二人が困惑していると「違う違う」と緋奈は否定する。

「ボクが食べるんじゃなくてブーちゃんが食べるって、めちゃくちゃ買わされたの」

呼ばれたベルゼブブは扉の向こうから顔を覗かせた。

「あ、ラファエルと人間。お菓子食べる?」

ベルゼブブの問いかけに「ご飯食べてきたので大丈夫です」と響は断りを入れたが、ラファエルは何個か見繕っていた。

「じゃあ私ちょっと天界戻って魔力補充してくるから、ご主人のことお願いしま〜す」

お菓子を何個か携えて部屋を出ようとしたラファエルに、ベルゼブブが「ラファエル、手出して」と声をかける。

首を傾げながらも言われた通り手を出すと、その手をベルゼブブが握る。

途端にぶわっと天使の姿になったラファエルは、慌てて人間の姿に戻って髪を整える。

「ありがと……」と少し恥ずかしそうにするラファエルに「ん」とだけ返事をしたベルゼブブは、何事も無かったようにお菓子を食べ始めた。

急いで姿を戻したからか羽が数枚床に散っており、

それを一枚拾い上げて見つめる響。

「何が起きたの?」

響が聞くと、今度はカシエルと手を繋いでいたラファエルがはにかむ。

「魔力供給してもらっちゃった」

それを聞いた緋奈も不思議そうに顔を覗かせる。

「今のそれも魔力供給?」

緋奈の顔を見てから自分の手に目線を落としたラファエルは「これはね」と説明を始める。

聞くと、天使と悪魔では魔力の質が違うらしく、今ベルゼブブから貰った魔力をカシエルの固有スキルで『統一』してもらっているらしい。

「人間に分かりやすく言うとそうだなぁ……絵の具……?かな……私たち天使が使える魔力が基本的に白色で、悪魔が使える魔力が基本的に黒色ってことにしよう。それで今ベルゼブブからもらった魔力が黒色だからそのまま混ぜると灰色になっちゃって全部使えなくなっちゃうから、混ざらないように置いといて後から少しずつ色を変えたり今みたいに元あった色に『統一』したりするんだ」

熱心に聞いていた人間二人はへぇ〜と声を漏らす。

「だからブーちゃんたまにボクの魔力のこと赤いって言うの?」

ベルゼブブに緋奈が聞くと、お菓子に埋もれたベルゼブブが「そういうこと」と返事をした。

「え、人間の魔力って赤いの?」

不思議に思った響が質問をすると、ラファエルは首を横に振る。

「人それぞれだよ〜碧空は黄色だし駿河は紺色、ちなみに天使と悪魔も白と黒だけじゃなくて私はちょっぴりピンクだしルシファーは赤と黒混ざってて……血みたいな色……」

趣味悪いよね、と笑ったラファエルにベルゼブブが付け足す。

「別に好きであの色じゃないでしょ、ルーくんも」

「そうだといいけど」

ラファエルが床に置いていたお菓子を持って「よしっ」と立ち上がる。

「目的も達成されたし夜も遅いから私たちは帰ります!緋奈、ありがとうね!」

「ううん、困った時はお互い様だから。また何かあったらいつでも頼って」

玄関で靴を履く響に、ベルゼブブが小袋入りのミニドーナツをひとつ差し出す。

困惑しつつも受け取った響。

「ありがとう……」

「お前、なんか危なっかしいね」

響にデコピンをひとつしてリビングへと帰っていくベルゼブブ。

おでこを押さえたままポカンと見送る響の手を引いて、ラファエルは緋奈に別れを告げた。

「お邪魔しました〜!またね〜!」

その様子を笑顔で見送りながら手を振る緋奈は答える。

「気を付けて帰ってね」

 

次の朝が来ても、ルシファーは帰ってこなかった。

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