底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第16話:最高のゲームで根黒は笑う

 穢れた空を舞いながら――心が乱れる。

 

《あぁぁ!♡》

「ふぁぁ!?」

【……ふぅ】

 

 みっちゃんの精神攻撃は俺の心を大きくかき乱す。

 照準はブレにブレて、みっちゃんは攻撃を回避し。

 分身体が俺の機体へと迫り、クローで執拗に攻撃してきていた。

 

 避けられる。

 が、此方の攻撃も当たらない。

 ジリ貧であり、このままでは――負ける。

 

 敗北の色が濃厚になれば、リスナーさんたちも心配し……いや、してないな。

 

 何故か、ふぅとばかり呟いている。

 激しく困惑しながらも、俺は突破口を開こうと――

 

 

 

《さて、名残惜しいですが――終幕としましょうか》

「――え?」

 

 

 

 みっちゃんが呟いた言葉。

 それに驚いていれば、彼女の機体の筒から――上空に何かが撃ち込まれた。

 

 砲弾であり、それは遥か空へと舞い上がり――爆発。

 

「……!?」

 

 瞬間、フィールド全体に光のカーテンのようなものが展開された。

 それはまるで、オーロラのように綺麗だった。

 何が起きたのかと考えて――レーダーが無数の敵影を知らせる。

 

「はぁ!?」

 

 俺は驚きながらもブーストし、その場から離れて――咄嗟に下へと降下した。

 

《あら?》

 

 瞬間、みっちゃんの声が響き。

 何かが勢いよく上空を通過していった。

 一瞬見えたのは、光の線で――エネルギー兵器か!?

 

 あり得ない。

 みっちゃんのクローはパイルバンカーの筈だ。

 エネルギー兵器な筈が――レーダーがまたしても無数の敵影を知らせる。

 

「嘘だろ!?」

《ふふふ》

 

 眼前に見えるのは無数のメック。

 全てがみっちゃんの機体であり、動きはまごう事なき本物。

 それらが視界に映るだけでも三十を優に超えていて――クローの中心が光る。

 

「くぅ!!?」

 

 俺は形振り構わずブーストを連続して行う。

 エネルギーの消耗が激しいブースト。

 が、やらなければ確実に死ぬ。

 それを理解したからこそ攻撃を全て回避し――ショットライフルを横に向ける。

 

 間髪入れずに弾丸を放てば。

 そこにはみっちゃんの機体が迫ってきていて――弾がすり抜ける。

 

「映像!?」

《えぇ、もう分かりましたね。これらは全て――ただの虚像》

 

 無数のメックが空を舞う。

 俺を取り囲むように旋回し。

 全ての機体が俺へと敵意を向けていた。

 その殺気も、気配も全てがリアルで。

 偽物だと俺の頭が見抜けないほどに完成されていた。

 レーダーすらも誤作動しているんだ。

 どう足掻いても、アレらを本物かどうかを瞬時に判断する事は――不可能。

 

「……はは、何だよそれ……理不尽じゃんか」

《えぇ理不尽です。でも、私はこれを使うと決めていました。これが私の本気。私の決意……先生、覚悟は出来ていますか? 貴方の伝説は終わり、新たな道を私が作ります。えぇ、共に、人生の墓場に》

 

 彼女は笑う。

 そうして。機体を浮遊させながら両手を構える。

 全てのメックのクローが俺へと向いている。

 攻撃が来る。それを感じながら――

 

 

 

「――君に出会えて良かったよ」

《……!》

 

 

 

 俺は感謝を伝える。

 瞬間、四方八方から無数の光線が放たれて――“すり抜ける”。

 

 

《ゴーストジャンプ!? 上!》

「さぁ全力で――闘おう」

 

 

 俺は笑う。

 そうして、レバーの設定を変更する。

 レバーが変形し、機械化されたグローブが出現。

 それに手を嵌めてから、俺はショットライフルを宙に投げる。

 サブアームにマウントさせていたブレードを手に握り。

 宙を舞うライフルをサブアームがキャッチして――俺はリミッターを解除する。

 

【フルコン!? 此処に来て!?】

【リミッター解除にフルコントロールなんて、無茶っすよ!?】

【意識飛ぶぞ!? はやまるなぁ!!】

【先生!! 本気ですか!?】

【あぁ、これこそ、ホワイトレコード様の真骨頂】

【奥の手だと……何処まで底が見えねぇんだ!?】

 

 リスナーさんたちが慌てている。

 やめろと言う優しい方もいた。

 

 フルコン――フルコントロールとは、機体の操作全てを“自分自身の体”で行う操作システム。

 

 ヘブンフォールであれば、標準で搭載されていたシステム。

 己の五感を極限まで高めて、リアルと遜色のない領域まで押し上げる。

 僅かな誤差は無くなり、五指の動きによって使いこなす事が出来れば。

 機体の性能を最低でも120%上昇させる事が理論上では可能となる。

 が、その代償として心身への負荷が高く。

 使い過ぎれば、VR装置が強制的にログアウトの判断をするほどの悪魔のシステム。

 

 死ぬことは無いさ。

 あっても二日ほどの頭痛くらいだ。

 ヘブンフォール時代であれば、吐いていた事もあったが。

 体が順応し、慣れてしまった今であれば――問題ない。

 

 遥か空の上。

 機体を停止させて、ゆっくりと地上を見る。

 みっちゃんのメックが無数に存在し。

 その全てが俺へと向かって来ている。

 俺はそんなワクワクする光景を見つめて――

 

 

「最高の――戦場だぁ!」

 

 

 俺はそのままペダルを全力で踏み――加速。

 

 シートに体が押し付けられる。

 ゴーストジャンプを超えるほどの加速。

 スラスターの出力は限界を超え。

 びりびりと激しく体を振動させながら、無数のメックの中に――飛び込む。

 

《――ならば!!》

 

 みっちゃんの偽物たちが動く。

 凄まじい速さであり、周りを取り囲み。

 クローの銃口が向けられて――ショットライフルの弾丸を放つ。

 

《……!》

「フルコンなんだ。同時操作だって出来るんだよ!!」

 

 俺は笑う。

 そうして、機体を更に加速。

 激しく回転しながら、攻撃を仕掛けようとする敵一体一体に弾丸を放つ。

 

 全てを目で捉え、精確に射貫き。

 死角から迫る者はブレードで斬りはらう。

 モニター越しの世界は光の線となり流れて。

 迫りくる敵影は形すらも見えはしない。

 

 全てが靄であり、全てがおぼろげで――同じさ。

 

 ヘブンフォールの時もそうだ。

 激しい攻防の中で、姿が見えぬ敵を相手に。

 俺は大空を自由に舞って、全ての敵を――屠って来た。

 

 変わらない。

 この世界でも、俺がやる事は――同じだ!!!

 

「ハァ!!!」

 

 俺は笑みを深める。

 そうして、トップスピードの状態で――機体を急旋回。

 

 軌道を九十度の角度で曲げれば。

 機体は悲鳴を上げて、体からは嫌な音が響く。

 肉が押されて、骨が軋み。

 歯が砕けそうで。

 痛みを超えた苦しみであり、俺はそれを感じながら――機体を動かす。

 

 曲がる。そして、スピードは落ちない。

 そのまま敵の意表を突き、流れるように全てのダミーを攻撃。

 まやかしは消えてなくなり、その数は減っていった。

 

 やはりだ。

 奴らは本物に限りなく近い。

 だからこそ、生み出せる数には限りがある。

 精巧な偽物を創り出せるのは限界がある。

 

「だったら――全部、ぶっ壊せばいいだけじゃんか!!」

《……!?》

 

 俺は機体を加速。

 そのまま命がけの変則機動を敢行。

 ダミー全てを本物であると仮定し。

 それらが放つ攻撃を全て回避。

 隙をついて流れるように弾丸を放つ。

 敵を殺し、死角から迫る敵の攻撃をブーストで回避。

 そのまま回転しながら敵を一刀両断。

 

 加速、加速加速加速加速――曲がれッ!!!

 

「ぐぅぅぅ!!!」

 

 奥歯からバキリと音がする。

 鋭い痛みが走った。

 が、まだまだ意識は飛んでいない。

 生命の維持に支障はない。

 ログアウトするまで俺の体が持てばいい。

 

 心配はいらないさ。

 この体で、俺はあのいかれた世界を遊びつくした。

 この世界がどんなに理不尽であろうとも。

 俺のこの体はどんな理不尽であろうとも――超えて行く!

 

「ハハハハハ――ッ!!!!」

 

 俺は笑う。

 全力で笑った。

 そうして、ハイになりながら迫る敵を殺していく。

 

 流れるように進む世界で。

 光の線と化し、一撃で死ぬ世界を堪能する。

 敵を殺し続けて、己の生を実感し。

 此処がゲームの世界であろうとも、この瞬間はリアルをも超えて行く。

 

 楽しい、楽しいさ。

 全力で楽しめるからこそ――ゲームなんだよ!!!

 

《此処まで……いえ、それ以上に成長しているなんて……流石は先生。やはり、貴方は――此処で、私が!!》

「みっちゃん!!! もっと、もっともっと――楽しもうぜェェ!!!!」

 

 俺は笑う。

 鼻から垂れるものが口に入り。

 カラカラに乾いた口内に鉄錆の味が広がる。

 コックピット内は灼熱。

 計器がイカれて、システムがけたたましく警告を発する。

 俺はそれを聞き流しながら、遥か上空へ向けて機体を上昇。

 

 上昇、上昇――更に、上昇。

 

 穢れた雲を突き抜ける。

 濁った空が晴れていき、遥か空の青が色を増していく。

 カタカタと激しく振動し、カメラに霜が出て来た。

 それを見ながらも、俺は歯を食いしばり上昇し――機体を停止させる。

 

「……はぁ、やっぱり……綺麗だなぁ」

 

 星が――綺麗だ。

 

 深い青の世界であり、満天の星だ。

 月があんなにも大きく。

 下を向けば、世界の色がハッキリと見えていて――本物さ。

 

 ゲームの世界も本物だ。

 死が限りなく薄いだけで、そこに真に存在している世界。

 男も女も関係なく。

 全力でこの世界を楽しむ為に、俺たちは存在している。

 

「理不尽で、強欲で……何処までも自由に生きられる世界……ゲームってさ。最高だろ?」

 

 俺はリスナーさんたちに問いかける。

 彼らは色々な考えを持っている。

 たかがゲーム、それでもゲーム。

 最高か、最低か。

 全ての人間が考える最高のゲームはこの世には無い。

 それでも、俺の配信を見て、彼らはゲームに興味を持つ。

 

 人生を変える出会いを。

 無駄なような時間が、最高の冒険となるように――タライさんが呟く。

 

 

 

【やっぱり君って……誰よりも、楽しそうにゲームを遊ぶよね。私はね、好きだよ。君も、君の遊ぶゲームも】

「ありがとうございます。俺も、リスナーさんたちの事が心から大好きです!」

【そう。だったら、魅せてよ。君の最高の――“生配信(ゲーム)”ってやつをさ?】

「はい!!!」

 

 

 俺は了承する。

 そうして、俺を追い掛けて来る道化師を見つめて――降下。

 

《先生!!! 今度こそ、私がァ!!!》

「みっちゃん!!!」

 

 彼女の機体の像が乱れる。

 そうして、二体に分裂した。

 そのどちらもが本物で、その想いも正しい。

 俺はそれらを認識し、ブレードをクロスさせた。

 

 勝負は一瞬。

 これで全てが決まる。

 俺の答えを彼女に示す。

 

 ぐんぐんとスピードは上がっていく。

 互いに機体を回転させる。

 空気抵抗を極限まで削り互いに迫っていく。

 そうして、みっちゃんはクローを向けて、俺はブレードをクロスさせたままで。

 互いにトップスピードで進み――ゴーストジャンプ。

 

《そこッ!!!》

「……!」

 

 意表を突こうとし――見破られた。

 

 眼前に光が満ちる。

 彼女がどんぴしゃで放った光線。

 機体を容易く溶かし斬る光線で――俺は全ての指を動かす。

 

 そうして、光線を“一本のブレード”でなぞり。

 機体を僅かにズレさせた。

 ブレードの刀身が真っ赤に輝き。

 死角から飛び出した分身がクローで俺の機体を掴もうとする。

 俺はそのクローへとショットライフルを一斉に放つ。

 

 ガガガと音がし、敵のクロー事機体を破壊。

 残骸が飛び散り、俺の機体は硬直し――機体に衝撃が走る。

 

「……!」

《取ったッ!!!》

 

 背後からみっちゃんの機体が迫り。

 彼女のクローにて機体を拘束された。

 逃げる事は不可能。

 出力ではワンオフの方が上で、彼女の右手のギミックが切り替わり。

 パイルバンカーが起動して――彼女のクローに衝撃が走った。

 

《な!?》

 

 遥か頭上から飛来した何か。

 それが俺を拘束する彼女のクローへと精確にぶち当たる。

 切断はされなかったが、内部が露出するほどに破損し。

 バチバチとスパークを起こしていて――俺は拘束から逃れる。

 

《ブレード!? まさか、あの一瞬で!?》

「仕掛けってのは即興でも出来るんだよ――覚えて帰りな?」

 

 俺は笑う。

 そうして、ショットライフルの銃口を彼女へと向けて――放つ。

 

 連続して音が鳴り響き。

 彼女の装甲が破壊されて、内部のフレームが一部露出。

 オイルが噴き出し、配線から火花が散る。

 俺はそのまま落下していく彼女の機体に赤熱するブレードの切っ先を向けて――

 

 

《先生――やはり、貴方は――危険、過ぎるほどに――》

「これが俺の日常だよ」

 

 

 俺はそう吐き捨てる。

 そうして、手を伸ばす彼女の胸に――ブレードを突き刺す。

 

 そのまま俺たちは落下し。

 俺はブレードから手を離して彼女から離れて――大爆発。

 

 彼女の機体の残骸が周囲に飛び散り。

 俺はそのまま残骸を弾きながら地面を滑っていき……停止した。

 

《エネルギー残量――0%》

「は、はは……せ、セーフ!」

【……ギリギリだよ!?】

【……はぁぁぁ!! 息、してなかったぁ!?】

【鳥肌ぁぁぁ!!】

 

 機体内に溜まった熱を排出しながら。

 俺はヘルメットを脱ぎ捨てる。

 そうして、ジャケットのジッパーを下ろし。

 ハッチを開いて……は、出来ないな。

 

 額に溜まった汗を拭う。

 そうして、手に汗握る一戦を終えて――Vサインをする。

 

「今日も俺の勝ち!! いえぇい!」

【アンタやっぱり最高だよ!!】

【チャンネル登録します!! 師匠と呼ばせてください!!】

【絶対に公式戦出た方がいいっすよ!! 間違いなく、世界チャンプだって夢じゃねぇっすよ!!】

【きゃあああ!! 先生、最高です!! 見てよぉぉ!? これ、私の先生の凄さを!?】

【あぁぁ!! ホワイトレコード様の伝説がまた一つ……着替えてきます】

【……根黒万太郎、女の喘ぎ声で動揺するとはな……くく、閃いたぜぇ?】

【通報し……やめな?(動揺)】

【カタギリ、何処まで堕ちると言うんだ!(興奮)】

 

 リスナーさんたちのコメントを読みながら、俺はくすりと笑う。

 エネルギー残量は0だが、すぐに補助タンクに接続された。

 帰りの分の燃料は十分であり、襲われなければどうという事は無い。

 

【根黒、帰れそう?】

「まぁ何とかなりますよ……逃げるだけなら、全然できますし……今日は帰って、さっさと寝ます。配信はこれで終わりとさせていただき……ふぁぁ」

【ふふ、ゆっくりと寝な? また、配信楽しみにしてるよぉ】

 

 タライさんの言葉に頬を綻ばせる。

 そうして、リスナーさんたちからの労いの言葉を貰いながら。

 俺はそのまま配信を終える……さて。

 

 メッセージを見れば、みっちゃんから連絡が来ていた。

 その内容を見れば、驚くもので……はは。

 

 

《先生。今回は私の負けです。ですが、次こそは私が勝ちます……それと、セブンストリームで私の上司にあたる人間が先生にお会いしたいそうです。お時間がある日を教えてください。予定はあわせます。拒否権は……ふふ》

「…………はぁ、みっちゃん……ま、いっか」

 

 

 連絡を返すのは帰ってからだ。

 今は兎に角、意識があるうちに帰ろう。

 

 激しい戦闘の余韻に浸る間もなく。

 俺は機体を操作して帰路につく。

 苦しく、手に汗握る戦いだったが……そうだな。

 

「……楽しかったなぁ!」

 

 俺は目を輝かせる。

 そうして、次はどんな戦いが待っているのかを想像して――

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