底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第25話:理想と現実

 時は流れて――仮想世界のガレージの中。

 

 椅子に座り、広々とした空間に鎮座するそれを見つめる。

 新たな力、新たな愛機。

 これから共に戦っていく事になる――戦友。

 

「……」

 

 奴は何も言わない。

 物言わぬ機械なら当然だ。

 が、いかれた世界で生きていたんだ。

 何となく、メックが何を思っているのかは分かる……気のせいかもしれないけどね。

 

 全長十三メートルはある機体。

 フライハイトと同じ純白のカラーリング。

 が、その機体の形状は大きく異なっていた。

 

 頭部はまるで、騎士のヘルムのようになっている。

 真っすぐに伸びるブレードアンテナに、単眼型のセンサーで横一文字にスリットが入っている。

 翼となっていたものは廃し、代わりに長方形のボックス型の変形機構のメインスラスターが肩部から伸びていた。

 肩当てとなる丸みを帯びたアーマーに、コアを取り付ける事になる胸部はマッシブになっている。

 中心部には特殊な強化ガラスを嵌め込んでいて、コアが稼働を始めれば熱によって真っ赤に輝く。

 熱や光を利用して、攻撃や回避において色々な事が出来る仕組みだ。

 ウエストは細く、360度、何処からの攻撃にも即座に対応可能。

 コアを大きくしたからこそ、コックピッドは胸部ではなく、下になっているが操作感には問題ない。

 後は姿勢制御と安定感を高める為に、腰部のサイドに装甲と共にサブスラスターを取り付け。

 足裏にも仕込む事によって、フライハイトのような超三次元的動きも理論上は可能となっている。

 

 全体的なシルエットで言えば、前よりも装甲の厚みは増している。

 胸部も手足も太さが増し、中々に頼りがいがある。

 が、結局は加速などに対する負荷に耐える為の装甲だ。

 “安全な戦闘”をする為の装甲の増設であり、敵の攻撃に耐える目的ではない。

 超高速戦闘状態であれば、装甲の耐久性に関しては通常のメックと差は無い。

 多少は耐えられるだけであり、無茶な特攻は出来ないだろう。

 

「……まぁ、こいつにとっての……拘束具ってところだな」

 

 武装に関しても、既に考えている。

 リリアンさんのご厚意で機体を貰ったんだ。

 浮いた金で、武装に関しては拘った。

 状況によって切り替えるが、大抵の戦闘は“Aパターン”でいく。

 

 ハンガーの近くにはそのAパターンの武器が置かれている。

 それは二丁の“ブラスターキャノン”だ。

 

 ブラスターキャノンとは、アサルトライフルのような連射性能と携行性。

 そして、キャノンとして突出した攻撃力を有する武装。

 高価なものであるが、その力は本物だ。

 大抵のメックであれば、至近距離で数発当てるだけで完全破壊が可能。

 重装甲のメックであろうとも、深刻なダメージを負う事は必須だ。

 

 ……勿論、弱点もある。

 

 それはブラスターキャノン自体がそれなりの重量で。

 弾丸のマガジンだけでも持っていく事が出来るのは四本が限度だろう。

 積載限界を考慮し、機動力に影響を出さないのであれば肩部には武装は取り付けられない。

 つまり、この二つの武装だけで戦う事になるが――十分だ。

 

 フライハイトのような圧倒的な力はこいつにはない。

 が、こいつにはアイツ以上の可能性がある。

 無限であり、たった二丁の武装であろうとも――不便はないさ。

 

「……それじゃ――行くか? 相棒」

《……》

 

 

 奴は何も言わない……いや、そうだな。

 

 

「相棒じゃないな。名前で呼ばないとな。行こうぜ――“Ideal(イデアール)”」

《――》

 

 俺はイデアールの名を呟き片手を出す。

 すると、沈黙していた筈のイデアールの瞳が青く発光する。

 そうして、俺をしっかりと見つめて――笑ったような気がした。

 

 

 #

 

 

 雲の上の大空。

 落下していく敵の残骸を見つめて――笑う。

 

「――はい! という事で、俺の新機体イデアールの戦いはどうだったでしょうか?」

【……いかれてやがる】

【もう何も言うまいて】

 

 何回か戦闘を繰り返し、それなりに感覚は掴めた。

 イデアールの性能は本物だ。

 フライハイトのような無限の加速力は無くとも。

 安定した飛行能力に、ピーキーでありながらも俺の体によくなじむ。

 

 ……当然だ。これは俺たちが考えた“最初の理想”の機体だ。

 

 何度も喧嘩し、何度も苦悩し。

 何度も何度も打ちのめされて。

 それでも、がむしゃらに頑張って――こいつが生まれた。

 

 効率も、圧倒的な強さでもない。

 俺たちの夢を詰め込んだ機体。

 だからこそ、こいつの名は――“理想(イデアール)”だ。

 

「――! 乱入者ですね! さて、誰か」

《――根黒ォォォォ万太郎ォォォォォ!!!!》

【確定演出キター!!】

【待っていたぜ!! この瞬間をよ!!】

 

 聞き覚えのある声。

 視線を向ければ、勢いよくそれが通過していく。

 センサーを向けて確認すれば――新型か!

 

 漆黒の機体。

 血のように赤い亀裂のようなカラーリングで。

 その形状は戦闘機のようだった。

 が、恐らくは変形するタイプの機体だ。

 グリード内では初めて見るその機体に目を輝かせて――

 

《今日こそテメェを――ぶっ殺すッ!!!》

「カタギリさん! 俺の為に来てくれたんですね! ありがとうござ」

《――舐めるなァァァ!!!!》

 

 彼は叫びながら、機体を回転させる。

 そうして、戦闘機のような形状から変形し。

 上半身だけを人型にし、そのまま突っ込んできた。

 

 俺は笑みを浮かべながら、リスナーさんたちに楽しい戦いになる事を伝えて――加速。

 

《……!?》

 

 爆発的な加速。

 まるで、甲高い鳥の鳴き声のように聞こえるスラスター音。

 それを高らかに響かせながら、俺は大空に青いエネルギーの粒子の軌跡を作る。

 

 カタギリさんはそんな俺の機体を追いかけて来る。

 彼の機体も中々の加速力だ。

 今にも追いつかれそうなほどの速度で――更に加速。

 

《ぐぅ!!?》

 

 俺は彼を一気に引き離す。

 そうして、機体を回転させながら縮小させていたブラスターキャノンを展開する。

 ガチャガチャと音が鳴り、銀色のブラスターキャノンが完全展開された。

 エネルギーを圧縮する機構であるシリンダーが高速で回転。

 その駆動音と熱を感じながら――俺は笑う。

 

《俺の前に――出るなァァァ!!!》

 

 カタギリさんの叫び。

 そうして、彼の機体は更な加速に挑む。

 互いにトップスピードで大空を翔る。

 彼は俺へと追いつき、ウェポンアームとなったガトリングガンを――乱射する。

 

 赤熱する弾丸が放物線を描いて飛んでくる。

 俺はそれらを回避。

 その直後に、彼の肩部に繋がれた砲身から――光が放たれる。

 

「――!」

【あぶ!?】

【エネルギーキャノン!?】

 

 光の砲弾。

 プラズマキャノンとは違う速度。

 ブーストで横へと回避すれば、それはギリギリを通過し――閃光。

 

 青白い光が周囲に広がる。

 高温であり、コックピッドの中でも僅かに熱を感じる。

 純粋なエネルギーの攻撃だ。

 その威力は本物であり、触れれば機体は蒸発する。

 

 彼はケラケラと笑いながら、ガトリングで俺の動きを乱す。

 そして、此方が少しでも隙を晒せば、キャノンを放つ。

 一瞬の駆け引きであり、判断を殺めれば死ぬ。

 そんなギリギリの戦いをしながら、俺は笑みを深めて――更に、加速。

 

《な!?》

【まだ上がぁ!?】

【嘘ぉ!!?】

【はぁぁぁ!?】

 

 風の音が一気に遠のいていく。

 風のバリアが展開されて、機体内が小刻みに振動。

 シートへと体が押し付けられて、呼吸が苦しくなる。

 強い圧迫感に、意識が遠のきそうになる。

 

 苦しい、苦しい――でも、これがいい。

 

 苦しいからこそ生きている。

 辛いからこそ戦いだ。

 ゲームであってもこの感覚は本物で――リアルに負けない生の実感だ。

 

「カタギリさん!! 全力で――楽しみましょう!!」

《――!! 根黒ォォォォォ!!!!》

 

 彼の闘志に火をつける。

 彼は限界を超えて、俺へと追いつく為に自らの殻を破る。

 互いに音速を超え、空中で弾丸を放つ。

 一進一退の攻防。

 俺が追い抜けば彼はブーストし、彼が前に出れば俺はブーストする。

 機体を回転させながら、軌道を無理矢理に変えて攻撃を回避。

 カタギリさんも器用に機体の翼を動かして、此方の攻撃を紙一重で避ける。

 

 たらりと汗が流れて、体が強い熱を帯びる。

 眼球は常に動いていて、苦しくとも感覚は研ぎ澄まされて行く。

 ターゲットサイトに彼を合わせながら、ブラスターキャノンを放つ。

 が、彼は俺の攻撃を機体の姿勢を無理矢理に乱す事で回避。

 彼の機体は一気に見えなくなり――俺は機体を真横へと流す。

 

 瞬間、エネルギーの閃光が近くで迸り。

 そのまま流していけば、すぐ近くを赤熱する弾丸が通過。

 俺は歯を食いしばりながら、重いレバーを動かし――ブースト。

 

「ぐぅぁあ!」

【根黒!!】

【頑張れ!!】

 

 リスナーさんたちが俺を応援する。

 が、彼らの言葉ではなく――タライさんのコメントがハッキリと見えた。

 

 

【限界か? 三人の理想は――そんなものだったか?】

「……!」

 

 

 その言葉で俺の闘志に火がつく。

 俺は意識を覚醒させて――更に加速。

 

 体から嫌な音が響き、口内に血の味が広がる。

 ずきずきとあばらが痛む。

 が、俺は笑みを深めて――無限の軌跡を描く。

 

 カタギリさんの攻撃。

 それをブーストで回避。

 その直後に更にブーストし、彼の意識の外へ移動。

 流れるような動きから、更なるブーストで彼の意識の更に外へ。

 そこから更にブーストし、彼が予測できない動きを取る。

 彼は此方を位置を掴もうとする。

 が、俺はそれを読み切り、変則機動の更に上――無限機動で挑む。

 

《――馬鹿な!! そんな動きが、そんな出鱈目が――認められるかァァァ!!!》

【もう何が何だか分からねぇ!!!】

【何なんだよお前ェェ!!!】

【イレギュラーがよぉぉぉぉ!!!】

 

 俺は笑う。

 血反吐を吐きながら笑った。

 そうして、限界を超えて更にその先へと進み。

 俺はブラスターキャノンを放つ。

 強いリコイルを感じながら、カタギリさんの機体へと放つ。

 彼は最初こそ何とか避けていた。

 が、四方八方から飛んでくる弾丸に対応が間に合わず――下半部が抉れる。

 

《ぐあぁ!? まだぁぁ!!》

「――無理ですよ」

 

 俺はハッキリと伝えて――彼の機体は穴だらけになる。

 

 コックピッドを残し彼の機体は落下していく。

 彼は必死に何かを叫んでいた。

 俺はゆっくりと彼がいるコックピッドの銃口を向けて――

 

「カタギリさん。やっぱり貴方は……面白い人ですね」

《――あぁ!?》

「貴方との戦い――リスナーさんたちも喜んでくれますからね!」

《――テメェ!! 配信をしながら俺と戦って――ふざけるな、ふざけるなッ!! ふざけるなぁぁ!!!》

 

 彼は叫ぶ。

 その声は怒りに満ちていて――俺は銃口を下げる。

 

 

 

「次があれば――もっと面白くなるかもしれませんね!」

《あ、あぁぁ、あああぁぁ――あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!》

 

 

 

 カタギリさんは叫ぶ。

 壊れた機械のように叫び続けて――彼の生体反応はロストした。

 

「……はい! という事で、イデアールは凄かったでしょう!? これから本格的にランクマッチにも挑戦していくので、皆さんお付き合いのほどよろしくお願いします! それでは、本日の配信はここまでです!! 皆さん、またねー!」

【カタギリって最後まで愉悦たっぷりだよな!】

【心がバラバラになったカタギリ――闇堕ち確定だね!】

【元からアイツは闇だよ(ヤンデレ)】

【またねー!】

 

 俺はリスナーさんたちのコメントを見ながら配信を終える。

 そうして、対戦を終了し――部屋へと戻る。

 

「はぁぁぁ疲れたぁぁ」

 

 ベッドに寝転がりながら疲れを吐き出す。

 疲れたのは疲れたが、それ以上に楽しめた。

 新しい機体はそれだけ心が躍る。

 

 ……まぁプロトタイプを元にはしてるけど。元はあの新型だしね。

 

 要望を使えた結果、見た目は変わってしまったが。

 細かい点などはプロの監修のもと、調整されている。

 元々は技術と金の問題で搭載できなかった“切り札”も用意されているしな。

 正に、理想の体現で……これからだ。

 

「俺たち三人の夢……その続きってやつかもな」

 

 一人は天国、もう一人は学校の先生。

 俺だけがグリードで生きている。

 過去に囚われているかもしれない。

 が、俺はアイツらの影を追っている訳じゃない。

 今を生きていて、全力で楽しんでいる。

 

「まぁ叶うんだったら、また三人で……それは欲張り過ぎか。はは」

 

 俺は笑みを浮かべながら、静かに目を閉じ……あ、そうだ。

 

 竜一に頼まれていた事を思い出す。

 アイツの妹である――“神崎ソフィア”に連絡するんだった。

 

「……て言っても……出てくれるのかぁ?」

 

 そもそも、出たとしても何を話せばいいのか。

 グリードの話をしたとしても、あの子はあまり関心を持たないだろう。

 何を話しても会話が続く自信は無い。

 定期的に勝負はしていた。が、終わっても無反応。

 一度だけ態と負けようとしたけど、あからさまに機嫌が悪かったのは覚えている。

 

 愛称をつけて呼ぼうとすれば、馴れ馴れしいと言われてしまって。

 フルネームで呼ぶ事でしか反応はしてくれなかった。

 変わった子であり、接点なんてゲームだけだけど……本当に仲良く見えたのかぁ?

 

「……ま、ダメだとは思うけど……いけ!」

 

 俺は端末を取り出し、番号を押して通話ボタンを押す。

 耳に当てながら、静かに待ち――すぐに繋がった。

 

「…………あ、あのぉ。神崎ソフィアさんでしょうか?」

《……》

「え、えっとぉ。ぼ、僕、竜一君の友達で、よくタイタンヘブンフォールで遊んでいた。か、加賀芳次ですがぁ……あ、あのぉ?」

《……》

 

 無言。ただひたすらに静寂。

 呼吸音すら聞こえない。

 俺はどうしたものかと考える……い、一旦切るか?

 

 俺は少し迷いながらも、忙しそうなのでかけ直すと伝えて――

 

《――おかえり》

「え? お、おかえり? え、何が?」

《ずっと待ってた。今度こそ――殺してあげる》

「え、え、え? え、あ、え? こ、殺すって、な、何が……き、切れた?」

 

 綺麗な声だと思っていれば。

 意味不明な事を一方的に言われて通話を切られた。

 俺は何が何だか分からないまま、ただ天井を見つめて……うん、寝よう。

 

 嫌な事は寝て忘れる。

 意味不明な事も寝れば忘れる。

 それが一番であり、俺はVR装置を付けたまま静かに目を閉じる。

 

「……でも、一応、メッセージ送っておこうかな」

 

 電話には応じてくれた。

 そして、此方が誰であるかも認識していた。

 だからこそ、社交辞令ではあるけど、伝えておこう。

 

「えっと、久しぶりに声が聞けて安心しました。何か困った事があれば、何時でも相談に乗ります。竜一とも約束しましたが、またあの思い出の焼き肉屋に行きましょう……送信っと」

 

 俺は言う事を言って端末を置き――連絡が返って来た。

 

「え、はや……え?」

 

 メッセージの内容に驚く。

 いや、驚くというよりは理解が追いつかない。

 それはあの焼き肉屋の予約を受け付けましたという連絡で……今日の夜?

 

「え、こ、来いって事? え、嘘、だよね?」

 

 社交辞令だ。

 誰だって分かるテンプレだ。

 しかし、彼女は秒で焼き肉屋に予約を申し込んだ。

 天然なのかもしれないが、この行動力はすさまじ過ぎる。

 

 断るべきかと思ったが……いや、行こう。

 

「竜一の為にも、連絡を取ってあげて欲しい事を伝えないとな」

 

 竜一はともかく、ご両親には定期的に連絡してあげて欲しい。

 彼女は成人していて、恐らく歳も24歳だったか?

 育ての親を心配させるのはいただけない。

 人生の先輩としてびっしりと……は無理だな、うん。

 

「ま、まぁ……話しだけでも聞いておこう」

 

 心の中で竜一に謝罪する。

 頼りない友人でごめん、と。

 枕を涙で濡らしながら、俺は焼き肉屋に来ていく服を考える事にした。

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