【連載版】TS異世界リフォーム工務店 〜勇者がぶっ壊した魔族屋敷、格安再生して高く売れ!〜 作:劇団おこめ座
精霊愛護団体のやつらはあれ以来見てない。
滞りなくリフォーム終えて、見学会を開く。
見学会も評価が高く、上級精霊がニコニコと応対するものだから注文が殺到した。
驚いた事に見学会に来ない者から申し出を受けた価格が一番高く、売ろうか迷った。精霊との相性とかその辺が心配なのだ。
しかも、本人ではなく代行者による申請だ。
「この申請者、私の友達だから大丈夫よ」
いつの間にかいたシスタールナがそう声をかける。
忍びの者なのかな?
「というか、申請者代行の名前がお前だよな」
書面には
申請者 秘匿
代行者 福音のカーテン シスタールナ
とだけ書かれている。
こんな書面、日本なら許されないだろ。申請者が売主にわからないとか意味不明だろ。購入した後の登記とかどうするんだよ。
「全部、祝福のカーテンで責任とってくれるなら俺たちは売るだけだからな。まあ、あとはウェスティア=フレイアがそれでいいと言うならいいんじゃないか?」
精霊コンロという名の暖炉から虹色の火花が飛び散り、真っ赤な長い髪の毛でたれ目の優しそうなお姉さんが現れる。ウェスティア=フレイアだ。優しそうだけど、キレたらめっちゃ怖い。自分のことはともかく他の精霊にやらかした奴には容赦ない。軽く人の腕切り取るからな。
ーーールナちゃ〜ん、その人いい人なの?
ウェスティア=フレイアは酔っ払っているような、眠そうな感じで話す。まあ、性格が少し抜けているから、特に気が抜けている時はこんな喋り方するんだろう。
「いい人も何も……ね」
ルナはちょいちょい、と手をウェスティア=フレイアに近づくようにジェスチャーをし、近づいてきたウェスティア=フレイアの耳に何やら小声で話す。
ウェスティア=フレイアはこちらをチラチラと何度か見て頷く。
ーーーえっー! それ、楽しみすぎるぅー! その人でもういいんじゃない!
ウェスティア=フレイアはこれまでにない良好な反応だった。見学会に来た誰よりもだ。
「おいおい、実際に会った方がいいんじゃないか? 後でこんなんじゃなかったのに、だなんて思っても知らないぞ」
俺の忠告なんて全く聞く耳持たず、浮足立っていた。もう知らんぞ。
それにしても、本当に元気になったもんだ。
食事もそうだけど、あの汚部屋で生活させられてよく生きていたよな。
元から強い精霊なんだろうけど……。
今は環境も良くしたから、きっと気も緩みっぱなしなんだろうな。
精霊コンロのあるリビングは御影石みたいな床だ。正確には俺の土魔法で作り上げたとんでもなく硬くて頑丈な石の床だ。
真っ黒の方が高級感があっていいだろうと作って、ニーナに一発でボツを食らったのも懐かしい。
今は、新鮮なミルクをゆっくり煮込んだような優しくまろやかな象牙のような色合い。その柔らかな色合いの中に、大自然が気まぐれに散りばめたような薄茶色や淡いグレーの細かな結晶が浮かんでいる。
陽の光や、暖炉のオレンジ色の炎がその表面をかすめると、石は、光をその身に優しく吸い込み、部屋全体へともう一つの温もりとしてそっと押し返す。
触れれば確かにひんやりとした大地の硬質な冷たさがあるのに、視線を受け止めるその表面は、どこまでも深く、毛布のように温かい。
この表面を作るのに何日かかったことか……。
暖炉のあるこの部屋だけは壁も石材だけだ。火の精霊が誤って火災を起こしたらまずいからな。
床に設置したソファは飛竜の革製、足元とテーブルの下に引いた絨毯は火虎の毛皮から作られた防火性能の高い物。
これだけあればうっかりやらかしても最低限の被害で抑えられるだろう。
でも、本当の醍醐味は、リビングから出れるベランダの方にある。
ベランダの大きな窓に目を向けると、月明かりが池の周りに敷き詰められた白砂を淡く照らし、水の清らかさを際立てていた。飛び石が鈍く銀色に輝き、池の淵に置いた改造した魔道ランプ……灯籠があたたかなオレンジの光を出していた。
深い影となっていた周囲の木々の葉が風と共に淡くオレンジ色に輝いていた。
このタイプの庭は複数の種類の精霊が居つきやすいと思って制作したものだ。
実際に、池の周囲には水の精霊が、木々の周りには木の精霊、そして風の精霊が漂っていた。
建物の中には火の上級精霊がおり、他の精霊は居つにくいのだが、上級精霊が傍にいても関係なしに留まりそうな変わり者の精霊にアピールするものだ。周囲にこのようなタイプの庭はないので、精霊の中でもかなり変わり者が来てくれる。
その精霊達が逃げて行かないように、特に澱みやすい池の底に洗浄の魔法陣を刻んである。精霊から自然に放たれる程度の魔力で発動する効果の弱い物だが、池の大きさを鑑みて、非常時の飲料水にできる程度にはなる。煮沸は必須だけどな。
この庭園、いわゆる日本庭園というやつには苦労した。
この世界ではこの庭園は、東洋庭園と呼ばれるものだそうだ。
俺はこの庭園案を出した時はニーナは却下した。
この地域の建築様式と、東洋庭園は合わないとは言わないが、奇抜だし、売れにくくなる、または付近の不動産相場より販売価格を低くしなければならないということだった。
変わった物が好きな精霊にはウケるし、そもそも自然の中にあるような東洋庭園は精霊を居つくように仕向けやすいと思ったのでどうにかならないかな、と俺は考えた。精霊が金を出して住み着くわけではないけどな。
そもそも、精霊コンロを精霊暖炉として使いたいようなやつは変わり者だし、精霊が好みやすい環境も好むに違いない。そこに付加価値をつけられるような気がしたのだ。
それに火の精霊と水の精霊は相反しやすいから、両方が存在して仲良くやっているならば、絶対に欲しがるはずである。
そもそも火の上級精霊のウェスティア=フレイアは緩い性格だし、自分のことはともかく他の精霊のためにぶちぎれる性格なんだ。他の精霊に嫌われるような精霊ではない。
だから、なんとかして日本庭園、東洋庭園を庭に作りたかった。
俺とニーナの話し合いを黙々と聞いていたゴンザレスが、
「庭から見える建築様式を東洋風にして、リビングの小物とかを東洋のものを置いてアンバランス感を減らすのはどうじゃろ?」
「まあ、それなら変な感じはしにくいけど……苦労の割に販売価格は反映されないわよ」
「そうかもしれんが、リファの魔法で石材は無料だ。かかるのは木材系と人件費じゃろ。それに、下手な庭を作って、また変な精霊保護団体に来られても買主が困るじゃろ」
あの面倒なスピリチュアル・ピースとのやりとりを思い出したのか、ニーナは頭をガシガシと爪で引っ掻いていた。
「まあ、仕方ないわね……東洋の庭はあまり詳しくないけどリファが知っているみたいだし、任せるわ。私は建物の方を中心にやるからね」
そう言う風に俺が庭園を任されたが、結局どうやって作り上げればいいのかわからなく、最終的にはゴンザレスがほぼ全てやってくれた。
「お前、何度も東洋庭園を見てきたような感じなのに、庭の再現はできないのじゃな、ガハハ」
「いや、過去に見ただけで造園できるお前がおかしい」
「お前さんはまだまだこういったものに対する情熱が足りんのよ」
涼しい顔でそう言いながら造園を手がけていた。
悔しいけど、すごい才能だと認めざるを得ない。
俺は、シスタールナと契約書を交わし、外に出る。
ーーー本当にもう来ないの?
門の前にウェスティア=フレイアが現れる。
眠そうな瞳が今はパッチリ開かれ、少し揺れていた。
「基本的には来ないさ。新しい契約者と仲良くしてくれよ」
ーーーそれはもちろんだけど、また来てくれないの?
なんだそれ。そんなに好かれるようなことした覚えないぞ。
「日本庭園……いや、東洋庭園の維持のために出張依頼があればくるさ……ゴンザレスだけ」
そういうと、瞳の奥に炎が宿ったような気がした。なに、こわっ。
「ああ……俺も来るよ、勉強になるからな」
するとにっこりと笑顔を作る。
ーーーその時は美味しいおみやげ頼むわね
ああー、くそ、ゴンザレスだけで行ってもらおうと思ったのに!
こんな話を言われちまったら、ゴンザレスだけで行ったら精霊がぶちぎれるかもしれないじゃねえか。腕、切り取られるかもしれない。
俺はため息を吐いて、
「お土産は俺が無事顔を見せたことで勘弁して」
そういうと、素直に頷いた。
本当に精霊ってやつはわけわからん。
【今回のリザルト】
出費内約
物件購入費(土地付き)
25万5000ゼニー
材料購入費
ブラックウォルナット材 11万2000ゼニー
樹木(赤松、イチイ、イロハカエデ、ツツジなど) 7000ゼニー
その他消耗品 5000ゼニー
トラブル対応
シスタールナ派遣費用 10万5000ゼニー
合計出費
48万4000ゼニー
最終販売価格
103万ゼニー
確定利益
54万6000ゼニー
(日本円で約5460万円相当)
パーティ資金への持ち越し
27万3000ゼニー
一人当たりの利益
約9万1000ゼニー
(日本円で約910万円相当)