底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第36話:愉快な闘争の幕開け

 聖天連合会支配領域上空。

 高度3万フィートの緩やかな空の旅だ。

 が、俺たちは観光で大型の軍用輸送シップに乗り込んだ訳じゃない。

 

 戦争だ。それもイベントによる――大戦争さ。

 

 輸送用のシップの中で時を待つ。

 聖天の依頼を受けて、領域内で発生したリビングデッドたちの掃討を任された。

 相当ではあるが、今までと違い敵勢力の数は桁違いだ。

 普段であれば、苦戦を強いられるだろうが……問題ない。

 

 報酬は相場の10倍。

 戦いによって掛る費用も全額負担してくれる。

 何故、そこまで多額の金を“俺個人”に支払うのか――決まっている。

 

 他の傭兵を雇う以上の働きを俺に期待しているからだ。

 単純計算で、俺一人で凄腕の傭兵十人分の働きだ。

 だからこそ、この支配領域の重要地点……仮にAエリアとでも呼ぼうか。

 

 そのAエリアでの任務で招集された傭兵は――俺を除いてたったの七名だ。

 

 情報では、万を優に超える軍勢が領域内で暴れまわっているらしい。

 聖天の兵隊たちはそれぞれの拠点の防衛に務めている。

 俺たちはそんな彼らが生きている間に、後方から敵たちを強襲する。

 

 今回の依頼では、最も多くのリビングデッドが押し寄せている中央拠点“ブルーメリア要塞基地”。

 そこへと俺たちは派遣される事になった。

 ブルーメリアは聖天にとっても重要な基地であり、そこを奪われれば支配領域内での補給路が絶たれてしまう。

 絶対に死守しなければならない場所。

 だからこそ、相場の10倍という破格の依頼料に加えて、弾薬諸々の費用も全額負担してくれるのだ。

 間違っても裏切る事は出来ず、何としてでも期待に応えなければならない。

 

 ……まぁ問題は無いさ。

 

 今回のアセンは、多対戦用のものだ。

 竜一はこんな代物を片手間で作ったと言っていたが。

 間違いなく、ハルマゲドンにも匹敵するほどの強力な兵装だと俺は感じている。

 アレと違い、これは単純な数による暴力だ。

 一発で終わらせるものと、時間を掛ければ掛けるほどに敵を殺していく兵装。

 手間暇の違いだけであり、強力である事に変わりはない。

 

 それに今回は個人戦ではない。

 ハルマゲドンを使えば、最悪、仲間にも被害が及ぶ。

 フレンドリーファイヤに気を付けながら、作業のように効率よく敵を屠っていく必要がある。

 だからこそ、普段はあまり使おうとは思わない――ビットを使う。

 

 ビットは拡張兵装内部に収納されている。

 装甲が展開されて飛行形態に移れば、ビットは開口部から射出されて。

 リンクシステムによって俺の脳波と同調し、俺の意のままにビットは敵へと攻撃を行う。

 特殊な回転刃であり、回転の速度も通常のエネルギーソーの3倍以上だ。

 適度に、エネルギーを補給する必要はあるが。

 独立した核融合炉があるからこそ、本体のエネルギー残量を気にする必要は無い。

 

 まぁビット兵器だからこそ、エネルギーの消費量も半端ないが。

 それでも全力で戦えるのは、恐らくが30分以上はあるだろう……十分だ。

 

 もしも、エネルギーが底を尽きれば基地にて補給すればいい。

 それだけの話で――システムがメッセージを発した。

 

《リンクシステム起動。脳波同調開始――クリア》

「全ビット兵器を戦闘状態にしてくれ」

《全ビット戦闘モードに変更。70基全てのエネルギー伝達システム――クリア》

「……よし」

【ビット兵器ですか……良い選択ですね】

 

 配信は既に始まっている。

 現在は、戦いの前のゆったりとした時間だ。

 コメントは自由にしてもらっていて、武装などをチェックしながら彼らと会話する。

 

 ビット兵器は飽きが早い。

 が、それだけの理由で全く使わない訳じゃない。

 実際、使う機会があれば使うしな。

 ただ、銃やら剣やらで戦う方が俺としては燃える。

 だからこそ、普段はそういったもので欲求を満たしていた……でも、ランキングの上位を目指すなら話は別だ。

 

 ランカーとは、他のプレイヤーとは違って効率を求めて行く。

 同じ時間で競い合い。

 一分一秒の世界で、どれだけ効率よくポイントを稼げるのか。

 中には、睡眠時間などを削ってでも上がって来る存在もいる。

 それほどに、本気にならなければトップランカーにはなれない。

 

 俺はランキングの上位を目指す。

 故に――作業の鬼となる。

 

 そんな事を考えていれば――通信が繋がれた。

 

 カメラ付きであり、相手は――白銀院久遠先輩だった。

 

《あれぇ? おじさぁん、まぁだ調整してるのー? 遅くなぁい? ……緊張してる?》

「……うん、少しね……まぁ、お互い頑張ろうね……それと、配信してるからね」

《……! そ、そう! べ、別に私は何時も通りだしぃ。おじさんがよわよわだから心配して……んん! ダメダメなおじさんの為に、私が何でも手伝ってあげるわ!》

「……ありがとう。でも、もう終わるからね……普段通り、話していいからさ」

《い、言われなくても分かってるし! ほ、本当におじさんは頭わるわるねぇ! 良い機会だから、先輩としてアドバイスを――》

【メスガキちゃんの話に付き合ってあげる根黒……てぇてぇなぁ】

【やっぱり小学生は最高だぜ!】

 

 久遠先輩はくすくすと笑う。

 高圧的に見えるかもしれないが。

 アドバイスや話の内容は的確であり、優しさが詰まっていた。

 

《いい? 困った時はコールするのよ? 私はそばにいるから、絶対に1人で解決しようとしちゃダメ! 迷惑だなんて思わないから! 絶対に助けを求めなさいよ! それと――》

【ママ度が高いですぅ】

【おぎゃりてぇな!】

【息子です。通してください】

 

 やっぱり久遠先輩は優しい。

 とても小学生とは思えないほどの気配りだ。

 だからこそ、こっちのリスナーさんたちも何名か既に赤ちゃんにされてしまっていた。

 

 初めて会った時は、ふりふりの赤いドレスを着ていたけっか。

 よく食べて、よく笑う人で。

 世話焼きであり、本当に言えば何でもしてくれる気がするほどに甘やかされる。

 

 白金院久遠先輩はVtuberで、登録者数も50万人を超える大物だが。

 彼女には悲しき過去があり、本人も一度だけ生配信で悲しみも漏らしていた。

 白百合は女性だけの事務所で、所属しているライバー数も50名ほどいる。

 彼女は4期生らしく、まだまだ自分は新米の部類だと言っていた。

 

 

 2年ほどの活動歴で、登録者数50万人であれば彼女の同期たちも凄いだろうと思うだろう。

 実際に、彼女の同期たちはある意味で伝説で……卒業しているけどね。

 

 グループとして活動を開始し、たったの三か月で六人もいた4期生は彼女のみとなっている。

 何か、悲しい理由でもあったのかと思ったら……まぁ、うん。

 

 1人は全く知らない宗教の信者だったらしく。

 三回目の生配信にて、盛大に宗教の勧誘をリスナーさんたちにして卒業。

 もう1人は、がっつりリアルで酒池肉林をし、それを誤ってヌイッターで呟き卒業。

 更にもう一人は、強い奴に会いに行くと言って旅に出た報告をし、そのまま音信不通となり事実上の卒業だ。

 他の2人も中々にぶっとんだ理由で卒業している。

 いや、まだ、卒業扱いしてくれるだけで温情だろう。

 

 世間では、残った1人である彼女に対しても懐疑的な目が向けられた。

 こいつもやべぇんじゃないのか。

 もっとぶっ飛んだ理由で卒業するのではないか。

 そう思われていたが、久遠先輩は健気にメスガキとして活動を続けた。

 世間からは高く評価されていたが、アンチによって突きに突かれて――ぷっつんした。

 

『どうしてよぉぉぉぉぉ!!! 私がぁ!! わ、わたし、がぁぁ!! な、何を、何をしたって――あああぁぁぁぁ!!!』

 

 とある生配信。

 雑談の名目で開かれたそこで、彼女はアンチたちからの口撃にあい。

 我慢の限界を迎えて、涙ながらに悲しみを吐き出していた。

 

 たった1人になった彼女は、あまりにも不憫過ぎるが故に初動でバズり。

 その生配信にて牛乳を片手に、悲し過ぎる現実を涙ながらに語っていた。

 そのあまりにも切実な叫びに、アンチたちでさえも狼狽えていた。

 結果、彼女は多くの人から同情されてしまった。

 そこでぽろっと本人がリアル小学生である事をカミングアウトしていた。

 

 

 ついたあだ名が――“苦労人系メスガキVtuber”。

 

 

 新しいジャンルだと思った。

 が、彼女はその配信で本音をぶちまけてからは、一切弱みを見せていない。

 彼女の配信を幾つか見たが。

 一生懸命に頑張っていて、すごく好感が持てた。

 同情でチャンネル登録したであろう多くのリスナーたちも。

 彼女が何処までも真摯で一生懸命である姿に心打たれて、今や熱心なファンだからな……でもなぁ。

 

《――ちょっと? 話、聞いてるの? この私が、先輩としてアドバイスしてあげてるのよ!》

「うん、そうだね……白銀院さん。そろそろ、出撃だよ」

《……! い、言われなくても分かってるわよ! ふ、ふん! 精々、この私の足を引っ張らないでよね! おじさんは私の後輩だから、先輩である私の後についてくればいいの! この天才ゲーマー美少女の私の前では――て、待ってよ! ま、まだ準備がぁ!?》

「……大丈夫かな?」

【この先、不憫が待っているぞ】

【メスガキの分からせは大好物ですが、久遠ちゃんには幸せになって欲しい……頑張って!】

 

 コメントでも応援されている白金院さん。

 彼女は赤色灯の点灯に慌てていて、通信を切るのも忘れていた。

 俺は切った方が良いのかと一瞬考えたが……心配だし、つけたままにしておこう。

 

《えっと、レバーを引いて、ボタンをつけて……これとこれ……それと、シートベルトの確認を》

「……初心者?」

【しょ、初心を忘れていないんだよ!】

【この先、不憫過ぎるが待っているぞ】

 

 彼女は俺の呟きも聞こえていない。

 ランクは俺と同じCの筈で。

 それなりに場数も踏んでいる気がしたけど……いや、もしかして?

 

 ――緊張しているのか?

 

 そうでもなければ、声に出して確認何てしないだろう。

 何故、緊張しているのかは分からない。

 普段のグリードの配信では、メスガキとして相手を煽りながら華麗に戦っていた。

 中々の腕であり、それが見込まれて聖天の依頼を受けられたと……ん?

 

《……頑張るぞ……後輩に、良い所を……私は、かっこいい、Vtuber……友達だって、守れる》

「……」

【根黒……分かるな?】

【根黒氏、信じていますぞ】

 

 リスナーさんたちからの圧……分かっているよ。

 

 久遠先輩はホワイトレコードなんて本当に知らないんだろう。

 ただ最近、話題になっている俺を気に掛けているだけだ。

 彼女は企業勢だが、他者の不幸に対しては敏感だ。

 だからこそ、彼女は自分にメリットの少ない案件やコラボも積極的にやっている。

 本人は有名になる為なんて言ってはいるが。

 それなら、態々、弱小の個人や知名度の低いインディーゲームをする必要なんてない。

 

 ……多分、彼女は頑張ってる人を応援したいんだろうな。

 

 好きなんだろう。

 メスガキ何て演じていても、きっとリアルの彼女は優しい少女だ。

 そうでもなければ、たった一人になっていう言葉が寂しいだけの筈がない。

 彼女は決して卒業していった同期の事を悪く言わなかった。

 ただ寂しいとだけしか言っていないのだ。

 

 俺は笑う。そうして――レバーを握りしめる。

 

「先輩!」

《ひゃ!? なななな何よ!》

「一緒に――楽しみましょうね!」

《え!? えっと――う、うん!》

 

 彼女はしっかりと頷く。

 俺も頷き――機体が一気に空へと放たれた。

 

 空をひらひらと舞う。

 雲の上から地上の景色が薄っすらと見える。

 戦っている。無数のメックが空を舞っていた。

 それも、どす黒い機体ばかりであり、うじゃうじゃといる。

 

「……1000……いや、2000……もっといるな」

《にににに二千!? そそそそそんなの……っ! よ、余裕よ!! わ、私についてきなさい!》

「あ、ちょ!?」

【追えぇぇぇ!!!】

【一人で突っ込まないでぇぇぇ!!!】

 

 久遠さんの白銀の機体。

 マントをはためかせながら、スラスターを噴かせて降下していった。

 彼女の武装は大きなランスに盾で。

 銃火器の類は無しであり、明らかに個人戦に特化したアセンだと分かる。

 選択ミスとは言わない。

 が、明らかに多対戦ではいささか効率が悪いだろう。

 囲まれれば最期であり――さぁ、やるぞ!!

 

「仲間を守る、敵は皆殺しにする――高難度ミッションの開始ですよ!!」

【頑張って! 超頑張って!!】

【皆殺しじゃぁぁぁ!!!】

 

 ボタンを押す。

 瞬間、卵のような形状の拡張装甲が展開されて行った。

 翼のようなものが両横に伸び、後部に推進装置が設置されて。

 下部のボックス状になったビット格納部から、次々とビットが射出されて行った。

 まるで、鷹のような外観だろうか。

 イデアールは寝ているような体勢であり、網膜には外の景色が鮮明に見え。

 脳内にはビットの情報が大量に流れ込んでくる。

 

「……っ!」

 

 中々の――情報量だ。

 

 流石に70は体に来る。

 これを高機動状態で操り戦うともなれば。

 相当な負荷で……でも、気にしないさ!

 

 慣れている。

 負荷には慣れっこであり、問題は無い。

 

 ペダルを踏みこみ、推進装置を点火。

 そのまま先行していった先輩を追いかける。

 加速力はかなりのものであり、先輩にもすぐに追いついた。

 

 思考制御によって、ビットたちを少し離れさせる。

 今、久遠先輩の視野は狭まっているだろう。

 だからこそ、俺は彼女の周りにいながら、遠隔操作のビットによって敵を殲滅する。

 

 生配信によるトーク。そして、久遠先輩を守る。

 敵も殲滅し、報酬も貰う。

 いつも以上に脳への負荷は高いだろう。

 マルチタスクなんてレベルでは無い。

 そう感じながらも――俺は笑う。

 

 基地が見えて来る。

 広く巨大な軍事要塞基地だが。

 あちらこちらで火の手が上がっていて、黒煙もそこらじゅうで立ち昇っていた。

 高射砲を打ち続けて、基地からもメックの部隊が出撃し。

 無数のどす黒いメックたちへと攻撃を仕掛けている。

 圧倒的な数であり、基地に張っていたであろうバリアも既に機能していない。

 地上には既に多くのメックの残骸が散らばっていた。

 

《……っ! や、やるわよ!》

「……楽しくなるぞぉ」

【恐れる者、興奮する者――戦争だ!】

 

 先輩はランスを構えながら更に加速。

 俺も後を追いかけて、ビットを操る。

 すると、此方に近い敵が俺たちの方に向き――銃口を向けて来た。

 

《おじさん!》

「はい!」

 

 久遠先輩の声。

 それよりも早く、俺は横に飛ぶ。

 先輩も反対へと飛び、銃弾を華麗に回避。

 先輩はそのままランスによって、敵へと突っ込んでいき――破壊する。

 

 その一突きは速く。

 一瞬にして敵の胴体を貫き、そのまま他の敵へと残骸をぶつけていた。

 姿勢制御が出来ていない別の敵。

 それへと近づいて、ランスがバチバチとスパークし――放電。

 

 一瞬にして、三体の敵を屠って見せた。

 先輩は俺へと機体を向けて笑って――瞬間、俺は先輩へとブーストで接近した五体敵を殲滅する。

 

《……! え!?》

 

 先輩は爆発音に驚き振り返る。

 が、そこにはもう煙しかない。

 

 俺は先輩に気づかれないようにビットを操作。

 先輩に声を掛けて、他の傭兵たちが先行している事を伝えた。

 

《わ、分かってるわよ! い、行くわよ!!》

「はい! それでは皆さん――レッツ、パーティ!!」

【うぉぉぉぉぉ!!!】

 

 俺たちは加速。

 そのまま黒い嵐へと突っ込んでいく。

 敵と味方が入り乱れて、硝煙の香りがコックピッドの中でも感じれるほどに濃い。

 そんな血生臭い戦場で――俺は笑みを深める。

 

 さぁ、楽しい楽しい――イベント戦の始まりだァ!!

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