底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
「……」
「……?」
【なぁんか……やばくね?】
前を歩く謎の覆面マン。
闘技場から連れ出されて、彼の後をついていく。
係の人かと思ったが、どうも違うようで。
最初こそ、丁寧に説明されて納得はしたが……逃げた方が良いかなぁ?
まぁ、仮想世界で犯罪に巻き込まれる事はほぼ無い。
殺されても現実に戻るだけで。
そもそも、タイタングリード内であれば、違反するような行為は出来ない。
チート行為もそうであり、システムを不正に改ざんする事だって出来ない。
だからこそ、連れていかれたところでどうこうなる訳ではない……ないけども。
「……あのぉ……まだ、かかりそうですかねぇ?」
「……もう着きますよ」
彼はそれだけ言って、そのまま街の中を進んでいく。
そうして、不意に足を止めたかと思えば指を横へと向けて……え?
「こ、此処は……中華料理屋“天山”……え?」
「中で貴方を闘技場へと招待したお方がお待ちです。さぁ、どうぞ中へ」
「……! なるほど。では!」
【え、何何? どういう事ぉ?】
【根黒さん! 説明を!】
リスナーさんたちが困惑している。
俺は店の中に入る前に、実はヌイッターで自身の秘密を知る人間がDMを送ってきた事をざっくりと伝えた。
10連勝すれば、会ってくれるという感じだったので、とも伝えておく。
すると、彼らは納得し、少しだけ盛り上がっていた。
【謎の存在か……そそるねぇ】
【ワクワク!】
【もしかして、根黒さんの……元カノ!?】
「ははは、生憎と誰かと付き合った事は無いんですよぉ……じゃ、入りまぁす」
俺はそう伝えて、中華料理屋の扉を押し――瞬間、香辛料の香りがむわっと漂ってきた。
食欲をそそる香り。
そして、炒め物をしているのだろうか。
火で何かを炒める音が微かに聞こえる。
店内を見れば、外観通りそれなりの広さで。
お客さんも多いようであり、それぞれのテーブルで美味そうな調理が並んでいた。
赤を基調とし、中華っぽい飾りが散りばめられていて――
「いらっしゃい! お客さん一人?」
「え、あ、そのぉ。何というかぁ」
「――あの方のお客様ですよ」
「……! あいあい! こっち来な!」
チャイナ服を着た黒髪お団子頭の糸目のお姉さん。
彼女が覆面マンから何かを言われれば。
納得した様に頷き、こっちだと言われて……グル?
不安とワクワクの両方を感じながら。
俺はお姉さんの後をついていく。
彼女はお客たちがいる横を通り過ぎ。
そのまま厨房へと入ったかと思えば、更に奥へと進んでいった。
何処まで行くのかと思えば、ノブがついた扉を開けて中へと入り……え?
「こっちこっち! さっさと入る!」
「え、あ、え、え? あ、はい」
俺はお姉さんに手招きされて。
そのまま狭い洋式トイレが設置されたそこへと入る。
案の定、扉が閉まればぎゅうぎゅうで……うぉ。
俺の胸板に感じる柔らかい弾力。
それはお姉さんのおっぱいだ。
ふよふよとしていて、お姉さんが動く度に感触がぁぁ!!?
「……よっと……? お前、顔赤い? 風邪か?」
「うぇぇ!? いいいいいえ!! おっぱ――ふへ!」
【根黒はおっぱいに弱いっと】
【ラッキースケベが現実で……根黒、お前を、消さなければならない】
【……先生ってそういうのが良いんですね……なるほど】
【――コメントは削除されました――】
【……リリー何書いたの?(恐怖)】
お姉さんに見上げられながらも。
俺は笑って誤魔化す。
が、リスナーさんたちにはバレバレで……ふへ。
「……!? な!?」
「ジッとしてるよ。すぐ着くね」
部屋全体が揺れた。
俺は何事かと思いながらも言われた通りに待ち……揺れが収まる。
瞬間、入って来た扉が勝手に開き――え?
「ようこそ、お待ちしておりました――ホワイトレコード様」
「え、え、だ、誰?」
【おぉ、豪華な料理……待っていたのは仮面のイケメン?】
広い部屋には、大きな円卓が。
その上には豪勢な料理の数々が並べられている。
そうして、奥の席には両手を広げて笑みを浮かべる――仮面の男がいた。
俺はお姉さんに押されて、よろよろと中に入る。
後ろを向けば、お姉さんが手を振り扉は閉じて……え?
俺は視線を仮面の男に戻す。
すると、彼は無言で対面に座る様に促してきた。
俺は言われるがままに、空いていた席に座る。
「お腹は空いてませんか? 現実には還元できませんが。どうぞ、お好きなだけ飲んで食してください。あぁ、ですが――それは切らせて頂きますね」
「え!?」
彼がぱちりと指を鳴らす。
瞬間、俺の配信は強制的に終了させられた。
他人の配信を勝手に終わらせる事が出来るなんて……何者?
運営側の人間か。
将又、特権を有する人間か。
分からないが、配信を止める事が出来るのなら……グリード内で力を持っているということだ。
俺はそれを理解し――下手な笑みを浮かべる。
「え、えへへ。そ、そのぉ、今日は、俺……いや、私をお呼びしたのは、何かぁ? あ、いえ! 言いたくないなら良いんですよ! で、ですが、そのぉ、秘密についてばらされるのは少し問題が」
「――ふふ、先生。そんなに警戒しないでくださいよ」
「……え?」
仮面の男は腕を組みくすりと笑う。
すると、先ほどまでの男の声は消えて――若い女性の声になった。
「え、え、え、え? あ、え?」
「ふふ、またまた騙されたみたいですねぇ。分からないですかぁ? それともぉ……お兄ちゃんって呼んだ方がいいですか?」
「お、お兄ちゃんって……! いや、その声に今回のイタズラ――みっちゃん!?」
俺が知り合いの名前を出せば――彼女は仮面を外しニッと笑う。
「だいせいかーい。じゃじゃーん」
彼女が腕を振るえば、彼女の姿は一変し。
ボンキュッボンのナイスバディーな黒髪ショートヘアのお姉さんになる……おぉ。
彼女が席から立ち上がる。
そうして、ブーツを鳴らしながら近寄ってくれば。
嫌でもその成長を感じざるを得なかった。
昔はあんなにも小さかった女の子が。
身長は170センチを超えて、凹凸のある体つきになり。
青いショートパンツに黒いタイツで、パンクなジャケットに胸元の開いたシャツを着ている。
猫のように細めた青い目に、ぷっくりと艶やかな唇。
指ぬきグローブから出た白く細長い指で俺の頬を撫でて――てぇ、違う!
「だ、騙されないからね!! みっちゃんはそんな、い、いかがわしい人では!?」
「うーん? いかがわしいってぇ……何処がですかぁ?」
「え!? い、いや、そ、そんなの……分かるでしょ!?」
「うーん。私って賢くないからぁ。先生が言葉で、指先で、示してくれないとぉ……分からないですよぉ?」
「えぇぇぇ!?」
みっちゃんは俺の手を掴む。
そうして、恋人のような結び方を――あぁぁ!!?
「やめるんだ!! 君はそんな子じゃなかっただろ!? お花が好きで、何時もニコニコして……いや、悪戯好きでよく俺を罠には嵌めてたけど……そ、それでもぉ!」
「ふふ、可愛い……やっぱり、先生なんですねぇ。なぁんにも、変わってないんですから……でも、酷くないですか?」
みっちゃんはそう言いながら離れて行く……え?
「……私、先生にまた会える日を楽しみにしてました。女を磨いて、努力して……このアバター、現実の私との違い、ほとんど無いんですよ?」
「え!? そんなにエッチ――うなぁ!」
「ふふ、そういう目で見ていいんですよ……でも、私も他の子たちも……怒ってますから」
みっちゃんはそう言いながら、テーブルの上の骨付きチキンを取る。
そうして、豪快に齧って指についた油を舐めとる。
「お、怒ってるって……お、俺は何も」
「何もしていない……それが原因ですよ? お兄ちゃん」
彼女はチキンを齧る。
そうして、眼を細めながら俺を見つめて来る。
「も、もしかして……連絡しなかった事? そ、それとも、高校卒業してから孤児院に行かなかった事?」
「全部ですよ……それとぉ、私たちじゃなくてぇ、あぁんな若くてぴちぴちのぉ尻軽を弟子にしたなんてぇ……殺意、抱いちゃいました」
「ひぇ」
彼女は骨ごとチキンを噛み砕く。
そうして、ゴリゴリと音をさせながら一気に飲み干す。
彼女は指をしゃぶってから、俺に対して殺意を向けて来る……た、助けてェ!
「……でも、お弟子さんの実力は分かったからもういいんです」
「も、もしかして、あの緑の機体は」
「――私ですよ。分かりますよねぇ、だってぇ、あの戦い方はぁ……先生が私を調教した結果ですからね?」
「や、やめようよ! お、俺は孤児院の皆とゲームしただけだからぁ! みっちゃんはもっと上手くなりたいっていってたからぁ!」
「うーん? そうでしたかぁ? 私の記憶ではぁ、先生は泣いて止めてっていう私にぃ無理矢理太くて長い棒を」
「――やめろぉぉぉぉ!!! パイルバンカーでしょうがぁぁぁ!!?」
俺は心臓をどきどきとさせる。
もしも、これが配信中だったら。
完全にアカバンであり、みっちゃんもそれが分かって止めてくれたんだろう……お、恐ろしい子だ。
俺は呼吸を落ち着かせる。
そうして、適当にあったお茶をがぶのみした……あ、美味しい。
「……ふぅ……で、再会は嬉しいけどさ……何で、あんなDMを俺に? 何か理由があるんじゃないの?」
「んー? 理由ですかぁ……えぇ勿論。10勝というのは本当に先生かどうかの確認です。本物であれば、旧式の機体の操縦でも、先生が負ける筈が無いですからぁ。そして、見事に10勝してぇ此処に辿り着いたのなら――次は私が御相手をしようと思ってたんですよ」
「…………本気なの、みっちゃん」
俺は彼女へと視線を送る。
生半可な覚悟はダメだと視線で伝えれば――彼女は嬉しそうに眼を細めて笑う。
「えぇ本気です。お兄ちゃんの事で、私が本気にならなかった事――ないでしょ?」
「……分かった。なら、やろうじゃないか……勿論、俺は配信させてもらうからね」
「えぇ構いませんよぉ。それが今のお兄ちゃんの……いえ、先生の御役目ですからねぇ。ふふ」
彼女は俺の配信を承諾してくれた。
俺は静かに頷き――両手を合わせる。
「それじゃ、いただきまぁす!」
「……可愛い」
折角のご馳走だ。
食べないのは失礼だ。
たらふく食ってからが勝負で。
俺はがつがつと料理を食べながら、恍惚とした表情で俺を見つめるみっちゃんに恐怖を覚えていた。