底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第42話:無我の境地に至りしヤンデレ?

 殺して、殺して、殺して……終わりが見えた。

 

 大型イベントの終わりであり、最終日は明日に迫っていた。

 連休を含めた10日間は、激動の日々であった。

 多くの勢力から依頼を受けて、多くのリビングデッドたちを殺してきた。

 中には、勢力間の争いに巻き込まれた事もあったが。

 特に問題は無く、障害となるもの全て――殺した。

 

「……足りない」

 

 グリード内の自室。

 薄暗い部屋の中で、ジッとランキングを見つめる。

 根黒万太郎の現時点でのランキングは――3位だ。

 

 そう、3位だ。

 遊びじゃない、本気でやり込んでいた。

 2位であるサンドブルームさんとのポイント差は、1000ポイントほどだが。

 1位であるブラックレコードとのポイント差は……5000ポイント以上はある。

 

 流石に、最強と謳われる実力はある。

 他の配信者が偶然遭遇したらしく、その配信をアーカイブで見たが……想像以上だ。

 

 卓越した操作技術に加えて、漆黒の機体の性能は驚くべきほど高い。

 “ゴーストジャンプ”や“ストリームターン”など。

 玄人が扱うような技は、あの男は全て習得していると思っていいだろう。

 アセンに関しては、二つの変わったブレードに空中に浮遊する六つの大型のビット兵器か。

 ブレードは斬撃を放つ事が可能なものであり、それによって瞬く間に何十もの機体を破壊していた。

 あのビット兵器も強力であり、一撃は大型の軍用シップすら落とせるほどの威力を有していた。

 あの男の技術が合わされば鬼に金棒であり、たった一度の戦闘で8000ポイント以上を稼いでいた……それも、30分ほどだ。

 

 狂っている。

 狂気に身をつからせた時間は、もしかしたら同じほどかもしれない。

 何故、ヘブンフォールでは奴は存在していないかったのか。

 興味は尽きないが……今は、関係ない。

 

 奴がどんなに強く、最適な効率化を計っていたとしても。

 俺には切り札であるハルマゲドンがある。

 それを使うタイミングをギリギリまで引き伸ばしていたが……遂に、来た。

 

 ランキングから移り、昨晩に傭兵協会からの緊急メッセージを見る。

 そこには――

 

 

《明日の19:00にてリビングデッドの残党の集結をAIが予測。エリア57にて、全傭兵は敵対勢力との総力戦を開始せよ》

「……総力戦か。ふふ」

 

 

 運営からの告知では、最後の祭りとされていた。

 リビングデッドの数は、10万なんてものじゃないだろう。

 想像を絶する数であり、全世界の傭兵と協力しなければこの超高難度のミッションは達成できない。

 一見すれば、全てのプレイヤーたちが協力しておこなう平和な任務……が、違う。

 

 一部のプレイヤー。

 中でも、ランカーにとってはこのイベントは協力ではなく――競争だ。

 

 より多くのリビングデッドを狩る為に。

 他のランカーたちを貶め出し抜き、何としても生き抜く事。

 過去に存在しない程の混戦であり、そんな中で戦うともなれば、かなりの集中力と判断力が問われる。

 

 敵はリビングデッドだけじゃない。

 デッドブックやランカー、中には快楽殺人者もいるだろう。

 そんな中での、総力戦で……此処しかない。

 

 俺と竜一が作りあげたハルマゲドン。

 使うとすれば此処であり……部屋がノックされる。

 

「……入室を許可する」

 

 別のウィンドウに表示された扉の外の映像。

 それを確認してから、俺は入室の許可を音声で伝えた。

 瞬間、扉は開いて――竜一が入って来る。

 

「……暗いじゃねぇか。何だよ、センチな気分か?」

「……かもしれないな……何せ、ハルマゲドンを使うんだからな」

 

 俺は乾いた笑みと共に答える。

 すると、竜一は「ま、そりゃそうだ」と納得した。

 

 互いに、ハルマゲドンを使う事の意味を理解している。

 アレは想像を遥かに超えるほどに危険な代物だ。

 特殊な条件があり、色々な準備は必要であるが。

 全てが揃った時に発動すれば――どでかい花火が見れるだろう。

 

 俺はそれを知っていて――恐れている。

 

 もしも、アレを使えばどうなるか。

 少なくとも、俺自身の配信は良い意味でも悪い意味でもバズるだろう。

 が、バズったが最後であり……狙われる事になる。

 

 多くの敵を作る事になる。

 単純なアンチという意味合いではなく。

 デッドブックに載り、賞金を懸けられる可能性もあるだろう。

 それは犯罪というよりは、プレイヤーからの恨みによってだろうがな。

 

 恐れている、躊躇っている。

 だからこそ、竜一はやって来たんだろう。

 こいつとの付き合いは長い。

 お互いに理解し合っている。

 だからこそ――俺は笑う。

 

「……本当に使うんだな」

「あぁ」

「……後悔するなよ?」

「しないよ。俺は、もう決めたんだ。この闘争(ゲーム)勝利(クリア)する為なら――悪魔に魂を売るってな」

「……ご立派だよ。それでこそ――俺の相棒だ」

 

 竜一は小さく笑う。

 俺も微笑み、指を鳴らして電気をつける。

 そうして、折角来たんだからコーヒーでも乗んでいけと誘い――

 

 

 #

 

 

 荒れ果てた荒野のど真ん中。

 破壊されたシップの残骸の上に立ち――笑顔で手を叩く。

 

「――はい! という訳で楽しいイベントも今日で最終日! 名残惜しいですが、最後まで楽しんでやっていきましょー!」

【う、うん……あの、その、ごつい奴は……な、何?】

「……いやぁ! それにしても、凄い数の敵に傭兵ですねぇ! こんな数が一つのエリアにいて戦っているのに、バグが発生しないなんてすごいですよね! はは!」

【……あ、あのさ。だから……いや、そもそも、戦わないの? ランキング1位を目指すんじゃ?】

 

 リスナーさんたちが質問してくる。

 が、今回の俺は敢えて一部の質問をスルーした。

 

 エリア57――ワールド内にイベント限定で用意されたエリアだ。

 

 見渡す限りの荒野であり、その荒野にはシップやメックなどの残骸が無数に転がっている。

 どこかで見たような光景であるが、空は血のように真っ赤で。

 今も空からは隕石のように、リビングデッドに支配されたシップが降り注いでいた。

 

 この状況から、リビングデッドとはこのワールドにのみ存在するものではない。

 この星の外からも来ており、考察するのであれば宇宙すらも新たなステージに……いや、今はいいか。

 

 現在、世界中の傭兵が此処に集結している。

 全ての勢力が保有する兵隊たちも存在し。

 無数の輸送シップや戦闘シップも飛んでいた。

 艦砲射撃によって、シップ同士が交戦しており。

 今もシップが撃墜されて、残骸が落下していた。

 かつてないほどの戦場であり、熱気が“遠く離れた”ここまで伝わって来る。

 

 俺はその熱気を感じながら――にやりと笑う。

 

「……さて、それじゃ準備を始めましょうか」

【準備って……何する気ですか(恐怖)】

【期待してるよぉ!!】

 

 俺はボタンを押し、背中のボックスからポッドを射出する。

 合計で20個の小型ポッドであり、それらはリンクシステムによって遠く離れた戦場へと飛んでいった。

 それを確認し、不要になったボックスをパージした。

 そして、俺は右腕に装備したハルマゲドンを動かす。

 

 右腕と一体化したかのような長大な砲。

 これらの装甲や砲身の長さは射程の維持と打ち出す瞬間の衝撃に耐える為だ。

 音速を超えた速度で、ハルマゲドンは飛翔し、特殊なビーコンによって誘導されて飛んでいく。

 弾はたったの一発であるが、その一発で――“闘争は終わる”。

 

 タイミングが重要だ。

 今、多くの存在が戦場で戦っているが。

 今の時点では撃っても大した戦果にはならない。

 

 重要なのは、この戦場において最も生存率が高い存在を見つける事。

 そして、ポッドを破壊される事無く計画の遂行まで残す事。

 最後に、生存率の高い存在が――死なない事だ。

 

「……ブラックレコードは……何処だ?」

 

 最も生存率が高い存在、それは間違いなくブラックレコードだ。

 奴を発見し、ビーコンを撃ち込めれば勝ちは確定だが……賭けになるな。

 

 少しでもいい。

 隙を見つける事が出来れば……焦るなよ。

 

 俺はそんな事を考えながら、スラスターを噴かせて飛ぶ。

 先ずは戦場へと飛び込む事無く。

 少し離れた位置から戦場の様子を伺いながら――敵!?

 

 レーダーが高速で接近する飛翔体を確認した。

 その場で止まり、頭上を確認する。

 すると、空からシップとは違う何かが此方を目指して落下していて――装甲がパージされた。

 

 現れたのは傷だらけで煤汚れた装甲のメックだ。

 装備と呼べるものは何も持っていない。

 無手の状態であり、装甲の表面を這うように黄金に輝くケーブルが巻き付いていた。

 顔はセンサーが無いと思えるほどに真っ白で。

 スラスターを噴かせて突進してくるそれは両手を合わせて合掌し――悪寒が走る。

 

 何かがまずい。

 そう感じたからこそ、ブーストしてその場を離れた。

 奴は俺の機体のギリギリを通過し、そのまま下へと落下していった。

 そうして、そのまま地面に――甲高い音が鳴る。

 

「――な!?」

【え!?】

【何!?】

 

 謎の二脚のメック。

 衝突しそうになった瞬間に――上へと上昇した。

 

 見れば、地面には大きなクレーターが出来上がっていた。

 何が起きたのか、激しく戸惑い――謎のメックが俺の前で停止する。

 

「あ、貴方は」

《――会いたかったぜ。根黒万太郎》

「……! カタギリさん?」

【キタァァァ!!!】

【なんかスッキリしてね?】

 

 謎のメックは、目の前で手を合わせていた。

 祈りを捧げる武僧のようであり、何時もの彼と違い言動は落ち着いていた。

 何故か、機体から後光のようなものが差しているかのように淡く輝いている。

 真っ白なフェイスに、巻かれている黄金の鎖のように見える何か。

 腰巻のようになった装甲もあり、まるで、お坊さんのようで……え?

 

「あ、あの、カタギリさん、そ、その……何か、ありました?」

《……俺はお前を倒す為に――悟りの道を進んだ》

【スピリチュアル?】

【また俺たちの予想を超えていったなぁ!】

 

 カタギリさんは語る。

 1日の時間が1年の時間に感じる特殊な仮想空間にて座禅を組みお経を唱え続けたと。

 怒りと憎しみを超えて、“無の心”を手に入れたと。

 そして、この新たな機体である“白面”を駆り――俺を倒しに来たらしい。

 

《感じるぜ。此処にいる全ての生命の怒りや殺意。闘争そのものをな。お前からも感じるよ。全てに対する――闘争心を》

「……!」

 

 カタギリさんの白面は小さくお辞儀をする。

 これから始まる闘争に対して、礼を尽くすとでもいうのか。

 彼の機体は、まるで神へと祈りを捧げるように両手を合わせたままで――

 

《さぁ――来い》

 

 彼は俺に挑戦を叩きつけて――俺は背を向けた。

 

「すみません! 今、貴方の相手をしている暇はないので!」

《……ふっ》

【む、無視……ぶほぉ!】

【アウトオブ眼中とは正にこのこと……でも、カタギリには余裕が?】

 

 リスナーさんたちのコメントを確認し。

 ちらりと背後を確認すれば――俺を追って来ていた。

 

 それも衝突も気にしない程の全力で――俺は右に避ける。

 

 彼の機体は真っすぐに進み。

 そのまま旋回。またしても、突っ込んでくる。

 俺はそれもひらりと回避し、そのまま戦場へと突っ込んでいく……何だ?

 

 違和感――何時ものカタギリさんらしくない。

 

 あんなにも攻撃的だったあの人が。

 今はとても穏やかであり、やっている事が体当たりだけだ。

 何を考えているのか分からないけど、俺は俺のやる事を――!

 

《ホワイトレコード!! 死ねぇ!!》

 

 リビングデッドを破壊し突っ込んでくる機体。

 傭兵の機体であり、まるでドリルのようになった右腕が迫り――ブーストで回避。

 

 瞬間、後ろにいたカタギリさんへとドリルが迫って――甲高い音が鳴る。

 

「え!?」

【おぁ!?】

 

 ドリルによる攻撃――吹き飛んだ。

 

 カタギリさんの機体ではない。

 ドリルの持ち主である傭兵の機体が――腕を起点に木っ端みじんに吹き飛んだ。

 

 バラバラと残骸が飛び散り――俺は別の敵の攻撃を回避。

 

 何が起きたのか分析する前に、リビングデッドの群れが追って来る。

 俺はその攻撃を回避しながら、左手に装備した小型バルカン砲で敵をけん制する。

 此処は混戦状態であり、視界全てがメックだ。

 俺はボットの状態を確認しながら、敵の攻撃を回避していき――連続で甲高い音が鳴る。

 

「え、あ!?」

【一瞬で敵が木っ端みじんに!?】

《……根黒万太郎。俺はお前を追う。どんなにお前が俺を無視しようとも――俺は、諦めない》

「くぅ!?」

 

 彼は敵を蹴散らしながら、俺へと突っ込んでくる。

 何故かは分からないが、絶対にあの人の機体に近づいちゃいけない。

 本能がそう告げていた。

 彼は両手を合唱したままであり、無数のメックが彼の機体を襲うが。

 甲高い音が鳴ったかと思えば、敵の機体は吹き飛んでいた。

 

 共通しているのは、敵があの機体に接近したか。

 あの機体へとブレードや射撃兵装にて攻撃したかだ。

 その直後に、風穴が開くかバラバラになるかで……いや、待てよ。

 

「見た事がある……そうだ! あれだ! ――全反射(オールカウンター)だ!!」

【全反射って……え? あの超絶不人気の?】

 

 全反射、それはヘブンフォール時代から存在する特殊兵装。

 バリアのようなエネルギーフィールドを生成する装置ではあるが。

 バリアのように使い勝手がいいものではない。

 

 ほぼ全ての攻撃を反射する事が可能な全反射。

 追加された当初は、使いこなせれば無敵になれると言われていたが……これには致命的な欠点があった。

 

 それは、タイミングが激渋である事だ。

 相手の攻撃に合わせて発動しなければならないものであり。

 0.01秒のズレすらも許されないほどの超絶技術を要求する欠陥兵装。

 俺も何度か使ったが、かなりの集中力がいる上に。

 ミスだって当然あったからこそ、到底、実用的ではないと判断してほとんど使わなかった。

 

 恐らく、カタギリさんはそれを使っている。

 分析している間にも、四方八方からの攻撃を――反射していた。

 

「あり得ないでしょう……はは」

《あり得るだろう。何故なら、俺は無の心を会得し、全ての怒りと殺意を――感じる事が出来るようになったんだ》

「か、カタギリさん。そんなに凄い技を……でも、どうして俺を」

《――お前が俺を狂わせたからだ》

 

 カタギリさんは静かに語る。

 心を狂わせて、道を踏み外させて。

 己のプライドをズタズタにし、積み上げて来たものを壊された、と……さ、逆恨みじゃ?

 

《でもよ、俺はそんなお前に――感謝しているんだよ》

「え?」

《お前と出会えたからこそ――俺は真の強さを得られた》

 

 カタギリさんは語りながら機体を上昇させる。

 全ての敵を反射によって攻撃し。

 木っ端みじんにしながら、彼は後光を強めていく……アレは仕様なのか?

 

 彼は両手の合唱を解き、静かに腰の位置に手を下げた。

 後光の輝きは増し、彼は仏にでもなったかのような穏やかな口調で感謝を伝えて来た。

 

 

 

《ありがとう。根黒万太郎――そして、死んでくれ》

「……ッ!」

 

 

 彼がそう言い終わるや否や殺意に塗れた傭兵たちが彼へとガトリングによって攻撃。

 無数の弾丸が彼の機体へと殺到し――連続して奇妙な音が鳴り響く。

 

 瞬間、全ての弾丸が弾かれて。

 彼を殺そうとした攻撃は、傭兵たちの機体を蜂の巣にする。

 バチバチと傭兵たちの機体はスパークし――爆散。

 

 彼は再び両の手を合わせて――迫って来た。

 

 俺は慌てて彼の体当たりを回避。

 そのままリビングデッドや傭兵たちの攻撃を避けながら。

 激しい交戦状態の戦場を翔ける。

 気づけば、たらりと汗が頬を流れていた。

 

「ふ、ふへ」

【静かなるヤンデレカタギリ……見事だ】

【やっぱりお前は――最高だなぁ!!】

 

 カタギリさんがブーストで迫る。

 俺はそれを回避していく。

 鍵となる存在の発見に、思考によってポッドを配置につかせる。

 計画の完遂に必要なものを、俺は――“確認していった”。

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