底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
時計の秒針が刻まれる音がいやに響く。
誰もいないマイルームで、俺はベッドに腰を下ろし。
ただ静かにその時を待ちながら、乱れる心を落ち着けようとしていた。
「……」
俺はマイルームで竜一を待つ。
突如、俺の元に届いた運営からの挑戦状。
特殊エリアが出現し、巨大な竜巻によって守られたそこへ入れるのは――俺のみらしい。
【特殊エリアへの“入城”は日本時間で19:00~20:00までとなります。時間が過ぎた場合、特殊エリアは消滅し、王への挑戦権は失効されます】
「……王への挑戦か」
配信は既に切ってある。
こんな状態で配信なんて出来ないからな。
これは運営が用意した最後の仕掛け。
勝てば名声だけじゃなく、他にはない報酬が用意されているらしい。
たった一度のみの勝負であり、負ければ次は来ない。
大型イベントの締めを飾るべきものであり、俺と王の戦いは――全世界で生配信される。
運営からはさきほどメッセージにて確認された。
事前に生配信を行うイベントがあるとは聞かされていたが。
全容が開かされたからこそ再度の確認だ。
俺自身もそれは承諾してある。
そもそも、ゲームの利用規約の時点で俺は承諾していたが。
運営は律儀で。だからこそ、このゲームは……いや、違う。
運営が態々、俺に生配信の許可を取ったのは。
十中八九があの機体――“
「……っ」
俺は今でも混乱している。
あの機体は間違いなく……“雄吾が設計した機体”だ。
それも、実際に作られたものではなく。
世に出る事無く、アイツの肉体と共に灰となったものだ。
存在している筈がない。いや、存在して良い筈がない。
アレはアイツの夢で、アイツの理想で……“誰が、穢した”。
「……ムカつくな」
腹が立つ。
今にもキレそうで……落ち着けよ。
アヴァロンである事はほぼ確定だが。
用意したのは他でもない運営だ。
一個人の機体のデータを盗んで使うとは考えにくい。
死人であるからこそ訴えられないという自信があったのかもしれないが。
大企業が、態々、そんなリスクを負ってまであれを使うとは考えられない。
幾つかの事を考えるのであれば。
雄吾の身内が運営の開発陣にいて、アイツの意思を受け継いだのか。
それとも、雄吾が死ぬ間際に運営とコンタクトを取り、今回の事を前から仕込んでいたのか。
……分からない。全て、推論の域だ……それでも、俺はアイツの理想が穢されたのではないと信じたい。
『アヴァロン。僕の理想の全てさ。何時か、この機体が、この世で最も自由な傭兵の――終点になれたら』
「……終点……最後の敵として、傭兵の頂きに……お前が死んで、その夢が……そうなのか、雄吾?」
俺は微笑む。
もしも、これがお前の夢であったのなら……だとすれば、俺がお前の夢を叶えなければならない。
それが友達として、アイツにゲームの楽しさを教わった俺としての――“最後の役目”だ。
俺は拳を握る。
すると、扉がノックされた。
入室を許可すれば、神妙な顔の竜一が入って来る。
アイツも俺の話を聞いて、大いに悩んでいたんだろう。
僅かに怒りも感じたが、俺の顔を見て――アイツは微笑んだ。
「……アヴァロンか……アイツはまだ、タイタンシリーズで俺たちを……待っていてくれたんだな」
「……そうだ。アイツはずっとこの世界にいた。俺と竜一が――“理想に辿り着く瞬間”を」
単純明快だ。
大型イベントにて、俺が1位を取ったんだ。
つまり、俺が最も理不尽で自由な傭兵という事だ。
アイツは俺がそれになると分かっていたのかは知らない。
が、アヴァロンを運営が用意したのなら、確実に雄吾の狙いがあったんだと何となく分かる。
信じていたんだ。
必ず、俺たちがトップに立つ事を。
過去じゃない、今この瞬間に、俺たちがこの世界にいるんだと……ありがとう、雄吾。
俺はベッドから腰を上げる。
そうして、ゆっくりと竜一の元へと歩く。
奴の前で立ち止まり、俺は無言で竜一の瞳を見つめる。
奴も俺の瞳をジッと見つめてきて……俺は片手を差し出す。
「……竜一、俺と一緒に――アヴァロンを倒そう」
「……はっ! お前が嫌って言っても――俺はついていくぜ?」
俺たちは互いに手を掴む。
かたい握手であり、俺たちは笑い合う。
竜一自身を連れて行く訳じゃない。
が、竜一の思いを俺は連れて行く。
運営のメッセージには、アヴァロンのアセンが書かれていた。
使用武器は“特殊な聖剣なるものが一振り”だけ、遠距離武装などはない。
此方に対して武装を制限する要求は無く。
如何なる兵装であろうとも許可すると書かれていた。
それはつまり、近接武装のみの相手に対して強力な火器兵装を使用して良い事になる。
この事は既に全てのプレイヤーにも通達されている。
恐らくは、ほとんどの人間たちが俺たちが勝つ為にハルマゲドンのようなものを持って来ると考えているだろう。
――が、そんな事は絶対にしない。
「……竜一、分かってるな? 今回のアセン……アレで行くぞ」
「あぁ分かってるよ。“武士道アセン”……雄吾が大好きなアレだ!」
「ふふ、俺たちって……馬鹿だよな。ロマンばっかりの大馬鹿野郎だ」
「ちがいねぇな! けど、それでいいじゃねぇか。野郎からロマンを抜いちまったら、そいつはただの抜け殻さ……馬鹿になろうぜ相棒。それが、雄吾が喜ぶ土産話にならぁ」
竜一は笑う。
そうして、手を解いてから腕を捲る。
早速、例の装備を調整しに行くようであり。
俺もすぐに“切り札”の準備に取り掛かると伝えた。
竜一は切り札のワードで足を止める。
そうして、振り返る事無く――
「90秒だ……タイミングは任せるが――つまんねぇ事はするんじゃねぇぞ」
「あぁ分かってる。天国の雄吾の為に――勇者になってやるよ」
「ハッ! なら安心だ……絶対に、勝とうぜ」
「あぁ、絶対にな」
竜一はそれだけ言って去っていく。
俺は竜一と結んだ手を見つめて――ギュッと拳を作る。
まだまだ、グリードでやるべき事はある。
ランクを上げて、公式戦に出て。
ブラックレコードと対戦し、勝つ事だって……でもな、今はそんな事はどうでもいい。
この時、この瞬間だけは――“雄吾と全力で戦いたい”。
叶う事が無かった対戦。
夢にまで見たアイツの理想との死闘。
それが叶い、俺と竜一も揃っている。
全ての奇跡がこの日に起こり……あぁ、勝ちてぇな。
今までにないほどに勝ちたくなる。
勝たなければならない、勝たないと俺はアイツに笑われてしまう。
『アヴァロンは最強さ。でもね、アヴァロンを倒せる勇者は――絶対に存在するんだよ!』
「お前の理想を倒す勇者……それが俺なら……必ず勝つさ」
俺は誓う。
例え、この身が砕け散ろうとも。
俺は全てを懸けて――“アイツの理想を超えて行く”、と。