ミカエルに呼ばれたらしい他の契約者達が璃玖の家に駆けつけた頃には、意識があるのはアスタロトとラファエルだけだった。
そんな二人も辛うじて、という感じで地に伏している。
そして抵抗する響の手を引いたルシファーは照の元へと歩みを進めていた。
「これは……一体……」
呟いた駿河の声を聞いたラファエルが地に伏したまま叫ぶ。
「話は後!ご主人を取り返して!」
それを聞いた碧空はルシファーに声をかける。
「ルシファー……」
何かを続けようとした碧空の肩に手を置くウリエル。
碧空が振り返ると、ウリエルは目を見開いたまま首を横に振る。
「ルシファーじゃないよあれ、誰……?」
その問いかけに振り返るルシファーと同時にミカエルが口を開いた。
「ルシフェル」
その名前を聞いた天使と悪魔は動揺しながら一斉にミカエルに視線を集中させる。
「ど、どういうこと……?だって……」
何か言いたげなアズラエルの言葉を遮ってミカエルが続ける。
「ラファエルが言ったろ、話は後だ。響を回収してあの馬鹿を取り返す」
その言葉を聞き、一斉に戦闘モードへと切り替える天使と悪魔を見ながら照が余裕そうに笑った。
「やれるものならどうぞ」
照の言葉を皮切りに飛び出したのは、ベルフェゴール、ガブリエルとレヴィアタン。
それぞれ別方向からの奇襲、響の手を引いて片手を塞がれたルシファーには誰か一人くらいの攻撃は当たると踏んだようだ。
しかしルシファーはそんな三人には目もくれず、抵抗する響に手を焼いている様子だった。
いけると確信した三人の目の前に突然槍が突き立てられ、三人は同時に急ブレーキをかける。
三本の槍はそれぞれ意思を持っているかのように奇襲を仕掛けた三人へと攻撃を繰り返す。
近付くどころか、どんどんとルシファーから遠ざけられる三人を横目に、鎌を持ったアズラエルと大槌を振りかぶったベルゼブブがルシファーへと距離を詰めた。
横から切り裂くように振られた鎌を槍で受け止め、がら空きの背中目掛けてベルゼブブが大槌を振り下ろすと、ルシファーは大槌の下に響を滑り込ませた。
「うわっ……!」
突然の事に驚いた響とベルゼブブは双方声を上げ、ベルゼブブは何とか大槌の軌道を逸らす。
その一瞬の隙を突いてアスモデウスが、アズラエルとルシファーの間に滑り込みレピアを向けるも、アスモデウスの後ろに張り付き響を取り返そうとするウリエルの存在に気付いたルシファーが、アスモデウスの目の前に響を盾として置き、ウリエルの服の裾を槍で固定した。
相当深く刺されたのか簡単に抜けない槍を引っ張りながらウリエルが叫ぶ。
「ミカエル!『悪魔祓い』使えないの!?」
ルシファーの手数を減らそうと上空から魔力弾を放つミカエルが余裕無さげに返事をする。
「悪魔カウントされないんだよそいつ!」
人間達に流れ弾が飛ばないように攻撃を一定の場所で相殺していたレヴィアタンはそれを聞いて眉を顰める。
「面倒だな……!」
「こちらの台詞です」
間髪入れずにルシファーがそう呟くと、辺り一帯の重力を数十倍に強めて物理的に全員を押さえ付けた。
それを見ていた照は笑いながらやんわりと釘を刺す。
「こらこら、殺さないでよルシフェル」
「心得ております」
響が気絶したのを見たルシファーはその場の全員が動けないのを確認して、響を抱えて照の元に歩いていく。
照が地面に伏す全員を見ながら顔の横で手を振った。
「じゃ、この子は預かるね。それなりに楽しかったよ。また機会があったら遊ぼうね」
去っていく二人の背中を見上げながら「ご主人……」と呟いたラファエルはそのまま意識を手放した。