【連載版】TS異世界リフォーム工務店 〜勇者がぶっ壊した魔族屋敷、格安再生して高く売れ!〜   作:劇団おこめ座

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3章 4話 精霊コンロの価値

 火の精霊、ウェスティア=フレイアとの対話はそんなに苦ではなかった。余程エルダートレントの端材が良かったのか機嫌が良かった。腹が減っていると言われて木材の端材とエルダートレントの端材を渡すと満面の笑みを作る。

 

ーーー久しぶりのご飯で涙が出るわ〜

 

 そんな感じの残念な内容を緩くしゃべる。

 炎のゆらめきの中に、艶やかな髪を揺らすお姉さんがふわりと浮かび上がる。ほんと、上級精霊ってやつは俺が思っていたよりも、ずっと人間に近い姿をしてるんだな。

 

「で、前の人との契約、破棄してくれないか?

 実はこの物件は俺たちが購入したから、俺たちと契約し直すか、嫌だったら出ていく他ないんだ」

 

ーーーえ〜、私出て行ったら行く当てないよ

 

「嘘つけ、そこらに灯台も竈門もあるじゃないか」

 

ーーーでも、エルダートレントなんてなかなか捧げてくれないじゃない

 

「俺たちだってエルダートレントを馬鹿みたいに持っているわけじゃない」

 

ーーーえーっ

 

 大げさに悲しそうに叫んでみせるが、その炎の揺らぎはどこか楽しげだ。ほんの少し前まで、対話する相手もおらず精霊として消える寸前だったのだ。今の彼女にとって、この軽口すらも、寂しさから出てきた貴重な栄養なのだろう。

 もう少し経てば精霊として消えるところだったのだ。

 この屋敷の持ち主だった錬金術師は、おそらく彼女をちょっと火力の出る高級な種火くらいにしか見ていなかったんだろう。

 そういうのは、精霊が嫌うのだよ。

 

「じゃあ、俺たちの後に来るやつにその辺のことは話してくれ」

 

ーーーあなたたちがずっと住むんじゃないの?

 

「俺たちはリフォーム業者だよ。廃屋を買って、新品みたいな見た目にして売っ払う」

 

ーーーえー! あなたとは凄く上手く話せるから嬉しかったのに! 前の人なんてカタコトでしかも間違いまくりで頭がガンガンしてたからこんな巡り合わせもあるんだな、って喜んでいたのに!

 

「そりゃ、残念だな。次の人が心配なら出て行くのも手だぞ」

 

ーーーあなたが次に入る人、できるだけいい人探してよ

 

「ここに残りたい理由はあるのか?」

 

ーーー無いけど、あなたならいい人探してくれる気がするの

 

「めんどくせぇな。約束は出来ねぇぞ。善処はしてやる。とりあえず、前やっとは契約解除しろ」

 

ーーーやっぱり、あなたいい人ね! あっ、エルフか ていうか契約はとっくに切れてるわ。相手の契約不履行を理由に解除。私はただここに居座っていただけ

 

「だったら最初から出ていけよ。消えそうになることもなかっただろ」

 

ーーー私は信じてたの。昔読んだ絵本みたいに、私がピンチの時に助けてくれる白馬に乗った王子様が来てくれることを。

 

「残念だけど現実はそうじゃないだろ」

 

ーーーでも、あなたが来てくれたじゃない。待っていた甲斐があったわ。

 

 ほんと精霊ってやつは変わってるわ。

 

 

 

 おしゃべりに付き合い、次の屋敷の所有者と火の上級精霊ウェスティア=フレイアの契約は本人達で勝手にやるよう説明し、次の所有者をできる限り対話ができて仲良くやれそうな奴にするよう努力するから、お前も契約まではしなくてもいいから仲良く付き合ってやれよ、と話をつけた。

 

「脈絡のない会話が続いていたみたいだけど、結局どうなりそうなの?」

 

「契約は切れている。次の所有者とは契約するかはわからないけれど、仲良くはするってよ。こっちはできるだけ精霊にとっていい人に売るという努力義務で手を打ってる」

 

 ニーナが腕を組んで、ニヤリと笑う。

 

「つまり、精霊コンロじゃなくて、主を選ぶ『精霊が宿る暖炉』として売れるってことでいいの?」

 

「ああ。でも、精霊の宿る暖炉になるか普通の暖炉になるかは相手次第だな。過去の相場と比較したら、普通の暖炉として屋敷を売ったら7万ゼニーは価値が下がるはずだ。売る時に精霊と対話可能な顧客にだけ見学会の案内を送ろう」

 

 リフォームとはただ箱を直すことじゃない。その場所にある価値を正しく引き出し、その価値の分かる者に届けることだ。今回の暖炉は、間違いなくこの物件最大のセールスポイントになる。

 

 シスタールナが手を挙げた。

 

「営業してあげようか? この屋敷欲しがりそうな人に」

 

 あまりに出来すぎた申し出に、俺は思わず眉間にシワを寄せた。

 

「どうせ高額でだろ?」

 

「でも、リファさんが喜ぶ顔が見たいから無料でしてあげようかな?」

 

「お前のところの無料なんて一番怖い」

 

「んー、もう! いけずなんだから!」

 

 ルナが膨れっ面を見せるが、その瞳の奥には何かしらの計算が働いている気がしてならない。この聖女様が絡むと、金貨以上に厄介な何かを支払う羽目になる予感がするのだ。




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