底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
家から車で一時間ほどの場所に建つ居酒屋サンショウ。
人通りの多い場所に建っている縦長の店構えで。
平日休日問わず、毎日お客さんで一杯の人気店だ。
店自体もかなりの大きさであり、それぞれのシチュエーションにあった部屋を提供してくれる。
和洋中、様々なメニューがありどれも絶品だ。
勿論、完全個室も用意されている。
中々、予約が取れないほどに人気の店だが。
今回は父さんに無理を言って特別個室を開けて置いてもらった。
……あんまり二人に何かを頼むのは気が引けるんだけどね。
俺には勿体ないほどに良い人たちだ。
天馬財団の会長であり、グループの総裁でもある父さん。
本来なら、長男である俺が後継ぎとして頑張らないといけなかった。
でも、父さんも母さんも俺がしたい事をすればいいと何時も言ってくれた。
マンションだって俺が困らないようにとくれたんだ。
でも、本当に申し訳ないからこそ。
最低限の生活費だけで、後は密かに貯めている。
もしもという時に備えているのと、何時か俺自身がちゃんと稼げるようになった時に……全部返したい。
俺の願いだ。
両親の優しさに報いる事。
その為にも、軌道に乗り始めて収益化も通った今。
何としてでも、ちゃんとした稼ぎのあるVtuberになるんだ。
俺はそう心に誓って――でも、今は!
俺は運ばれてきたノンアルのカシスオレンジの入ったコップを握る。
キンキンに冷えており、俺は緊張しながらもコップを掲げた。
「そ、それじゃ! 何はともあれ、目的が達成された事と! き、記念すべき第一回目のオフ会を祝って――か、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
皆はグラスを掲げてから飲み始める。
俺もちびちびちと飲み、静かに息を吐く。
広々とした和室風の大部屋。
皆は皆、ふかふかの座布団に腰を下ろし。
俺の合図と共に、目の前に広がる豪勢な料理を食していった。
俺自身も、箸を掴んで適当にあった海老の天ぷらを掴んで塩をつけて口に運び……美味い。
さくさくの衣に、中はぷりっぷりで。
塩自体も拘りがあるのか優しい味がした。
その他のローストビーフやチャーハンなども器によそって食べて行く。
どれも最高であり、皆も幸せそうな顔をしてくれていた……それにしても。
みっちゃんやコウちゃんは変わらない。
コウちゃんはリアルで会っていたから当然だが。
みっちゃんはグリードで言っていた通り、アバターとほぼ変わらない……本当だった。
今はラフな格好であり、ジーパンに半袖の白いシャツ。
アクセサリーなんかをつけている。
座っていてもそうだが、立っている時はスタイルが凄まじくてやばかった。
近くに立てばいい匂いがして……いや、それは皆もか。
コウちゃんは大ジョッキのビールを飲んでいる。
革ジャンに、パンクな装いだ。
男装の麗人であり、俺よりも男らしいだろう。
そして、今回初めてリアルで会ったリリアンさんと月島さんは――
「根黒様……いえ、今日は加賀さんでしたね。どうぞ、ぐいっと」
「せ、先生! わ、私も……あ、あーん!」
「……へへ」
リリアンさん。いや、本名――山城オリアナ。
アイルランド人の母を持ち、父は山城重工業の現社長。
父方の祖父は会長であり、一族は代々山城重工業を取り仕切っているらしい。
そして、彼女のお母さんの血筋は所謂、貴族のようで。
由緒ある家柄の出であり、お父さんとお母さんはお見合いという形で結婚したらしい。
互いに利益から生まれた縁ではあったが、今はラブラブのようだ。
彼女の容姿はアバターと比べても遜色がないほどに完璧だった。
サラサラの金髪は肩まで伸ばし、青い瞳はキラキラとしていた。
細身ながらも出るところは出ていて、白いもこもこの服に高そうな金のネックレス。
爽やかなブルーのスカートで、正に清楚でお姫様のようだった。
月島さんもそうだ。
彼女を見れば、髪は金髪ではなく黒だが。
目は赤く、髪は片側で結んでいた。
短い赤と黒のツートンのスカートに黒いタイツ。
上はダメージ加工の入った少しダボッとした黒を基調とした服で。
シルバーのブレスレットなどをつけていて、今どきの女の子といった感じだ。
彼女も何故か本名を教えてくれて……
「……現役の女子高生……本当だったんだねぇ」
「え、あはは……し、信じてなかったんですか?」
「え、い、いやぁ、まさかなぁって……ご、ごめん!」
「い、いいですよ。別に……で、でも、私だって驚いたんですからね」
「え、何が?」
もしかして、アバター以上に陰な感じだったからか。
ガッカリさせてしまったかと思って頬を掻けば。
彼女は顔を赤くしながら目を逸らす。
そうして、ぶつぶつと何かを呟いていた……ん?
「……やばいよ……年上の超イケメンって、それも、マンション一棟持ってる? これは、本気で行くしか……」
「――島月さん」
「ひゃ、ひゃい!」
「……するなとは言いません。ですが、貴方の前には私がいる事を……忘れないでくださいね?」
「……! へ、へへ、上等ですよ。私だって先生の弟子なんですからね。やってやりますよ」
「……はぇ?」
バチバチと互いに視線をぶつけ合う二人。
何が何だか分からない。
すると、背中から何かが覆いかぶさって来る。
それほど重くはない。
が、背中にはとても弾力のあるものが――
「せぇんせぇ? 楽しんでますかぁ?」
「う、うん! 楽しんでるよ! 楽しんでるから、は、離れて」
「えぇぇぇ? 良いじゃないですかぁ。無礼講ですよぉ♡」
彼女は耳元で囁いて来る。
背筋がぞくぞくとしていて、顔が熱を持つ。
見れば、彼女が飲んでいた飲み物のジョッキは空になっていた。
目の前の料理も食べていたようであり、店員さんが扉を開けて追加の飲み物を置いていく。
そうして、空のグラスを一気に片付けて……え、何杯飲んだの?
この短いやり取りの間に少なくとも二杯以上は呑んだのか。
此処の店は安くて量が多いのがウリだ。
だからこそ、飲みものに至っても通常の店の三倍はある量を通常の値段で提供してくれる。
彼女が飲んでいたのは大ジョッキのハイボールであり、うぅんと濃いのにしていて……はは。
「せぇんせぇ? 何だか熱いですねぇ……脱いじゃいません?」
「はは、ダメだよ――駄目って言ってるでしょ!?」
「やぁん♡ せんせいってば大胆♡」
「ち、ちが!?」
彼女がシャツを脱ごうとしたのが音で分かった。
俺は慌てて振り返って彼女の両手を抑える。
すると、彼女は目を細めていろっぽい声を出す。
このままではダメだと察して、コウちゃんに助けを――後頭部にまたしても弾力が。
「……おい、何してんだぁ? 先生を、困らすんじゃねぇよ」
「こ、コウちゃん? それを言うならね、君もだね?」
「先生……何時もこうやって、頭を撫でてくれましたよね……良い子、良い子」
コウちゃんは俺の頭を胸で挟みながら、優しく手を動かして俺の頭を撫でる。
濃厚な臭気が漂ってはいるが、女性陣の良い匂いもする。
頭がくらくらとしていて、俺は見えない中で必死に手を動かし――柔らかいものを掴んだ。
「ぁ、か、加賀さん……こ、ここで?」
「はぇ!? ごごごごごごめんなさい!! て、手が離れな!?」
オリアナさんの声だ。
俺は咄嗟に手を離そうとする。
が、恐ろしい力によって手が微動だにしない。
逆に手を迎え入れられて、全身が柔らかすぎる。
顔は沸騰しているほど熱く、今にも鼻血が出そうだ。
最後の希望である島月さんを呼んで――
「わ、私だって!!」
「いや、ダメだってさぁぁぁああああ!!」
腹に彼女が乗って来る。
いや、腹というよりは下半部で。
彼女は“硬いアレ”に気づいて息を飲んで……お、終わった。
「……こ、これ……は、外すんですよね。ふへ、へへ」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
俺は叫ぶ。
しかし、彼女はベルトを外そうとしていた。
俺は必死に抵抗する。
が、指一本も動かせない。
全身が柔らかいもので拘束されていた。
俺は万事休すと諦めて――瞬間、俺の脳内に電流が走る。
「ゲームしましょう!!! 勝った人は――負けた相手を好きに出来る!!!」
「「「……!!!」」」
俺が発した悪魔的な言葉。
それにより、全員の動きが止まる。
拘束が緩み、俺はすぐに抜け出した。
「はぁはぁはぁはぁはぁ……よ、よし」
「……ゲームはどのような?」
「え? あ、あぁ、えっと……へ、へへ」
オリアナさんの言葉に視線が泳ぐ。
全員がジッと俺を見つめていた。
気分は肉食獣に囲まれたウサギだ。
俺はドクドクと心臓の鼓動を速めて――オリアナさんが指を鳴らす。
「神経衰弱、なんていかがでしょうか?」
「え、あ、あぁ! じゃ、じゃそれで! あ、でも、カードが」
「――心配はいりません。すぐに家の者に手配させますので」
「え?」
俺は目を点にする。
すると、オリアナさんは近くに置いてあった自分のバックからごつい電話機を取り出す。
アンテナを伸ばして何処かへと連絡をする。
そうして、連絡を終えれば電話機を片付けて――にこりと微笑む。
「それでは、皆さん、準備が整うまで――一時休戦ということで」
「「「……了解」」
「え?」
彼女たちは自分たちの席へと戻っていく。
そうして、先ほどまでの危険な状況は一変し。
今は和やかに談笑しながら、料理を食べて飲み物を飲んでいた。
俺は何なんだと思いつつも、これで少しは皆も冷静になると――瞬間、背筋がぞくりとする。
「「「……」」」
「ぅ」
感じる。
無数の視線だ。
それも獲物を狙う狩人の視線で。
この瞬間に俺は理解してしまった――狩りが始まるのだと。
命(貞操)を懸けたデスゲーム。
負ければその瞬間に人生という名の墓場に直行か。
島月さん以外はアルコールが入っているからこそ冷静ではない。
島月さんもお酒の場で酔っていると勘違いしてしまっていた。
この状況で真面なのは俺だけであり……覚悟を決めろ。
此処が正念場だ。
絶対に勝たなければならない。
誰一人として間違いを起こさせないために俺は――勝つッ!!
「「「……ふふ♡」」」
「くっ!」
熱の籠った視線。
舌なめずりをし、俺を全力で喰らおうとしている。
今は嵐の前の静けさであり、ゲームの準備が整った瞬間に――ゴングが鳴るのだろう。