【連載版】TS異世界リフォーム工務店 〜勇者がぶっ壊した魔族屋敷、格安再生して高く売れ!〜   作:劇団おこめ座

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2章 8話 おまけ 聖女サンside

 六魔貴族の1人を倒し、その土地や建物を兵士と工兵が修繕している間、王都で凱旋するようにと呼ばれて王都に戻った。

 

 勇者エンデルクたちは、凱旋なんてめんどくせぇ、なんて言っているが、まんざらでもない様子だった。

 私ことサンも羽を伸ばせる。

 最近勇者パーティはピリピリしている。

 その理由は簡単だ。勇者だ。俺様君の勇者の手綱を制御するのは大変なのだ。

 そして、気に食わないことがあれば食ってかかる。

 それを、あの子、リファは一人で悪役を買って勇者の手綱を握っていた。

 そういう役はあの子しかできない。

 

 なんとか私は雰囲気を悪くならないように振る舞うけれど、魔王討伐まで待つだろうか。

 

 

 王城に戻ると役人たちはいつも以上に忙しそうだった。

 勇者が帰ってくる以上の面倒なことでもあったのだろうか。

 聞き耳を立てれば、王国建築課で何かがあったらしい。リファに面倒なことがふっかからなければいいなと思いながら、でも困って手伝いで呼ばれないかな、という期待もある。

 

 夕食会までの時間、王都を散策したらいかがか、と接待役の役人から言われた。その役人は私とリファが仲のいいことを知っている者で、こっそり耳打ちをして、

 

「リファちゃんやフレディック商会がプロデュースしたカフェが最近できたから行くといいよ。多分勇者様も喜ぶと思うよ」

 

と場所を教えてくれた。

 誰かに当たり散らす狂犬勇者になる前に、勇者や仲間たちを連れて、短距離転移魔法で移動する。

 

 白い二階建ての建物の前に降り立つと、どこかで見たような雰囲気がある。

 しかし、思い出せない。

 膝下くらいまでのレンガ作りの白い狭い屋敷。

 雰囲気なら、4階建ての悪徳伯爵の屋敷だけど……。

 

 入り口を抜けるとすぐ下に行く階段があった。東洋どわ〜ふ居酒屋? どんなお店だろう?

 でも、そこは今日は行かない。リファと王都で会ったら一緒に行きたいなぁ。

 

 甘い香りが漂って来て、そちらに目を向けると大きなガラス張りの厨房が見えた。そこでクリームたっぷりのホールケーキをデコレーションしたり、注文が来てから焼きたてのシュークリームのシューにたっぷりのカスタードクリームを注入していく。

 思わず、見入ってしまい、口から涎が出そうになる。

 

「サン、2階のカフェに行くぞ」

 

 この男、この夢のような空間の良さがわからないとは、貴様、万死に値するぞ。

 ……おっといけない、いけない。

 最近、リファ成分が足りないせいでイライラしちゃうのだ。

 2階への階段を上がる。正面から降りてくるドラゴン族の特徴の2つの角のあるの東洋のスリットの入ったドレスを来た女性が見えた。

 

 ニーナ・ロベリスタ。

 

 稀代のデザイナー。女性の理想の女性像。

 そして、リファのパーティメンバー。

 

 ニーナさんの後ろには、歩きにくそうに淡い緑色のドレスを少し持って歩くエルフの貴族の少女がいた。長い金髪にエメラルドの瞳。その瞳は猫のように大きくてちょっとつり目。

 

 通り過ぎる瞬間にリファだと気づいて軽く手を振る。リファもそれに気づき、おう、みたいな感じで片手を上げ、するとドレスを踏んでニーナさんに支えられていた。

 

「今の見た? ニーナ・ロベリスタ!?」

 

「めっちゃスタイル良かったな」

 

「初めて生で見たわ」

 

 パーティメンバーはリファに気づかなかったようだった。

 

「俺は後ろにいたエルフの子が良かったな」

 

 エンデルクがそんなことを言った。

 気づいてないの? リファだって?

 

 まあ、勇者パーティの時みたいにボサボサの髪を無理矢理まとめていたり、服も目立たない色の服装だった。スカートを着ているところなんて見たことなかったし。

 少し着飾れば本当に凄く魅力的なのに。

 おっと、忘れてた。リファが通ったところ強く息吸い込んでリファ成分補給しとこ。

 

 

 

 2階は、南の諸国を回った時に見た、リゾート地のホテルの一角にあるようなカフェだった。

 明るい色のフローリングにまだ木の匂いが残っていて、コーヒーの香りも合わさり、清々しい香りが漂っていた。

 木製の椅子もソファ席も、味わいがあるし、特に大きなガラス窓がいい。2階から街並みが見渡せる。

 

「はあ? 特等席が空いてない? 俺様を誰だと思ってんのよ?」

 

 内装で感動している時にこの狂犬勇者はまた店員さんと揉めてるよ。

 

「あ、いえ、もう少しで清掃が終わりますので少々お待ちください」

 

「さっさとしろよ。……ったく、気が利かねえから、こんな底辺の仕事をしているんだな」

 

 その姿を見て、心底ため息を吐く。

 店員に高圧的な態度をする人とは一緒にお店に行きたくない。そいつと同レベルのクズ野郎と思われるからだ。

 3階に登り始めたパーティメンバーを横目に私は迷惑をかけた店員さんに、こっそり迷惑料としてお金を渡した。

 早く次のアルバイトの依頼来ないかな。

 

 3階ではなかった。

 屋上のテラスだった。

 太陽の心地よい光と、タイルの反射光、南国の観葉植物、そして見晴らしのい眺め。

 時々吹く風といい、それらが合わさってとても心地よい。

 勇者パーティの後ろを歩き、特等席へ向かう。

 特等席の前に着くと、そこには見覚えのある切れ込みがある。

 黒色の艶のある石の枠に囲まれた壁に横一閃のえぐるような切り込み。

 あっ、あの悪徳伯爵の屋敷だったんだ、と思い出す。

 そこでは、リファとエンデルクが手柄の取り合いをして、窓から魔族が逃げたんだったかな。

 大技を使ったエンデルクの技が外れて、ただ壁をえぐっただけ。

 だから、3階はリファの作ったアースランスの残骸とエンデルクの斬撃痕まみれで、酷い有様だったはずだ。

 残っているのは、エンデルクの渾身の横一閃の一撃の外した痕。

 それを見て、エンデルクは気付いたようだ。ワナワナ震えている。

 エンデルクの渾身の一撃の痕の下にはプレートがぶら下げられていた。

 

 悪徳伯爵の屋敷に突入した勇者エンデルクの渾身の一撃

 

 勇者エンデルクを讃える一言が、プライドの高いエンデルクにザクりと深く刺さっていた。

 外した一撃を、そして悪徳伯爵と繋がっていた魔族は取り逃す。その失態を思い出して、怒りが溢れていた。

 

「勇者エンデルクだ!」

 

「エンデルク様よ!」

 

 次々とテラスの客は勇者に気がついて、立ち上がり集まり出す。

 

「勇者様、この時の戦いのことを教えてください!」

 

「すごい活躍の話が吟遊詩人が唄うのを聴いたわ。きっと本人からの方がすごい話を聞けるに違いない!」

 

「サインください!」

 

「ねぇ、勇者様が倒した魔族はどんな奴だったのですか?」

 

 集まってきた人たちがの目は、強く勇者に期待する目。他のパーティメンバーも散らすに散らせず困っていた。

 

「う……。し、仕方ないな。あの時はな、ちょっと暑苦しい日だったんだ」

 

 勇者は語り始めると歓声が響き渡る。

 勇者の作り話の英雄伝。

 

 このモニュメント、リファが展示したに違いない。客引きに使えるから、と言って……。

 なかなか、エグい仕返しをするところ、私は嫌いじゃない。エンデルクが悔しそうな顔でありもしない成果を語る様は見ものだ。

 でも、この後、王城で機嫌悪いだろうなぁ。

 見方を変えればエンデルクのミスを隠蔽してくれたのに。

 本当に、つくづく、勇者エンデルクという人は生きづらい人なんだなと思う。




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