底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
穢れた空を舞いながら――心が乱れる。
《あぁぁ!♡》
「ふぁぁ!?」
【……ふぅ】
みっちゃんの精神攻撃は俺の心を大きくかき乱す。
照準はブレにブレて、みっちゃんは攻撃を回避し。
分身体が俺の機体へと迫り、クローで執拗に攻撃してきていた。
避けられる。
が、此方の攻撃も当たらない。
ジリ貧であり、このままでは――負ける。
敗北の色が濃厚になれば、リスナーさんたちも心配し……いや、してないな。
何故か、ふぅとばかり呟いている。
激しく困惑しながらも、俺は突破口を開こうと――
《さて、名残惜しいですが――終幕としましょうか》
「――え?」
みっちゃんが呟いた言葉。
それに驚いていれば、彼女の機体の筒から――上空に何かが撃ち込まれた。
砲弾であり、それは遥か空へと舞い上がり――爆発。
「……!?」
瞬間、フィールド全体に光のカーテンのようなものが展開された。
それはまるで、オーロラのように綺麗だった。
何が起きたのかと考えて――レーダーが無数の敵影を知らせる。
「はぁ!?」
俺は驚きながらもブーストし、その場から離れて――咄嗟に下へと降下した。
《あら?》
瞬間、みっちゃんの声が響き。
何かが勢いよく上空を通過していった。
一瞬見えたのは、光の線で――エネルギー兵器か!?
あり得ない。
みっちゃんのクローはパイルバンカーの筈だ。
エネルギー兵器な筈が――レーダーがまたしても無数の敵影を知らせる。
「嘘だろ!?」
《ふふふ》
眼前に見えるのは無数のメック。
全てがみっちゃんの機体であり、動きはまごう事なき本物。
それらが視界に映るだけでも三十を優に超えていて――クローの中心が光る。
「くぅ!!?」
俺は形振り構わずブーストを連続して行う。
エネルギーの消耗が激しいブースト。
が、やらなければ確実に死ぬ。
それを理解したからこそ攻撃を全て回避し――ショットライフルを横に向ける。
間髪入れずに弾丸を放てば。
そこにはみっちゃんの機体が迫ってきていて――弾がすり抜ける。
「映像!?」
《えぇ、もう分かりましたね。これらは全て――ただの虚像》
無数のメックが空を舞う。
俺を取り囲むように旋回し。
全ての機体が俺へと敵意を向けていた。
その殺気も、気配も全てがリアルで。
偽物だと俺の頭が見抜けないほどに完成されていた。
レーダーすらも誤作動しているんだ。
どう足掻いても、アレらを本物かどうかを瞬時に判断する事は――不可能。
「……はは、何だよそれ……理不尽じゃんか」
《えぇ理不尽です。でも、私はこれを使うと決めていました。これが私の本気。私の決意……先生、覚悟は出来ていますか? 貴方の伝説は終わり、新たな道を私が作ります。えぇ、共に、人生の墓場に》
彼女は笑う。
そうして。機体を浮遊させながら両手を構える。
全てのメックのクローが俺へと向いている。
攻撃が来る。それを感じながら――
「――君に出会えて良かったよ」
《……!》
俺は感謝を伝える。
瞬間、四方八方から無数の光線が放たれて――“すり抜ける”。
《ゴーストジャンプ!? 上!》
「さぁ全力で――闘おう」
俺は笑う。
そうして、レバーの設定を変更する。
レバーが変形し、機械化されたグローブが出現。
それに手を嵌めてから、俺はショットライフルを宙に投げる。
サブアームにマウントさせていたブレードを手に握り。
宙を舞うライフルをサブアームがキャッチして――俺はリミッターを解除する。
【フルコン!? 此処に来て!?】
【リミッター解除にフルコントロールなんて、無茶っすよ!?】
【意識飛ぶぞ!? はやまるなぁ!!】
【先生!! 本気ですか!?】
【あぁ、これこそ、ホワイトレコード様の真骨頂】
【奥の手だと……何処まで底が見えねぇんだ!?】
リスナーさんたちが慌てている。
やめろと言う優しい方もいた。
フルコン――フルコントロールとは、機体の操作全てを“自分自身の体”で行う操作システム。
ヘブンフォールであれば、標準で搭載されていたシステム。
己の五感を極限まで高めて、リアルと遜色のない領域まで押し上げる。
僅かな誤差は無くなり、五指の動きによって使いこなす事が出来れば。
機体の性能を最低でも120%上昇させる事が理論上では可能となる。
が、その代償として心身への負荷が高く。
使い過ぎれば、VR装置が強制的にログアウトの判断をするほどの悪魔のシステム。
死ぬことは無いさ。
あっても二日ほどの頭痛くらいだ。
ヘブンフォール時代であれば、吐いていた事もあったが。
体が順応し、慣れてしまった今であれば――問題ない。
遥か空の上。
機体を停止させて、ゆっくりと地上を見る。
みっちゃんのメックが無数に存在し。
その全てが俺へと向かって来ている。
俺はそんなワクワクする光景を見つめて――
「最高の――戦場だぁ!」
俺はそのままペダルを全力で踏み――加速。
シートに体が押し付けられる。
ゴーストジャンプを超えるほどの加速。
スラスターの出力は限界を超え。
びりびりと激しく体を振動させながら、無数のメックの中に――飛び込む。
《――ならば!!》
みっちゃんの偽物たちが動く。
凄まじい速さであり、周りを取り囲み。
クローの銃口が向けられて――ショットライフルの弾丸を放つ。
《……!》
「フルコンなんだ。同時操作だって出来るんだよ!!」
俺は笑う。
そうして、機体を更に加速。
激しく回転しながら、攻撃を仕掛けようとする敵一体一体に弾丸を放つ。
全てを目で捉え、精確に射貫き。
死角から迫る者はブレードで斬りはらう。
モニター越しの世界は光の線となり流れて。
迫りくる敵影は形すらも見えはしない。
全てが靄であり、全てがおぼろげで――同じさ。
ヘブンフォールの時もそうだ。
激しい攻防の中で、姿が見えぬ敵を相手に。
俺は大空を自由に舞って、全ての敵を――屠って来た。
変わらない。
この世界でも、俺がやる事は――同じだ!!!
「ハァ!!!」
俺は笑みを深める。
そうして、トップスピードの状態で――機体を急旋回。
軌道を九十度の角度で曲げれば。
機体は悲鳴を上げて、体からは嫌な音が響く。
肉が押されて、骨が軋み。
歯が砕けそうで。
痛みを超えた苦しみであり、俺はそれを感じながら――機体を動かす。
曲がる。そして、スピードは落ちない。
そのまま敵の意表を突き、流れるように全てのダミーを攻撃。
まやかしは消えてなくなり、その数は減っていった。
やはりだ。
奴らは本物に限りなく近い。
だからこそ、生み出せる数には限りがある。
精巧な偽物を創り出せるのは限界がある。
「だったら――全部、ぶっ壊せばいいだけじゃんか!!」
《……!?》
俺は機体を加速。
そのまま命がけの変則機動を敢行。
ダミー全てを本物であると仮定し。
それらが放つ攻撃を全て回避。
隙をついて流れるように弾丸を放つ。
敵を殺し、死角から迫る敵の攻撃をブーストで回避。
そのまま回転しながら敵を一刀両断。
加速、加速加速加速加速――曲がれッ!!!
「ぐぅぅぅ!!!」
奥歯からバキリと音がする。
鋭い痛みが走った。
が、まだまだ意識は飛んでいない。
生命の維持に支障はない。
ログアウトするまで俺の体が持てばいい。
心配はいらないさ。
この体で、俺はあのいかれた世界を遊びつくした。
この世界がどんなに理不尽であろうとも。
俺のこの体はどんな理不尽であろうとも――超えて行く!
「ハハハハハ――ッ!!!!」
俺は笑う。
全力で笑った。
そうして、ハイになりながら迫る敵を殺していく。
流れるように進む世界で。
光の線と化し、一撃で死ぬ世界を堪能する。
敵を殺し続けて、己の生を実感し。
此処がゲームの世界であろうとも、この瞬間はリアルをも超えて行く。
楽しい、楽しいさ。
全力で楽しめるからこそ――ゲームなんだよ!!!
《此処まで……いえ、それ以上に成長しているなんて……流石は先生。やはり、貴方は――此処で、私が!!》
「みっちゃん!!! もっと、もっともっと――楽しもうぜェェ!!!!」
俺は笑う。
鼻から垂れるものが口に入り。
カラカラに乾いた口内に鉄錆の味が広がる。
コックピット内は灼熱。
計器がイカれて、システムがけたたましく警告を発する。
俺はそれを聞き流しながら、遥か上空へ向けて機体を上昇。
上昇、上昇――更に、上昇。
穢れた雲を突き抜ける。
濁った空が晴れていき、遥か空の青が色を増していく。
カタカタと激しく振動し、カメラに霜が出て来た。
それを見ながらも、俺は歯を食いしばり上昇し――機体を停止させる。
「……はぁ、やっぱり……綺麗だなぁ」
星が――綺麗だ。
深い青の世界であり、満天の星だ。
月があんなにも大きく。
下を向けば、世界の色がハッキリと見えていて――本物さ。
ゲームの世界も本物だ。
死が限りなく薄いだけで、そこに真に存在している世界。
男も女も関係なく。
全力でこの世界を楽しむ為に、俺たちは存在している。
「理不尽で、強欲で……何処までも自由に生きられる世界……ゲームってさ。最高だろ?」
俺はリスナーさんたちに問いかける。
彼らは色々な考えを持っている。
たかがゲーム、それでもゲーム。
最高か、最低か。
全ての人間が考える最高のゲームはこの世には無い。
それでも、俺の配信を見て、彼らはゲームに興味を持つ。
人生を変える出会いを。
無駄なような時間が、最高の冒険となるように――タライさんが呟く。
【やっぱり君って……誰よりも、楽しそうにゲームを遊ぶよね。私はね、好きだよ。君も、君の遊ぶゲームも】
「ありがとうございます。俺も、リスナーさんたちの事が心から大好きです!」
【そう。だったら、魅せてよ。君の最高の――“
「はい!!!」
俺は了承する。
そうして、俺を追い掛けて来る道化師を見つめて――降下。
《先生!!! 今度こそ、私がァ!!!》
「みっちゃん!!!」
彼女の機体の像が乱れる。
そうして、二体に分裂した。
そのどちらもが本物で、その想いも正しい。
俺はそれらを認識し、ブレードをクロスさせた。
勝負は一瞬。
これで全てが決まる。
俺の答えを彼女に示す。
ぐんぐんとスピードは上がっていく。
互いに機体を回転させる。
空気抵抗を極限まで削り互いに迫っていく。
そうして、みっちゃんはクローを向けて、俺はブレードをクロスさせたままで。
互いにトップスピードで進み――ゴーストジャンプ。
《そこッ!!!》
「……!」
意表を突こうとし――見破られた。
眼前に光が満ちる。
彼女がどんぴしゃで放った光線。
機体を容易く溶かし斬る光線で――俺は全ての指を動かす。
そうして、光線を“一本のブレード”でなぞり。
機体を僅かにズレさせた。
ブレードの刀身が真っ赤に輝き。
死角から飛び出した分身がクローで俺の機体を掴もうとする。
俺はそのクローへとショットライフルを一斉に放つ。
ガガガと音がし、敵のクロー事機体を破壊。
残骸が飛び散り、俺の機体は硬直し――機体に衝撃が走る。
「……!」
《取ったッ!!!》
背後からみっちゃんの機体が迫り。
彼女のクローにて機体を拘束された。
逃げる事は不可能。
出力ではワンオフの方が上で、彼女の右手のギミックが切り替わり。
パイルバンカーが起動して――彼女のクローに衝撃が走った。
《な!?》
遥か頭上から飛来した何か。
それが俺を拘束する彼女のクローへと精確にぶち当たる。
切断はされなかったが、内部が露出するほどに破損し。
バチバチとスパークを起こしていて――俺は拘束から逃れる。
《ブレード!? まさか、あの一瞬で!?》
「仕掛けってのは即興でも出来るんだよ――覚えて帰りな?」
俺は笑う。
そうして、ショットライフルの銃口を彼女へと向けて――放つ。
連続して音が鳴り響き。
彼女の装甲が破壊されて、内部のフレームが一部露出。
オイルが噴き出し、配線から火花が散る。
俺はそのまま落下していく彼女の機体に赤熱するブレードの切っ先を向けて――
《先生――やはり、貴方は――危険、過ぎるほどに――》
「これが俺の日常だよ」
俺はそう吐き捨てる。
そうして、手を伸ばす彼女の胸に――ブレードを突き刺す。
そのまま俺たちは落下し。
俺はブレードから手を離して彼女から離れて――大爆発。
彼女の機体の残骸が周囲に飛び散り。
俺はそのまま残骸を弾きながら地面を滑っていき……停止した。
《エネルギー残量――0%》
「は、はは……せ、セーフ!」
【……ギリギリだよ!?】
【……はぁぁぁ!! 息、してなかったぁ!?】
【鳥肌ぁぁぁ!!】
機体内に溜まった熱を排出しながら。
俺はヘルメットを脱ぎ捨てる。
そうして、ジャケットのジッパーを下ろし。
ハッチを開いて……は、出来ないな。
額に溜まった汗を拭う。
そうして、手に汗握る一戦を終えて――Vサインをする。
「今日も俺の勝ち!! いえぇい!」
【アンタやっぱり最高だよ!!】
【チャンネル登録します!! 師匠と呼ばせてください!!】
【絶対に公式戦出た方がいいっすよ!! 間違いなく、世界チャンプだって夢じゃねぇっすよ!!】
【きゃあああ!! 先生、最高です!! 見てよぉぉ!? これ、私の先生の凄さを!?】
【あぁぁ!! ホワイトレコード様の伝説がまた一つ……着替えてきます】
【……根黒万太郎、女の喘ぎ声で動揺するとはな……くく、閃いたぜぇ?】
【通報し……やめな?(動揺)】
【カタギリ、何処まで堕ちると言うんだ!(興奮)】
リスナーさんたちのコメントを読みながら、俺はくすりと笑う。
エネルギー残量は0だが、すぐに補助タンクに接続された。
帰りの分の燃料は十分であり、襲われなければどうという事は無い。
【根黒、帰れそう?】
「まぁ何とかなりますよ……逃げるだけなら、全然できますし……今日は帰って、さっさと寝ます。配信はこれで終わりとさせていただき……ふぁぁ」
【ふふ、ゆっくりと寝な? また、配信楽しみにしてるよぉ】
タライさんの言葉に頬を綻ばせる。
そうして、リスナーさんたちからの労いの言葉を貰いながら。
俺はそのまま配信を終える……さて。
メッセージを見れば、みっちゃんから連絡が来ていた。
その内容を見れば、驚くもので……はは。
《先生。今回は私の負けです。ですが、次こそは私が勝ちます……それと、セブンストリームで私の上司にあたる人間が先生にお会いしたいそうです。お時間がある日を教えてください。予定はあわせます。拒否権は……ふふ》
「…………はぁ、みっちゃん……ま、いっか」
連絡を返すのは帰ってからだ。
今は兎に角、意識があるうちに帰ろう。
激しい戦闘の余韻に浸る間もなく。
俺は機体を操作して帰路につく。
苦しく、手に汗握る戦いだったが……そうだな。
「……楽しかったなぁ!」
俺は目を輝かせる。
そうして、次はどんな戦いが待っているのかを想像して――