底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
「……はぁ」
「先生? お疲れですか? 弟子である私が肩を揉ませて頂きます!」
「あ、ありがとう……はぁ」
ため息を零しながら、客船の個室に設置されている椅子でくつろぐ。
何故か、弟子である月島さんがいて、俺の肩を嬉しそうに揉んでくれていた。
彼女の装いは何時もの学生服ではなく。
白いワンピースにおしゃれなサンダルを履いて、サングラスを胸にかけている。
ザ・旅行客の装いであり、アバターで無い彼女自身もきっと似合うんだろうなぁと思う。
みっちゃんとの再会。そして、熱いバトル。
楽しかったが決着は着き、時は流れて……気が進まないなぁ。
此処はグリード内であり、今、俺たちはゲーム内の移動手段の一つである客船を使っている。
別にファストトラベルで行ってもいいのだが。
みっちゃんはどうせなら、旅行気分で来ればいいと言って。
態々、俺たちのチケットを手配してくれていた……まぁ運営側の人間なら何でもありだよね?
客船や飛行船を使用する場合。
時間の流れが本来のものとは切り替わる。
最新のVRゲームならではのシステムであり。
時間の無い人間であろうとも、旅気分を満喫できるようにとの粋な計らいだ。
おおよそ、6時間程度掛る船旅も、時間の流れが違うからこそおおよそリアルでは30分ほどしか時は流れない。
逆浦島太郎現象であり、初めて実装されたゲームではいい意味でも悪い意味でも話題になった。
脳への負荷であったり、心身への影響など。
学者たちが指摘している時もあったが、開発者たちはそれらの問題は無いと証明していた。
もしも、異常を検知した場合に備わっているものこそが強制ログアウトシステムで。
現在のVR装置であれば、バイタルのチェックから病院への連絡まで勝手にしてくれる。
だからこそ、誰もが安全にスリルのあるゲームを堪能できるのだ。
「……大体、3時間かな……まだまだかかりそうだねぇ」
「はい! あ、でもでも! 私は先生と一緒なら、何時間でも……へへ」
「……危ういなぁ」
「……?」
月島さんは俺の呟きに首を傾げる。
純粋な彼女が悪い大人に騙されないか心配だ。
まぁ、リリアンさんがいるから問題は無いと思うけど……それにしても。
俺は手を叩く。
すると、テレビなどの操作が出来るディスプレイが目の前に投影される。
俺はニューチューブにアクセスし、今朝見ていたとある謝罪動画を開いた。
《この度は弊社のeスポーツチーム所属であるカタギリが皆さまに多大なる迷惑をお掛けした事。この場をお借りして、深く謝罪させて頂きます。誠に申し訳あり》
《根黒ォォォ万太郎ゥゥ!!! クウゥゥソォォォガァァ!!?》
《あ、おい! 馬鹿、配信中だぞ!? 何を考えておい止めろ!!!》
《放せェェ!!! 殺す殺してやるぅぅぅぅ!!! アイツを殺して俺も死んでやらァァァ!!》
鎖でがんじがらめに拘束されて。
血の涙を流しながら叫んでいるのはカタギリさんだ。
リアルの姿は逆立った黒髪に、鋭い赤い瞳で。
正に狂犬と呼べるような荒々しい見た目だが。
当の本人も血の気が多そうであり、今も俺の名前を叫びながら暴れていた。
彼が謝罪会見を開かされている理由は、みっちゃんとの勝負が終わった次の日の事だ。
何気なく配信をしながら、自由探索領域内で金策をしていれば。
カタギリさんが襲ってきて、何と無しに相手をしていたのだが。
彼は何をトチ狂ったのか……その、エッチな音声を爆音で流し始めた。
《根黒万太郎ォォォ!! これでテメェも終わりだァァ!! ハハハハ》
『――ミュートしまぁす』
【哀れなり紫電のカタギリ】
【最高だよカタギリ。次はもうないだろうが、ちゃんと記録してやるからな!】
彼との戦いは俺の勝利で終わり。
金策を終えて帰れば、彼の記事がネットニュースでもヌイッターでも駆け抜けていて。
騒動が大きくなり、彼は無理矢理に謝罪会見を開かされて……反省してないんだよなぁ。
血の涙を流しながら、殺す殺すって言っている。
俺は微笑みながらその光景を眺める。
月島さんはぼそりと「雑魚がぁ」と言っていた。
結局、彼の炎上覚悟のスタイルは一定の人に受けいれられてはいる。
俺の固定のリスナーさんの中には、彼がまたやって来てくれる事を望む人も少なからずいる。
俺としても、カタギリさんはこれからもっともっと強くなると思っている。
もしも、更にカタギリさんが強くなったのなら……楽しみだなぁ。
彼は彼なりに頑張っている。
まぁ今回の件で、彼には不名誉な名前が付けられてしまった。
「……スケベのカタギリ……ふ、ふふ」
「……ぷっ、ださ」
「「「ふふふ」」」
俺と月島さんは笑う。
カタギリさんはきっと怒るだろうが。
俺たちからすれば、中々に面白い名で……まぁいい。
動画を消し、別の動画をつける。
カタギリさんの件はどうでもいいんだ。
重要な事は、これから俺が会う事になる――みっちゃんの上司の方についてだ。
《株式会社セブンストリームは、皆さまに未知の体験と感動をお届けします》
「未知の体験と感動……有言実行だねぇ。流石は、名作を生み出し続ける企業は違うよ」
「確かに……タイタンシリーズはずば抜けてますけど、“デッドガンズ”も“イレブン・アイズ”も面白いですからねぇ……先生は別のゲームとかするんですか?」
「ん? そりゃ勿論するよぉ。まぁ、タイタンシリーズほどはやり込んで無いけどねぇ。デッドガンズは得意だよ?」
俺がそう伝えれば、月島さんは挑戦的な笑みを浮かべる。
そうして、機会があれば一緒にプレイしようと誘ってくれた。
「私、銃火器の扱い。ちょー得意ですよ? 先生も驚きますから!」
「はは、それは楽しみだね……ふぅ、もういいよ。ありがとねぇ。楽になったよぉ」
「あ、はい! ……それで、先生……実は、この客船に……温泉、あるらしいですよ?」
「え、そうなの? 客船の中に温泉って珍しいねぇ」
「ですよねぇ! それでそれで、これは都市伝説みたいなものなんですけど……何でも、幻の秘湯に浸かれば、リアルで不老不死になれるらしいんですよ! 凄くないですか!?」
彼女は興奮しながら説明する。
客船の一角にある温泉ルーム。
その中には六つのそれぞれ異なる効能の温泉があるらしい。
が、彼女曰く、幻の七つ目の秘湯が存在するらしく。
タイタングリード内でその秘湯に浸かる事が出来れば、リアルで不老不死に……嘘臭いなぁ。
半信半疑ではある。
が、月島さんの目は輝いていた……否定はしちゃだめだな。
「……よし! だったら、その七つ目は――君が探して来るんだ!」
「…………あの、先生は?」
「ん? 俺はぁ……まぁ適当に海でも眺めに」
「――私、温泉に興味ないです」
「え!? い、いや、今さっき」
「――先生行ってください私はバイキングに行くのでそれじゃ」
彼女は無表情の早口でそう言って部屋を飛び出す。
俺は何だったのかと思いながら……まぁ、それならいいか。
ゲーム内の温泉施設は大体が混浴が多い。
リアルの体ではないからこそ、皆が皆、ガードが緩くなっている。
が、俺からすればリアルもゲームの体も大差はない。
大体の熟練のプレイヤーたちはゲーム内の肉体と現実内の肉体は同じにしている。
その方が違和感が少ない上に、滑らかな動きが出来るからだ。
だからこそ、みっちゃんは当然で。きっと、月島さんの体も……ダメに決まってんじゃん!
俺は28で、彼女は17だ。
明らかにアウトであり、ゲーム内であっても犯罪行為だ。
俺は節度ある人間であり、おじさんはおじさんらしく。
おじさんとしての自覚をもって行動する。
そう自分に言い聞かせながら俺は椅子から立ち上がる。
「……風呂、行くか」
誰も聞いてはいない。
俺は静かに部屋から去る――
#
温泉がある区画に入り。
脱衣所で服を脱いできた。
タオルは自動で提供されて、そのまま広い浴場にて体と頭を綺麗にし。
時間を掛けて、一つ一つの温泉を堪能した。
白く濁った甘いミルクのような香りのする温泉に。
薔薇が浮いているフローラルな温泉に。
和風で黒い天然の石で作られたシンプルな温泉にも浸かった。
後は、40度以上もある熱々の地獄温泉であったり。
特大の薪で沸かしている五右衛門風呂もあった。
最後の月の上のような立体映像の中である無重力温泉は中々に楽しくて……でも、まだあった。
そろそろ出ようかと思い、脱衣所まで続く廊下を進んでいけば。
何故か、来た時には無かった扉があった。
それもこれみよがしにボロボロの暖簾が掛けられていて。
温泉のマークが入っていたからこそ中に入り――素晴らしい温泉が待っていた。
その温泉は、豪華や派手という概念とはまるで違う。
が、みすぼらしい訳でも質素と言う訳でもない。
山の上であり、分厚い雲が真下にあって。
白銀であり、神秘に満ちた心に残る場所であった。
雪が軽く積もっていて、体が少しだけ冷える感覚を覚える。
「「「……?」」」
見れば、小さくて白い体毛で覆われたうさぎが何匹もいる。
雪兎であり、彼らは仲間同士で戯れていた。
自然に出来た穴の中に熱々の湯が満ちていて。
ちょろちょろとコケに覆われた不思議な石のカメから温泉が流れている。
俺はそれらを見てから、良い感じに冷えた体を湯の中に入れて――
「ぅ、ぉ、ぉぉ、ぉぉぉ……ふぁぁ」
極楽だ。
これ以上にないほどに丁度いい湯加減で。
全身の疲れが吹き飛ぶほどに気持ちがいい。
先ほどまでの重い感覚も。
今まで蓄積されていた疲れも、全てが吹き飛んでいき――
「気持ちがいいだろぉ?」
「……! い、何時からそこに? あ、いや! す、すみません!」
「けけ、そう緊張なさるな。こんな老いぼれの裸何て、価値はないですからねぇ」
声がして横を見る。
すると、湯気の中から――お団子にした白髪に赤い簪を刺した老婆が現れた。
彼女は体にタオルを巻いていない。
そのままであり、思わず顔を背けてしまう。
すると、お婆さんは俺の反応を面白そうに笑っていた。
年老いている。
が、良い歳の取り方をしたんだろう。
老いたというよりは、磨きがかかったように感じる。
それほどまでに見事な体つきに、鋭い瞳で……何者なんだ?
「そう警戒しないでおくれよ。私はただ、若い――伝説を見に来ただけさね」
「え!? あ、す、すみません!」
「はは、初心だねぇ。良い事だよぉ……自己紹介かねぇ。私はヨネ。ヨネ婆さんで良いよ。アンタを先生って呼ぶ女の上司……ま、“末永く”よろしくねぇ」
彼女はそういって手を差し出して来る。
俺は体を見ないように気遣いながら握手に応じた。
「な、何で、此処に? 会う場所は、その」
「あぁ、別にぃ? 私はサプライズが好きでねぇ。気に入った相手には、こうやって裸の付き合いをするんだよ。ま、アンタみたいに若くて逞しい男を見るのが好きなんだよ。はは」
「そ、そうですか……それで、あの……セブンストリームの方が、何故、プレイヤーの俺に会おうだなんて? な、何か問題でも……」
「んぁ? いやいやぁ、問題はないよぉ。ただ、最近になってゲーム内での動きが活発になってるから、何かあるのかと思ってねぇ……そしたら、十中八九がアンタの登場が関係してるってんで、あの子に調べて貰ったのさ……結果、間違いなくアンタが渦中の存在って分かってねぇ。こりゃ、会社を代表してご挨拶をと思った次第だよ……ま、要するに唾つけておこうって話さね。はは」
ヨネ婆さんはくしゃりと笑う。
裏表のない人であり、屈託なく笑うその姿を見れば警戒心が消えて行く。
少しだけ不安であったが、そういう話ならばと納得する。
「……まぁ頼みってほどではないけどねぇ。もし、今まで通りグリードで遊んでくれるっていうのなら……アンタ、ランクマッチに参加してはくれないかい?」
「ランクマッチですか? ま、まぁ、何れはしよう思っていましたけど……どうして、態々?」
「んー? いやぁ、それはアンタが良く理解してると思うけど……ブラックレコードってのは知ってるよねぇ?」
「え、あぁ、まぁ噂程度には……その人が俺に何か関係してるんですか?」
「…………なるほどねぇ…………いや、悪い。今の話は聞かなかった事にしておくれ。ババアのボケってやつさ。はは」
ヨネ婆さんは急に話をはぐらかす。
俺は首を傾げてどういう事かと少し興味が湧く。
色々と質問してみるのもいいかと考えて――肩にふにゅりと何かが乗る。
「ん?」
「せんせぇ。お背中……流しましょうかぁ?」
「へへ――出ます!」
俺は温泉から出ようとし――誰かが新たに入って来る。
バスタオルを巻いているが。
着やせするタイプだったのか。
中々に立派なバストに赤らんだ頬で、髪は綺麗に巻かれていて――自分の目を目潰しする。
「ぐあぁ!?」
「せ、先生!? え、何で!?」
「あらぁ? 誰かと思えばぁ……私に負けたぁ自称お弟子さんじゃないですかぁ? ふふ」
「……はっ? いや、その声、あの時の! ――何でテメェがいるんだよ。おい! 先生に引っ付くんじゃねぇ!! 殺すぞ!!」
「あぁん。こわぁい。先生、私、心臓がドクドクしてます……伝わりますか?」
みっちゃんの凄まじい力で強制的に湯の中に戻される。
そうして、今度は顔全体がやわらかいものに包まれた。
凄まじくいい香りで、とくとくと鼓動がしっかりと聞こえる。
すると、ざばざばと音がしたかと思えば、またしても凄い力で引っ張られて――柔らかい。
ふよりとまた別の柔らかいものに包まれた。
今度は少し控えめだが、弾力がありまるで高級な低反発枕のようで――柔らかいものでサンドされる。
「……! 離れろや!! このぉ!!」
「そっちが離れるのが筋じゃないかしら? 私の方が、貴方よりも先生と過ごした時間は長いんですよ?」
「そ、そうなんですか? ……いや! せ、先生はわ、若い方が良いんだよ!! は、はん!」
「若さがあっても、お子ちゃまでは大人な先生は満足しないと思うけどぉ? 経験不足、だからぁ――負けたんじゃないの?」
「――ッ!! 死ね!! エロババア!!」
「口が悪いのねぇ――おちびちゃん」
「おやおや、全く」
柔らかさの押し付け合い。
それを感じながら、俺は体温が急激に上昇するのを感じる。
そうして、美女たちの声を聞きながら俺は小さく笑い――鼻から赤いものを噴出させる。
「え、ちょ!? 先生!?」
「あらぁ? 大変。少し刺激的だったかしらぁ?」
「何やってんだい……おーい。生きてるかぁ? ……幸せそうな面してらぁ。はは」
俺は笑う。
笑いながら、夜空を見上げる。
そうして、だらだらと赤い情熱を垂れ流しながら。
これが遅れてやって来たモテ気なんだと、確信、し――――…………