底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第44話:アンチとファンとの交流会

《根黒万太郎!! 奴こそが我らにとっての敵!! 奴という悪に対し――正義の鉄槌を!!》

《鉄槌を!! 鉄槌を!! 鉄槌を!!!》

「……ふ、ふへ」

 

 ニューチューブで幾つかの動画を拝見する。

 その一つは、ワールド内で新しく結成されたコミュニティーの演説動画で。

 コミュの名前は――“根黒万太郎被害者の会”だった。

 

 イベント最終日に、俺のハルマゲドンによって機体を跡形もなく吹き飛ばされた人たちで構成されているらしいが。

 ほとんどがルーキーたちだとリリアンさんは言っていた。

 しかし、中には熟練のパイロットなんかも混ざっている。

 彼らは頑張って手に入れた愛機を俺によって跡形もなく破壊されたと恨んでいるが……まぁそうだけどねぇ。

 

「実際は、殺して殺されての世界だから……まぁいいけどさ」

 

 カタギリさんは入ってはいないが。

 メッセージを送っても返事は無かった。

 相当、怒っているのかもしれない。

 

 俺はあの時、“礼儀と誇り”を捨てて“バズりと勝利”を求めた。

 その結果の大虐殺であり、有名なゲーム情報誌でも早速、あの事件の事が書かれていた。

 

「ゲーム史に残る大虐殺……“悪夢の閃光”か……我ながら凄い事したなぁ」

 

 俺は自宅で茶を飲みながら笑った。

 まぁ目的は無事に達成した。

 圧倒的なポイントで1位をブラックレコードから奪い。

 1位達成の報酬も、近々貰えるようだ。

 

 その代償として、運営側から修正が入り。

 ハルマゲドンの使用に関するルールが新たに作られた。

 結果、ハルマゲドンを作る事も、類似するものも事実上作れなくなった訳だが……アイツはげらげら笑ってたなぁ。

 

『ぎゃはははは! あ、あの運営様がとうとう個人に対するルールを決めやがった! それも俺の作品で……ぷふぅ!』

『……それでいいのかよ』

 

 やはり、腐っても技術屋だ。

 自分自身の作品によって恨みを買われるよりも。

 それによって、どんな意味であろうとも評価されたのが嬉しいんだろう。

 奴は張り切った様子で次はもっとすごいものを作ってやると息巻いていた。

 

 ……そういえば、3位までの人間たちは公式の生配信に呼ばれるんだったか?

 

 大型イベントでのランキング戦では、個人の部と団体の部での1位から3位までが呼ばれる決まりで。

 団体の部では、コミュニティーの代表が呼ばれるらしい。

 生配信と言っても、後に地上波でも放送されるとは聞いていた。

 今回のばずりでチャンネル登録者数も増大し、知名度も跳ね上がった今ならば。

 公式の生配信に出ても、何ら恥ずかしい事は無い。

 

 ……それに、ブラックレコードとサンドブルームさんにも会ってみたいしな。

 

 まぁ仮想世界でアバターだからこそ、リアルとは関係ないけど。

 どういった存在かくらいかは確かめておきたい。

 俺は生配信を楽しみに思いながら、おやつのまんじゅうを食べて……よし。

 

 そろそろ仕事の時間だ。

 俺はベッドに横になり、首輪型のVR装置を起動する。

 そうして、静かに目を閉じて――仮想世界のマイルームで目覚める。

 

 周囲を見れば、何時もの部屋ではない。

 今回の配信用に作り替えた――“面会室”だ。

 

 椅子が2つに、強化ガラスによる隔たりで互いの安全が確保されている。

 俺の装いは白と黒のこてこての囚人服であり、手錠が嵌められていた。

 後ろには機械人の看守が座っている。

 俺は準備は万端であるとあらかじめ告知していた配信を――開始する。

 

「はい! おはこんちゃー! 根黒万太郎です! 皆さん、元気ですかぁ?」

【……本当にするんですか?】

「ん? 勿論です! 今日の配信は――“ファンとアンチの人たちとの交流会”ですからね!」

 

 俺がそう伝えれば、息を潜めていたアンチの人たちが配信を燃やそうとする。

 中々の強火であり、あんまりにも強い発言やスパム以外はスルーしておく。

 俺はにこにこと笑いながら、抽選に参加する人数を確認する……おぉ。

 

「ななななんと! 現在の時点で参加希望者の数が――1万人を超えています!」

【……不安だなぁ】

【根黒氏、心を強く……ね?】

 

 俺を心配するリスナーさんたち。

 俺は大丈夫だと伝えながら、早速、1人目のゲストを招待する為に抽選を開始する。

 俺は椅子から立ち上がり、面会所に出現した大きながらがらの前に立つ。

 そうして、勢いよく回していき――球が出た。

 

「はい! 番号は――375番の方! 此方からコードを送るので、準備が整いましたら入室を! 5分以内に応答が無い場合は、もう一度抽選を――はや!?」

 

 ガチャリと音がして、面会者が入って来る。

 俺は慌てて席に戻り、にこやかに笑みを浮かべて――拳が飛んできた。

 

「ふぅふぅふぅふぅふぅ――死ねや」

「うわぁ! いきなりですね!」

【こ、こぇぇ】

【山賊かな?】

 

 全身毛むくじゃらで大柄の目が血走った山賊風のアバターだった。

 彼はふぅふぅ言いながら俺への殺意を吐き出し続ける。

 俺は笑みを浮かべながら、それを静かに聞いていく。

 

「出てこいや。殺してやるよ。おい、おい! 聞いてんのか! テメェなんざ俺が全力を出せば」

「――じゃ、勝負しましょうか!」

「……は、は? え、何? え?」

 

 アンチっぽい人は狼狽える。

 まさか、挑発に乗って来ると思わなかったんだろう。

 俺は指を動かしてグリードに接続し、対戦ルームを速攻で作る。

 使用武器は無制限であり、それを聞いたアンチっぽい人はにやりと笑う。

 

「もし負けたらよ――引退しろや」

「いいですよ!」

【ちょちょっと!?】

【どうなるのぉ!?】

 

 俺たちはそのまま面会室から転送される。

 そうして、気づけば俺はイデアールの中であり。

 アセンに関しても、ゲスト用に予め設定しておいたハンドガンとパイルバンカーだけだ。

 荒野のど真ん中で、相手の機体を待てば――来た。

 

「おぉ……ごついですねぇ」

【……明らかに個人対戦用のアセンじゃないな……過剰過ぎじゃね?】

 

 相手は重装備であり、リスナーさんの中でも数名違和感を抱いていた。

 明らかに対戦で使うようなものではない。

 強力な武装ばかりであり、大型のエネミー戦のようなアセンで……あんな事したら、コストがやばいと思うんだけどなぁ。

 

 採算も取れないただの対戦であんなものを使うなんて。

 よっぽど俺が憎いんだろうと思っていれば、アンチっぽい人が通信を繋ぎ――

 

《ボコボコにしてやるよ》

「あ、はい! よろしくお願いしまーす!」

 

 俺は挨拶をしカウントダウンを待って――――

 

 

 

 

「ひぐ、うぐ、えぐ、も、もう一回! もう一回!!」

「……あのー、申し訳ないんですけど。次の人がいるので」

 

 山賊風の男と三回戦って――完勝した。

 

 無傷であり、ほとんど動きもしなかった。

 強力な装備であったが、使用者は素人同然で。

 やたら滅たらに動いていたけど、碌に狙い何てつけていなかった。

 プラズマ砲は明後日の方へ飛び、対艦ライフルは撃つだけで姿勢が乱れまくっていた。

 唯一、ミサイルに関してはホーミングがあったからこそ当たりそうにはなったが。

 普通にハンドガンで撃ち落とせたので全く危機は無かった。

 そうして、勝手に自滅したところを一気に近づいてパイルで一撃で仕留めて終了。

 

 下手に動かない方が避けられると判断したがその通りになった。

 彼は初戦で3分も保たずに負ければ、もう1回とせがんできて。

 もう1回やれば、泣きながらもう1回と言ってきた。

 手を抜く事無くボコボコにすれば、号泣していて……たぶん、お金持ちの家の子供だな。

 

 彼はごつい大人のアバターでぎゃんぎゃん泣いて暴れていたが。

 俺は笑みを浮かべながら、手を振って彼を強制的に退場させる……さて。

 

「それじゃ次の人……はい! 2587番の方!」

 

 俺は待つ。

 すると、3分ほどで相手が入室して来た。

 リスナーさんたちはまたやべぇ人間かと恐れていて……普通のビジネススーツを着た大柄なおじさんだった。

 

「どうも」

「あ、どうも……えっとお名前は? あ、何でもいいですよ!」

「それでは、“森のクマ”さんでお願いします」

「はい、森のクマさんですね! それで、今回俺に何か言いたい事は」

「――私を殴ってください」

「…………へ?」

 

 彼はとても綺麗な目で俺を見つめる。

 一切のよどみなく、真っすぐな視線だった。

 一瞬、何を言ったのか理解できなかったが……な、殴れって?

 

「あ、あの」

「――殴ってください。殺しても構わないので。いえ、寧ろ殺して欲しいですね」

「え、あ、あの」

【違うベクトルのやべぇ人が来たね】

【綺麗な瞳のドエムって……殴ってあげたら?】

 

 リスナーさんたちは俺を揶揄う。

 が、一応は理由を聞かせてくれと俺は頼み――

 

「私はあの“悪夢の閃光”に――いたんです」

「……そうですか」

「えぇ、それで貴方の例のアレによって……機体諸共私は死にました」

【……それで、何で殴ってって?】

 

 リスナーさんたちも少し興味が湧いたようで。

 俺が話を促せば、段々と彼の息遣いは荒くなっていく……お?

 

「あの日、初めて、グリードで死んだ日、その、お恥ずかしいんですが……興奮、してしまい、ましてね……あぁ、死ぬってこんな感じなんだと……灼熱に焼かれて、リアルとほぼ同じ痛覚設定だったからこそ、すぐに生命の危機で、意識は強制ログアウトを……はぁ、はぁ、はぁ……地獄のような数秒間。が、その後は冷たくて、無で、空っぽで、心がきゅっとして――すごくぞくぞくしたんですよ! あぁこれが死による――快楽なのだと!!」

「え、あ、あぁ……ぇ?」

「それで、何度か死んではみたんですが。どうもあの時の感覚ではなくて、これはきっと、根黒さんが殺してくれたから気持ちよかったんだと確信しまして――お願いです。私を殺してくれませんか!!」

 

 彼は血走った目で頬を紅潮させながら。

 ネクタイを解いてスーツを脱いでいく。

 胸毛がぼぉぼぉで、だらしのない体で。

 下は何とか白のブリーフであるが、それがかえって俺自身の恐怖心を増大させた。

 

「ははは……うん、次の方に行きましょうか!」

「……! 金なら出します!! 100万!! 1000万でも!! リアルマネーでもいいです!! ですので、どうか!!! 道具でも何でもいいので!! 私を貴方ので手でぇぇぇあああああぁぁぁ!!?」

 

 俺は思念で彼の足元に穴を出現させる。

 変態は叫び声を上げながら、奈落へと消えていった。

 

「……ふ、ふふ……すみません。ちょ、ちょっと……こ、怖くなってきました!」

【だからあれほど……いや、あんなレベルの変態が来るとは予想してなかったわ】

【予測不能の迷配信の予感!】

 

 俺は目に涙を浮かべながら震える。

 が、一度やると決めたからこそ俺は勇気を振り絞り配信を続けて――

 

 

 

「へ、へへ……自称お姉ちゃんのニューハーフに、パパを名乗る不審者……自称大阪のおばっちゃんの15分のノンストップ説教に、放送禁止用語を連発する全裸のクマのアバターの変態……ふ、ふへ、お、同じ話を50回もループするインドの人に、婚約指輪と婚姻届けを持ってきたどこかの国の御姫様……う、うき、うひ、ひぐ」

【……もう何も見たくねぇ】

【これが地獄の配信ですか?】

【俺たちは何を見させられてるんだ?】

 

 想像以上の猛者ばかりだったが。

 時間にすれば次がラストだ。

 俺は必死に光の無い目で笑みを浮かべながら、最後の力を振り絞ってがらがらを回し……出た。

 

「……はい! では、ラストはぁぁ……145番の方! 頼む真面な人!!」

【狂ってるやつ来い!!】

 

 俺は必死に祈る。

 すると、その人はギリギリで面会室に入室して来た……お?

 

「……」

「ど、どうも……あ、あれ?」

 

 入って来た人は顔をすっぽり覆い隠すパーカーで。

 一瞬顔は見えたが人相が鬼悪い青年だった。

 アンチ系の人かと思いつつ、俺は挨拶をしてみたが無視された。

 俺はどうしたものかと思って……。

 

「……テメェ、何でへらへら笑ってんだよ」

「へ? な、何がでしょうか?」

「……配信者だか、伝説だが知らねぇがな……人の大切なもんぶっ壊しといて笑ってんじゃねぇよ。クズが」

「……あぁ、そういう」

【……言いたい事は分かるけど……ねぇ?】

 

 俺は彼の言いたい事を何となく理解した。

 その上で、相手に対して幾つか質問した。

 

「貴方はグリードをプレイされてるんですか?」

「……あぁやってるよ。でも、俺の機体は壊れちゃいねぇ」

「というと、お友達か身内の機体を俺が?」

「……弟だ。アイツはまだ新規で始めたばっかで、俺がやった機体を大切に使ってた。メンテだって欠かさなかった……それなのに、あの日、テメェがあんな訳の分からねぇもんを持ち出したから……何とも思ってねぇのかよ」

 

 彼は殺意をむき出しにして俺を睨む。

 俺は静かに頷いて――目を細めて微笑む。

 

「申し訳ないとは思っています。でも――反省も後悔もしていませんよ」

「……!! てめぇ!!」

 

 彼は怒りをあらわにしてガラスを叩く。

 彼はパーカーを外して鬼の形相で俺を睨んできた。

 

「テメェのせいでな!! アイツは落ち込んでんだよ!! 欠片さえ残らなかったから、新しく作るだけでも莫大な費用がかかっちまう!! 俺は気にしないって言ったが、アイツは俺の金を断ってなぁ!! 今も無理して借金で買った機体に乗って楽しくもねぇ作業を!!!」

「うん、分かりました! でも――それがこのゲームなんですよ?」

「あぁ!?」

【……分からねぇか】

【まぁ言っても理解は出来ねぇよな】

 

 リスナーの中には俺を糾弾する者は多い。

 が、何名かは俺が笑っている理由を理解していた。

 俺はこのまま話しても埒が明かないからと――彼に対戦を申し込む。

 

「……!! テメェと戦って何に!!」

「――俺が負けたら、貴方の弟さんの機体の製造費を全額負担しましょう。おまけに、好きな武装もつけますよ?」

「……!? ほ、本気か!? アレはそこいらの量産型じゃ……二言はねぇな!!」

「えぇ、男同士の約束です……ただ、貴方が負けたら……今後一切弟さんに対して――手を貸さないでください」

「は、はぁ!? 何でテメェがそんな事!! 冗談じゃ……っ。い、いや、分かった! 受けてやらぁ!!」

 

 彼は俺の戦いを了承する。

 禄に条件も付けていなかったからこそ、中々にフェアな男なんだろうと思ったが……俺は敢えて提示する。

 

「俺の機体は初期機体の一つである“C44”にします。アセンは、ハンドガン二丁のみ」

「……!! 何のつもりだ!! 俺はハンデなんて!!」

「――ハンデじゃないですよ? 俺がそうするだけですから。えぇ、気にせずに」

「……舐めやがって、絶対に――ぶっ殺してやる!!」

 

 彼は拳を打ち付ける。

 そうして、中指を立てながら俺が建てた対戦部屋に映っていった。

 俺も彼と共に転送されて、出撃前の選択でガレージに眠っていたC44を選択する。

 アセンも弄ってないからこそそのままであり……勉強さ。

 

 彼よりも先に、俺はステージに転送された。

 そこは、月が綺麗な砂漠の上で。

 周囲を見れば、大型エネミーの死骸などが転がっていた。

 俺は彼が来る前にリスナーさんにも聞こえるように発言する。

 

「タイタングリードで傭兵になる事……彼も弟さんも――知る必要がある」

【……俺からも頼むよ。こっぴどく潰される前に……な】

【初心者は大切にってね!】

【……? どういう事?】

 

 俺は薄く笑う。

 すると、彼の機体が転送されて来る。

 深紅のカラーリングであり、炎のようなデカールが張られている。

 まるで、暴走族の族車のような派手さであり、その手にはショットライフルが二丁と肩部にランチャーとミニガンがある。

 彼は天へと真っすぐに伸びる長いブレードアンテナを撫でてから――俺に銃口を向けて来た。

 

《“焔のレッドソウル”――冥土の土産に覚えていけや》

「ふふ、ネームドですか。少しは――楽しめると嬉しいですね」

《……! ほざいてろや!》

【ワクワク!】

【さぁて、どうなるやら】

 

 彼は闘志を熱く燃え滾らせる。

 瞬間、カウントダウンが始まる。

 俺はだらりと両手を下げたまま、カウンダウンがゼロになる瞬間を待ち――ゴングが鳴る。

 

 彼はブーストによって一瞬で迫り。

 その銃口が火をふく瞬間――俺は静かに微笑んだ。

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