底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
みっちゃんとの再会、セブンストリームからの接触。そして――“ランクマッチ”。
「……ふふ」
ランクマッチとは、その名の通り自らのランクを上げる為のバトル。
それぞれのゲームにおいて、ランクの昇格条件は異なるものの。
勝てばランクアップに繋がるという点は共通している。
タイタングリードもほぼ同じで……が、少し違う点がある。
それはタイタングリード内の最終的なランク上げが――“特殊任務による対戦”になっている事だ。
最低ランクであるFから最上級クラスのSまであり。
まぁその上にも、ランクとは違うものがあるが……それはいい。
Fであれば、同ランク帯の傭兵との戦闘を十勝すれば。
ランクアップを懸けた戦いである特殊任務戦に挑める。
現在、俺は配信中で。
Fランクとして対戦を繰り返し、先ほど十勝を終えた。
対戦してくれた人たちの実力は……申し訳ないがそこまで高くは無かった。
まぁ、Fクラスであれば当然だろう。
恐らく、特殊作戦においても苦戦する事は無い……が、妙な胸騒ぎがする。
心がざわつく感覚だ。
何かが待ち構えている気配であり。
この感覚は何だと思って……が、やるしかない。
マッチングは開始されて。
フレンドの同行を要請するかどうかを聞かれる。
少し迷ったが、今回はフレンドの力を借りようとし――コメント欄で彼女がいるのを発見した。
俺はすかさず彼女に要請を出し――彼女が入って来た。
「先生!! 私を呼んでくださるなんて……うぅ! 頑張ります!」
「よろしくね!」
【おぉ、図らずもサラちんとのコラボ……これは勝てる!】
【まぁ楽勝でしょう。サラちんは既にBランクだし】
【相手が可哀そうですねぇ……悪く思うなよ】
コメントに反応しながら、互いに待機ルームで軽く話し――マッチングが完了した。
現れた相手を見れば、フルフェイスに分厚めのパイロットスーツを着ている。
彼の隣には、同じようなスーツを着ている人がいて――彼らが俺の前に立つ。
「「あ、握手してください!!」」
「……え? お、俺?」
俺は激しく戸惑う。
月島さんを見れば、腕を組みながら得意げだった。
「お、俺たちホワイトレコードさんに憧れて傭兵になったんです!」
「お、俺たちも何時か絶対に、で、伝説になるんで! 今日はその……む、胸をお借りします!」
「は、はは……よ、よろしくお願いします」
【根黒氏はモテモテだなぁ】
【俺もホワイトレコード様と握手してぇ!】
【……これが敵か? 話にならんな】
握手をしていれば、互いの体が光に包まれる。
転送が開始されたようであり。
手を離してから、互いに闘志をぶつけ合い――――
――――目を開ける。
「此処は……空を見る限り……戦闘中みたいだね」
《ですねぇ。私の時とは違いますけど……多分、強襲任務でしょうか?》
空を見れば、戦闘シップが飛んでいる。
メックも飛んでいて、遥か前方にある要塞へと攻撃を仕掛けていた。
要塞の規模は街ほどあり、無数の対空砲に――うぉ!?
「今の光――レールガンか?」
《ほぇ、やべぇもん使ってますねぇ。これ、結構……むずいんじゃ?》
【俺の知るFランクの任務じゃない……ひぇ】
一条の光が空に軌跡を描く。
そうして、空を飛んでいた大型の戦闘シップを撃ち抜き――爆散。
その光景を眺めながら、俺と月島さんは少し驚く。
レールガンともなれば、速度も威力も桁違いだ。
俺は勿論の事、月島さんの機体であろうとも掠めただけで大破だろう。
そんなものを出して来るというのは、かなり……ん?
コール音が響く。
何だろうと思えば、通信は強制的に繋がされて――
《傭兵諸君! 依頼を引き受けてくれた事感謝する! 君たちに行ってもらいたい事は、前方に見える“グリーフランド要塞”にあるエネルギー供給施設の破壊だ! 施設は全部で三つ! 全て破壊する事が出来ればミッションは達成だ! なお、この依頼の達成によって勢力圏への影響は少なからず発生するだろう。それから――》
「……ん?」
依頼人の話を聞いていれば、月島さんからチャットが送られてきて……え?
[この依頼、かなり特殊なものになってます。普通、特殊任務で勢力圏への影響が出るようなものはCから……いや、それ自体も稀で……多分、AIが先生と私の実力を計算してこれを出したんだと思います]
[それってさ……もしかして、本来の依頼人を蹴る事も出来るって事?]
[はい、可能です。多分、相手の依頼者が接触してきたり、後は三大勢力の人間が先生に交渉を……多分、乱入者もやってきますよ?]
「……へぇ」
【不穏な風を感じる】
【ドキドキ!】
俺は月島さんの言葉に――笑みを浮かべる。
三大勢力への影響が出る特殊任務。
それによって、想定外の事が発生する。
その全てが俺たちにのみ影響するものなんだろう。
互いのパワーバランスを均一にする為の対策で……良いじゃないか。
彼らだって本気だ。
埋められない経験の差を埋めるには。
システムの関与が無ければ無理なんだろう。
俺が対戦者たちであれば悔しく思う事だが……まぁいいさ。
どんな理不尽も、どんな不条理も――楽しめるなら、それでいい。
《――という事になる。多くの障害が待ち受けているでろうが。君たちならば、必ずや任務を達成してくれるだろう! 我々は信じているぞ! それでは幸運を祈る!》
そうして、熱意ある男との通信は切れる。
「……幸運、ね……よし、じゃ行きますか!」
《はい!》
「皆さんも、遠慮なくコメントしてくださいねー!」
【はーい!】
月島さんとリスナーさんたちに声を掛ける。
すると、彼女もリスナーさんたちも元気よく返事をし――俺たちは飛ぶ。
低空飛行であり、木々の合間を縫うように飛行。
少し速度を調整し、月島さんが離れないようにする。
俺の装備は“カスタムメイドのハンドガン”に“ニードルスパイク”。
そして、肩部にミニガンを二つだ。
カスタムのハンドガンは、銃身が長く改造されている。
貫通性能を高めてあり、有効射程距離も伸びていた。
徹甲弾系であり、癖が強く反動によるブレは増したが。
威力は高まり、ハンドガンの携行性とライフル並みの威力を両立させてある。
ニードルスパイクは、パイルバンカーの派生形でボックス型のそれの先端にトゲのようなものが出ている。
パイルバンカーが至近距離での使用に対し。
ニードルスパイクはスパイク自体を射出して飛ばすものになっている。
射程距離に応じて威力は変化するものの、射撃武器としても運用が出来る。
ただし、携行しているスパイクが尽きれば当然ながらただの重りだ……計10発。
……エネルギー供給施設をマップで示せば、東と西と北か。正面南から侵入するのならば……よし。
「月島さん! 俺が敵の注意を引き付けます! その隙に要塞内に侵入して、東の供給施設の破壊を!」
《え、あ――了解!》
【サラちんがんば!】
【やったれ!】
俺は彼女に指示を送り、そのまま加速。
敢えて敵に発見されるように高度を上げれば。
要塞の壁に設置された対メック用の機関砲が此方に向き――一斉射撃を開始した。
濃い弾幕を横へとブーストし回避。
そのまま大きく弧を描くように飛びながら。
月島さんの侵入経路を確保。
すると、レールガンの一部も此方を捉えて――ゴースト・ジャンプ!
「――っ!」
ぐんと機体は加速。
そのまま刹那に放たれた一条の光を躱す。
ギリギリではダメだ。
確実に避けなければ死ぬ。
それを理解しているからこそゴーストジャンプ。
次弾の装填に掛る時間は――およそ五秒!
その間に俺は一気に進路を変更。
弾幕の中を突っ切り、ハンドガンの銃口を敵の機関砲に向けて――撃ち放つ。
合計で十発の弾丸が、等間隔に設置された機関砲五台へと命中。
完全な破壊は出来なかったが、大ダメージを与えてやった。
煙を放ち沈黙しており、NPCらしき整備兵たちが急いで修理に掛っていた。
俺はそれを一瞥し――ゴーストジャンプ。
「ゥ――ッ!!」
凄まじいGによってシートに体が埋まる。
びりびりとレバーを震わせながらもレールガンの攻撃を回避。
光はそのまま遥か空へと上がっていった。
バックカメラでそれを確認し、そのまま砲身から蒸気を放つ巨大なレールガンへと接近。
そのまま砲身を滑るように移動し――ニードルスパイクを射手の座す場所へ撃ち込んだ。
瞬間、爆発が発生。
もくもくと黒煙が上がっており、レールガンは機能を停止する。
レールガン一台の破壊によって、確実に脅威が減った。
それにより、メックたちの動きも変わり。
次々と拠点へと爆撃を開始していた。
不利な状況。
それを俺たちの行動によって逆転させる。
中々に壮観であり、これこそがタイタンシリーズの楽しみだ。
俺はそう思いながら、月島さんのビーコンを確認……上手く、侵入できたみたいだな。
俺は良かったと思いながら。
そのまま俺も供給施設の破壊へと向かう。
先ずは西側であり、恐らくは、道中で脅威となるメック乗りなどが出て来るだろう。
……あのプレイヤーたちはどれほどの腕か……楽しみだなぁ!
俺は目を輝かせながら、そのまま要塞内へと侵入。
下へと降下し、そのまま入り組んだ道を駆け抜けていった――
#
《――そこだ!!》
《止まれ!!》
「ふふ」
【あぶねー!】
【わぁ!】
俺へと攻撃を放って来る二機のメック。
何方もワンオフ機であり――プレイヤーだ。
レーダーが敵の侵入を検知。
西側の施設へと辿りつけば、既に待ち伏せされていた。
二機のメックはどちらもが中量級だ。
ライフルとシールドを持った黄色いメックとチェンソーと“特殊兵器”持った青いメック。
何方も肩部にはエネルギーキャノンを積んでいた。
何方も孤狼団の陣営に所属する傭兵のようで。
彼らは開口一番に、依頼主を裏切り元々の味方陣営の本隊を叩きに行けと俺に命じた。
つまり、遥か上空で待機している大型シップの撃墜だ。
『詳細は言えんが。この要塞を墜とされれば、我らの陣営にとって不利益が生じる』
『三大陣営のパワーバランスが乱れれば、世界の終わり。いや、ゲームそのものが崩壊しかねない』
『……と、言われましてもねぇ』
『ただとは言わん! 依頼達成時の報酬の三倍出そう! 勿論、弾薬費とメックの修理費も此方が全額負担しよう!』
『悪い話じゃないだろう? アンタほどの傭兵なら、何方に利があるか分かる筈だ』
彼らは俺に裏切れと言った。
タイタンシリーズにおいて裏切りは決して悪い事じゃない。
傭兵は自由な存在であり、単純な善意で動く人間が全てじゃない。
純粋な悪にもなれるし、利益を追い求める事も出来る。
彼らは月島さんの排除は此方ですると言って――俺は満面の笑みで答えた。
『――断るッ!!!』
『そうか――なら、死んでもらおう』
『残念だよ!』
そこから始まるバトル。
施設の破壊を阻止する為に、彼らは俺の邪魔をしてきていた。
西側の供給施設は内部にあり。
無数のパイプが枝のように伸び。
メックが通れるような隙間が無数にあった。
ばかすか撃っていれば破壊は可能だが。
此方の弾薬が底を尽きてしまうのが先だろう。
故にこそ、最小の弾薬で破壊するのなら――制御コンピュータしかない。
中央に存在する操作盤。
あれこそが制御コンピューターだ。
そこさえ破壊すれば、短時間での修復が困難なダメージは与えられる。
が、二機の乱入者たちは俺の攻撃を阻んでくる。
意表をついて攻撃を仕掛ける事は出来た。
が、敵の特殊兵器によって散布される“
特殊兵器とは、特殊な効果を持つ武器だ。
相手のものは遅速粉煙と呼ばれる触れたものの速度を急激に落とすもので。
弾丸も機体の速度すらも落とす事が出来る。
移動阻害系の兵器であり、攻撃性はないものの、狭い場所で機動力を売りにしている傭兵にとっては脅威である。
恐らくは、スピードが落ちたところで。
あのチェーンソーによる攻撃を行うんだろう。
確実に仕留める気であり、随伴機はサポートに徹している。
上手いコンビネーションであり、中々に侮れない。
俺はパイプ同士の隙間を縫うように移動。
身を隠しながら、相手をかく乱する。
隙間から奴らの動きを伺えば……やっぱりな。
敵は俺の狙いを理解している。
だからこそ、中央の制御コンピュータを守りに入っている。
テコでも動く気は無いだろう。
正に、仕事に徹するプロの傭兵で――だったら!
俺は更に速度を上げる。
そうして、ハンドガンを構えて――乱射。
《……!》
《何を!?》
やたらめったらに撃っている――そう錯覚するだろう。
が、狙いがある。
俺は特定の動力パイプのみを撃ち抜く。
すると、パイプからスパークが発生する。
バチバチと音が反響し、次第に音の数は増えて行く。
行き場を失ったエネルギーが周りへと影響を及ぼし――レーダーがノイズを生む。
敵の息遣い。
それだけで策がなったと確信し――ブースト。
連続してブーストを行う。
瞬間、相手は互いに背中合わせとなり警戒を高めていた。
利に叶った陣形で――狙い通りだ!!
俺はそのまま、肩部のミニガンをフルで放つ。
ガガガと音が鳴り響き、無数の弾丸が制御コンピューターへと飛ぶ。
彼らは狙いに気づいて、咄嗟にシールドを展開。
が、四方八方から飛んでくる弾丸に対して――全方位に煙を吐き出す。
瞬間、全ての弾丸が動きを遅らされていく。
完全に止まれば、下へと落下していき。
俺はそれでも弾丸を放ち続けた。
敵は煙を出し続けて、俺は僅かな隙間に向かって――ニードルスパイクを放つ。
《させるかァ!!》
彼はすぐに煙を放出。
すると、ニードルスパイクはギリギリで止まり――が、間髪入れず二発目を撃ち込む。
瞬間、俺の次弾は真っすぐに進み。
止まり駆けていたスパイクの尻へと精確に命中し――先へと押し込んだ。
煙の影響下から出れば。
一気にスパイクは進み――コンピューターにめり込む。
ビリヤードの要領だ。
簡単な技であり、敵の周囲には煙が充満していた。
激しいスパークが発生。
施設全体に響いていた駆動音が弱まっていく。
供給すべきエネルギーの制御が死に。
緊急停止を開始して――電気が消えた。
次の瞬間には赤い非常灯が灯り――俺は逃走。
《待て!!》
《逃げるのか!?》
「逃げるよねぇ。だって、君たちの相手をする事が任務じゃないし!」
【逃げるんだよー!】
【煙の影響で奴らは動けねぇぜ! ひゃっはー!】
【これも計算の内か!? ネクロォ!!】
俺は笑い声を響かせながら、来た道を引き返す。
そうして、さっさと残りを破壊しようとし――アラートが鳴る。
「乱入者? 連続してって――面白い!」
【ワクワクが止まらない!】
【素敵な笑顔だなぁ(恐怖)】
何機かは不明だが、彼らは南の方へ向かって――え?
レーダーの反応が弱まった。
それが表す意味は――敵が減ったと言う事だ。
侵入してすぐに、撃墜された。
誰が何の目的で……嫌な予感がするな。
俺は謎の敵を警戒する。
レーダーの反応からして高機動モデルだ。
それも尋常じゃない速さで施設内に侵入し……まずい!
月島さんと接触する。
想定以上に、彼女の処理が早かった。
いい誤算ではあるが、今回は危険な予感がする。
俺はすぐに月島さんにコールし――繋がる。
《あ、先生! 今、南の方へ向かって》
「月島さん! そっちではなく、こっちに向かって下さい!」
《え、何が――敵! 野郎ォ! すぐに――速い!? あの動きは――え、せん――に、が――――…………》
「月島さん!? 月島さん! ……ロスト、だって……短時間で彼女を……何者なんだ?」
【サラちんを秒殺って……嘘だろ?】
【何が起きて……まさか、ネームド?】
リスナーさんたちも動揺する。
すると、謎の通信が届く。
今度は強制的ではなく、俺の対応を待っていて――繋げた。
プレイヤーネーム――“ムラマサ”。
「……貴方が、俺の仲間をやった傭兵ですか? 一体何処の勢力の」
《――違う》
「え、違うって何が」
《俺は何処にも属さない。誰も信じない。金と力が欲しいから――お前を殺しに来ただけだ》
「……なるほど。シンプルで良いですね。だったら、交渉する必要は無いですか」
俺は笑う。
が、内心では――心がざわついていた。
この男の声が、俺の心をかき乱す。
知らない筈だ。なのに、懐かしさを感じる。
欲に溺れて、野心に満ちた低い声から――悲しみを感じた。
《……あぁ、無いね。全くな……アンタは俺を殺せばいい。俺もアンタを殺したい……ずっと待っていた。この時を……ぶっ壊してやるよ。お前が俺に与えた“枷”も、俺たちを狂わせた――ふざけた伝説も》
「……! お前、いや、君は……何なんだ?」
彼は俺を知っている。
それも伝説と呼ばれていた俺ではない。
本当の俺を知っているような口ぶりだった。
が、彼は伝える事を伝えて通信を切る。
【ムラマサって……もしかして、デッドブックの……S級の?】
【あの声に、あの不気味さ……間違いねぇ。デッドブックのみで構成されたコミュニティー。“
「……千響のムラマサ。デッドブックって……確かめよう」
何かが引っかかる。
恐らく、この先に進めば分かるだろうが。
同時に引き返す事の出来ない道を進む事になるかもしれない。
どうなるかも分からないが――進むさ!
「どんな結果も、どんな状況も――楽しんでこそのゲーマーだ!」
【根黒……すげぇポジティブだな!】
【見習いたいメンタルっすよね!】
【そのままでいろ根黒】
俺は心をワクワクとさせながら。
謎の敵に自らの意志で会いに向かった。