【連載版】TS異世界リフォーム工務店 〜勇者がぶっ壊した魔族屋敷、格安再生して高く売れ!〜   作:劇団おこめ座

20 / 20
3章 3話 丁寧な打ち合わせが肝心

 俺たちは一度作業を中断して、国の王国建築法を確認した。

 最近、法律で足をすくわれたからな。

 そこで、王国建築法に、精霊コンロの構造が指定されているのを確認した。

 

「精霊コンロは高火力であって、かつ、錬金術に使うものは周囲の被害を減少させるため、設置工房に耐爆壁、及び煙突は直上に設置しなければならない。これだ!」

 

「つまり、この法律って、高火力の精霊コンロでも錬金術に使わないなら、耐爆壁は不要で煙突を直上につけなくてもいい、ということよね?」

 

「そうじゃ。錬金術に使わなければいい。でも、安全のためにはこの法律に準じてリフォームした方がいい。問題は使用者の制限だ」

 

 王国建築法や精霊コンロに関する法律を調べても、使用者を錬金術師に限定する法律は見当たらない。

 つまり、

 

「精霊コンロ自体を誰が使っても違法じゃない。この見た目が暖炉のタイプを、そのまま暖炉として使っても問題ない」

 

ということだ。

 

「それなら、このままでもまた王国建築課とやり合うことはないということだな!」

 

「とりあえず、そもそも火の精霊がいるのか試してみよう」

 

***

 

「精霊の気配が気薄だ……。エルダートレントの端材は魔力が含まれているから栄養になるだろうからあげてみるか」

 

 暖炉の中にエルダートレントの端材を置く。

 すると真っ黒い煙が吹き出し、排気口からの換気が間に合わず、あたり一面が見えないほどの煙でいっぱいになる。

 

 俺は慌てて窓を開けようとするが、窓がそもそも開くのかわからない。

 仕方なく、壁の一部に穴を開ける。

 

「ゴホゴホ! ニーナ、すぐ横に穴を開けた! 風を送って換気してくれ!」

 

 ニーナのいるあたりから魔力が高まり放出される感覚があった。

 だんだんと黒い煙は薄くなっていく。

 

「酷い目に遭ったもんじゃ……ゴホゴホ。みんな大丈夫か?」

 

「大丈夫だけどよ、エルフの燻製になると思ったぜ」

 

「存在はしていたみたいだけど、よっぽど弱っていたみたいね」

 

 煙の晴れた部屋でニーナが顔を向けた先に、小さな種火が生まれていた。一度火が出来上がると、もう酷い煙はなかった。

 

***

 

 いずれにせよ、火の精霊は精霊コンロの中に存在している。

 無理に解体すれば、爆発したり大規模火災が発生する。最悪、火の精霊が怒り狂って街が火の海と化す。そんなものをよくゴミ屋敷にして放置できたよな、前の持ち主。

 

 暖炉として錬金術用暖炉型精霊コンロ付きの屋敷を売る方向で話にはなっているけれど、はっきり言って、俺からすればこんなコンロ、迷惑極まりない。建物を解体する際に困るからだ。

 だから、次にこの屋敷を持つ者が嫌がるのでは、と思った。

 それで、俺は精霊を追い出して精霊コンロを取り外した方が、最終的な販売価格は高くなるのでは、と二人に質問した。

 すると、二人は、

 

「解体することを前提に購入者がリフォーム物件を買うやつはいないじゃろ」

 

「中古物件として売る時には確かに困るかもしれない。でも、精霊コンロ自体が基本的には出回らないのよ。買うのは錬金術師で、精霊を契約して連れてくるのも錬金術師。手間とお金がかかるのよ。

 だから、付加価値としてみなされることが多いわ」

 

と言ってきた。まあ、死ぬまで住むと思って買うやつが解体のことなんて気にしないか。

 

 ニーナは精霊コンロに目を向ける。

 

「それに見て、この火の光」

 

 精霊コンロの火種はレインボー色に煌めく。

 

「この火の光が疲れた日の夜やちょっとした催し物の時に見れたら、貴族じゃなくても欲しがるわ」

 

 精霊コンロ特有の煌めく炎は、その奥に宝物が潜んでいるようなそんな気にさせる。その上、華美にはならず、優しいこの色合いは火の精霊でも上級の精霊だ。

 

「ウェスティア=フレイア。灯台と竈門を司る炎の乙女の精霊か。なんでこんなのがここにいるんだ……」

 

 金に物を言わせて訳もわからず契約したのだろう。出てくる物品も埃を被らせた高級品ばかり。

 宝の持ち腐れ野郎だ。

 そう思っていると、ニーナは俺にさも当然そうに俺に声をかけた。

 

「この精霊と対話はできるわよね?」

 

「俺、言葉遣い汚えからニーナやればいいんじゃね?」

 

「精霊との対話は訓練を受けた人か適性のある人しか無理なのよ。私は適性ないし、訓練もしたことないわ」

 

「ワシは木としか対話したことない」

 

 はあ? お前らそんなんで精霊コンロを取り扱おうとしてたのかよ。

 口にしようとして引っ込める。

 こんな言い方するとパーティの雰囲気が悪くなる。パワハラ訴訟待ったなし。

 引っ込めないのは勇者にだけだ。

 あいつはムカつくから言っていい。

 

「リファならできるでしょ?」

 

「エルフは精霊との適性が高いのは有名な話じゃろ」

 

 二人はそう言って俺に目を向ける。

 

 はあ!?

 俺ができること前提の話だったのかよ!?

 

 適材適所だからいいんだけどさ……ていうか、みんなそれくらい出来ると思っていたから、違和感しかない。

 俺が実は精霊との対話なんてできませんなんて言ったらどうなっていたんだ。

 

「あのさ、まず、パーティの中で意思疎通しよう。

 建物買う前に、これできるのか、あれできるのか、とか、今回なら精霊コンロある可能性があるけど精霊と対話できるかとかさ。

 パーティの誰かは、やっていること見たことないけれど、多分できるはず、というのは後で出来なかった時に業者に高い金を取られる」

 

 不意に後ろを歩いてくる音が聞こえて振り向く。

 修道服の上にフード付きの白いカーディガンを被った女性が立っていた。

 

「呼ばれたかな、と思って来ちゃった」

 

 押しかけてくる面倒な彼女みたいなこといいやがって……まあ、俺の前世に彼女なんていないけどな!

 

 こいつは福音のカーテンという特殊作業会社所属のシスタールナだ。主に貴族を専門の客に見据え、堕胎だとか避妊とかの処理がメインの業者だ。その他にも、呪いの解除や精霊の対話もできる。秘密厳守だし、技能は高いし質もいい。ただ、料金がクソ高い。

 

「お呼びじゃ無い。早く帰りな」

 

 白いフードを被っているけれど顔はしっかりと見えていた。

 それなのに、顔を認識できない。でも、この顔、どこかで見たような、そんな気にさせる顔だ。

 

「そんなこと言って、リファさん、そんな不埒な格好しているから私が必要なのかな、と思ってきたのに。すえた男性の臭いもしますから、ますます必要かなと」

 

 ルナは見た目に反してどぎつい性の話題を振ってくる。相手にすればするほど食いついてくるのであしらうようにしているのだけれど、やつの口車にどうしても乗ってしまう。

 マジで不思議な女だ。

 

「そりゃ、この臭いは元の持ち主が男だったんだろ。それに俺のこの格好は……多分、前の持ち主の実験用のスライムにやられただけだ」

 

「あら、スライム責め?」

 

 ルナは顔を赤らめて、両方の手を頬に当てて腰をくねらせた。

 

「違うわい!」

 

「スライム責めによる体の損傷の治療なら、一万ゼニーで……」

 

 俺の話を聞かずに話を進めるからイライラして声を荒げる。

 

「だから、違うって言ってんだろ! ていうか高えだろ!」

 

「高い理由は膜をしっかり復元する自信があってのこのおねだ……」

 

「何もされてないし、膜も無事だって言ってんだろ!」

 

「あら、その男まさりな感じなのに未経験なのかしら?」

 

 心底楽しそうにルナは声を上げる。

 もういい加減にしてくれよ。

 でも、腕はいいし、ここぞという時に世話になるのでむげにはできない。

 

「ホント、誰だよこんな面倒なやつ連れてきたの……」

 

「私はリファさんが必要な頃かな、と思って来ただけよ」

 

 嗅覚が鋭すぎるだろ。

 

「ところで、お前に精霊との対話を頼んだらいくらだ?」

 

「話は一応全部聞いていたから話すけれど、この精霊コンロから契約されたままのウェスティア=フレイア、火の上級精霊を移動させる説得なら15万ゼニーはふっかけるかな?」

 

「やっぱり、クソ高いじゃねえか!」

 

「失敗すると街が大火災になるのよ? 安いじゃない。リファさんがお客なら、10万ゼニーでいいよ。代わりにやりましょうか?」

 

「やめろ、俺ができるからやらなくていい。まあこんな風に、業者に頼むと高いんだよ。

 わかっていて、予算の範囲内でできるなら問題ないけれど、予算を大幅に上回るならタダ働きになっちまう。

 俺もそうだけど、パーティで大きな損失を作らないようお互いに気をつけよう」

 

「あー、そこまで考えてなかったわ。ごめんね、リファ」

 

「ワシもそこまで考えていなかったワイ……リファ、お前さん、仕事に責任が出てきたな」

 

「普通のことだろ」

 

「昔の、俺が壁を直せば予算なんて関係ない、全部ボロ儲けだ、みたいなこと言っていた頃が懐かしいわい」

 

「言うな! 俺だって反省しているんだよ!」

 

 シスタールナがニコニコとこちらを見ていた。

 お前は俺の母親か、なんかか!




 読んでいただきありがとうございます。
 感想やお気に入りへの登録など大変励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ロマン職は異世界から帰りたい(作者:庶民ザウルス三世)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

これが絶対浪漫の力だ!▼人は夢を見る。▼そして、効率よりも自分の“好き”を信じて、浪漫を追いかける者たちがいる。▼ソロ専、人見知り。▼だけど、クリティカルが決まった時の一撃だけは誰よりも重い。▼そんな趣味全開のロマン職キャラを愛した男は、課金帰りの事故をきっかけに、ゲームで使っていた女性キャラ――ラシア・ラ・シーラとして異世界で目を覚ます。▼しかも、レベルも…


総合評価:2799/評価:8.67/連載:75話/更新日時:2026年05月10日(日) 07:11 小説情報

転生者とTS聖女とTS悪役令嬢と追放系ハズレスキルが集まった結果。(作者:RGN)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

なんか結構バランスのいいパーティが出来た。▼死ぬほど色々な事に巻き込まれるけど。


総合評価:2349/評価:8.66/連載:11話/更新日時:2026年04月06日(月) 19:34 小説情報

TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女(作者:こばみご)(オリジナル現代/コメディ)

魔法少女パワーをチューチューするために原石を誘拐したら、とんでもねえ変態だった。恐ろしい!


総合評価:1713/評価:8.72/連載:11話/更新日時:2026年05月04日(月) 00:00 小説情報

適当極まりないおっさんでも、TS転生すれば少しはマシになるって本当ですか?(作者:ソナラ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

適当に生きてきたおっさんは、気がつけば異世界で美少女のアシェットに転生していた。▼容姿は整っていて、よくあるチートも持っている。▼しかし中身は結局おっさん。適当に日々を何事もなく過ごせればそれでよかった。▼だけど少しはマシな生活をするために、アシェットは力を使うと決めた。▼これはただの”適当”なおっさんだったアシェットが、異世界で”適当”な生き方を見つけるお…


総合評価:2883/評価:8.82/連載:10話/更新日時:2026年01月23日(金) 12:05 小説情報

帰還聖女と黒の隷属(作者:大西アレイ)(オリジナル現代/冒険・バトル)

高校二年生の青春真っ只中、異世界転移に巻き込まれた白川祐也。彼は自らに与えられた魔王討伐の任を見事達成し、現代地球の日本へと帰還する。▼ーー「白き聖女」クラウディア・アルマとして。▼しかし、帰還後の彼女の世界には、魔力により形成される地下迷宮「ダンジョン」が各地に存在していた。▼これは異世界から帰還せし白き聖女が、黒き召喚者と共にダンジョンをあれやこれやで攻…


総合評価:1677/評価:8.46/連載:9話/更新日時:2026年01月14日(水) 21:02 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>