底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
メカメカしい内装の喫茶店内。
NPCであるロボット娘が給仕をし。
イベント中であるからから疎らな店内で、俺は指を操りウィンドゥを広げていた。
そこに映る輝かしい情報、それを見て――にやつく。
「ふ、ふふ、ふふふ」
大型イベント開始から――2日目。
俺はグリード内の喫茶店にてにやにやと笑っていた。
その理由は、俺の目の前に表示されている――ランキングだ。
リビングデッドの討伐ポイントに関するランキングで。
個人のランキングにて俺の順位は――23位だ。
100位以内だとは思ったが。
まさかの23位という好位置で、俺はずっと笑っていた。
まぁたった一日で5000ポイントを超えているからな。
それなりに上位だと思っていたが、まさか23位とは思わなかった。
ヌイッターにてそれを報告すれば、何故か、リスナーさんたちは驚いていた。
【あれだけ倒して23位って……他の奴らはどうやってポイントを稼いでんだ?】
【噂じゃ、レアエネミーの出現を予測している奴もいるらしいけど……まさかね?】
【まぁレアエネミーだったら、一体で1000ポイントもあり得るし……いや、無理だよなぁ】
10位以内の傭兵たちは、ポイントの獲得数も7000を超えていた。
まぁぶっちゃければ、効率を極めた鬼で寝る魔も惜しんでやっているのなら。
適度に睡眠も食事もとっている俺では、到底敵わないだろう。
あの後も続けていれば良かったかもしれないが、流石にリスナーさんたちの約束もあったから続行は諦めた。
10位圏内は化け物揃いだが。
トップともなれば桁違いで――1万ポイントを超えている。
二位である“サンドブルーム”さんとの差は歴然であり、圧倒的な強さだ。
一位の傭兵については俺もよく知っている。
現傭兵たちの中で最強と名高い――“ブラックレコード”だ。
ブラックレコードのランクはSランクであり。
その上である“ナンバーズ”と呼ばれる10人のトッププレイヤーの頂点に君臨している。
圧倒的な強さに加えて、他者を寄せ付けない迫力。
全てが王者のそれであり、今の俺では会う事も難しいだろう。
他のナンバーズはブラックレコードに対して強い感情を持っている。
崇拝であったり、殺意であったり。
誰しもがアレを倒そうとしている点では同じだろうか。
特に2位のサンドブルームさんとやらは、たったの三か月ほどでナンバーズの末席に入れたほどの腕らしく。
ブラックレコードには並々ならぬ想いがあるというのが界隈の噂だ。
ナンバーズは全員が100位以内に入っている。
が、何故かは知らないがサンドブルームさんとブラックレコード以外は10位圏内ではない。
噂では、彼らは純粋な戦いにしか興味がなく。
こういったイベントには消極的だとか……勿体ないなぁ。
そんな事を考えて俺は喫茶店で待っていた。
まだまだ時間はあるからこれからもっと稼ぎたいなぁ。
「……そろそろかな?」
時計を確認する。
すると、約束の時刻の10分前で――カラカラとベルが鳴る。
視線を向ければ小さな女の子が入って来て――久遠先輩だ。
先輩は雪のように白いコートに黒い帽子をかぶり。
サングラスとマスクをしていた。
変装しているつもりだろうが、特徴的な銀髪にグリードでは珍しい幼女系のアバターで。
嫌でも目を引くからこそ、俺にはバレバレだった。
「せんぱーい!」
「……! ちょ、ちょっと! おじさん!」
彼女に手を振れば、彼女はびくりとして此方を見る。
そうして、店員さんに頭を下げてから小走りでやってきた。
彼女は口元に指を添えて、俺に静かにするように言ってくる。
俺は謝りつつも、席に座ってもらえないかと伝えた。
先輩はため息を零しながらも、言われるがままに前に座る。
待ち人が来た。
その瞬間に待ってましたと言わんばかりにNPCの店員さんが歩いて来る。
水の入ったコップを先輩の前に置き、にこりと微笑む店員さん。
「ご注文、お決まりですか?」
「……ホットコーヒーを1つ」
「あ、俺もそれで!」
「ホットコーヒー2つですね。畏まりました!」
店員さんは一礼し去っていく。
俺は改めて先輩に視線を向ける。
すると、先輩は机の下で手をもじもじとさせているのか。
何だかよく分からないが、そわそわとしている様子だった……ん?
俺は待つ。
先輩が呼んだからこそ、俺から無理に聞く事は出来ない。
先輩からの言葉を待ち、待ち、待ち…………。
五分が経過――無言。
気まずい空気が流れれる。
そんな中で、メカ娘の店員さんがホットコーヒーを運んできてくれた。
「ホットコーヒーになります。お砂糖とミルクはお好きなだけ入れてください。それでは、ごゆっくり!」
「……っ」
「……ふぅ」
先輩はいそいそと砂糖とミルクをどっさり入れる。
俺の方にも入れるかどうか視線で聞いて来るが。
俺は今日は必要ないと断っておいた。
そのまま、俺たちは黙ってコーヒーを一口飲む……良い苦さだなぁ。
ゲームの時のお供と言えば、カフェインと決まっているが。
流石に、メックの操作中にドリンクを飲む余裕なんて無い。
コントローラーで遊ぶレトロゲームであれば、飲みながらやるけどねぇ。
まぁ集中したい時は、仮想世界に飛ぶ前にがぶのみしてから来たりはする。
そういう時はうんと濃いカフェインを摂取したくなる。
コーヒーは大好きだ。
飲み過ぎは良くないけど、ついつい飲んでしまう。
落ち着く飲み物であり、集中力も高まる。
もしも、案件でコーヒーメーカーから仕事が――
「あ、あの!」
「ん?」
「ぅ、そ、その……ごめん、なさい」
「……えっと、何の事ですか?」
先輩は絞り出すようなか細い声で謝罪を口にした。
俺は何の事かと思いながら、先輩に問いかける。
すると、先輩はあの後にホワイトレコードという存在に調べたと明かした……あぁ。
「……リスナーさんたちも教えてくれたの。おじさん……いや、根黒さんが、本当は伝説みたいな存在だって……本当はその事について、色々と聞こうと思ってたけど、我慢できなくて、勝手に調べて……私、知らなかったとはいえ、そんな人に対してアドバイスとか守るとか……うぅ」
久遠先輩は両手で顔を覆う。
マスクやサングラスで顔は隠れているが。
耳が真っ赤なのはハッキリと見えていた。
俺はどうしたものかと考えて――笑った。
「……? 何で、笑って……」
「え、あぁ、すみません……まぁ、何でしょうか。俺は実際、気にしてないって事ですよ……それに、本当の事言うと、俺自身、ホワイトレコードって名前について心当たり無かったんですよ?」
「…………え? それってどういう……」
俺は先輩に語った。
これまでのグリードでの俺の出来事を。
昔、ヘブンフォールをやり込んでいたからこそ、続編が出ていたからグリードをプレイし。
想像以上に技術があったからこそ、人気に火がついて。
そこで昔のデカールなどを見せた事で、俺がホワイトレコードだと知られた。
が、それでも俺自身がそれではないと思っていた。
多くの出来事があり、仲間たちが増えて。
ようやく、自分自身がホワイトレコードであると認める事が出来た。
だからこそ、先輩が知らなかったとしても俺は怒ったりはしない。
「だってそうでしょう? 本人である俺が認識できなかったんですから……笑えますよね? ふふ」
「ふふ、確かに……でも、根黒さんは」
「あ、おじさんでいいですよ! そっちの方が先輩らしいですから」
「……じゃ、おじさん……おじさんは凄いよね。ヘブンフォールってグリードよりも操作とか難しかったんでしょう? 難易度も、世界の難関ゲームランキングで5本の指に入るくらいらしいし……完全クリアしてて尚且つ、誰にも破られない記録を持っているんだもん。凄すぎるよ。私なんか、まるで、道端の石みたいに」
「――それは違いますよ?」
「……え?」
先輩は自分自身を過小評価している。
俺はそこだけは黙っていられず訂正する。
先輩の操作技術は大したもので、格闘戦に関してはかなりの技量だ。
槍の扱いはプロ並みであり、状況の判断能力も高い。
あんな無数の敵がいる中で、一度の撃墜も無かったのなら大したものだ。
現に、後で調べてみれば撃墜されていた傭兵もいたらしいしな。
そんな中で生き残り、バッチリと戦果を残した先輩は凄い人だ。
それに、先輩はあの状況で他の人間の気に掛けていたし。
俺や他の傭兵がいなければ、恐らくはもっと活躍を――
「ま、待って! 待ってよ! ちょ、本当に!?」
「え? どうかしました?」
「ど、どうかしましたって、おじさん……い、いい加減にしてよ。そんなお世辞なんて、私には」
「お世辞? 何言ってるんですか? 全部――本当の事じゃないですか」
「ふぇ!?」
「先輩は凄い人です! 間違いなくプロ並みです! 俺が保証します! 先輩は――かっこよかったですよ!」
「……っ!!?」
先輩がわなわなと手を振っていた。
俺は先輩に自信を持ってほしくてぱっと手を掴んでギュッと握る。
瞬間、先輩のサングラスはズレてうるうるとしているのが分かった。
顔は赤面して耳まで真っ赤で、まだ何か恥ずかしいと思っているのかと俺は考えて――肩を叩かれる。
視線を向ける。
すると、かっちりとした制服を着る――ポリスメンが立っていた。
「すみません。市民から成人男性が女児を誘惑しているとの通報がありまして……少し、お話をいいですか?」
「え、え、え? ぇ、あ、その」
「――お話、いいですか?」
「あ、はい」
「ち、ちが!? この人は私の――お、お兄ちゃんです!」
先輩は机を叩いて立ち上がる。
顔を真っ赤にして言った言葉はお兄ちゃんで……ちょっといいかも。
ポリスメンのお兄さんは目を細める。
完全に疑っている人間の目で、俺はだらだらと汗を流す。
「……お兄さん、ですか……本当に?」
「ほほほほ本当です! ね、ねぇ? お、おに、おにい……ちゃん」
「あ、うんうん! 妹なんですよ! 可愛いですよね? 世界で一番です!」
「ふぇ!? あ、あう、ぅぅ」
俺はぺらぺらと妹と偽った久遠先輩の魅力を語る。
世界で一番、天女の生まれ変わり、絶世の美少女で――
「……チッ」
「え? した……え?」
今、舌打ちしなかったか。
俺はそれを指摘しようとしたが。
警官のお兄さんはそれならば問題ないと笑みを浮かべる。
俺はホッと胸を撫でおろし――耳元で警官のお兄さんが囁く。
「先生――目立ち過ぎですよぉ♡」
「…………み、みっちゃ!?」
「それでは、良い休日を! 夜道には――気をつけて」
警官の格好に姿を変えた推定みっちゃんはびしりと敬礼する。
そして、最後のセリフの時だけ底冷えするような声を出していた。
だらだらと汗を掻きながら、悪寒がして店の外を見れば――い、今のは!?
何か見えた気がした。
黒尽くめでサングラスを掛けた女性たちで。
明らかにマフィアのような恰好をしていた気がする。
手には明らかにトンプソン機関銃のようなものを持っていた。
が、すぐに黒塗りの車に乗り込んで去って行ってしまった。
夜道には気をつけろ、か……あ、汗が止まらねぇぇ!
俺はガチガチと歯を鳴らす。
そうして、席に座り直し震えながらコーヒーを飲んだ。
味なんてもはや分からない。
が、今はとにかく落ち着こう。
そう思っていれば、先輩がふふふと笑った声が聞こえた。
「世界で一番……ふふ、へへ」
「……! こ、今度は?」
先輩の純粋な笑顔に癒されていれば。
今度は端末がぷるぷると震えた。
急いで取り出せばメッセージが入っている。
それは現実でのメッセージで……あぁ。
《今夜9時に会いましょう。店は此処、服装は気にしないでいい》
「……ふ、ふへ」
竜一の妹さん神崎ソフィアさんである。
急な呼び出しであり、此方の意見など聞いていない。
俺は寒気を感じながらも、急いで返信する。
先ほどの意味深な言葉もあり、断ればどんな不幸が起きるかも分からない。
行くとだけ伝えれば、返事は返ってこず……はぁぁ。
「……あ、あの」
「え? ど、どうかしました?」
「えっと、その……やっぱり、おじさんじゃなくて……お兄ちゃんって呼んじゃ……ダメ?」
「――喜んで」
「……っ! じゃ、これからもよろしくね。お、お兄ちゃん!」
拝啓、父さん母さん――可愛い妹が出来ました。