底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
弟子が出来た。
可愛い美少女の弟子であり、年齢は17歳らしい……現役の女子高生ぇ。
指導なんかを求められる毎日で。
炎上だけはしないようにと丁寧に接してきたが――遂に問題が発生した。
ある時、何気なく配信の準備をしていれば。
ヌイッターから通知があり確認して、タライさんからのDMだと分かった。
内容は短く簡潔なもので――
《アルテミスの五期生の月島サラさんが炎上してるけど……関係ある?》
『……ふぇ?』
顔面蒼白で彼女のアーカイブなどを確認すれば――匂わせが半端では無かった。
『尊敬している人? うーん――先生かな!』
『はぁぁ、先生だったらもっと上手く出来るのになぁ。私って本当に……へへ』
『あ、このパーツ良い感じかも! もっと機動力を上げて……あ、でも、私よりも先生にあげた方が……』
『先生先生って、男ですかって? ……え、関係ある? 男だけど? 何?』
『異性として好きかって? はぁぁぁぁぁ――これは“崇拝”だから』
『先生!! 先生!! 先生!! もっと先生のように私はぁぁ!!』
匂わせとかではない。
香りではなくそのものであり、流石に炎上不可避だった。
俺である事はバレていないと思っていたが。
実際にはリリアンさんも月島さんとのコラボでその話題に華を咲かせていて。
俺であると秒で判明し――彼女だけが炎上していた。
何故、男である俺ではなく。
美少女である彼女が炎上しているのか。
謎過ぎて、炎上についてヌイッターで恐る恐る検索すると――
『ホワイトレコード様の弟子を名乗るなんて……身の程知らずが』
『あの程度の技量で伝説の弟子か……片腹痛いわ!』
『私の方があの方の弟子に相応しいぃぃ!!!』
『妬ましい!! 妬ましい!! 許さんぞ――紫電のカタギリ』
別ベクトルで炎上しているようで寒気がした。
が、炎上は炎上なので。
何かフォローしようと連絡したが。
彼女は問題ないと言って――恐ろしい生配信を敢行した。
タイトルは“喧嘩上等”であり、嫌な予感がしながら見ていれば――
『テメェら!!! 文句があるのならかかってこいやァァ!! どんな奴からの勝負も受けてやらァァ!!』
『月島さん。ホワイトレコード様の名を穢す事は許されません。全力で――ぶっ殺しなさい』
『はい!!!』
そこから始まる制限無しの連続ガチバトル。
無限にも思える壮絶な連続バトル。
名乗りを上げる猛者との連戦で。
危うい場面がありながらも彼女は20連勝までは頑張っていたが――負けた。
『ぅ、ぁ、ぁぁ? え、な、に、が、ぇ?』
――完敗だった。
相手は無傷であり、勝負の時間は僅か二分ほどだった。
バトルの内容を観戦していた俺はその戦い方に懐かしさを覚えた。
対戦相手の名前は――“バロール”。
ケルト神話で出てくる巨人の名。
太陽神によって殺される見た者を殺すという邪眼を持った存在。
その名に恥じない見事な戦い方だった。
機体は深緑色を基調とし、少し明るい緑色のラインが入っていた。
逆関節型の軽量級の機体で、胴体部は突き出し肩のアーマーはサブのスラスターと一体化し。
頭部のセンサーは複眼だ。
三対の青い光を放つセンサーが両側に逸れるように展開されていた。
流線形の頭部は上を沿う様に三つのブレードアンテナが伸びていた。
メインのスラスターは胴体部の後方へ突き出しロケットのようで。
左腕は特殊なクローとなったウェポンアーム。
右腕は状況に合わせてカスタムするのだろうが、月島さんと戦った時は“無手”だった。
戦い方はトリッキーの一言で。
変則機動のそれであり、予測がつかない動きだった。
月島さんのようなちゃんとしたところで学んだ人間にとって。
型なんて持ち合わせていない人間の戦い方はやり辛かっただろう。
1分ほどで相手の動きに対応できず。
クローにて機体を拘束されて、その後は、クロー内部のパイルで一突きだった。
合理的な戦い方。
相手の意表をつき、クローで身動きを封じ。
一撃必殺で戦闘を終わらせた。
そして、呆然とする月島さんに対してただ一言――
『お前は――先生の弟子に相応しくない』
『……っ!!』
あの戦い方には見覚えがあった。
ボイチャに関してはノイズによって年齢も性別も分からないが。
それでも、あの戦い方には何かを感じた。
そこまで出かかっていたが……結局、思い出せなかった。
その後は、月島さんも調子を崩す。
最終的には、35戦30勝5敗という結果になった。
残りの敗北は僅差であり、流石にプロだとは思った。
彼女は悔し気だった。
コメントでは煽るに煽られていたが。
彼女はもっと強くなってやると高らかに宣言し。
中指を立てながら生配信を終えた。
そんな刺激的な生配信を見終わり。
俺は疲れたからとすぐに寝た。
そうして、気持ちの良い目覚めと共にヌイッターで見知らぬ人間からDMが来て――現在。
「ほぇぇぇ」
やって来たのはタイタングリード内にある――闘技場。
行われている試合は、勿論、メックに乗って行われるものだ。
しかし、内容は通常のバトルとは完全に異なっている。
円形になった闘技場の観戦席から見える試合の内容は――殴り合い。
ステゴロであり、二機のメックが拳を打ち合っていた。
一方が攻撃を放てば、もう一方は肩のシールドでガード。
何方も機体そのものには一発も相手には打ちこめていない。
当然だ。一発でも機体に入れば――それで勝負は決する。
完全なるデスマッチ。
一撃当てれば即大破。
肩のシールドと拳と脚部の裏のみが相手の攻撃を防ぐ術。
勝てば賞金が手に入り、負ければ戦闘用にレンタルしたメックの修理費に加えて相手に賞金を払わなければならない。
タイタングリード内にある公式が用意した賭け試合。
ギャンブルが出来ない日本において。
ゲーム内でのみ成立するギャンブルだった。
……まぁ噂では、この試合を中継して本物のお金を賭けているなんて話も……はは。
「本当に、よく思いつくよなぁ」
俺は感心しながらも、そろそろ自分の順番が来るだろうからと席を立ちあがる。
思えば、此処に来る事になったのはあのDMのお陰だ。
差出人の名前はSという人間で、内容はこの闘技場において――10連勝しろというものだった。
動画映えしそうな気もしたが。
それよりも、出なければいけない理由も付け加えられていた。
それは所謂、脅しであり――
《もしも、三日以内に達成できなかった場合――お前が天馬財団の現会長である
『ふぁ!?』
流石に焦った。
俺が天馬財団と関りがあるなんて誰も知らない筈だった。
数少ないリア友は勿論、ネットのフレンドだって絶対に知らない。
しかし、Sとやらは確信を持っていた。
出るしかない。
腹を括って闘技場へとやって来た。
……まぁこれはこれで楽しいだろうけども?
動画については言及が無かった。
だからこそ、配信者としての活動もしつつ。
何とか頑張って10連勝を華麗に決めたいところだ。
俺はそんな事を考えながら、階段を降りて闘技場内部へと入り。
そのまま観客たちの間を縫うように通り。
更に下へと降りていき……あったあった。
「「「――」」」
「おぉ、流石に人が多いなぁ」
パイロットスーツを着込んだ傭兵たち。
数え切れないほどの人数で……多分、500人以上はいるのかなぁ?
全員が闘技場への出場者だ。
500人ものプレイヤーを出させられるのかと知らない人間は思うだろうが。
この世界は仮想世界で、ゲームの中だ。
今しがた、俺が観戦していた闘技場は“A-1”と呼ばれる闘技場だ。
つまり、闘技場という名称はひとくくりで。
実際には100を超えるほどの闘技場が存在している事になる。
指定すれば、すぐに見たい試合がある闘技場に飛べる。
待ち時間は長くても15分ほどで。
AIによって試合の流れも完全に管理されていた。
……まぁ、そもそも一撃で決まる試合だからこそ、戦闘時間も短いんだけどねぇ。
オンライン対戦機能の実装で。
こういう遊びも簡単に出来るようになった。
ヘブンフォールもかなり人気だったけど。
今のグリードはその何十倍も人気である。
その理由はこういった自由度の高さであり……お?
《対戦カードが決まりました。番号180番、番号192番。B-3闘技場へと指定の転送装置で移動してください》
「……よし!」
端末が鳴り、起動すれば。
180という番号が表示されていて。
視界には此処ですと言わんばかりにガイドがついていた。
俺の番であり、速やかに移動を始める。
傭兵の方々を避けながら進み。
そのまま転移装置の前にいる機械人の方へと番号を提示する。
《番号を確認しました――グッドラック!》
「どうもー」
そのまま俺は白い光を放つマンホールのようになった装置の上に乗る。
すると、あっと言う間に転送は開始されて――目を開ける。
「おぉ、また懐かしいコックピットだなぁ……スイッチも弄れるぞ!」
俺は興奮しながら、見覚えありまくりの古風なコックピットに喜ぶ。
それぞれに意味があるスイッチに、これみよがしなレバー。
ペダルも四つであり、レバーの操作感はかなり硬めだ……これこれぇ!
この機体は闘技場限定で使われる特殊な機体で。
“六七式”と呼ばれる旧式のメックと言う設定の機体だ。
遥か東の小国家で作られた初の戦闘用メック。
それを他国が買い取り、独自に改修して生まれたのが。
この“六七式闘技モデル”である。
コックピットのごてごてさはそのままに。
陸戦用にとスラスターに関するもの全てを取り除き。
理論上は人間と何ら変わりのない動きが出来るように改造されている。
つまり、この意味ありげなスイッチやレバー全てを使いこなす事が出来れば……そういう事さ!
そんな事を考えながらも、配信を始める事にする。
丁度、試合が始まるまで五分ほど時間がある。
その間に説明をしておくことにして――スタート!!
「……はい、こんばんちゃー! すみません、予定より少し早いんですが。今から、生配信を始めさせていただきます!」
【こんばんちゃー! 今日は何するんですか!?】
【ん? そのコックピットって……六七?】
コメント欄で質問する人。
そして、コックピットで何処にいるのかをすぐに当てた人。
それぞれのコメントを読みながら、此処が闘技場で今から対戦が始まる事を伝える。
「――で、ですね! 闘技場では配信者の人の為に、リスナーの方々の視点変更が自由に変更出来る機能がありまして……皆さん、画面の横にボタンが見えますかぁ?」
【あぁこれ! 確かに、闘技場の全体とコックピット内の視点が見えるね!】
【へぇ便利ですね! 二つ同時も出来るっぽい!】
機能を理解してくれたようで助かる。
俺は笑みを浮かべながら、後々のアップデートで標準で出来るようになるらしいことを伝えておいた。
コメント欄のリスナーさんたちは俺の話を聞きながら。
闘技場での戦闘経験を聞いて来る……そうだなぁ。
「……まぁ似たような事はしてましたねぇ? 昔はオンライン対戦は無かったので、非公式の集まりでデータを持って行って“騎士道”なんて言って、ブレード一本で一撃で決まる戦いなんかをやったり……後は、子供たちが楽しめるように1体30の試合をやったり……ふふ、懐かしいなぁ。負けたらその場でセーブデータを削除なんてやんちゃな事もあったなぁ」
【……もう何も言わないよ!】
【子供とはいえ……1対30?】
【騎士道と言う名の無双ですね。分かるとも!】
【セーブデータ削除はネジが十本くらい飛んでるよ!?】
コメント欄は大いに盛り上がっている……よし! 上手くトークが出来てる!
手応えを感じて――試合が終わった事がアナウンスされた。
五分は少し過ぎていたが。
丁度いい時間であり、俺は皆さんに試合が始まる事を告げる。
「取り敢えず、10連勝を目指します! もっといけそうなら……まぁ時間の許す限り!」
【おかしいな。10連勝ってかなりムズイ筈なのに……結果が見えるぞ!】
【時間の許す限り殺戮するんですか!?】
【根黒氏ぃぃぃ全財産賭けるので頼みますよぉぉぉぉ?】
【根黒が勝つ方にカタギリの魂を賭けるぜ!】
俺はそんな事を言いながら。
目の前の鉄柵が開いていき、ガイドに従う様に進んでいって――歓声が巻き起こる。
「おぉ、良い景色ですねぇ」
中々に壮観な景色だった。
天気も雲一つない快晴だ。
観戦席から見たら狭そうに見えたけど。
実際に闘技者として入場してみれば、かなり余裕のある舞台だと分かる。
機体を動かしながら、進んでいけば……あれが対戦相手かぁ。
同じ機体である六七式。
人型の基礎フレームに装甲をつけただけのシンプルな構造。
ショルダーアーマーには闘技用の盾のようなものがつき。
脚部は普通の二脚で、頭部はメットを被っているような見た目で。
真ん中に一つ目のセンサーが赤く光っていた。
機体の各部に動力を流す為のパイプがつけられていて。
機体を動かせば、ふしゅふしゅと蒸気となって熱が放出されていた。
旧機体であるからこそ。
排熱用の開閉機構は無く。
機体の隙間から常に膨大な熱を出している。
動きと連動しているのは、動くと同時に、装甲に僅かな隙間が出来るからで。
それを利用して、熱を逃がしているという設定だった筈だ。
「それにしても……あちぃ」
【旧機体には空調とかないんだっけ?】
「そうらしいですねぇ。フレーバーテキストでは、態々、ポータルの冷房をつけたり、氷そのものを専用のボックスの中に設置したりして……。あ、でも、氷が解けて機械がショートする問題がどうとか。……後は、地上戦限定ですけど玄人はハッチを開いたまま戦闘をしていたりとか?」
【ハッチを開いたまま戦闘って頭おかしいっすよね?】
【古の傭兵なんて全員おかしいに決まってるだろ……ですよね、根黒さん!】
「ははは、流石にハッチを開いたままは……まぁやった事ありますけど」
【…………誰かツッコんでやれよ】
【出来ませぇん!!】
コメント欄は盛り上がっている。
今日も良い配信になると思い――銅鑼が鳴る。
「あ、始まったんですねぇ。いやぁ、皆さんのコメントが面白くて、遂」
【集中ー!!】
【来てるよー!?】
【あわわわわ!?】
コメント欄に反応しつつチラリと前を見れば。
敵が拳を構えながら前進してきていた。
俺はトークをしながら、棒立ちでそれを見つめる。
コメント欄は慌てているが。
騎士道においても慌てた奴は――死ぬんだよ?
敵は俺の前で腰をかがめる。
そうして、そのまま拳を俺のコックピットに――消える。
【フェイント!?】
機体が消えた。
が、それは横へと飛んだだけだ。
そうして、そのまま敵はステップを踏み。
最短距離で俺の背後を取る。
セオリー通りなら背後を取った時点で勝ち。
が、相手の機体の駆動音からして――こうだよね?
俺はペダルを二回踏み。
同時に頭上のレバーを二段階下げた。
そうして、スイッチの一つを片手でつけてペダルを――全力で踏む。
《――あぁ!?》
【飛んだ!?】
【嘘ぉぉぉ!?】
飛んだ。
単純な跳躍。
敵の攻撃からの操作時間は――恐らく、0.5秒。
小ジャンプであり、敵の足払いを避けた。
そうして、そのまま頭上のレバーを戻し。
スイッチを消して、別のスイッチを同時につける。
そうして、ペダルを着地に合わせるように踏み込んでいく。
すると、まるで屈伸するように着地の衝撃が消えた。
俺はそのままレバーのボタンをカチカチと押し。
ペダルを小刻みに何度も踏みながら、レバーをそれぞれ反対に動かし――裏拳。
敵は攻撃モーションから回避を選択していたが。
足払いをした事によってその動作を完全に行うまでに――三秒はいるだろう。
《うわぁ!?》
そのまま、行動の中断も出来ず。
機体が起き上がるタイミングで――コックピットに俺の裏拳が命中。
金属同士の接触音が鳴り響き。
敵の機体は真横へと吹き飛んで、そのまま仰向けに倒れた。
見れば、ぷすぷすと煙が上がっていた。
戦闘が終わり――歓声が沸き起こる。
「――はい。先ずは一勝ですね! いぇい!」
【……地元(魔界)では負け知らずってか……はは】
【小ジャンプからの裏拳……それも1.5秒くらいで……アンタ、変態だよ】
【変態の中の変態――お前の称号はド変態で決まりだ】
中々にひどい言われようだと思いながらも。
先ほどの賭けの事について聞けば。
コメントでリスナーさんたちが教えてくれてた……ほぉ。
「……俺が勝つ確率が40%。相手が55%で、ドローが5%……いい試合になると思われてたみたいですねぇ」
選手は賭けられないのでどっちもでいいが。
この結果で何か変わるかなぁと俺が呟けば――
【もうバレたから――多分、荒れるね】
「ん? 荒れるって……あれ? 何だこれ?」
頭上にメッセージが表示される。
それは闘技場のAIから俺への通達で――え?
《対戦カードを再調整します。専用控室をご用意しましたので、十分ほど待機してください》
「……専用、控室?」
【これが――VIP待遇!!】
【これ実質、根黒対闘技場運営AIの戦いじゃ……良いね!】
【盛り上がってきたぁぁぁ!!!】
俺は冷汗を流す。
いつもそうであり、簡単に結果が出た試しなんて無い。
今回も、理不尽な事が発生してしまい……笑みが零れる。
「……これって……また、バズるんじゃ?」
【数字に憑りつかれてるねぇ……好きだよ、そういうとこ】
【先生!! 先生なら絶対に楽勝です!! 今から観戦に向かいます!!】
【ホワイトレコード様が勝利する方に全財産を賭けます】
【サラちんとリリーのコメントが見えた気が……いや、今は二人共生配信中だよな……まさかね】
【ところがどっこい!! 現実です!!】
コメント欄が盛り上がっているが今は気にしていられない。
俺は更なるバズりに涎を垂らし。
笑みを深めながら、10連勝を絶対に成功させてやると闘志を燃やした。