【連載版】TS異世界リフォーム工務店 〜勇者がぶっ壊した魔族屋敷、格安再生して高く売れ!〜   作:劇団おこめ座

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3章 6話

 セニョールという赤い魔導士みたいな恰好をした前居住者の錬金術師を追い払って3日後、手にプラカードを持った16から20人くらいの団体がやってきて、リフォーム中の家の前の道路に陣取った。

 団体のTシャツには『スピリチュアル・ピース』と書かれていた。背中には、『精霊に自由を』。

 俺たち3人は嫌な予感がしてそいつらを見つめていた。

 ぞろぞろと雁首揃えてやってきた奴らはメガホンを口につけ、

 

「精霊を解放しろ!」

 

「精霊に自由を!」

 

「腐れ外道のエルフとドワーフは死ね!」

 

等と声を荒げていた。

 

「スピリチュアル・ピース、王国にある精霊保護団体の一つ……超面倒臭いのが来たわね」

 

 ニーナは頭を抱えた。

 

 

 

 精霊保護団体は精霊が使役されていることに異を放つ団体だ。ぶっちゃけ、色んな所で精霊と契約して使役し、その代償を払っている。だからこいつらの言っていることなんてナンセンスなのだ。

 しかし、こいつらはどこからか入手したのか、精霊を違法な扱い方をしているだとか、苦役をさせている、という情報を集めて、抗議運動をし続けている。

 ホント、どこから情報集めてくるんだろうな。

 

「たかだか、個人で使っている精霊コンロの精霊にまで抗議運動するとか、暇人の集まりじゃな」

 

「暇じゃないだろ。どっかからか金をもらって仕事として抗議してんだ、こういうやつらって」

 

 前世でもこういう団体は、大義名分を振りかざすが、大体裏でお金をもらって、お金をもらった奴らのライバル会社や国で騒ぐのだ。それを知らない一般人は、抗議されている者たちが悪い、と勝手に想像するのだ。だから、この手の抗議運動は邪魔くさいのだ。

 

「ほら、あの錬金術師がスピリチュアル・ピースのシャツを着て騒いでるぞ」

 

 俺は騒いでいる団体の奥に先日もめた錬金術師セニョールを見つけて指をさした。

 

「あいつが連れてきたってことなんじゃな」

 

 ゴンザレスはでかいバールを取り出した。面倒ごとになるからそれ持って外に出んなよ、マジで。

 

「でも、まずいわね。この団体が抗議している物件だと見学会への来場予定者に知られたら……誰も買わないでしょうね。つまり……」

 

「セニョールに金はないけれど、俺らにお金で解決してもらえるに違いない、と思われて狙われたんだろうな」

 

 俺たちはため息を吐いて、屋敷を覆うドームの一部を解除して、キチガイ精霊保護団体の前に進む。

 まさか出てくるとは思っていなかったのか驚いて後退り、声を荒げる。

 

「本当のことを言われたから実力行使をするのか!」

 

「暴力反対! 精霊に愛を!」

 

「助けてくれ! ドワーフが殴ってくるぞ!」

 

 こいつらの口を針と糸で縫いつけてやりたい衝動に駆られるが、グッと我慢する。

 

「俺たちが精霊虐待してるって?」

 

 俺がそう問いただすと

 

「とうとう認めたな!」

 

「精霊に自由を返せ!」

 

と口々に叫んで話にならない。深く息を吐く。

 

「精霊は好き好んでここにいて、出て行っても構わないと俺は契約している」

 

 俺の声を聞いてさらに興奮して大声を出してくる。

 

「嘘をつくな!」

 

「早く精霊を解放しろ!」

 

 ほんとこいつらどうにかならないかな。

 今すぐ頭に雷でも落ちて死んでほしい。

 俺は早く仕事に戻りたいんだよ。

 

「虐待してないことを証明したいが、どうすれば証明できる? そして、あんたたちは納得するんだ? このままでは平行線だ」

 

 俺の説明を聞いて幾人が声を出すのをやめる。

 その中の一人が前に出てくる。くせぇセニョールだ。

 

「そうだな。家の中を見せろ。じゃないと納得できないよな。そうだよな、みんな!」

 

 そうだそうだと声が重なる。

 

 そうか、セニョールの目的はこれか。

 

「この屋敷は見た通りリフォーム中だ。こんなに大勢は入れられない。いろんな道具がおいてある。危ないからな。そっちで代表者を人選してくれ」

 

「俺が行く!」

 

 セニョールが一番に声を上げて手を挙げる。わかりやすすぎて一周回って尊敬しちまいそうだよ。

 

「この家の元所有者のセニョール、お前以外だ」

 

「なんだと! こいつは都合の悪いことがあるから俺を排除した!」

 

「スピリチュアル・ピースの代表者は誰だ?」

 

 スキンヘッドの男が手を挙げた。

 

「じゃあ、あんたの他に2名。セニョール以外の者でなら応じる。ここまで譲歩してダメなら衛兵を呼ぶぞ。どうせ道路で抗議活動をするのに道路使用許可なんて取って無いんだろ」

 

 スキンヘッドは顔色ひとつ変えず、ただ強く鼻から息を吐いた。

 

「ふん、いいだろう。条件を飲んでやる」

 

 そうスキンヘッドが言うと、セニョールがスキンヘッドに掴み掛かろうとする。

 

「おい、俺の大切な精霊が酷い目に遭っているんだぞ!」

 

「なんだてめえ、代表代行を信じられないのか!」

 

 セニョールが周りのスピリチュアルピースのメンバーが取り囲み身動きが取れなくなり、さらに怒鳴られ始めた。ざまあみろ。このスキンヘッド、スピリチュアル・ピースの偉いやつなんだ。

 

 

 

 玄関から入りリビングを見せる。

 リビングの床は鏡面加工したミルクや砂粒ようの物が混じったような石材。暖炉からの飛び火が心配だからな。

 暖炉の周りの床は高級感を感じやすい黒色に白色の細い線の模様がある大理石風の石材。全部俺の土魔法製だ。壁も白色系の石材の壁となっている。

 

「こんな高級なリビングは見たことない。これでまだ建築中なのか?」

 

「そうだ。内装がまだまだ足りて無いしテーブルも何も無いからな。あれが精霊が宿るのはあの暖炉だ」

 

「精霊コンロだと聞いたが?」

 

「暖炉型精霊コンロだ」

 

「改築中ではあるが、汚くしているわけでは無いし、精霊の淀んだ雰囲気もない……」

 

「そうだな。ニーナ・ロベリスタのデザイン案に基づいたリフォームだから満足してんじゃね?」

 

「全面石材のリビングにした理由は?」

 

「上級の精霊ほど空気を読むんだ。火災にならないように、火の属性を持つ精霊自体が心配になって出現するのを控える。だから、床を石材で張り巡らせている。万が一インテリアが燃えることがあっても壁も石材、天井も石材だから延焼もしない」

 

「やはり、エルフが建築現場にいて有名デザイナーのニーナ・ロベリスタがデザインすれば、精霊にとっても、いい環境を整えるか……」

 

 スキンヘッドがそう呟くと、暖炉に淡い炎が浮かぶ。虹色の小さな炎。それに驚き。そして目を瞑る。

 

「……この炎。かつての慟哭(どうこく)が、まるで嘘のように安らかだ……」

 

 スキンヘッドはぶつぶつと呟きながら涙を流し始めた。この人、メンタル、大丈夫だろうか。

 

「私には聞こえる。過去の苦しみから解放され、平安の時を過ごす精霊の歓喜を。 今、静かな安らぎの旋律を刻んでいるのを……」

 

 何、この人……中二病?

 それとも情緒不安定な人?

 

 すっと、火の上級精霊のウェスティア=フレイアが姿を表し横に立つ。

 

ーーーこの人には見えないように姿を出しました。この人は私たちの言葉はわからないけれど、気配や気分を読むことができるのよ。

 献身的な宗教家みたいな人かな?

 

 うわ、面倒なやつのさらに上澄みじゃん。

 金儲けで宗教やっている中に、マジもんの倫理観高いヤバい人。時には偉人として讃えられる系の。

 

ーーーまあ、アレな人系だと思うけど、私たち精霊のことで嘘をつくタイプじゃないね。

 

 そう言って、姿をスッと消した。

 その瞬間、慌ててスキンヘッドは俺の方を振り向いた。

 

「そこのエルフ! 肩に尊き御方の気配が! まさか、其方は愛し子か!?」

 

「え、あ、違う。今の契約者なだけだ」

 

「この感じ……貴様、愛されていることを知らないのか?」

 

 こいつ、リフォームして売り渡す時に契約解除するなんて言ったら発狂しそうな感じだ。

 言葉には気をつけよう。

 

「とりあえずさ、俺たちがこの火の精霊に虐待をしているだなんてあり得ないだろ」

 

「そうだな。悪かった。ウェスティア=フレイアの安らかな心を垣間見た。手間をかけさせたな」

 

 スキンヘッドの男はリビングから出る際、精霊コンロに向かって一礼しそのまま建物から出て行った。




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