天獄の救世主様っ!   作:弥代海月

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14話

一方その頃。

サタンとして召喚されたルシファーは、面倒くさがってルシファーの悪魔の姿で召喚に応じた。

怪しげな本や物品が所狭しと置かれた仄暗い室内で目を開くと、嬉しそうな少女の後ろで目を丸くしたシトリー、ダンタリオン、レライエがいた。

「ルシファー……?」と小さく呟いたシトリーには目もくれず、探す手間が省けたと少女を見据えたルシファーは微笑んだ。

「貴方がサタン?」

怯む事もなくルシファーの目を見て問いかける少女に、ルシファーは小さく「ほう」と声を漏らした。

「いかにも。大した魔力量だな?」

まずは自分を召喚して尚も魔力の有り余る少女を褒め讃えた。

少女にその賞賛が伝わったかどうかは定かではないが、少女はルシファーから目線を離さず自身の胸に手を当てる。

「私と契約して」

「今は契約者がいるから断る」

なんとなくそんな事だろうと予想していたルシファーは、間髪入れずに断った。

「魂ならあげれる」

尚も食い下がる少女にルシファーは溜息をつく。

「人間がそう易々と魂を差し出すもんじゃねぇぞ、間に合ってるし」

呆れ顔のルシファーを見てにこりと笑った少女は「まぁ契約しなくても帰さないけど」と呟く。

これから起こる事を察したルシファーは、退路を瞬時に確認するも時すでに遅く、結界と見えない鎖で少女に縛られた。

「どうせ暇でしょ?私の元で働いてもらうから」

ルシファーはそれを聞いて、眉を寄せ引きつった笑みを浮かべた。

 

ルシファーが居なくなって三日経った。

登校にラファエルが着いてくるようにはなったものの、響は道中いつもルシファーの姿を探していた。

「ルシファーどこ行っちゃったんだろうねぇ」

今日も悪魔の姿は見つからず、何事も無く学校まで辿り着いた響は教室の雑踏の中ラファエルに小声で訊ねる。

ラファエルは苛立ったように腕を組む。

「どこ行ったとしてもあいつならすぐ帰って来れるでしょ。どこで油売ってんだか……」

その後も何かぶつぶつと小言を呟いていたがホームルームが始まったので響は軽く流した。

 

そんな帰り道。

噂をすれば、というやつなのか悪魔姿のルシファーが少女と歩いているのを見かけた響は立ち止まる。

ルシファーの悪魔姿を見た事がなかった響は「ルシファー?いや、ちょっと違う……?」と見つめていると、主人の視線の先を見たラファエルが呟く。

「ううん、あいつルシファーだよご主人」

人波をかき分けて一直線にルシファーの元へ歩みを進めたラファエルは、ルシファーの進行方向に立ちはだかる。

「何やってんのルシファー」

不機嫌そうなラファエルにやる気の無い返事をするルシファー。

「あぁラファエル……」

途端、ラファエルの後ろから顔を覗かせた響を見て顔を輝かせた。

「と響様!もう二度と会えないかと思いました!」

何かを察したらしいラファエルが「全然帰ってこないと思ったら……」と呆れたように呟く。

響は状況が分からずに訊ねる。

「ルシファー何してるの?」

「このメスガ……おっと、少女に強制労働を強いられておりまして……」

「ほんと面倒なことしてんねぇ……」

「帰れないの?」

「結界だよご主人、あの子相当魔力強いね。ルシファー縛り付けるなんて相当だよ」

黙って三人の会話を見ていた少女が、蚊帳の外に耐えられなくなったのか口を挟む。

「なんなの?知り合い?」

「ええ、今の私の契約者。ご主人様です」

「へぇ、こんな魔力も無い弱っちい奴がねぇ……」

じろじろと響を見た後に、少女はルシファーに向き直る。

 

「こいつ殺せば私と契約してくれる?」

 

一瞬で空気が張り詰める。

どこから現れたのかダンタリオンとレライエが、響に手を出そうと近づいたのを見て、手の先すら動かさずにルシファーは響の目の前に無数の槍を突き立てた。

驚いて後ろによろけた響をラファエルが片手で支える。

天使と悪魔の鋭い視線は少女へと突き刺さっていた。

「手を出すのはいいが俺らが居ない時にしろ。存在ごと抹消されたくなければな」

二人のとてつもない魔力量の威圧に、武者震いをして少女は笑う。

「随分ご執心なんだねぇ、何がそうさせるのか……」

チラッと響を見やった少女は片手を上げて振り返る。

少女の手に鎖が絡め取られていき、そのまま少女は歩みを進めた。

「まぁいいや、今回のところは返したげる。また今度遊ぼうね」

少女の背中が見えなくなるまでその場を動かなかった天使と悪魔は、主人に「えっと……」と言われ警戒を解いた。

ルシファーがみるみる見慣れた姿に戻る。

「申し訳ありません響様!お怪我ありませんでしたか?お見苦しいものをお見せしました……」

「早く帰ろうご主人!外の世界ってやっぱり危ないねぇ!」

いつも通りな二人に安堵の笑いを零した響は安心して帰路に着いた。

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