底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第32話:告発と裏切りのダンディ

 狂気のゲームが始まり――30分が経過した。

 

 視線を動かし、場に出ているカードを観察。

 そうして、段々と不確かになっていく記憶を探りながら。

 震える手で手を動かす。

 1枚目を捲り、記憶通りのウサギのカードに安堵する。

 が、震えは収まる事無く。

 そのまま次のカードに手を伸ばして、ゆっくりと捲り――揃った。

 

「はぁはぁはぁはぁ……よ、よし!」

「「「……♡」」」

 

 最低限の1組を揃えて、次は失敗しておく。

 ゲームは進行し、現在の場に出ているカード枚数は――120枚。

 

 七巡目が終わり。

 八巡目へと突入する。

 

 俺の獲得札数は30枚。

 オリアナさんは14枚。

 みっちゃんとコウちゃんも14枚。

 島月さんは8枚だが……限界か。

 

「……すぅ……すぅ……へんへぃ……」

 

 彼女は健闘していた。

 が、一度目のショットによって集中力は大幅に削がれた。

 その上、オリアナさんの妨害もあり、合計で三回のショットを呷っていた。

 結果、彼女は完全に出来上がってしまい。

 机の上に突っ伏して、寝息を立てている。

 もう復帰は不可能であり……後、三人か。

 

 60組のカードを仕上げるまでに仕掛けて来る存在が出て来るだろう。

 が、これと言って動きは無い。

 精々が、みっちゃんとコウちゃんが一緒にお手洗いに行ったくらいだが……まさか?

 

 あの時に何か仕込みをしたのか。

 あり得る話ではあるが、たった5分で何が出来る。

 複雑な仕込み何て絶対に無理であり。

 出来ても作戦会議程度だ……でも、妙だ。

 

 オリアナさんもそうだが。

 三人は共通して自分の手番でカードを一組しか獲得しない。

 それで終わりであり、それ以上は不要だと思っているのか。

 いや、それでも既に40組のカードは全員の手札に加わっている。

 どんなに優秀な記憶力を持っていようとも、酒が入っている状態でこれ以上を覚えるのは不可能だ。

 が、彼女たちにはまるで焦りが見えない。

 

 ……考えろ、考えるんだ。俺は何かを見落としている……何だ。何なんだ?

 

 俺はオリアナさんの手番の間に周りを見る。

 周囲のものの配置は変わっていない。

 三人の装いにも変化は見えなかった。

 黒服は2名だけが残っており、壁際にて直立不動だ。

 

 耳に集中すれば、若い女の店員さんの元気な声が聞こえる。

 

「4番ルーム、5名様! チャーハン3人前入りましたぁ!」

「……」

 

 違和感はない。

 普通の内容であり、オリアナさんを見れば……ん?

 

 今、彼女は目の前の札を取ろうとしていた。

 しかし、何故か一度手を引っ込める。

 何かを考えるような素振りをし、自らの端末を見ていた。

 何かを見ていて、俺はもしかしてと考えて――

 

「――ダウト」

「……!」

「……ん?」

 

 ダウトをしようとすれば、コウちゃんが先に宣言した。

 瞬間、ゲームマスターはコウちゃんに告発の内容を聞く。

 彼女はオリアナさんの端末を指さし、開いているものの提示を要求した。

 

「まさかとは思うがよ……札の内容が分かるもんじゃねぇよな?」

 

 コウちゃんは目を細めながら聞く。

 すると、オリアナさんはくすりと笑い。

 端末を皆に見えるように翻し……メニュー表?

 

「此方のお店のメニュー表です。机のQRを読み込む事で、モバイルオーダーが出来ます。小腹が空いてきたので、何か頼もうかと思っていたのですが……これは不正ですか?」

《塩崎様、これに対して何か不正は確認できますか?》

「……いや、ねぇな。悪かったよ」

「いえいえ……皆様も何か頼みたければ私にお申し付け下さい」

 

 オリアナさんはにこりと笑う。

 そうして、ペナルティであるワンショットがコウちゃんのグラスに注がれた。

 コウちゃんはそれを一気に呷り――にやりと笑う。

 

「へぇ良く出来てらぁ。結構、来やがるな」

 

 コウちゃんは頬を少し赤くし笑う。

 やはり、限界は三杯程度か。

 そう思いながら、俺は再びカードを選ぼうとするオリアナさんを見る。

 端末はもう見ておらず、そのまま札を選べば……揃ったな。

 

 何故か最初に取ろうとした札ではない。

 少し遠い位置のカードを取っていた。

 気のせいなのか。いや、違う気がする。

 彼女はそのまま次のカードを選択し……。

 

「……あぁ、外れですね」

 

 そうして、何時ものように次で失敗。

 が、確実に先ほどの彼女の手の動きは違和感があった。

 悩んでいたからか。いや、それにしては次の動きに躊躇いが無かった。

 つまり、確実に何かを仕込んでいて……もしかして?

 

 俺は彼女に不審がられないように。

 偶々、島月さんが近くに置いていたメニュー表を足でこっちに引き寄せる。

 そうして、彼女にばれないように思考するように視線を下げた。

 メニュー表を音を立てないように開けて、先ほどの店員さんの会話で聞こえたメニューを探る。

 

 ページを捲って行って……あった。

 

 7ページ目の4行目、チャーハンだ。

 確かにメニュー表にあるもので……でも、これだけじゃ何も分からないな。

 

 5と3の数字がカードの配置でも表していると思ったが。

 どう見ても、オリアナさんが選んだカードの縦列と横列の並びは違う。

 逆にしてもそうであり、そんな単純な話では無いだろう。

 鍵は恐らく、このチャーハンで……うーん。

 

 カードの総枚数は200枚。

 最初に並べた時は、縦列が7で、横列が28枚が3列に、29枚が4列。

 現在では枚数は減っていて、ところどころが歯抜けになっている。

 が、最初の固定位置は変わっていない。

 

 ……今にして思えば、この並べ方は妙だな。

 

 何故、縦列10の横列20にしなかったのか。

 机の幅を考量したと言っても、10枚程度なら問題なく並べられる大きさだ。

 逆に横列が広くなった事で、遠くのカードを取る場合は席から立つ必要性が出ていた。

 不自然と思えるようなきりの悪い並べ方だ。

 が、自動であっという間に並べられたからこそ不用意に指摘できなかった。

 

 俺は考える。考えて、考えて――

 

「――ダウトです」

「え!?」

「……あらあら」

「……」

 

 まさかのオリアナさんがダウトを宣言した。

 手番はコウちゃんであり、まさかコウちゃんが不正をしていたのかと思った。

 が、オリアナさんはコウちゃんではなく――みっちゃんを指さす。

 

「不正をしているのは――貴方です」

「そうなんですか? うーん、心当たりがないですねぇ」

《では、オリアナ様。告発の内容をご提示願います》

「はい。彼女が行った不正は――カードの透視です」

「……ぇ?」

 

 俺は思わず間抜けな声を出してしまう。

 どういう事なのかと思っていれば、オリアナさんは自らの目を指さす。

 

「貴方、此処に来た時はコンタクトはしていませんでしたよね。何故――お手洗いから戻った時、つけていたのですか?」

「コンタクトですか? いえ、最初からしていたのですが……写真でも撮っていましたか?」

「え、コンタクト……してるの、か?」

 

 分からない。

 パッと見では判断できない。

 が、オリアナさんには見えていたようだ。

 彼女はくすりと笑い、今すぐにそれを取って調べさせろと言う。

 すると、みっちゃんはそれは出来ないと言う。

 

「何故ですか?」

「それは勿論――宗教上の理由です♡」

「……ぇ?」

 

 俺はまたしても間抜けな声を出す。

 すると、オリアナさんは真顔のままそんな道理は通らないと言い放つ。

 が、みっちゃんは中々引かず――コウちゃんが提案した。

 

「そこまで言うならよ。絶対の自信があるって事だな? だったら、もし違ってたら――ショット二杯ってのはどうだ?」

「……へぇ」

「あ、でもでもぉ。自信が無いのなら、無かったことにしても良いですよぉ?」

《いえ、それは認められません。告発をした段階で、リスクとリターンは確定しますので》

「……ま、どっちでもいいけどよ。アンタはどうするんだ?」

 

 コウちゃんは不敵な笑みで問いかける。

 ルールには無い事だが、宗教上の理由で外せないものを。

 無理矢理に外させるのであれば、それ相応のリスクは伴う。

 明らかに、オリアナさんのデメリットが大きい。

 が、彼女は笑みを深めて――了承した。

 

「勿論、そちらも条件は同じにしてもらいますがね」

「……それなら、どうぞ!」

 

 そう言って、みっちゃんはコンタクトを取る。

 そうして、それをオリアナさんの元へと持っていく。

 彼女はお礼を言ってそれを受け取り。

 隅々まで調べて行った。

 

「……何の変哲もないコンタクトですね」

「ふふ、そうでしょう? なら、約束通り」

「――えぇ、何もしなければ、ね?」

「「……!」」

 

 オリアナさんは微笑む。

 そうして、それを目に当ててからぼそりと何かを呟く。

 瞬間、一瞬だけ彼女がつけたコンタクトの表面に何かが流れていった気がした。

 

「ゲーム開発者やプログラマーが使っている特殊なレンズ。システムのコードなどを一瞬で簡易的な視覚情報として変換する為のものだったでしょうか。主に内容やどういう類のものかを知るものだったでしょうか。優れたものであれば、見ただけで全てのコードが分かるとか……あぁ凄い。これを使えば――裸同然ですね」

 

 オリアナさんは微笑む。

 そうして、それを外してからみっちゃんに返還する。

 彼女はそれを受け取って、静かに微笑む。

 すると、黒服がみっちゃんのグラスにショットを注ぎ――

 

「あぁそれと――貴方も共犯ですね」

「……あぁ?」

 

 コウちゃんは怪訝な顔をする。

 が、オリアナさんは微笑みながら指摘する。

 

「彼女がコンタクトをつけたのはお手洗いに行ったタイミングです。その時には、貴方も共に行っていた筈です。でしたら、少なくとも彼女が不正を行った事を知っていたのではないでしょうか?」

「……いや? 全く知らなかったな。まさか、そんなもんがあるなんてなぁ。はは」

「……では、幾つか指摘しましょう。先ず一つは、彼女が行っていた不自然な行動……貴方、そこの方が手番になった時に、決まって指で机を叩いていましたね?」

「……うーん? そうでしたかぁ? あ、もしかして癖が出たのかしら? ふふ」

 

 みっちゃんは笑みを浮かべていたが。

 少し動揺しているのかたらりと汗が流れていた。

 オリアナさんはそれならそれでいいと言っていたが。

 その音の正体は――モールス信号だと明かす。

 

「引くべきカードの位置を示すモールス。まさか、そんな知識がお二人共にあるなんて思いもしませんでしたよ」

「……うーん。でもぉ、偶然じゃないですか? 動画でも撮ってたんですかぁ? 撮ってないですよねぇ」

 

 みっちゃんは証拠は無いだろうとタカを括る。

 すると、彼女は動画は無いと言った。

 コウちゃんは一瞬口角を上げて――オリアナさんはコンタクトを指し示す。

 

「そこの履歴に――証拠はあります」

「……履歴、そんなものは」

「いえ、あります。ほとんどの人間は知らないでしょう。機能としても明かされてはいません。が、特殊な機械を通す事で、その人間が直近で調べたコードが分かるのですよ。恐らく、このコンタクトの特性から言えば、簡易スキャン機能と精密スキャン機能があるでしょうね。十中八九、ジョーカーカードをタイミング良く引く為に、貴方は引くカードは事前に精密スキャンを行っていたでしょうから……まぁ、履歴を調べる事が出来るのは警察関係者くらいでしょうがね」

「――失礼します」

「「……!」」

 

 オリアナさんの説明が終わったタイミングで、扉を開けて入って来た人間たち。

 コートを着た厳つい顔のおじさんだった。

 彼は周囲を一瞥してから、小さくため息を吐く。

 その傍らには若い青年が何かの機械を持って立っていた。

 

「……お嬢様。あまり私用でこれを持ち出すのは」

「叔父様、どうかご容赦を――私の未来がかかってるのです」

「……そうですか。では――やれ」

「はい」

 

 叔父様と呼ばれた人は青年に命令し。

 みっちゃんが持っていたコンタクトを機械でスキャンする。

 すると、短い機械音が鳴り響き、オリアナさんは機械に表示されているであろう何かを確認する。

 

「……決まりですね。簡易スキャンと精密スキャン。簡易スキャンは全体で、精密スキャンをしたカードは数枚……全て、貴方とそこの方の取得したカードです。これは偶然ではありませんよね?」

「……してやったり、ですかね?」

「……ふっ、やるねぇ」

「……それでは我々は失礼します……その、あまり羽目を外し過ぎないように。では」

「ありがとうございました……さて」

 

 男の人たちは帰っていく。

 そうして、コウちゃんのグラスにもドリンクが注がれた。

 みっちゃんは席へと戻り、コンタクトをケースに仕舞う。

 二人は一気にショットを呷って、続いて注がれた二杯目も――飲む。

 

「……ぅ♡」

「――ぁぁ」

 

 みっちゃんの頬はカッと赤くなる。

 限界間近だった。

 コウちゃんを見れば、彼女の目は既にとろんとしていて体がゆらゆら揺れている。

 元々、二人は本物のアルコールを飲んでいた。

 だからこそ、それも合わさって既に意識は切れかけだろう。

 

 ……二人は時間の問題だな。つまり……実質、俺とオリアナさんの一騎打ちか。

 

 そんな事を考えていれば、サンがパチパチと手を叩く。

 

《おめでとうございます! 見事、不正の告発に成功したアリアナ様には――合計20枚のカードを進呈します》

「あ!?」

 

 黒服さんたちがプレイの実演をしていたテーブル。

 そこに置かれていた別のカードの束から20枚が彼女の元へ飛ぶ。

 これにより、彼女の獲得したカード枚数は――36枚となった。

 

 俺は汗ばんだ手で拳を握る。

 すると、アリアナさんが俺の視線に気づき目を細めて笑う。

 

「ふふ、どうかしましたか? そんな怖い顔をされて……あぁでも、その表情も――素敵です」

「……っ」

 

 オリアナさんは昂然とした表情を浮かべる。

 俺はその魅惑の笑みに戦慄する。

 俺自身、これ以上は取れる札は少ない。

 もうほとんど記憶には残っていないんだ。

 ツーショットは確実であり……まずいな。

 

 何とかして、彼女の行っているであろう不正を暴かなければ。

 二人もしていたのなら、確実に彼女もしている筈だ。

 それさえ分かれば、勝負は五分であり……暴いてやる。

 

 彼女の秘密を暴き。

 このいかれたゲームを――生き残ってやる。

 

 俺はそう決意し……ん?

 

 足元で何かを感じる。

 ばれないように視線を下げれば……え?

 

 何か――いる。

 

 それも小型の鼠のような何かだ。

 動物ではなく機械であり、それは俺の足を伝ってきて。

 膝のあたりに加えていた紙を置いていった。

 

 俺は冷静に、紙を開いて中を確認する。

 すると、小さな字で何かが書かれていた。

 

 

【写真、日付、言葉、連絡――純潔の老紳士より】

「……」

 

 純潔の老紳士……一体、何者だ?

 

 分からない。

 が、先ほどの男の人たちに紛れたあの鼠の機械は侵入してきたのだろう。

 現時点では、俺を救ってくれる味方だと考えていい。

 

 心当たりはまるでない。

 が、連絡を寄越せと言うのであれば……懸けるしかない。

 

 手順は島月さんへと巡る。

 彼女はサンの呼びかけには答えない。

 ぐっすりと眠っていて――ブザーが鳴る。

 

《島月様――失格です》

「……」

 

 サンの言葉によって、控えていた女性の黒服たちが動き出す。

 彼女たちは突っ伏していた島月さんの両脇を抱えて後ろの方へと持っていこうとする。

 が、彼女はその時に腕を振るって暴れた。

 机に垂れていた彼女の涎。

 それがカードに飛んでいき、腕を動かした事でカードがふわりと浮く。

 ひらりとカードは舞って、そのまま別の“カードの上にぴたりと張り付いた”。

 

 黒服さんたちは彼女を後ろに運び、丁寧に枕や毛布などを被せて彼女を寝させてあげていた。

 そうして、動いてしまったカードを戻そうとするが。

 “カードはぴったりと張り付いて”いて中々とれなさそうだった。

 黒服のお姉さんが爪に力を入れて、ようやくとれた。

 彼女は持っていたハンカチと小さなスプレーの除菌剤でカードを丁寧に拭く。

 その場に残してから、彼女たちは一礼し元の場所に戻っていった。

 手順は俺へと巡り――俺は手を上げる。

 

「お、お手洗いに!」

《許可します》

 

 俺はそのまますぐに席を立つ。

 そうして、小走りでお手洗いの場所へと向かった。

 

 

 

 トイレへと入り、誰もいない事を確認。

 俺はすぐに端末を起動して、書かれていた番号に繋ぐ。

 耳に端末を当てて、コール音を聞き……繋がった。

 

《……まさか、私を信じてくれるとはね……愚かなのか。馬鹿なのか。ふっ》

「そ、それ、どっちも罵倒しているんじゃ?」

 

 聞こえて来た声は壮年の男の声だった。

 渋い声であり、老紳士という名もそれっぽい。

 が、会話の節々から憎しみのようなものを感じる。

 俺はそれに怯えながらも、貴方は何者かを聞いて――

 

《私の正体などどうでもいい。それよりも、私は――君にこのゲームを勝ってもらいたいんだよ》

「え? か、勝てるんですか? ど、どうやって……」

《……残念ながら、此方から君に対してしてやれる事は少ない。オリアナは聡明な子で、私が介入したらすぐに気づくだろう。いや、後で絶対に気づく。そして、私には耐えがたい罰が下る……私であれば、全てのカードの情報を君へと送れるが……それは君の自滅を意味する。そして、私の死も意味する。先ほどの情報もそうだ。一か八かであり、答えを示さなかったのはむす……オリアナからの報復を考えての事だ。私に対しても監視の目が合ってね。秘書とつm……兎に角だ。アレはヒントだ。むす……オリアナの不正を暴く為のな》

「ちょ待ってくださいよ! それじゃ何も!?」

《時間が無いんだ。理解しろ。重要なのはメニューの写真、日付だ! それと、最後にラーメンの小、4番ルーム、5名、2人前。カルボナーラ、3番ルーム、3名、4人前だ。切り札はそこに》

《――アナタ? 何時までシャワーを浴びてるの? まさか》

《――幸運を。何かあったら――ぶち殺す》

「え、あ!? ……き、切れた……え?」

 

 訳が分からない。

 協力者の筈が、最後はぶち殺すと言われた。

 何が何だかさっぱりだ。

 でも、色々とヒントはもらえた……やっぱり、あのメニュー表が鍵だ。

 

 それも写真であり、老紳士は日付とも言っていた……そうえいば。

 

 写真の下に薄っすらと写真を撮った年月日が記録されていた。

 曜日もであり、恐らくはそれが彼女の不正を表す何かだろう。

 

 考えろ、考えるんだ。

 鍵はもう一つある。

 それは彼女の協力者と思わしき店員さんの言葉だ。

 

『4番ルーム、5名様! チャーハン3人前入りましたぁ!』

「……そこまで出かかっている。何だ、何が……いや、待てよ?」

 

 それぞれの番号が何を意味しているのか。

 思い返せば、よく聞こえた女の店員さんの声。

 その時に発していた数字はルーム数字は2、3、4。

 決まっていて、絶対に1や4より上の数字は言わなかった。

 そして、人数の時の数字は恐らく……そうだ。8までだ。

 

 8名以上の人数は聞こえなかった。

 そして、自然と何人前かのコールも8までで。

 そこから、彼女が取っていたカードの位置を思い出していく。

 精確な位置までとは言わない。

 が、席に戻ればそれを特定する事は可能だ。

 

 ……見えて来たぞ。段々と……だけど、これだけじゃ足りない。

 

 俺は考える。

 それはオリアナさんを出し抜く為の策で……協力を仰ぐ他ない。

 

 俺は電話ではなく、メッセージを老紳士に飛ばす。

 返事が返って来るかは賭けで――来た!

 

《……それは可能だが……何をするつもりだ?》

「勝つ為の策ですよ」

 

 俺は彼に指示する。

 彼は出来て二回だけだと言うが十分だ。

 俺はその二回の仕掛けで勝負をつけると彼に約束する。

 彼は分かったとメッセージを送って来た。

 一回目は一分後であり二回目は鼠を通して俺の合図は待つと言ってくれた。

 

「加賀様――お時間が迫っています」

「あ、はい! ……よし」

 

 これで十分。

 後は運しだいだ。

 ばれたらそれまでだが、やるしかない。

 

 俺は端末を戻す。

 そうして、平静を装いながら部屋へと戻っていく――

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