底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第31話:息を潜める蛇たち

 静けさは終わり――命を懸けた戦争(ゲーム)が始まる。

 

「「「……」」」

「……っ」

 

 テーブルの上にあった料理は全て平らげて。

 皿は全て片付けた貰った。

 あるのは、意味ありげな“ショットグラス”と“ダウトと書かれた札”だ。

 それぞれ人数分あり、さきほど扉を開けた入って来た黒服がそれをみんなに配った。

 

 オリアナさんは優雅に正座している。

 ひどく落ち着いており……いや、皆もか。

 

 みっちゃんは爪の手入れをしている。

 コウちゃんは静かに煙草を噴かせているようで口に咥えているだけだった。

 島月さんだけはそわそわとしており、時折、俺と目が合えばさっと逸らしていた。

 

 俺自身、覚悟は決めている。

 この戦いだけは絶対に負けられない。

 負ければ最期であり、一つの過ちで責任を取る事になるだろう。

 俺だけの問題じゃない。

 酔った勢いで、軽はずみな行為をしてしまえば全員が不幸になる。

 彼女たちは冷静ではない。

 真面なのは俺だけであり、何としても俺が――部屋の電気が消える。

 

「え!? な、何!?」

「……?」

「……停電かぁ?」

「何が起きて――うぉ!?」

 

 慌てていれば、机の上に何かが映っていた。

 それは奇妙なマスクをつけた人間で。

 それは机から壁へと映る場所が変わった。

 白いスーツに、昔見た万博の太陽のあれみたいなマスクで……え?

 

《初めまして、皆々様。私、今回のゲームの進行役を務めさせて頂きます――Mr.サンと申します》

「何々!? どういう事!?」

「……ふふ」

「……手の込んだ事しやがるな」

 

 サンは優雅にお辞儀をする。

 そうして、彼が指を鳴らせば扉がまたしても開かれた。

 そこには女性の黒服が立っており、両手にはケースのようなものを抱えている。

 彼女はゆっくりと俺たちの前に立ち、ケースを机の上に置く。

 サンが指示をすれば、黒服は中を開いて……おぉ。

 

《今宵のゲームは神経衰弱。皆様が全力でゲームを楽しんでいただけるように、スポンサーであらせられる山城重工から提供された此方の特別なカードを使って頂きます》

「かー、ど……?」

「カード、みたいだけど……ちょっと違うのかしら?」

 

 俺たちはケースの中のカードをマジマジと見つめる。

 すると、開けられた扉から別の黒服が二名入って来た。

 

《此方のカードは一般の方が使用する紙のカードではございません。此方は紙のカードと同じほど超極薄で作られた超軟性ディスプレイになります》

 

 サンが説明すれば、女の人が適当に札の一枚を取る。

 俺たちに見えるように掲げてくれれば見かけは透明なガラスのように見える。

 指で端を摘まんで動かせば、紙のように簡単に曲がっていた。

 そして、黒服が元に戻し、サンがそれをよく見るように全員に言えば――奇妙な絵柄が投映される。

 

「おぉ! すげぇ! ……あれ、でもトランプの柄じゃない?」

《加賀様、その通りでございます。今回使用させていただくカードは、従来のトランプの絵柄は一切使用しません。数字もであり、全てがその場で自動で生成されたものになります。カード総数は200枚、100組のカードの最終獲得枚数によって勝敗を決します……が、今回はオリアナ様たっての希望により――特殊ルールを追加させて頂きます》

「へ?」

 

 サンが特殊ルールを追加すると言った瞬間。

 スポットライトがついて、先ほど入って来て待機していた二名の黒服に照明が当たる。

 彼らは座っていて、目の前には簡易的なテーブルが置かれていた。

 彼らは目の前の札を見つめていたが、札は勝手に全てがオープンとなる。

 

《先ず、一つ目のルールになります。カードはシャッフルは致しません。盤上に等間隔で並んだカードはその場にて全てオープンさせて頂きます。制限時間は1分、その間にカードを記憶されていれば、より多くのカードを獲得する事が出来るでしょう。カードはその場に並んだ時点で、後のルールにてご説明させていただく“特殊カード”以外、例外でもない限りはその場にて固定となります》

「……面白れぇじゃん」

 

 サンの説明は続く。

 黒服たちの目の前のカードはすぐに裏を向いていた。

 片方が札に手を伸ばしてカードを捲る。

 が、捲られたカードは全く異なる絵柄だった……失敗か。

 

《二つ目のルールです。順番が巡ったプレイヤーはカードを必ず一組以上揃えなければなりません。もしも、カードが一組も揃わなかった場合、プレイヤーにはペナルティが課せられます》

「ぺ、ペナルティ? え?」

《――ワンショット。ウィスキーの成分に似せて作られたドリンクを飲んで頂きます》

 

 失敗した黒服はいつの間にかテーブルに置かれていたガラス瓶に手を伸ばす。

 きゅぽんと蓋を取り、琥珀色の液体をショットグラスに注ぎ一気に飲む。

 俺はそれを見た瞬間に血の気が引いた。

 200枚もあるんだぞ。全部、記憶出来る筈がない。

 絶対に軽く五回以上は失敗する自信がある。

 

 ご、五回もショットで飲むなんて……で、デスゲーム!

 

《ご安心を。先ほどもご説明した通り、此方のドリンクはあくまでもウィスキーの風味に似せて作ったものです。純粋なアルコール飲料ではございませんので、急性アルコール中毒などの心配は全くございません。未成年の方でも安心してお飲みいただけます……ただ》

「た、ただ?」

《……意識の混濁。つまり、飲むごとに眠気が生じるので、あまり飲み過ぎればそのまま朝になってるやもしれません》

「あ、朝にって……ハッ!」

「「「……っ♡」」」

 

 全員がごくりと喉を鳴らす。

 やばい。やば過ぎる特殊ルールだ。

 眠れば最期であり、見知らぬ天井を……で、デスゲームぅ。

 

《三つ目のルールです。手番が回って来たプレイヤーは必ず、札を取るか、相手の不正を告発するかを宣言しなければなりません》

「不正の告発? それってまさかよ……イカサマか?」

Exactly(その通りです)! 残念ながら、ゲームにおいて不正を働く輩は一定数存在します。ゲームマスターとしてはそのような行為は断じて認められません。故に、皆さまには不正を見つければすぐにでも告発していただきたい。もしも、不正を暴く事が出来れば成功したプレイヤー様には盤上には無い架空のカードを10枚獲得した事にします。そして、不正を働いたプレイヤー様には、ペナルティとしてその場にてワンショットを実行していただきます》

「お、おぉ! ……あれ、でも、それって……」

「はぁい、しつもーん!」

《許可します》

「その不正の告発はぁ、自分の手番じゃないと出来ないのぉ?」

 

 みっちゃんがすかさず指摘する。

 その通りであり、今の説明では自分の手番でしか告発が出来ないと聞こえた。

 恐らく、そこに何か穴があるんじゃないかと誰も思っていた。

 すると、サンは顎に指を添えて考える……え?

 

《……確かに、一刻も早く不正の告発して欲しい私としては自分の手番でなければ告発が出来ないというのは……ですが、ゲームをテンポよく進行するならば、そう容易く告発を繰り返されるのは……うーん》

「……ゲームマスターなのによぉ。んだよ、それ」

 

 コウちゃんの指摘はごもっともだ。

 が、サンは首を捻って考えて――オリアナさんが手を上げる。

 

「それでは、告発は何時でもしてもいい。しかし、告発が失敗した場合――ワンショットというのはどうでしょうか?」

「「「……っ!」」」

「え!? そ、それじゃ、おいそれと出来なくなるんじゃ」

《――おぉ! それは良い! 実に良いですね! では、ルールに補足を追加します。告発は何時でも可能。しかし、失敗した場合、ワンショットを義務付けると》

「ちょま!?」

 

 俺は慌てる。

 が、サンは首を傾げるだけだ。

 オリアナさんを見れば――にやりと笑っていた。

 

 は、嵌められた!?

 

 まさか、この告発のルールを自然に追加する為に敢えて最初に穴を作ったのか。

 最初から盛り込んでいれば、不正が暴きずらくなるからと俺はそれの撤廃を要求していただろう。

 が、最初にそれが無かった事で仕方なく追加したという流れが生まれた。

 その結果、これを無くせばふりだしに戻るという無駄な流れになり……や、やられた!

 

 既に戦いは始まっていた。

 俺は策士に戦慄する。

 力なく席に座り、俺は拳を硬く握る。

 

《……四つ目のルールです。盤上に並べられたカード、全ての所在は並べられた瞬間に確定します。が、今回のゲームにて使用する事になります――ジョーカーカードのみ、例外となります》

「じょ、ジョーカー? また、何かやばいんじゃ」

 

 俺は怯える。

 が、サンはくすりと笑うだけだ。

 

《ご安心を。ジョーカーカードはゲームを少しでも面白くするために用意した要素。所謂、飾りのようなものでしょうか。場に置かれたカードの中から、ランダムによって二枚が変質しジョーカーカードとなる。つまり、本来のカードが二枚だけジョーカーとなるのです。ジョーカーが効果を発揮する条件は二つ。一つは、揃ったタイミングが最後の二枚であった場合以外で、この時であればその効果は獲得したカード枚数が二枚ではなく四枚になるというだけです。最も効果を発揮するのは、ジョーカーが揃ったタイミングが最後の一組であった場合。この時であれば、揃えた瞬間にそのプレイヤーは――無条件で勝者となります》

「はぁぁぁ!!?」

「……マジかよ」

「ふふ、それは凄く魅力的ですねぇ」

「……ジョーカーを最後に揃えたら先生と……へへ」

 

 俺は驚きのあまり声をあげた。

 皆もジョーカーの効果に少なからず驚いていた。

 しかし、サンは冷静にあくまで揃ったらの話だという……ま、まぁそうだけどさ。

 

《そして、最後のルールとなります。これはプレイヤーの皆さま全てに与えられた猶予時間の事です。皆様は手番が回ってくれば、必ず、ご説明した行動のどれかを取らなければなりません。もしも、猶予時間三分を超えた場合……残念ながら、ゲームをする意思が無いと判断し失格と致します》

「し、失格!? い、いや神経衰弱でしょ!? どういう……ぁ」

 

 俺は取り乱すが、ある要素について思い出す。

 それはワンショットの事であり、酒ではなくとも飲めば飲むほどに眠くなるのだ。

 つまり、完全に眠ってしまえば、もうゲームどころではない。

 何も行動が出来ないからこそ失格で……そうか、分かったぞ。

 

 このゲームは、普通の神経衰弱とはまるで違う。

 あの手この手で、手札を揃えていき。

 ワンショットのリスクを避けるゲームなんだ。

 恐らく、ワンショットによる自分以外のプレイヤーの失格こそがこのゲームの最短の勝利条件。

 

 ……全員が、相手のワンショットを狙う筈だ。そうでもなければ、200枚のカードを全て揃えるなんて途方もないからな。

 

 俺は考える。

 すると、サンは質問があれば聞くと言ってきた……よし。

 

 俺は手を上げる。

 サンは俺の質問を許可した。

 

「……もし、告発が失敗した場合……いや、この場合、自分の手番での失敗と成功の事だけどさ。その時は、カードは引くのか? それとも引かない? 後、不正自体は発覚しない限りは問題ないってことでいいのか?」

《お答えします。先ず、自分の手番にて告発を実行した場合、その瞬間にカードを引く行動は出来なくなります。当然ではありますが、成功すればカードを得られて失敗すればワンショットです。リスクもリターンも、不必要に増やす意図は此方にはありません。そして、最後のご質問ですが……そも、存在するのかしないのかも不確かなものを認める事も否定する事も私には出来ません。私からはそれ以上の事は何も……よろしいですかな?》

「……ありがとうございます。十分です」

 

 俺は聞きたい事はもう無いからと礼を伝える。

 すると、島月さんがお手洗いとかはいけないのかと聞く。

 

《……生理現象であれば仕方ありませんね。しかし、いたずらに時間を消費される事は容認できません。そこで、プレイヤー1人に対し、お手洗いなどに行ける回数は一度のみとさせて頂きます。猶予時間は5分、それ以上はゲームをする意思が無いと判断し失格とさせて頂きます》

 

 サンの言葉に島月さんは納得する。

 何気ない質問であったが、これは意外と重要な事かもな。

 覚えておいて損は無いし、何かで役に立つかもしれない。

 俺は記憶の片隅に記しながら、サンの言葉によっていよいよゲームが始まるのだと実感する。

 

《それではカードを配置します》

 

 彼が指を鳴らせば、ケースの中の札が独りでに動き出す。

 ひゅんひゅんと飛んでテーブルの上にあっという間に並んでいった。

 

《それでは、私の合図と共にカードをオープンします。スリー、ツー、ワン――OPEN!》

「「「……!」」」

 

 カードの表が露になる。

 瞬間、全ての絵柄が確認できた。

 複雑な絵であったり、例えられないようなモノクロの絵。

 が、それ以外にも動物であったり果物の簡単な絵もある。

 俺はすぐに覚えやすいものにだけ意識を向ける。

 必死になって目を動かして、何とか配置を――

 

《――そこまでです》

「え!? う、嘘!?」

「……うぅ」

 

 サンの言葉によってカードは再び伏せられた。

 俺は思わず声を上げてしまった。

 島月さんも不安そうな顔をしている。

 1分がこれほど短かったのかと思いながら、他の三人を見て……ぅ!

 

「ふふ♡」

「……ふっ」

「……」

 

 余裕の表情。

 明らかに今の時間で大体の事は分かったと言わんばかりだ。

 俺は激しく動揺する。

 が、動揺したところで状況は変わらない……や、やるしかねぇ!

 

《それでは、ルーレットによって最初に札を引く方を選ばせて頂きます。ルーレット――スタート!》

 

 サンの傍らに現れたルーレット、俺たちのデフォルメされた顔が張られているそれ。

 彼の合図と共にそれは回り始めて……オリアナさんのところで止まった。

 

《決まりました。オリアナ様より、反時計回りで行動を開始してください》

「では、引かせて頂きます」

「……っ」

 

 彼女が先発か。

 つまり、彼女の左隣にいる俺は最後となる。

 覚えているものが取られなければいいと思って――彼女は揃えた。

 

「ぱ、パイナップル」

「ふふ、頂きます。では、これと、これで……あぁ、外してしまいましたか」

「え?」

 

 俺は驚く。

 あんなに余裕だったのに、まさか次で外すなんて。

 どういう事かと思っていれば、次はみっちゃんの番で――彼女も揃えた。

 

「ぴ、ピーチ!?」

「すごぉい! じゃ、これと……これ! あぁ、外しちゃいましたぁ♡」

「ふぇ?」

 

 まただ。

 彼女も二回目で外した。

 どういう事かと考えて……まさか。

 

 コウちゃんの番になる。

 彼女もやっぱり、簡単な絵柄で揃えて二回目で外す。

 それを見ていたからこそ理解した――態とだ。

 

 ワンショットを誘っている。

 簡単に記憶できるものを消費していって。

 記憶しづらいものを残す事によって、ミスを誘っていた。

 

 狙っている……ミスを……死をッ!!

 

 島月さんの手番となる。

 彼女は視線を動かしながらも、手を動かし――

 

「――島月さん」

「は、はい!」

「ホワイトレコード様は昔、恋人がいらしたらしいですよ」

「えぇ!?」

「いや何言ってんですか!? いませんよ!!」

「あら? そうでしたか。それは失礼しました」

「……っ! これとこれ! ……ぁ」

 

 島月さんは慌てて札を取る。

 が、それらは違う絵柄だった。

 チラリとオリアナさんを見れば……口角が上がっている。

 

 狙ってやった。

 完全な策士だ。

 これが女性の戦い方なのかと戦慄し――黒服が彼女のショットグラスに例の飲み物を注ぐ。

 

《それでは島月様――ぐいっと》

「う、うぅ――! うぇ、に、にがぁ……ぅ?」

「……! だ、大丈夫!?」

 

 島月さんの体が揺れた。

 俺は慌てて彼女の肩を掴む。

 すると、島月さんの頬は少し赤い。

 目はとろんとしていて、彼女はにっと笑う。

 

「ら、らいじょうぶれすぅ。ちょっと、意識が、ふわふわぁって、へ、へへ」

「……本当にアルコールじゃないよね!? ねぇ!?」

《天に誓って健全なものであると誓います》

「ふへへ」

 

 俺は激しく動揺する。

 もう、サンの言葉を信じる他ない。

 俺は島月さんから離れて、自分の手番だからと札を見つめる。

 

「……これとこれ! ……よ、よし!」

 

 絵柄は――揃った。

 

 可愛い猫の絵柄だ。

 俺はガッツポーズをし、二組目を――揃える。

 

「よし!」

「わぁ、流石先生♡」

 

 みっちゃんに褒められた。

 俺は次も揃えて、これで合計6枚の札を手に入れた。

 現在、全員の札を合計すれば12枚。

 場に残っているのは188枚となる。

 まだまだ数はあるが……よし。

 

 俺は次は外しておいた。

 様子見であり、これで少しは揺さぶれたか。

 俺はそう思ったが……無駄だな。

 

 オリアナさんの手番。

 彼女は一組目を揃えて……二組目は失敗。

 

 変わらない。

 この状況は変わりはしない。

 彼女たちは蛇のように息を潜めてその時を待つ。

 全員が全員、本気であり……勝てる、のか?

 

 手汗が滲む。

 緊張と不安でゲロを吐きそうだ。

 が、俺は何とか意思を強く持つ。

 

 やってやる。

 これもゲームであるのなら――楽しんで勝つ!

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