【連載版】TS異世界リフォーム工務店 〜勇者がぶっ壊した魔族屋敷、格安再生して高く売れ!〜   作:劇団おこめ座

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1章 4話 特殊施工(除霊)業者 福音のカーテン 

 パーティみんなの顔がどんよりと意気消沈した。

 

 そういう時は……クソ高いけれど呼ぶしかない。

 

「『福音のカーテン』を呼ぼう。あの業者の工賃は高いけれど技術は信頼できるし、作業内容は絶対に秘密にする」

 

 そういうふうにして、俺たちは事故物件の隠蔽を図ることにした。

 

 

 

 ニーナが念話で福音のカーテンに連絡して、すぐに派遣決定され、ニーナが転送で運んできた。最近うちのパーティにほぼ専属のようにやってくる、シスター『ルナ』だ。

 シスターの修道服の上にさらに白いフード付きのカーディガンを着て、フードもしっかり被っている。

 認識阻害の魔道具でも身につけているのか、顔自体は見えているのに、記憶に残らない。

 

「今回の知られてはいけないことは……リファさんの堕胎かしら? ところでお相手は?」

 

「するか!」

 

 思わず声が裏返る。

 

 ニーナが横でぼそっと言った。

 

「顔真っ赤だけど、本当にそういうことした自覚あるの?」

 

「ニーナもその話題に乗っかるな!」

 

 このルナは俺に妙にゲスい性的な冗談をふっかけてくる。馴れ馴れしいを通り越している。でも、最近ではもう当たり前にさえ感じるようになった。職業病かな?

 

「俺たちはリフォームのプロ。除霊や解呪はその道のプロに任せるだけさ。今回はあんたらの力が必要だ」

 

「確かに除霊もできるけど、福音のカーテンは主に貴族のお見せできない困りごとを解決する集団なの。よくあるあるのが堕胎とか性病治療とか」

 

 貴族の秘め事となる事象で呼ばれることがほとんどにも関わらず、俺たちは施工業者として手配している。費用はそれなりに高いが腕は確かだ。

 ルナの話を打ち切って、建物の中に連れて行く。

 

「早速、仕事の話だけど、地下に拷問部屋があって、悪魔降臨の儀式をした可能性の高い痕跡がある」

 

 

 

 拷問部屋にまで案内し、扉を開けるとまた嫌な臭いが漂ってくる。

 ルナは一瞬だけ目を細めたが、すぐに何事もなかったかのように中へ踏み込んだ。

 ルナは部屋の中心まで躊躇わず入っていき、周囲を見回した後、俺の方を振り向いた。

 

「……これは、紛れもない事故ですね、この物件を購入したことが」

 

 冗談を言うような軽い口調なのに、ざくりと胸に刺さる。でも、やっぱりそうだよなー、と俺も思う。

 

「それに、おそらくたくさんの浮遊霊が漂っていると思うんだけど、俺たちではどうにもできないし、放置するとレイスだとかになって購入者を困らせる。それに……」

 

「それに?」

 

 ルナは俺の目を覗き込むように質問した。

 

「……かわいそうだからな」

 

 こういうことを言う柄ではないのは知っている。俺がケチくさいのに、こういうことには金をかけたりするから。だから、よく、仲間たちからは、こういうことを言うと、妙に微笑ましい目で見られる。

 実は狙ってやっているとでも思われてんのかな。

 

 案の定、ルナは小さく笑った。

 

「……あなたらしいですね」

 

 でも、その目はどこか優しかった。

 

「それに、この部屋を綺麗にしてワインセラーにすると絶対にウケる。俺が住みたいくらい」

 

 間髪入れずに続けると、ルナは無表情になる。

 

「間違ってました。あなたはサイコパスですね」

 

 ニーナとゴンザレスが横で小さく吹き出した。

 

「付加価値を埋め立てるの、もったいないじゃん」

 

 

 

 シスタールナは部屋の入り口付近で膝まずき、部屋の中央に向かって両手を組む。

 その仕草は、さっきまで下世話な冗談を飛ばしていた人物と同一とは思えないほど、静かで、所作に迷いがなかった。俯き、そして聖句をつぶやく。

 何を言っているかは、はっきりとは聞き取れない。

 でも、明らかに、祈りが始まった瞬間、空気が変わった。……あのふざけたシスターが祈るだけで。

 冷たい地下室が、静かに、徐々にに澄んでいく。

 まるで、ここで死んだ人間たちがやっと一息をつけたかのように。

 この不器用で空気を読めない俺ですら、尊く、神聖な何かを感じた。思わず俺は、両手を合わせた。

 光の差し込まない部屋に光が溢れ出し、上へ消えていく淡いモヤ、そして、魔法陣からは青白い炎が一瞬現れ、すぐに魔法陣ごとと消えた。

 やり終えたシスタールナは俺に振り返る。その姿は昔見た聖女サンの立ち振る舞いにどこか似ていた。

 

「迷える子羊が旅立ちました」

 

 さっきまで確かにあった『何か』が、完全に消えている。

 それがわかるのに、理由は説明できない。

 

「リファさん、それは?」

 

 声をかけられて俺のことかと、ハッとする。

 ルナは俺の両手を合わせた形をのことを言っていた。

 

「俺の生まれたところはこういう風に手を合わせて死者の冥福を祈るんだ」

 

「リファさんは異教徒なのですね……異教徒だと知られたら……ウフフ、ここだけの話にしますね」

 

 ルナの一言一言が怖すぎる。

 異教徒狩りなんてものがあるかもしれないから気をつけよう。

 

 

 

 ルナは人差し指を2本立てた。

 

「今回の作業代の請求額です」

 

「2000ゼニーか?」

 

 にこりと笑っているが、違うと言っている気がする。

 

「はあ!? 2万ゼニー?」

 

 ルナは指を目の前に寄せて横に傾けてアイドルみたいなポーズを取り、満面の笑みを作る。

 

「20万ゼニー」

 

「マジでふざけんなよ!? この家の土地代と同じじゃねえか!」

 

「妥当でしょう? 悪魔降臨の魔法陣を周囲に被害なく解除、解呪、浮遊霊へ進むべき場所へ案内。秘密の保持」

 

「くぅー」

 

「慈善事業じゃないんですよ? でも、サービスしているんですよ? ね、ニーナさん?」

 

 シスターの業務が慈善事業じゃないとか、この世に神も仏もいないのか?

 

「普通の教会に比べれば高いけれど、腕は確かだし、私が転送するから、出張代分も割り引いてくれている」

 

「でしょ? 今度はリファさんが性病にかかったら治療に呼んでね。相手も教えてね」

 

ーーー

 

 物件購入費が12万2000ゼニー

 

 チーク材が15万ゼニー

 

 事故物件対応費用が20万ゼニー

 

 合わせて47万2000ゼニー

 

 販売予定価格が113万ゼニー

 

 予定利益が65万8000ゼニー

 

 しかし、これから次の物件購入費用のために物件購入費と残りの利益の半分をパーティ費用に入れる契約だから、

 

 三人で分けられる報酬は26万8000ゼニー。

 

 分けると取り分は約8万9000ゼニー。

 

 さらに減るわけだ。

 俺のアースランスでぶっ壊したリビングのフローリング分。




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