底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
イデアールの慣らし運転。
戦闘を重ねるごとに、動きも洗練されて行った。
徐々に感覚を掴んできて、本格的にランクマッチへの挑戦も再開しようと考える今日この頃。
俺はグリードへと潜り、現在は椅子に膝を合わせて座り――震える。
「……で、何でこいつらが?」
「先生ぃ……浮気、ですか?」
「へ、へへ、へへへ……うぷ」
「「……」」
現在、グリード内にある街の一角にある酒場。
傭兵たちの交流の場。そこにある特別個室内。
大きな木のテーブルに、流木で作ったかのような独特の椅子。
アンティークにも拘りがあり、まるで海賊船の船長室のような感じだ。
本来であれば、お酒でも飲みながら待つところだが、何故かこの場にて“勝手に”集まった美女たち。
否、集まったのではない――何故か、偶然、出会ってしまった。
俺は友人を待ちながら一人で機体のカスタムについて考えていたんだ。
間違っても、彼女たちを呼んだ覚えはない。
が、気づけばみっちゃんやコウちゃんを始め。
リリアンさんや月島さんまでいた。
何故、俺が此処の酒場にいるのが分かったのかと聞けば。
みっちゃんたちは秘密だと言い、リリアンさんたちはリスナーさんたちからの情報だと言う。
俺にプライバシーは無いのかと戦慄した。
……何で、こんな目に?
俺は涙と汗を流しながら顔面蒼白で震える。
すると、リリアンさんが軽く咳払いをし――
「根黒様、イデアールの調子はいかがですか?」
「え? あ、あぁ! すごく良いですよ! もうめっちゃ最高です!」
リリアンさんが場の空気を和ませる為なのか。
俺の新機体となるイデアールの話を持ち掛けてくれた。
俺はこれ幸いとイデアールが抜群に相性が良い事を伝えて――
「そうですか。私と根黒様の――“子供”は最高ですか」
「「「……っ!」」」
「え、え、え? あ、え?」
俺は今の発言に戸惑う。
瞬間、底だと思っていた空気がより一層沈んでいった。
「……イデアールは、貴方の子供ではありませんよ? アレは、先生のご友人との」
「――ですが、アレの原型は我が社の新機体ですので。何か問題が?」
「……テメェ、調子に乗ってるな? 俺が力で分からせてやろうか? あぁ?」
「ふふふ、力でしか己を表現できない相手はあまり得意では無いので。貴方に相応しい相手はゴリラかライオンではないでしょうか?」
「――ぶっ殺すぞ?」
「……リリアン先輩。流石にそれは……あ、先生何か飲みますか? あ! あれとかどうですか、カップル限定のラブドリンクとか。あ、他意は無くて、今すごく飲みたくてストローは繋がってますけど、先生と弟子である私なら問題ないですよね!」
「「「――は?」」」
空気がぴりぴりしている。
いや、ピリピリどころか俺の胃はキリキリだ。
俺はどうすれば、この危機的状況から抜け出せるのかを考えて――バンと扉が勢いよく開かれた。
「此処だな! お、いるじゃねぇか!! よし……おっと、いけねぇ。根黒ぉ!」
「あ! あぁ! き、来たぁ!」
「「「……?」」」
扉を開けて入って来たのは――竜一だ。
声だけで分かったが。
その装いも、何故か現実の奴とほぼ一緒だった。
ウニのようにとげとげの黒髪に。
赤い鉢巻を巻いていて、首には銀縁のゴーグルを下げていた。
黒いタンクトップの上から、作業着である青い赤いつなぎを着ている。
手には白いグローブであり、金属板が入っているであろうブーツも履いていた。
きりっとした太い眉に、犬歯が特徴的な白い歯。
目力のある黒い目に、何故か、フェイスペイントらしいバーコードを頬に入れていた。
身長は175cmほどであり、アイツは俺たちの席まで歩いてきた。
「おっす! ……おい、根黒。何だこのべっぴんさんたちはぁ?」
「あ、うん、紹介するよ。彼女たちは俺の友人の――」
順番に紹介していけば、彼女たちは竜一に戸惑いながらも自己紹介をする。
竜一は腕を組みながら静かに聞き――にかりと笑う。
「うし! 帰るな!」
「ちょ!? 何言ってんだよ!!!」
竜一は踵を返して帰ろうとする。
が、俺は奴のつなぎを掴んで帰るなと伝えた。
すると、アイツはすこぶる嫌そうな顔をしてきた。
「えぇぇぇだってよぉぉ面倒事だろぉぉぉ? お前ってさぁ。昔から、そうだったよなぁ?」
「な、何がだよ!!」
「……自覚ねぇのが尚更だがよぉ……まぁいいや。今に始まった事じゃねぇしよ……つぅ事で姉ちゃんたちよぉ。こいつは昔っから女に対してこうだから、あんまりずけずけ行かない方がいいぜ?」
「「「……」」」
「……ま、色仕掛けには滅法弱いから……ワンチャンはあるかも?」
「「「……!!」」」
「お前、何言って……てか、そんな事はどうでもいいよ! 話があるんだろ!?」
俺は竜一に余計な事を言うなと釘をさしつつ。
用があったんじゃないかと話を持ち掛ける。
すると、竜一はそうだったと言いながら、指を虚空に持っていき、ぶつぶつと何かを言いながら動かしていた。
暫く待てば、奴はアイテムボックスから何かを取り出す。
それは丸めた紙であり、奴はそれを広げて俺に見せて来た。
「これこれ! 何か分かるか?」
「何って……設計図だろ?」
「もしかして、先生のへブンフォール時代の機体じゃ!?」
「いやいや、それはもうねぇよ! ほら、これだよ」
そう言いながら、奴は皆にも見えるように設計図を机の上に広げた。
そこには、目算では分かり辛いものの。
細かく書かれた計算式や単位によって、軽く三十メートルは超える超大型の狙撃砲である事が分かる。
無数の大型のケーブルに繋がれて、後部には厳重に装甲で守られた動力炉がある。
皆はそれを見て、少しだけ驚いたような顔をしていた。
「これは……武器、ですか?」
「……でも、これ、かなりデカいんじゃ……まさか、ロストウェポン?」
みっちゃんとコウちゃんの呟き。
竜一はそれを聞いて、指を鳴らし「正解!」と言う……アレか。
「ロストウェポン、核融合炉直結型超長距離用狙撃アルテマ……自分で言うのも何だけど名前クソなげぇな!」
「今更じゃね?」
奴はカラカラと笑う。
そうして、唖然とする四人に対して説明する。
アルテマは対都市殲滅用に開発された狙撃砲で。
その動力源に核融合炉を搭載している。
その威力はたった一発で、都市を焼け野原にするだけの威力を有している。
面白半分でこいつが開発したものであり、実験と評して受けた都市強襲任務にてこれを始めて使ったが……うん。
「悲しい事件だった」
「……あぁ、アレか? 都市そのものが消失して、ゲームがバグって無数の人間の悲鳴がダイレクトに」
「――やめろよ」
軽いホラーだった。
流石にその夜は眠れなかった記憶がある。
後日、アップデートによってバグが速攻で修正された記憶はある。
それを見て、竜一はゲラゲラと笑っていた……アイツは呆れてたけど。
正に、規格外のロストウェポンの名にふさわしいいかれた武器だ。
「……ろ、ロストウェポンって……ファンタジーでいう伝説級の武具ってやつですよね? リリアン先輩」
「……えぇ、そうですね。ロストウェポンとは、あまりにも強力過ぎる力が故に、一般プレイヤーたちからそう呼ばれる事になった武装たちです。タイタングリードでは、旧文明に存在した現在の技術力で再現不能な兵器という事になっていますけどね」
「す、凄い。これが本物の……で、でも、どうして先生のご友人が?」
リリアンさんと月島さんも不思議そうに竜一を見る。
奴は何を言っているんだと顔をして、自分を指さし――
「これの製作者――俺だよ」
「「「……は?」」」
「……ふ」
全員の反応に俺は思わず笑う。
竜一はそれはどうでも良いと言って俺に話しかけて来た。
「でよ! 偶々、こいつを見つけてさ! どうしても、お前にこの世界でも作ってやりたくてよぉ! どうだ!? 燃えるだろ!」
「あぁ、うん、燃えるね。いろんな意味で」
主に、戦場と配信がという意味だが。
竜一は気づいていない様子で、暇な時に作っておくと言っていた。
「まぁ三日もありゃ十分だからよ!」
「「「み、三日!?」」」
全員がまたしても驚く。
まぁそれはそうだ。
通常、ゲーム内で武装を作るだけでも一週間は時間を要する。
複雑怪奇なロストウェポンともなれば、少しの調整ミスで不具合が出る可能性が高い。
だからこそ、最低でも、二週間……もっといえば、一月は時間はかかるだろう。
それをたったの三日で出来るのは。
世界広しといえど竜一だけだろう。
「ど、どうやって!? てか、ロストウェポンっすよ!?」
「あぁ? どうやってってそりゃ。普通に、システム組んで、材料ぶち込んでパーツ作って、後は全自動だろうよ? んな難しいもんでもねぇだろ? グリードでは俺は初心者だけどよ。必要な知識は一日で入ったし、細かい修正箇所ももう分かったからよ。はは!」
「……普通は、システムを組むだけでも高度な専門知識を要しますよ? それに、材料があっても、少しの配合ミスで本来のスペックが引き出せない事も……ん? 竜一? その名前、何処かで……」
サラさんは驚き、みっちゃんは竜一の名前に何かを考えていた……てか。
「お前、何でそのまんまの名前なんだよ」
「えぇ? だってめんどいじゃねぇか。逆に、何でお前は万太郎なんだよ。太郎って面じゃねぇだろ……て、アバターでいえばあってんのか?」
「……まぁいいけど……で、ロストウェポンを使えるのはありがたいけどさ……多分、無理だぞ」
「はぇ?」
竜一は目を点にする。
俺はグリードでは素人同然のこいつに丁寧に説明してやる。
ヘブンフォールとは違い、現在のグリードでは昔ほど滅茶苦茶な事は出来なくなっている。
それもオンライン対戦が可能になったからであり。
運営側も不用意にパワーバランスを崩さない為に、色々と手を加えていた。
その最たるものが機体や武装に関してで……用は、一発で都市を滅ぼせるようなものなんて使えないって事だ。
それを聞いていた竜一は頭をぼりぼりと掻き「不便だなぁ」と呟く……お前にとってはな?
「……うーん、このままで使えねぇのなら……そうだな。ちっとばっかし手を加えるか……なら、あれをこうして、ここをこうで……うっし! イメージできた! 素材と金も、それだけありゃ……都市殲滅用じゃなく――対軍兵装にすりゃいい」
「……それって何か違いあるの?」
「バッカお前! 全然ちげぇよ!! アホで派手派手な攻撃じゃなくて、繊細で優雅っていうのかぁ!? こうお上品な感じでよぉ!」
「……うん、まぁ、任せるよ」
俺は説明を聞いても分からないからと丸投げする。
すると、竜一は胸を叩き「大船に乗った気でいろや!」と心強い言葉を吐く。
俺はやはり、昔と変わらないと思って――みっちゃんががたりと席を立つ。
「……思い出しました……竜一……ロボット分野における若き天才。十歳にして、半自立思考型駆動体を独学で生み出し、16の時点では完全自立思考型駆動体の“疑似脳”の構造理論を学会で発表し、次代を担う世界の天才100人にも選ばれた、あの……そう、ですよね?」
「……ゲームでリアルの話なんざするなって言いてぇが……ま、そうだよ。んだよ?」
「「「……」」」
竜一の言葉にほとんどの人間が絶句する。
が、たった一人だけ席を立ち――名刺を渡す。
「竜一様。改めてご挨拶を……実は、私の父が山城重工業の社長を務めておりまして。今、有望な人材を欲しています。そこで、もしよろしければ竜一様を我が社に」
「――おっと、そいつはダメだな」
「……理由をお聞きしても?」
「そりゃ当然。今の仕事が気に入っているからだよ……俺は天才だなんてもてはやされてはいたが。別に、その道を究めたいなんて思った事は一度もねぇんだ。結局、俺の趣味! ロボットが好きで、かっけぇロボットが作りたかっただけ! ……それだけだからよ。悪いが、趣味を仕事にするつもりはねぇんだわ。今は、ガキ共にロボット開発のイロハを教える事で忙しいしよ」
「竜一……ふふ」
かっこいいじゃねぇかと思った。
リリアンさんを見れば残念そうではあったが。
奴の気持ちを理解し、名刺を戻した。
「そうですか。それなら仕方ありません。給料に関しては、希望して頂いた額を用意するつもりでしたが」
「……因みに、年五千万って言ったら?」
「……? 勿論、用意しました。貴方にはそれだけの価値がありましたから……ですが、仕方ありません」
「……う、うーん。ま、まぁ? 今すぐにってのはあれだし? も、もうちょっと考えてからってのも、う、うんうん!」
「竜一……最低だよ」
かっこ悪いと思った。
竜一は必死になって仕方がないと言う。
昔から金の誘惑に弱かったことを思い出しながらも。
俺はそれはもういいからと話を戻す。
「それで? それが出来るまで、どれくらい……いや、必要な金額と材料を教えてくれないか?」
「お? 悪いな」
竜一はそう言って指を器用に動かす。
そうして、必要な金額と材料をたった五分ほどでリスト化したものを送って来た。
「……まぁ実際、最初から頼むつもりだったけどな……俺、操縦出来ねぇし」
「乗り物酔いがひどいのは致命的だからなぁ。今も、乗れるのは自転車だけだろ?」
「そ! 毎日、往復50キロの通勤生活よ! 競輪選手にもなれるかもな! はは!」
「大変だなぁ……よし、じゃ、早速集めて来るよ。竜一は竜一で任せるからな?」
「おう! まぁ仕事の隙間時間でやっからさ。昔みてぇに即行では提供できねぇけど、それは我慢してくれよな?」
「分かってるよ。じゃ、よろしくー」
「おう!」
俺たちはそう言って席を立つ。
竜一は設計図を戻し、そのまま部屋を出た。
俺も部屋を出ようとし――服を掴まれた。
ゆっくりと振り返れば――妖艶に微笑むみっちゃんがいた。
「先生――お供します♡」
「え、で、でも、仕事は?」
「これが仕事です♡」
「う、運営の仕事なんですか? え、えぇぇ」
俺は監視されているのかと恐怖する。
すると、リリアンさんたちも立ち上がり――
「私も当然ですが協力します」
「わ、私も!」
「俺も、今日はフリーなんでいけますよ」
「え、で、でも、これは俺の機体の事で……」
協力してくれるのは嬉しい。
が、これは彼女たちには関係のない事だ。
素材集め何てそれほど楽しい事はない。
だからこそ、各々好きな時間を過ごして欲しいと説明し――全員が笑みを浮かべる。
「これがしたい事です……私は根黒様が。ホワイトレコード様が、活躍する姿が見たいんです」
「わ、私も! もっと先生の傍で学びたいんです! そして、先生のお役にも立ちたい!」
「……俺は、先生に恩返しがしたい。それだけだ」
「み、皆……ありがとう!」
俺は全員に頭を下げる。
ランクマッチの事もあり、色々と力をつけなければならない。
自分の事だからこそ、迷惑はかけたくないと思ったが。
彼女たちは心から俺の事を助けてくれようとしていた。
だったら、断るのはダメであり、素直に好意を受け取る。
俺は少し考えて……そうだ!
「もし、何か欲しいものとかあったら言って! お礼させてほしいから!」
「別に、御礼なんて俺は……」
「わ、私も、先生の為だから」
「根黒様のお気持ちだけで十分ですよ」
三人はやんわりと断って来た。
本当に優しいと思って――みっちゃんが微笑む。
「じゃ、今度一緒に――ご飯に行きましょうか♡」
「ご、ご飯? え、二人で?」
「えぇ勿論。他の三人はぁ、いらないみたいなので……ふふ♡」
「「「――」」」
みっちゃんは俺の腕に自らの腕をからませてくる。
彼女の柔らかい胸が腕に当たり、鼻血が出そうになった。
彼女はそのまま俺を連れて行こうとし――服をまた引っ張られた。
「……俺も、飯行きたいです」
「え?」
「私もお願いします」
「へ?」
「わ、私も!! 何処でも良いですから!!」
「ふぇ?」
「……チッ」
俺は目を点にする。
飯に連れて行けというお願い。
別に構わないが、リリアンさんと月島さんは仮想世界でしか会って――
「「リアルでお願いします」」
「あ、はい……えっと、それじゃ……お、オフ会でも、しますか?」
「「「…………はい」」」
何故か、凄く不満そうな顔をされた。
が、食事をするなら大勢で食べた方が楽しいだろう。
俺はそれで決まりと言い、オフ会で食べるものについてリクエストを後で聞くと伝えた。
彼女たちは何故か「お任せします」と俺に言ってきて……悩む。
竜一からの頼み事である金策と素材集め。
そして、唐突に企画されたオフ会。
素材集めは問題なくても、オフ会は実際、初めてだ。
みっちゃんとコウちゃんは会っているから不安は無いが。
リリアンさっと月島さんはリアルで会うのは初めてで……き、緊張するなぁ。
俺は初めてのオフ会を楽しみに思いつつ。
失敗は許されないと肝に銘じて、そのまま全員で素材集めに向かった。