底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
「「「うぉぉぉぉお!!!!」」」
《ななななんとぉぉぉ!! 根黒万太郎!! これでぇぇぇ9連勝ぅぅぅぅ!!!》
「……へへ」
機体の拳を上げる。
すると、歓声は更に強くなった……楽しい。
此処まで9回の戦闘があったが。
全員が全員、闘技場では名の通っていた強者だったらしい。
一回戦目にはいなかった実況者もついて。
そんな猛者たちとの手に汗握るバトルを乗り越えて……あと一勝だ!
【すげぇ……スーパーマシーンかよ】
【忍者!! これは忍者です!!】
【六七ってあんなにぬるぬる動くんだなぁ】
コメントに反応しながら。
俺は元の位置へと戻り次の対戦者を待つ。
少し荒れていた闘技場の地面は元に戻り、倒れていた敵の機体も転送される。
恐らくは、俺を此処に呼んだ張本人が何処かにいる……いや、もしかして?
「……次の相手が……そうなのかな?」
【ん? 何が?】
「え、あ、いや! 何でもないですよぉ。ははは」
リスナーさんたちを不安にさせないように誤魔化す。
すると、実況者が声を張り上げながら次の対戦カードを発表し……え?
《さぁ記念すべき十勝目を飾れるかぁ!? それとも、同じく連勝中のエースがぁぁぁ奴の記録を阻むのかぁぁ!!! さぁ、最高の試合を見せてくれ!! 紫電のぉぉぉぉカタギリぃぃぃぃぃ!!!!》
「「「おおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
「……マジ?」
【カタギリ来たぁぁぁぁ!!!】
【リベンジにやって来たカタギリなんて……興奮するじゃないのぉぉぉ!!】
【見せてくれ!! カタギリ!! お前の最高のエンタメを!!】
門が開き、ずんずんと歩いて来る六七。
その機体は俺のものよりも遥かに傷だらけで。
修復の跡らしき、テープがいたるところに巻かれていた。
まるで、それがスカーフのようにはためいて――彼のセンサーが真っ赤に光る。
《また会ったな――根黒万太郎》
「あ、はい! カタギリさんも闘技場に来てたんですね! 楽しい試合にしましょうね!」
俺はフレンドであるカタギリさんに手を差し伸べる。
機体同士の握手であり、ほとんどの人は握手してくれる。
スポーツマンシップであり、カタギリさんもきっと――彼は俺の手を弾く。
「……え?」
《……楽しく、試合? ふふ、違うぞ、根黒。これから始まるのは――殺し合いだぜ?》
「え、い、いや、殺し合いかもしれませんけど。スポーツとして」
《お前にとってはそうだろうけど。俺にとっては――此処は、お前を殺す為の舞台でしかねぇんだ! はは!》
「え、えぇぇ」
カタギリさんの声は妙に明るい。
ちょっとだけ怖く感じる。
コメント欄を見れば……。
【目バッキバッキで言ってそう】
【根黒氏への復讐の為だけに勝ち進んでない?】
【多分、彼にとって復讐が出来るんだったら何でもいいんだろうね】
【俺は賭けるぜ!! 勿論さ――勝てるぜ、根黒!!】
【瞬殺ですよ!! 秒殺っす!!】
「カタギリさんを瞬殺? 秒殺って……あ」
思わずコメントを読めば、カタギリさんの空気が変わる。
《瞬殺、秒殺、ふ、ふふ、ふふふ、ふき、ふききききき――ぶっ殺すッ!!》
「え、えぇっと……頑張ってください!」
【マジで殺意向けてる相手に頑張れって……流石っす根黒さん!!】
【そこに痺れる憧れるぅぅぅ!!】
【先生を殺せる訳ねぇのに……可哀そうな奴】
【ホワイトレコード様の伝説の糧になりなさい】
【根黒ガールズが当然のように実況しておりますぞ!!】
コメント欄は加速、カタギリさんもカタカタと機体を震わせて笑っていた。
何でこうなるんだと思いつつ、機体を元の位置に戻す。
そうして、ボクシングのように腕を構えて……ん?
カタギリさんを見れば、両腕をだらりと下げていた。
ぷらぷらと揺らしている。
独特な構えであり、今までの経験では見た事が無い。
嫌な予感と共に、未知の体験が出来る事にワクワクし――
《それではぁぁ!! 根黒万太郎VS紫電のカタギリ。いざいざぁぁぁ――始めェェ!!!》
開始の銅鑼が鳴り響き――俺は一気に間合いを詰める。
カタギリさんは依然変わりなく。
腕をぷらぷらと振っていた。
俺はそんな彼に対して、先ずは様子見の左ジャブを放ち――彼が避けた。
《しぃぃぃぃぃ!!!》
「うぉ!?」
彼は出鱈目な動きで機体の腕を振るう。
鞭のようにしなり、脇腹に迫る。
が、俺は彼の攻撃の前に操縦を終わらせて――ペダルを踏む。
瞬間、機体は後ろへと飛ぶ。
そのまま衝撃を抑える操作をし、ペダルを踏みこんでいく。
地面を滑りながら後退し――目の前に真っ赤な光が迫る。
《しぃぃぃぃぃ!!!》
「はや!?」
攻撃後の予備動作が無い。
一瞬で迫って来て、俺は肩のシールドを突き出す。
瞬間、カタギリさんの拳がシールドに当たり。
俺の機体は横へと吹き飛ぶ。
「わぁ!?」
【ピンチ!?】
【先生!?】
【問題ありませんわ】
俺はそのまま流れるように操作をし。
機体の脚部で地面を踏みつけて――相手へと突っ込む。
《――っ!?》
「お返しですよ!」
俺は拳を振り――カタギリさんのシールドに防がれる。
彼の機体は地面を滑りながら後退。
バランスを崩し、俺は畳みかけるように接近し――横へと飛ぶ。
【え? 何で!?】
【今のは攻撃だろ!!】
【勿体ない!!】
コメントをチラリと見れば、俺のミスだと指摘していた……違うねぇ。
カタギリさんの機体は背を逸らせた状態から、すぐに立て直す。
そうして、ぽきりと機体の首を傾けるような動きをして――彼が笑う。
《流石だな。今、攻撃してりゃ……確実に、テメェを殺していたぜ?》
「まぁそうですよね。へへ」
【え、どういう事!?】
コメント欄が盛り上がる。
それをチラリと確認し――カタギリさんの機体が走る。
《俺を見ろォォォ!!!》
「……!」
彼が走って来る中で。
俺は咄嗟に横に飛ぶ。
が、カタギリさんは器用に機体を動かし。
そのままノンストップで迫って来る。
彼は鞭のように腕を振り攻撃。
俺はそれを機体を僅かにずらして回避。
が、彼の攻撃は止む事無く。
連続してしなる攻撃を繰り出してきた。
俺はそれらを目で追いながら、同時に機体を操作していく。
回避、回避、シールドで攻撃を流し――
《凄まじい攻防です!!! かつて、これほどに六七式を操れた傭兵がいたでしょうか!!! 今日の試合は伝説になるやもしれません!!!》
「「「おおおおおぉぉぉ!!!」」」
《きひひひひひひ!!! どうしたぁ!!! その程度かぁぁ!!? 根黒万太郎ぉぉぉぉ!!!》
彼の攻撃を躱し――大きく飛び上がる。
後ろへと高く飛び――カタギリさんが全力で走る。
《そんなに高く飛んで――着地が出来るのかよぉぉぉ!!》
【危ない!!】
【負けるぅぅぅ!?】
カタギリさんは足に機重を乗せる。
そうして、踏み込みながら全力で右を振りかぶる。
着地したと同時に、俺の機体には彼の拳が命中する――と、思うじゃん?
俺は流れるようにレバーとスイッチを切り替えて。
ペダルを調整しながら、相手の攻撃に合わせて――足を上げる。
《はぁぁ!?》
【なんとぉぉぉ!?】
高く飛んだ事と機体の姿勢を乱した事で機体は僅かにズレる。
そこから両足を折り曲げる事によって機体は丸くなり。
攻撃のタイミングが僅かにズレて――彼の拳が機体の足裏に触れた。
カタギリさんは咄嗟に攻撃の力を緩めた。
が、完全には殺し切れず。
彼の攻撃は機体全体に重みに――弾かれる。
体勢が乱れた。
俺の機体も倒れそうになる。
が、俺は操作を済ませてレバーを操り――掌で地面を押す。
そのまま側転の要領で機体を回し。
体操選手の如く機体を回しながら、体勢を戻してから舞台を走る。
歓声は驚きと喜びであり、コメント欄のリスナーさんたちも言葉になっていないようだった。
《根黒。テメェ――何処まで、俺をぉぉぉぉぉ!!!!》
「……何でカタギリさんは興奮してるんだろう?」
【根黒ちゃんが遊んでるからだよ! もっとやって!】
「えぇぇ……ま、もう準備は整いましたけどねぇ」
【え?】
俺がぼそりと呟けば、リスナーさんたちが困惑する。
俺は迫りくるカタギリさんを見つめて――薄く笑みを浮かべた。
〇
「根黒ぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺は機体を操作し、奴へと拳を放ち――奴が半身をずらして回避。
俺は修行によって身に着けた“スネークスマッシュ”を連続で打ちこんだ。
まるで、蛇のようにしなる攻撃。
予測不能のリーチによって繰り出される獰猛な攻撃で。
一撃で戦闘が終わるこの闘技場では無双できるほどで――が、当たらない。
先ほどまでの奴の動きじゃない。
今までも想像以上の動きではあったが。
今の奴はより洗練されて――美しさすら感じるほどだ。
当たらない。
当たらない、当たらない、当たらない――何故だ!?
「何で、何でだぁぁぁぁぁ!!!」
俺は叫ぶ。
すると、奴はくすりと笑い――
《地面ですよ。気づきませんか?》
「地面! 何を――まさか!?」
奴から距離を取り、地面に注目し――青ざめた。
闘技場の地面がボコボコになっていた。
機体の中からでは、よく見なければ分からないが。
人間サイズであれば、かなりの凹凸だろう。
奴が明かした種は――地形による機体の操作の誤差だ。
タイタングリードはヘブンフォール時代からいかれていた。
その際たるものが地形データの影響だ。
寒さに熱さ。それらは勿論の事――溝やぬかるみなども機体の操作に影響が出る。
僅かな誤差。
対した影響にもならないと思われるそれが――プロの世界では命取りになる。
今まで派手な動きばかりしていたのは。
修復された地面を荒れさせる為で。
その準備が整ったからこそ――奴との差が明確になった。
俺はプロだ。
地形に関する練習も積んでいる。
が、本物として存在する奴にとっては――この程度は意識するものじゃない。
“意識しなければならない俺”と“呼吸と同じレベルの奴”。
この差は大きく、奴が俺の攻撃に容易に反応できるようになったのも……ふざ、けるな。
「根、黒、貴様ぁ――これしきぃぃぃぃ!!1 コォォォれしきの事でぇぇぇぇぇ!!!」
俺は駆ける。
そうして、奴の周りを駆けた。
フェイントを織り交ぜながら、死角から攻撃を放ち――奴の拳で弾かれる。
俺は姿勢を制御し、足で砂埃を巻き上げた。
そうして、砂の中に紛れて奴へと蹴りを放ち――弾かれる。
「……!?」
《ふふ、見えてますよぉ》
「こぉぉぉのぉぉぉぉぉ!!!!」
俺は更に速度を上げる。
機体の限界以上の速度。
噴き出す蒸気が音を高くし、機体内はサウナのようで。
汗に塗れながらも、俺は奴へと連続して攻撃を放ち――“全て、弾かれる”。
上から下から、左右、蹴りに奴に掴みかかり――“全て見切られた”。
通じない。
何もかもが奴へと通らない。
全て見られていて、全て対処されて――俺の全てが否定された。
びきりと心に罅が入る。
遠い。遠すぎる。
これほどまでに、俺とこいつには――差があるのか?
違う、違う、違う違う違う違う違う違う違う違う――そんな筈はッ!!!!
「俺はぁぁぁぁぁ!!!! 勝つ為に人生を捧げたぁぁぁぁぁ!!! そんな俺がぁぁぁお前なんかにぃぃぃぃぃ!!!!」
《え? 何か言いました? ふふ、すみません。コメントでリスナーさんに面白い事を言われて。あ、因みに面白い事と言うのは》
「ふざけるなぁぁぁぁぁクソがぁぁぁぁぁ!!!!!」
俺は更に攻撃を繰り出し――衝撃が走る。
視界が揺れた。
倒れていると理解し、機体を傾けようとし――奴の機体の拳が迫る。
「させるかぁぁ!!!」
俺は背中への衝撃を無視。
奴の拳を弾こうと手を動かし――逆に奴に手を掴まれた。
「なぁ!?」
奴はそのまま俺の腕を掴んだまま。
機体を回転させて――ぐらりと視界が回転した。
瞬間、背中に強い衝撃が走り。
俺は肺の中の空気を吐き出した。
そうして、視界がチカチカとする中で――こつりと音がした。
「……! て、めぇ」
《――今回も俺の勝ちですね! いぇい!》
奴の機体が俺のコックピットに拳を当てていた。
瞬間、俺の機体は動かなくなる。
司会者が根黒の勝利を告げて、歓声は奴をもてはやし……また、負けた。
プロである、この俺が、またしても……ふ、ふふふ、ふふふふ!!
「ハハハハハハハ!! 負けた、負けたぁ!! この、俺がぁ。根黒にぃぃ……ぷっ、ハハハハハ!!」
俺は笑う。
涙を流しながら笑い……すっきりした。
完敗だ。
完膚なきまでに叩きのめされた。
同じ機体で勝負して負けたんだ。
これは正真正銘、俺の腕の問題で……が、もう諦めねぇよ。
負けたって良い。
何度負けたって、最後に俺が勝てば……そうだろ?
根黒は俺を見下ろす。
太陽を背に雄々しく立つアイツは眩しくて……俺は奴に声を掛ける。
「根黒……お前はすげぇよ……なぁ、また、戦ってくれるか? この俺と、また……お前とならきっと、もっと熱いバトルが」
《カタギリさん……俺の気持ちは分かっている筈ですよね?》
「はは、恋人じゃねぇんだ……教えてくれよ。なぁ」
《分かりました。これが――俺の気持ちです!》
根黒はゆっくりと機体の拳を開いて――“中指を立てる”。
「………………ぁ?」
《――カタギリさん。それでは!》
奴は何も言わず去っていく。
俺は網膜に焼き付いた奴の中指と奴の嬉し気な声を何度も再生し……ふ、ふふ。
「ふ、ふひ、ふき、ふひゅ……根黒、やっぱり、お前は、俺の、事、を……何処までも何処までも――コケにしてぇぇんだなぁぁぁ!!!!」
俺はヘルメットを左右の手で抑え込み、罅が入るほど両手に力を入れる。
両手の爪が剥がれるほどに力を加えた。
俺は血の涙を流しながら、根黒万太郎を人生を懸けて殺すべき存在であると再認識した。
――おまけ――
「いやぁ良いバトルでしたねぇ! カタギリさんとも再戦を約束出来ましたし……ふふ」
【あの、何で……な、中指を?】
「ん? 中指? 俺は親指を立てたんですけど……あれ?」
控室内で機体のログを漁り……最後にマニュピレーターの異常が出ていた事に気づく。
「……ま、大丈夫ですよ! カタギリさんは分かってますって! はは!」
【うんうん、分かってるよ! 君への想いが高まってると思うよ!】
【想い(怨念)】
【(カタギリで)いっぱい遊べるドン!】
リスナーさんたちと戯れながら。
俺は控室の扉がノックされた音を聞き――