底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
「こんばんちゃー、ニート系Vtuberの根黒万太郎です……はい。今日の配信は――」
お決まりの挨拶、お決まりのメンバー。
疎らなコメントであり、当たり障りのない内容。
それらを読みながら、俺は今日も底辺だと再認識する。
俺はVtuberであり――底辺だ。
登録者数は100人ほどで。
特に尖った内容の配信はしておらず。
当たり障りのないゲーム実況ばかりだ。
雑談もするが、特にこれといってバズった記憶はない。
仮想現実世界なるものが当たり前となり。
VR技術が大きく進化した現代では。
Vtuberという職業は正に夢の職業で。
誰しもが一獲千金を夢見てこの業界に飛び込んでくる……が、現実は非情だ。
需要よりも、供給過多で。
どれだけ才能あふれる人であろうとも。
それ以上の才ある存在によって淘汰されるのがこの世界で。
正に、弱肉強食とはこの事だ。
多くのVが生まれては、誰にも気づかれず果てて行く。
俺も活動を始めて、一年になるが……そろそろ引き際か。
ウチは裕福な家庭で。
両親も生活に困らないようにとマンション一棟を俺に与えてくれた。
その家賃収入で、別に無理して働く必要はないのだが。
毎日毎日、配信生活ばかりでは、こう……人間的にどうかと思えて来る。
配信活動は楽しい。
が、社会に貢献できているかどうかは微妙だ。
俺としては、もっと真面な社会人として……いや、やめよう。
恵まれているんだ。
それで十分じゃないか。
社会に出るかどうかは、まだ後で考えればいい。
今日も態々、俺の配信を見に来てくれた人たちを楽しまなせなければ。
俺はそう考えて、ウチの古参メンバーの一人である“タライさん”のコメントを読む。
【今日はどんなゲームをするの?】
「あ、タライさん。こんばんは……今日はですね。これをしようかと……はい」
俺は今からやるゲームのパッケージを腕を振るって出現させる。
それはメカメカしいロボットが戦場を翔けるイラストだった。
“タイタングリード”と呼ばれるタイトルであり、所謂、ロボゲーの代表作のようなものだ。
好きなパーツでカスタマイズし、チューニングなどで個性も出せる。
シリーズ物であり、一つ前の“タイタンヘブンフォール”はやり込んだ記憶がある。
前作はかなりの曲者であり、リアルに忠実にするあまり。
かなりプレイが難しいものだったと言われていた。
今のようにオンライン対戦機能は無かったものの。
一番優しい難易度でもストーリーをクリアするのはかなり難しかった。
まぁオンライン対戦はないものの、ランク戦のようなものはあり。
そこでは一癖も二癖もあるNPCたちとの熱いバトルがあって……おぉいけないいけない。
昔を懐かしむばかりにトークがおろそかになった。
俺は咳払いをし、ゲームの説明を続ける。
まぁ仮想世界の個室空間にて、腕を振るったりするだけで色々な作業が簡略化できるのは便利だ。
そんな事を考えながら、ゲームの説明をすれば、古参メンバーたちは説明不要とばかりに少し興奮していた。
【へぇ、タイタングリードか! 俺もやってるよ!】
【ウチも! これ超面白いよねー!】
【私もタンク使いとしてやってますよー】
「……あぁ、やっぱり、人気なんですねぇ……実は、僕も一つ前のものはやり込んでたんですよぉ……まぁ十年も前ですけどねぇ」
俺がそんな事を言えば、歳がバレると心配してくれる。
が、もう俺の歳なんてバレてるようなものだ。
年齢28歳の独身男性。
名前は
都内のマンションに住んでいるごく普通のライバー……自分ながらにパッとしないなぁ。
そんな事を考えながら、俺は早速プレイしていこうかと宣言する。
指を操作して、ゲームを起動すれば。
個室空間が一気に変化し――プレイヤーの与えられた自室へと移動する。
【あれ? キャラクターはもう作ってたの?】
「あ、はい……その、まごついたりしたらストレスかなぁって思って……へへ」
俺はそんな事を言いながら、ヘルメットを被ったまま頬を掻く。
すると、古参メンバーたちは気にしないよと言ってくれる……あったけぇ。
【対戦? それとも、エネミー戦?】
「あぁ……そう、ですねぇ……皆さんは、どっちがいいですか?」
俺が何と無しに聞けば、古参メンバーたちは対戦が良いという。
中々に血気盛んだと思いつつ。
まぁそれならそれでいいかと承諾する。
「フリー対戦で行きますねぇ。ランクマッチは、まだ経験無いので……よし、これで……お、早速ですねぇ」
フリー対戦を申し込めば、早速、対戦相手が決まる。
相手の傭兵ネームは……“カタギリ”か。
【……“紫電のカタギリ”……この人、プロじゃね?】
【まさかプロと当たるなんて……胸を借りましょう!】
【大丈夫!! 何とかなれー!】
「………え、この人、プロなんですか…………まぁ、いい経験になると思いましょうかね。はは」
俺は内心ではついていないと思った。
プロゲーマーなんかに趣味でやっているような凡人が敵う筈がない。
相手はゲームでお金を得ている人間だ。
俺は何とか健闘しようと思いながら、愛機を選択する。
【ごりごりの量産型だねぇ。チューニングはしてるの?】
「あ、一応はしてますよ。こう見えて僕、速さに重きを置いてるので……まぁ、その代わり紙装甲ですけどね」
俺が後で、パラメーターを見せると伝える。
そうして、愛機の選択が終われば。
俺の体は自動的に転送が始まり――次の瞬間にはコックピッドの中だった。
「わぁ、これだよこれ! この感じ……はぁ、懐かしいなぁ」
俺はガチャガチャとレバーやペダルを動かす。
懐かしさから少し饒舌になれば。
古参メンバーの方々は、お母さんの如くうふふとコメントする。
少し恥じらいを覚えていれば――相手がボイチャをつけて来た。
《おたく、配信してるの?》
「え? あ、あぁ、はい……あ、切りましょうか?」
《んー? いや、別に構わねぇけど……手加減はしないからねぇ》
「あ、はい。お手柔らかに」
相手はくすくすと笑いながら、通信を切る。
すると、先ほどの会話を聞いていたメンバーたちが少しムッとしていた。
【何あれ? 感じ悪!】
【俺が戦ってたら、あんな奴……くぅ!!】
【いや、ちゃんこさんでも勝てないでしょ? プロっすよ?】
「ははは、ま、まぁまぁ……これから強くなるからさ!」
俺がそう伝えれば、皆は頑張れと俺を応援してくれる。
俺はこれが踏み台の気持ちなのかと思いつつ静かに頬を濡らす。
あっと言う間にステージの選択が終了。
次の瞬間には移動が完了し、何処かの廃都市に降り立つ。
俺の愛機である“7A”――別名、セブンエース。
元々は中量級のバランス志向の機体だったが。
俺が余分な装甲を全てそぎ落とし。
スラスターなども弄った事で、瞬間加速に特化した高機動型へと変貌している。
細身のスタイルに、丸みを帯びた頭部に青いバイザー。
灰色を基調としたカラーリングに、本当なら以前使用していたデカールを張りたかったけど……恥ずかしいからやめた。
ランドセル型のバックパックには三つのノズルが伸びて。
機体の各部にも小型の噴射口を増設した事によって細やかな軌道の変更を可能としている。
エネルギーの消費量は増大したが、そもそも長期戦なんて想定していない。
短期決戦であり、武装に至っても集弾性能の高いショットライフルと近接特化のパイルのみ。
【……それにしても、随分と尖ったスタイルだね……これはひょっとして?】
「ふふ、期待してくださいね……まぁ、頑張りますよ」
俺はそう伝えながらカウントダウンを待つ。
五秒前となり、俺は少しだけ緊張する。
久しぶりの戦場、久しぶりのコックピッド……あぁ、でも。
残り一秒となり――微笑む。
「――楽しもう」
俺はそう呟き――ペダルを踏む。
瞬間、体全体に凄まじいGを感じる。
圧倒的な加速。
それを受けながら、俺は空を舞う。
すると、すぐに相手の機体を発見した。
完全に舐めている。
隠れ潜む気が更々ない。
相手はそのまま俺へと距離を縮めて――アサルトの弾を放つ。
ガラガラと音を立てて弾が迫る。
無数の弾丸。が、俺はそれを軽やかに回避。
そのまま空を舞いながら、追走してくる敵のロックオンを肌で感じ――急旋回。
《……!》
九十度に機体を曲げる。
そのままトップスピードのまま突き抜けた。
相手はすぐに対応し此方を追って来る。
俺はそんな敵の動きを分析し――連続してブースト。
スラスターから爆発音のようなものが連続して響き。
そのまま出鱈目な動きで相手へと迫る。
相手はギョッとしながらも攻撃――当たらないよ。
全ての弾丸を回転し避ける。
紙一重であり、装甲のギリギリを弾丸が通過。
そのまま相手の脇を抜けながら、ショットライフルを――放つ。
《――くぅ!?》
すれ違いざまに相手の胴体を撃ち抜く。
が、初期の武装であるからこそ大したダメージは無い。
相手のHPはまだまだであり――それなら。
俺は相手が動きを変えるのが確認。
距離を置きながらの高機動戦だ。
それを見つめながら、俺は相手へと一気に接近する。
相手は距離を置く為に、機体を加速させて灰都市の内部へと潜り込む。
景色が勢いよく流れ。
倒壊した建物が間近に迫る。
が、俺はそれらを自らの体のように機体を動かして回避。
相手は無駄な動きがあり、良い機体であっても此方の方が速度は上で――背中を捉えた。
《くそッ!!!》
相手は背面飛行をする。
此方に両手のライフルを向けて放ち。
俺はそれを回転によって回避。
全ての弾の軌道を予測し、それが通過していくように機体を動かす。
そうして、舞う様に機体を動かし――ブースト。
《うぁ!?》
一気に距離を詰め、相手のコックピットに銃口を当てる。
連続してトリガーを引き――三連続ヒット。
ゼロ距離からの攻撃。
流石の高性能機体にも無視できないダメージが入る。
相手は激しく困惑しながらも、切り札を発動し――俺は一気に距離を取る。
装甲のパージ機能。
ダメージを負った装甲を弾丸として放つ技。
それを一瞬で見抜き距離を離す。
相手はその隙に一気に俺から距離を取っていく。
廃都市の中を駆け抜けて、障害物の中に潜り込む……無駄だよ。
俺は一気に地面スレスレへと機体を降下させる。
そうして、車やらトラックやらの残骸を回避し。
そのまま敵が移動したルートを辿りながら。
サーチを使用し、相手の位置を探る。
このゲームにおいて障害物の多いフィールドでは潜伏するのが基本。
奇襲が最も有効的な攻撃だが。
奇襲を仕掛ける為には、相手の正確な位置を知る必要がある。
レーダーなどがそれであり。
レーダーは大体が、自分よりも上にある存在を見つける事に特化している。
つまり、超低空飛行をしていれば――相手は此方を発見できない。
俺はそのまま、相手が潜伏している可能性が高いポイントへとたどり着き。
そのままビルの表面を滑りながら移動。
一気に大穴の場所へと入り――いた。
《はぁぁ!?》
驚いている。
そんな敵に対して、一気に距離を詰める。
相手は逃げようとするが――もう遅い。
俺はパイルを相手のコックピットへと宛がう。
そうして、薄く笑みを浮かべて――
「対あり」
《ああぁぁ!!?》
炸裂音と共にバンカーが相手のコックピットを貫く。
相手の機体のHPは一気にゼロとなり――勝負は決した。
フリー対戦が終了。
そのまま、余韻に浸るまでもなく自室へと帰ってきた。
フリー対戦であるからこそ、報酬などは無い。
ただの自己満であり……俺はコメントを読もうとした。
「いやぁ何とか勝てましたね。運が良かったようで……あ、あれ? 何か、速くなって……あれ?」
コメントが――勢いよく流れている。
古参の人たちはいるが。
それを塗り潰すように多くの新規さんがいる。
何を言っているのかも分からないほどにコメントが速い。
気になって、一部を読んでみれば……え?
「あの動きは何、何処で訓練を……日本代表候補にもなった奴に素人が勝つなんて……もしかして……バズってる?」
たった一度の対戦。
が、相手がプロだったからか……何故か盛り上がっている。
バズりの高揚感を味わっていれば。
通知音が鳴り……対戦希望?
ぴろぴろ鳴っている。
そのどれもが対戦希望者だった。
「こ、これが……バズりの洗礼」
【今がチャンス!! もっと戦うところを見せてー!!】
【君なら出来る!! このままランクマに挑戦だ!!】
【俺は未来のチャンプに出会ったのか?】
口々に好き放題言うリスナーたち。
俺はごくりと喉を鳴らし、震える手で対戦の申し出を受けて行った。