底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第15話:執行官は根黒を追い込む

「……」

【根黒……いつになく真剣な顔してる】

【配信が強制的に終了してどうしたかと思ったけど……因縁の相手って奴か】

【この俺とやりあった時はふざけていた癖に……腹立たしい奴だよ、テメェは】

【カタギリも見に来たのか……大丈夫かな?】

 

 コメント欄が不安げだ。

 が、今は彼らに気を遣っている余裕はない。

 何故なら、相手はあのみっちゃんであり……油断ならない。

 

 みっちゃんは天馬財団が運営する孤児院の出身で。

 俺はみっちゃんのいた孤児院によく出入りをしていた。

 父さんや母さんが、子供たちが喜ぶというから行き始めたけど……楽しかったなぁ。

 

 自分よりも年下の子たちが。

 兄ちゃん兄ちゃんと言って寄って来てくれる。

 皆個性的で可愛くて、ついつい、色々な事を教えてあげてしまっていた。

 その中でも、ヘブンフォールでの戦い方などは……今にして思えば、やってしまったと思う。

 

 ほとんどの子が小学生で。

 そんな子たちに、プロでも操作が難しいヘブンフォールに触れさせた。

 ほとんどの子は嫌になって外に遊びに行ってしまったけど。

 数名だけがそれにハマって、俺から色々と学んでいって……結果、みっちゃんのような天才が生まれた。

 

 みっちゃんは本物の天才だ。

 一度教えればすぐにものにし。

 苦手であった事も、数回会えばもう得意になってしまっていた。

 頭も賢くて、運動神経も良くて。

 彼女の里親はすぐに決まって……でも、何故か、戻ってきていた。

 

『お兄ちゃんに会いたいからだよ?』

「……ふっ」

 

 小さな女の子に言われた言葉。

 結婚したいなんて言葉も聞いたことがある。

 何て事は無い触れあいで……まさか、あんなに成長していたなんて。

 

 俺はみっちゃんが大人のお姉さんになった事を思い出し。

 鼻血が出そうになるのを必死にこらえる。

 そうして、機体を操作して彼女が待っているという――“機械たちの墓場”へと侵入した。

 

 自由探索領域の一つで。

 設定では遥か古の大戦争によって無数の機械たちが朽ち果て転がる骸の大地だったか。

 その多くが、設計書も無いオーパーツのようなもので。

 メックの原型となった人型兵器も転がっているらしい。

 

 そんな機械たちの墓場は一言でいえば――生気が無い。

 

 生き物は虫も存在しないと思えるほどに空気が淀み。

 無数の錆びた金属の残骸が転がっている。

 大きなものならば、輸送シップなどだろうか。

 空は茶色く濁っており、微かに見える太陽も血のように赤く見える。

 しかし、注目すべきは、そんな機械たちの安寧を願う様に建てられた白亜の塔。

 巨大な塔であり、メックやシップの攻撃では壊せないほどの頑丈さを持つ。

 街一つ分はありそうな大きさで――レーダーが敵影を知らせる。

 

「……!」

 

 何かが横を勢いよく通過。

 機影は“二機”であり、それらはクロスするように上昇する。

 俺が機体を空中で停止させれば、それらは悠然と舞い降りた。

 

 深緑色を基調とし、少し明るい緑色のラインが入った機体。

 逆関節型の軽量級の機体だ。

 大きな左右の手であり、人と言うよりは道化師や悪魔のように見える。

 

 全く同じ二つの機体が同時に一礼して――綺麗な声を響かせる。

 

《先生、ようこそ……この日を、待ち望んでいましたよ》

「……みっちゃん」

【みっちゃんって……女性?】

【ふつくしい声……間違いなく美女だ!】

【どういう関係!? 私、気になります!】

 

 リスナーさんたちが説明を要求してくる。

 俺は少し悩みながらも、彼女が俺の元教え子である事を伝えた。

 すると、みっちゃんはくすりと笑う……ん?

 

《教え子だなんて……まぁ、確かに、色々と教えてもらいましたねぇ。初めては、ぜぇんぶ――先生、ですから》

【エッッッ!!!】

【パンツ飛んだわ】

【……先生?】

【――コメントは削除されました――】

【盛り上がってきたぁぁぁ!!!】

 

 みっちゃんは俺を揶揄ってきた……その手には乗らないよ。

 

 みっちゃんの得意なやり方だ。

 相手の動揺を誘い、プレイミスを誘発させる技。

 精神攻撃であり、彼女の場合は、男には滅法強い。

 が、あの頃の俺とは訳が違う。

 伊達に20年以上を生きてはいない。

 その凄みをみっちゃんに分からせてやろう。

 

 俺はそう意気込みながら――武器を展開する。

 

《ショットライフルが二丁に、肩部にブレードが二本……ふふ、あの時の再現ですか》

「……みっちゃん。俺は君に言った筈だ。もしも、次があれば――このアセンで挑むってね」

 

 約束だけは覚えていた。

 彼女が初めて涙した記憶。

 最後のゲームで俺はこのアセンで戦った。

 そうして、彼女は孤児院を去り、俺も孤児院には行かなくなった。

 別に、彼女が帰ってこないようになんてキザな事は思っていなかった。

 単純に、受験などで忙しくなったからだが。

 その後にぷらぷらとしていて、会うのが恥ずかしくなったというのもある。

 孤児院の子供たちの心の中には、何時までもかっこいい俺がいて欲しい……そう、ただの見栄さ。

 

 みっちゃんは怒っていた。

 それは弟子を取った事だけはじゃない。

 俺自身が彼女との再会を先延ばしにしていた事だ。

 彼女だけじゃない他の子たちもそうで……向き合うよ。

 

「約束、果たすよ」

《そうですか。では、もう一つの約束も覚えていますよね?》

「………………ん?」

【……根黒さん?】

【まさか?】

 

 俺はコックピット内で滝のように汗を流す。

 他にしていた約束はあったかと考える。

 が、それらしいものは出てこない。

 すると、みっちゃんはくすりと笑い――

 

 

 

《次に私が貴方に勝てたのなら――結婚、ですよね?》

「えぇぇ!? え、あ、えぇぇぇ!!?」

 

 

 

 衝撃の告白。

 俺は大きく口を開けながら震える。

 そんな記憶は無いと言おうとして――脳裏を過る。

 

 

 怪しい光――まどろむ意識――彼女の手には録音機――微笑む少女――あぁ!

 

 

 思い出した。

 思い出してしまった。

 確かに、記憶にある光景。

 俺は何故、そんな約束をしてしまったのかと震える。

 

【なるほど、それで墓場ね……根黒、お前を、消さなければならない】

【俺なら態と負けるが、根黒はそんな事しないよな……信じてるぞ。根黒】

【先生!! 勝ってください!! 勝って!!!】

【……ゴミカスがぁ】

【リリー(恐怖)】

 

 彼女は微笑む。

 もしも、俺が此処ではぐらかしても。

 彼女の手元にはあの日の音声を記録したものがある筈だ。

 つまり、負ければそのまま――パパにされる!?

 

「……ほ、本気だね。みっちゃん、ま、まさか、そこまでして、俺の心を動揺させようだなんて……で、でも、その程度で、お、俺はぁ」

《――子供は二人が良いですね。最初は男の子、その次は女の子で。名前も考えているんですよ? あ、勿論、先生が気に入らないなら》

「あああぁぁぁぁ!!!?」

【人生プラン構築済みって逃げ場ねぇよぉぉ!!?】

【クソ!! 根黒が何でこんなにモテるんだ!!!】

【羨ましいと思ったけど、ヤンデレはちょっと……やっぱり羨ましいぃぃぃ!!】

【先生……勝ちますよね? 私はまだ、先生と一緒に……】

【勝ちますよ。勝つに決まっています。負ける筈がありません。えぇ当然です】

【根黒万太郎をやるのはこの俺だァァ!!!】

 

 俺は滝のような汗を掻きながらも。

 動揺を振り払い二機の機体を見つめる。

 

「へ、へへ、で、でも、に、二機で挑むなんて、み、みっちゃんらしく」

《あぁ、これですか? 実はこれ、近々実装予定の――新兵器なんですよ!》

「へ?」

 

 彼女は説明する。

 それはメックではなく。

 “立体兵装”と呼ばれる新兵器で、実体を持つ自らの分身を生み出す兵器らしい。

 ホログラムの進化系であり、思考によって制御できると彼女は言う……ど、どういう?

 

「な、何でみっちゃんがそんなものを? え?」

《……あぁそういえば、言っていませんでしたねぇ。実は私……“セブンストリーム”の人間なんですよ》

「はぁぁぁぁ!!?」

【運営側の人間って事? え、何でそんな人が根黒さんに?】

【また伝説が増えるの!?】

 

 リスナーさんたちも驚いている。

 それはそうであり、セブンストリームとはヘブンフォールやグリードを手掛けた会社の名前で。

 運営側の人間であれば、どれほど凄いかはプレイヤーなら分かるだろう。

 先ず、運営側の人間がゲーム内で接触を図って来る事は稀だ。

 あるとすれば、有力なプレイヤーであったり、ゲーム内での危険人物への接触程度だ。

 プレイヤーたちの中では、ゲーム内の運営側の人間たちは全て――“執行官”と呼ばれている。

 

 法を執行する者たちであり、逆らうものは断罪される。

 彼らこそが、この世界の神と呼ばれる存在だ。

 如何なる行為も、上の人間が許す限り行える。

 一時的な設定の書き換えやプレイヤーの排除など。

 その業務は謎であるものの、執行官は確かに存在している。

 

 都市伝説のような存在の一人が――みっちゃんであった。

 

「え、偉くなったね……は、鼻が高いよ! はは!」

《ふふ、頑張りましたからね。先生の事を――養う為に》

「……ふ、ふへ」

《大家族でも、今の御給金なら問題ありませんよぉ? 先生は毎日毎日、好きな事をしてくださいね。先生は、ただ一緒にいてくれるだけでいいんです。私は先生さえいてくれるのなら、それで十分ですから》

「そ、それ、ひもっていうんじゃ……うぅ」

 

 俺は恐怖する。

 このままでは、おじさんである俺が若い子のひもにされてしまう。

 それは色々と社会的な立場が死んでしまう。

 どうすべきかとコメント欄を見て――燃えていた。

 

【根黒……俺はお前を許さない!!】

【美女に養われる毎日か……このぉぉぉぉ!! 裏切りもんがぁぁ!!!】

【負けるのは簡単だ。そして、信頼が消えるのも一瞬……根黒、分かるな?】

【わ、私だって、先生を養えるくらい……うぅ!】

【私ならお城を建てられます。島でも、遊園地でも望むものを】

【根黒ォォォォォ!!! このヤリチン野郎がァァァ!!!】

「ひぃぃ!」

 

 俺は恐怖する。

 すると、みっちゃんはくすりと笑い――両手を広げる。

 

 右手はあの特殊なクローで、片手も今回はクローになっていた。

 が、造形は同じでも何かが違うと俺の勘が告げていた。

 そして、肩からは二つの筒が上に伸びていた。

 あれは見た事が無い兵装で……あれも、新兵器か?

 

 俺は警戒を強める。

 みっちゃんはそんな俺を見ながら――

 

 

《さぁ、心行くまで――踊りましょう?》

「――あぁ!! 勿論!!」

 

 

 

 俺は銃口を彼女へと向けて――放つ。

 

 瞬間、彼女と分身体は左右に別れる。

 俺はそんな彼女の機体を目で追いながら。

 上空へと飛んで、どう立ち回るのかを考える。

 

 大丈夫だ。

 如何にみっちゃんで、二人いようとも。

 彼女の癖は把握している。

 あぁやって変則機動はしようとも――見えた!!

 

 彼女が俺へと迫る。

 俺は機体をブーストさせて横に飛ぶ。

 瞬間、彼女は俺を追い掛けて来る。

 俺はそれに合わせるように、下へとブーストし――彼女へと向かって更にブーストする。

 

 彼女の機体が眼前に迫る。

 俺はそのまま蹴りを放とうとし――機体を回転させた。

 

《……!》

 

 彼女がクローを向けて来た。

 が、一瞬でそれを見抜き軌道から逸れる。

 そうして、そのままショットライフルの銃口を向けて――発射。

 

 至近距離。

 絶対に当たる――が、彼女は回避した。

 

「やる」

《あぁぁ♡》

「へ?」

 

 褒めようとし――エッな声が響く。

 

 心臓が跳ねた。

 が、すぐに持ち直し。

 俺は彼女の機体を追い――

 

《せん、せぃ♡》

「ちょ!?」

【パンツ消し飛んだ】

【エッッッ!!!!】

 

 彼女は掠れるような声でなまめかしい声を出す。

 俺は激しく動揺しながら、彼女の声をミュートしようとし――出来ない。

 

「はぁぁぁ!!?」

《先生の視線……ん♡ いぃ♡》

【やべぇ!!】

【根黒さんが追い込まれてる!?】

 

 俺はかつてない危機感を抱く。

 彼女の声は掠れるようなもの。

 吐息のようなもので――が、逆にそれが性的であった。

 

 危険すぎる。

 ニューチューブは性的なコンテンツには厳しい。

 どんなものであろうとも、性的であると判断されれば最悪――アカバン!!

 

「はぁはぁはぁはぁはぁ!!!」

 

 俺は呼吸を大きく乱しながらも。

 彼女に対してブーストで接近し。

 銃口を彼女の機体へと向けて弾を乱射する。

 が、彼女は俺の攻撃をひらりと回避し――死角から分身が迫って来た。

 

「くぅ!?」

 

 俺は攻撃を中断。

 敵のクローによる攻撃を回避。

 そのまま、分身体を攻撃すれば分身体は回避したが、僅かに弾が掠めていき――

 

《んあぁぁ!♡》

「ヤメロォォォォォ!!!!」

 

 俺は叫ぶ。

 瞬間、みっちゃんがブーストで迫り――俺は大きく距離を取る。

 

 心臓はバクバクと鼓動し。

 相手への決定打を出せない。

 みっちゃんはそんな俺の動揺を理解していた。

 理解して、俺をじわじわと追い込んでいて……そうか。

 

 彼女の狙いは持久戦で。

 エネルギー切れを起こさせて。

 そのまま勝利を……流石だよ、みっちゃん。

 

「でもね。俺は、それでも!!」

《はああぁぁ♡ せんせぇ♡》

「ふぉぉぉぉぉぉ!!!!」

【根黒黙れ!!】

【静かにぃぃぃぃ!!!!】

 

 かつてない死闘が――俺の心を襲う。

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