底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

35 / 43
第35話:母なるメスガキと殺戮の根黒

 シップ内のブリーフィングルーム内。

 暗い部屋で、作戦の説明を映像と共に伝えられた。

 映像は数分で終わり、作戦を伝えて来た男の声も消える。

 そうして、薄暗かった部屋に照明がついて――七三の男がにこりと笑う。

 

「――以上が今回の作戦の概要になります。皆様、何かご質問はありますか?」

「「「……」」」

「……問題なさそうですね。それでは、作戦が開始されるまでの間、ごゆっくりとお過ごしくださいませ」

 

 男はそれだけ伝えて優雅に一礼する。

 そうして、男の姿は光となって消える……ホログラムか。

 

 男の所属は聖天連合会だ。

 そして、俺が受けた依頼も聖天のものになる。

 リビングデッドの大群が自分たちの領土で暴れまわっている。

 凄腕の傭兵たちの協力を仰いで、一刻も早く平和を取り戻してほしいと……中々の演技力だね。

 

 役になり切っている。

 ロールプレイは大好きだ。

 此処にいる全員も、傭兵としての自分を演じていた。

 煙草を噴かせる強面に、狐のように目を細めて笑う優男。

 アルミのボトルを傾けて、酒を飲んでいそうな赤い顔の老人。

 中々のメンツで……ただ一人だけ。いや、俺を含めて……浮いている存在がいる。

 

 全員が全員、ブリーフィングを終えて部屋を出て行く中。

 一人だけ礼儀正しく足を揃えて座り。

 そわそわとした様子で、口を噤んでいる少女……いや、俺にとっては先輩か。

 

 綺麗な銀髪はツインテールにし、ぱっちりとした目はルビーのようだ。

 小柄で華奢で、身長は150センチも無いだろう。

 小学生のようで……いや、実際彼女は小学生だ。

 

 ぶかぶかの白いパイロットスーツはまるで最初に月面に着陸した宇宙飛行士のようだ。

 ヘルメットは着けない派らしい。

 軽めのヘッドギアのようなものを装着し、腰のポーチには化粧道具を入れていると本人が教えてくれた。

 いつ何時でも、アイドルとしての自覚を持っているとも言っていたが……まぁ、顔は整ってるよね。

 

 アバターならどうとでもなるかもしれないが。

 彼女の声も声優レベルで綺麗で、アバターと声が一致していた。

 きっとリアルの彼女も相当に可愛いんだろうと勝手に想像する。

 知り合ったのは遂この間だが、彼女は先輩として俺に世話を焼いてくれていた。

 

 そう、彼女は先輩――Vtuberの先輩だ。

 

 配信者ネームは、白金院久遠(しろがねいんくおん)

 白百合という事務所に所属している女性ライバーで。

 色々な事で注目を浴びながらも、彼女のメスガキとしてのポテンシャルで人気Vとして名を上げていた。

 彼女のリスナーは、ドエムで中でもメスガキからの罵倒に萌えるらしい。

 彼女は日々、そんなリスナーたちを満足させる為に、メスガキとして振舞っていた。

 

 登録者数50万人越えであり、俺とは比べ物にならないほどの存在。

 本来は雲の上のような存在だが、知り合った経緯は彼女からの接触だった。

 グリード内の街の公園で、バニラシェイクを飲んでいれば。

 何処からともなく、地図を広げてさ迷っていた彼女と出会ってしまった。

 

『――い、いたぁ!! ようやく見つけたわ!! 根黒万太郎!』

『ふぇ?』

 

 彼女は俺を探していた。

 理由を聞けば、タイタングリードで人気に火が付いた個人勢がいるとリスナーさんに聞き。

 彼女は少し心配になって、先輩としてアドバイスをしてあげようと思ったらしい。

 が、メッセージを飛ばしても返事は来ず。

 フルシカトされていると思った彼女は、グリードで俺を探す事にしたらしい。

 

 それを聞いて、そういえばメッセージの確認をしていなかった事を思い出した。

 何故ならば、最近のメッセージは果たし状が多かったからだ。

 グリードでタイマンを望んでいる人たちばかりで。

 ちょくちょく相手はしていたが、日に日に増えるので少し見ないようにしていた。

 結果、大切なメッセージを見落としていたようで、俺はすぐに彼女に謝罪した。

 すると、彼女は少しだけ狼狽えて気にしていないといいかけたが。

 すぐにハッとして、メスガキとして振舞っていた。

 

『ふ、ふん! そんな嘘をつくなんてぇ、おじさんって本当にどうしようもないんだから!』

『え、あ、うん』

『だ、だから! どうしようもないおじさんの為に――これから私が傭兵としても配信者としてもアドバイスしてあげる!』

『ふぇ?』

 

 何故か、彼女とフレンドになった。

 そこからは、ちょくちょく皆と会ったりしている裏で。

 先輩との交流を深めていった。

 別に、機体に乗って一緒に狩りに行ったととかはしていない。

 それはまだ俺には早いと言われてしまったからな……へへ。

 

 彼女は面倒見がよく。

 遥か年上の俺のお姉さんとして振舞っていた。

 良い感じのショップを教えてくれたり、食事を取れば奢ってくれて。

 ぽろっと欲しいアイテムがあると漏らせば、翌日にはプレゼントしてくれて……瞬間、俺は悟った。

 

 

 ――あ、これ、ヒモになっちゃうあれだ。

 

 

 彼女は面倒見がよすぎる。

 だからこそ、これから男と付き合えば――ダメ人間を製造するだろう。

 

『ふふ、口にクリームついてるわよ? 本当に、おじさんってダメダメなんだから♡』

『あ、あぁ』

 

 久遠先輩のリスナーさんたちの気持ちが分かった。

 これは沼ってしまうだろう。

 が、俺もプロの端くれであり、成人した立派な大人の男だ。

 すぐに彼女にそういった事は良くないと告げて――すぐに後悔した。

 

『……っ。ご、ごめん……わ、私、友達がいなくなって……め、迷惑だったよね』

『あ、あぁぁ!?』

 

 俺は――土下座した。

 

 小学生に土下座する28歳。

 実に情けなくて死にたくなったが。

 彼女は気持ちを立て直してくれて、そこからは変わらず俺は甘やかされて……現在に至る。

 

 彼女の配信者歴は2年であり、俺よりは少し長いくらいだ。

 が、彼女は根黒万太郎を知っていた。

 人気が急に出てきた個人勢が気になっていたんだろう。

 リスナーにもそそのかされて、グリード内で俺を探して接触し。

 あれよあれよという間にフレンドになってしまった。

 

 彼女の過去のアーカイブは見た。

 そして、彼女の想像を絶するエピソードもおおむね知っている。

 彼女はホワイトレコード何て全く知らない。

 だからこそ、彼女にとっての俺はメックの扱いが人より上手い冴えない配信者だ。

 

『何故かしらね……おじさんって、昔一緒に暮らしてたワンちゃんに似てるの。困った時の顔なんて瓜二つでね……だから、放っておけないの!』

「……ふふ」

 

 まさか、小学生から犬に似ていると言われるなんて思わなかった。

 が、彼女の言葉には全く悪意が無い。

 時折、中々に生意気な発言はしているが。

 それは彼女のVとしての役だからだろう。

 メスガキというのも中々に大変だが……まぁ今はそんな事は良い。

 

「……先ず、敵を引き付けて……囲まれたら、ブーストで……あ、でも、おじさんが……」

 

 彼女はぶつぶつと何かを言っている。

 傭兵としては彼女の歴はまだ浅いだろう。

 ヘブンフォールからやり込んでいる俺としては、彼女が楽しめるように少しでも肩の力を抜いてあげたい。

 

「……」

 

 俺は席から立ち上がる。

 そうして、緊張している彼女に近づいてそっと肩を叩いた。

 

「ひゃ!? ななな何よ!?」

「……お疲れ様。大丈夫?」

「は、はぁ? 大丈夫って……おじさんに心配されるほど、私は弱くないから! おじさんの癖に良い気にならないでくれる? あ、もしかしてぇ、敢えて私を動揺させてぎゃふんと言わせようって魂胆? ふーん、おじさんの癖に……中々に狡猾ね!」

「……いや、そうじゃないけど……まぁ、大丈夫そうなら良かったよ。それじゃ、俺は機体を」

「――ま、まぁ? どうしてもって言うんだったら、私が軽い雑談でもしてあげるわよ? 何せ、私は先輩だからね!」

「……うん、じゃ機体のチェックをしながらにしようかな」

 

 俺は笑みを浮かべながら、彼女の提案を受け入れた。

 彼女はにこにこと笑いながら、席から降りる。

 そうして、自信満々で機体を預けているシップ後部へと向かった。

 

 

 

《――でね! 私はそのタイミングで銃弾を五発放ったの! そしたら、あっと言う間に敵をやっつけてね!》

「へぇ、そうなんですねぇ……ふふ」

 

 彼女はニコニコしながら話してくれる。

 別に、仕方なく彼女の話に付き合っている訳じゃない。

 彼女は登録者数50万人の大物であり、トーク力は俺とは比べ物にならないほどに上手い。

 話を聞いているだけでも楽しく。

 時折、手が止まってしまいそうになるほどには楽しい時間だ。

 

 彼女は大丈夫かと思ったが……うん、問題ないね。

 

 手は動かしている。

 ちゃんと機体のチェックはしていた。

 それにホッとしながらも、俺も機体を素早くチェックしていく……さて。

 

《……それにしても、その機体……大きいわね。蛹みたいだし……あ、悪い意味じゃないからね!? 本当よ!》

「ふふ、分かってますよ……まぁ実際は、本体は中にあって、外側は所謂、鎧? いや、外装? ……まぁ、そういう感じです!」

《……ふーん。でも、それ作るのって……結構、大変だったんじゃない? まさか、借金とか……あ、ごめんなさい》

「あ、いえいえ! まぁ、色々と作ったんで、多少は金は借りて来ましたけど」

《――それはダメよ! 私が立て替えてあげる! 返すのは何時でもいいから! ね!》

「……え、えっと、気持ちだけ受け取っておきますね。へへ」

 

 リアル小学生に借金を肩代わりさせるって……それは流石に情けなさすぎる。

 

 なけなしのプライドでやんわりと断れば。

 先輩は俺が遠慮したと思って説得してくる。

 俺はヘルメットの下で涙を流しながら笑っておいた。

 

 ハルマゲドンを製作し。

 イベントまでの間に、竜一が"片手間"で作り上げた“拡張兵装”。

 所謂、強化アーマーのようなものであり、本体であるメックとは別の動力炉を持っている。

 小型の核融合炉を搭載しており、それだけでもかなりの金が必要になった。

 見かけは、卵のようになってはいるが。

 シップの外に出て、装甲を完全展開すれば、戦闘機形態として飛行特化の形態となる。

 中心に俺のメックであるイデアールが接続されていて、リンクシステムも導入する事で操縦の面で簡略化が図られていた。

 補助機能も搭載し、戦闘システムもアップデートした事によって俺自身の負担も軽減している。

 

 音速戦闘飛行装甲体拡張兵装――“レッドストーム”。

 

 最高速度は音速を超えて、紙装甲であるイデアールとは比べ物にならないほどの耐久力を有している。

 相手の機体へと体当たりをする前提での設計であり。

 それがこの拡張兵装の攻撃方法の一つでもある。

 強化兵装自体には、攻撃と呼べるよう武装は搭載していない。

 何故なら、レッドストームは大きな動くバッテリーであり――重要なのは内蔵している70基のビットにある。

 

 そう――70だ!

 

 レッドストームは70のビットを搭載し。

 戦闘になれば、それを全て射出し、ビットが展開する超高速回転エネルギーブレードによって相手を切り刻む。

 まるで、ヨーヨーのようなものであり、その軌道は予測不能なほどに変幻自在だ。

 特殊な刃であり、熱と刃と音波の三つのアプローチによって驚異の切断力を得ている。

 触れたものはどんな重装甲だろうとも容易く切り伏せる。

 竜一が言っていた事は、確か……。

 

『目の前のもんは全部ぶっ壊す! 邪魔する奴は切り刻む! 音速の殺戮兵器――爆誕だァ!!』

『の、脳筋がぁ』

 

 頭が悪すぎるコンセプトではあるが、こんないかれたものを作れるのはアイツしかいない。

 70のビットを寸分の狂いもなく操作できるように設定された緻密なシステムに。

 思考の妨げとならないノイズは、綺麗に取り除かれていた。

 これは山城の方々と共同で作ったものだが、彼らは竜一の手腕に目を丸くしていた。

 俺の友人はやっぱり頭がおかしかったらしい。

 そんな事を思い出しながら、俺はリンクシステムをチェックし……よし。

 

「……先輩?」

《え? あ、あぁ! こっちは問題ないわ! 何時でもいけるんだから! ……それと! おじさんは絶対に無理しちゃだめよ!》

「え? でも、無理しないとポイントは」

《――ダメ! 焦ったって意味ないんだから! 堅実にコツコツとよ! 大丈夫! 私がちゃぁんとサポートするから! こう見えても、私のランクはCだからね!》

 

 彼女は得意げな顔をする……俺と同じだね。

 

 俺は微笑みながら、なら頼むと伝える。

 彼女は任せてと言って嬉しそうにしていた……あぁ、ダメだな。

 

 俺は子供の頼みに弱いんだ。

 あんな顔されたら、断る事なんて出来ない。

 俺としては、戦場の敵を速やかに一掃したいが……うん、そうだね。

 

 

 無茶はしない。

 無茶をしない程度に――皆殺しにしようかな。

 

 

 先輩を守りながら、俺は俺で戦う。

 恐らく、戦場では無数のリビングデッドが飛び回っている。

 乱戦状態になるのは確実で、そんな状態であれば先輩であろうとも周りの事を確認する暇は無いだろう。

 俺は友人であり、Vとして先輩の彼女を守りながら――敵を皆殺しにする。

 

 楽しい楽しいイベントなんだ。

 絶対に、一体も残さず――喰らいたい。

 

 喰って、喰って、喰いまくって――あぁ、デザートも楽しみだなぁ。

 

「ふふ、ふふふ」

《……おじさん…………怖い、よね…………私が、先輩として…………守って、あげなきゃ》

 

 どんな敵と会えるのか。

 どんな苦行が待っているのか。

 どれだけ殺し、どれだけ救って――あぁ堪らないなぁ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。