底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:ロボワン
敵の斬撃が迫る。
一瞬だ。瞬きも無い合間に、一撃必殺の斬撃が迫る。
十を優に超える斬撃で、それを全て連続ブーストで回避。
機体の出力を上げまくり、体に掛る負荷も無視して空を舞う。
右へ左へ。
上に下に、何度も何度も体の中で嫌な音が響き。
歯が砕けそうになるほど噛み締める。
限界を超え、相手の目を常に開き敵を視界に収める。
そうして、全ての斬撃を最短の距離で避けて――加速。
「ぐぅぅぁぁああ!!」
爆発的な加速。
それにより、敵の放った斬撃を超えた。
奴はその場から動かず。
異常な速度で攻撃から次の攻撃に移り――俺はブーストを行う。
ミシミシと骨から音が響く。
口内は既に血の味であり。
それに耐えながらも、俺は機体を操作し奴の背後を取る。
腕を操り――ムラマサを振るう。
全力で振り下ろした一刀。
重装甲の敵であろうとも、紙のように切り捨てる切れ味。
空気すらも切り裂いて、一秒にも満たない速度で敵の装甲に迫る。
が、敵はそれを――弾いた。
「……ッ!」
《――!》
甲高い音が鳴り響き、火花が散る。
俺の機体の胴体ががら空きだ。
スローモーションに感じる中で、奴の振りの速さだけが異常に速く――ブースト。
「がはぁ!?」
《――!》
凄まじいGだ。
肺が押しつぶされて、骨がみしりと刺激されて口から血を吐き出す。
エネルギー残量も気にしない。
出鱈目で豪華な噴かせ方であり、機体は一瞬で間合いから逃れた。
バイザーを邪魔だと外し、そのまま更にブースト。
奴の死角に回り、痛みで霞む視界の中でも奴の隙を探る。
そのまま機体を回転させ、刀を振り――が、受け流される。
「くそッ!」
ギャリギャリと刀が滑り、力が流される。
俺の刀は下へと向かい、相手は既に剣を上げていた。
次の瞬間には、機体が真っ二つにされる。
俺は鋭い殺気を肌で感じながら、刀を動かして――奴の剣を受け止めた。
「ぐうぅ!?」
《――》
驚異的な反応速度だろうか。
否、これは感覚の同調を高めた結果だ。
機体の操作にディレイは少なくなるが、機体へのダメージはダイレクトで――両腕に激痛が走る。
「ああぁぁぁ!!!」
凄まじい力だ。
まるで、隕石を受け止めているようだった。
寸秒も耐えられず、そのまま地面へと斬撃とともに落下。
俺は歯を食いしばりながら、ギリギリで斬撃の軌道を変える。
そうして、迫る地面を見る事無く。
そのまま背面飛行で地面スレスレを飛行する。
敵はゆっくりと剣を片手で回して――稲妻が走る。
「……やべぇ!!」
見た瞬間に、機体を急加速させる。
稲妻は地面を抉り、周囲一帯に広がっていった。
それらを目ではなく、感覚のみで避けて行く。
触れれば最期であり、掠めるだけでも死を招く。
光、光光光光光光――轟音だ。
視界を潰すほどの光量が広がり。
すぐ近くで破壊音が聞こえる。
機体を揺らして、ブーストで軌道を変えて。
眼球を動かし続けて、全身の血液を沸騰させる。
体感で十数分の地獄の時間。
頭が痛くて鼻から何かが垂れる。
拭う事もせずに口に入るのも気にしない。
俺は無数の光が降りそそぐ大地を駆け――全てを避けた
突破した。口角が上がりかけて――背後に殺気を感じた。
「そこッ!!」
俺はサブとメインのスラスターを噴かせる。
そうして、完璧に姿勢を制御してノーモーションで刀を横に振るう。
刃は煌めき、音すらも断ち切り敵の姿をこの目で捉えていた。
瞬間、そこにいたアヴァロンに刀は当たり――すり抜ける。
「残像!?」
驚き目を丸くする。
が、思考が驚きに染まりながらも体は勝手に動き。
そのまま機体を地面に向かって全力で倒した。
瞬間、コックピッドのあった位置を風の刃が通過していく。
地面に機体が当たり、激しい振動によってヘルメットが何度もシートに当たる。
強い吐き気と眩暈。
が、不快を感じるよりも早く俺の手足は動いていた。
そのまま足裏のサブスラスターを全力で噴かせて、攻撃を仕掛けようとした敵を焼く。
奴は全くダメージは受けていなかったが、反射的に顔をガードした。
その一瞬の隙をついて、俺はその場から逃れる。
速い。異常なほどに――そして、巧みだ。
残像も斬撃も、恐らくはスキルのようなものではない。
アレは技術によるものであり……だったら!
俺は刀を構える。
そうして、奴へと方向転換し一気に迫る。
奴は一瞬にして斬撃を放ち――ゴーストジャンプッ!!
「――ッ!!」
スラスターの出力を上げた状態でのゴーストジャンプ。
それはゲーム内のシステムを誤認させるほどの加速だ。
処理が間に合わず、その場には俺の残像が残る。
奴の斬撃は俺の残像を切り裂き、奴はそれを俺だと認識して――ゴーストジャンプッ!
一気に奴へと迫り、刺突の体勢で刀を突き出す。
奴はすぐに気づく。が、既に此方の切っ先は奴の背中に触れて――甲高い音が鳴る。
「喰らえェェェ!!!」
《――!!》
俺は叫ぶ。
そうして、全力での一撃を押し込み――奴が地面を滑っていく。
俺はそのまま奴から距離を取り。
刀を構えながら奴を警戒した。
追撃も出来た。が、妙な手応えを感じた。
だからこそ、追撃はやめて出方を――奴が腕を上げる。
《……》
「……何だ?」
奴は何かを確かめるような腕の動かし方をした。
まるで、まだ機体の操作に慣れていない新米がやるような動きで……まさか!
「……まだ、慣れていないのか……AI自体が、発展途上? アレで……信じられねぇ」
《……》
奴は静かに頷く。
そうして、腰をゆっくりと沈めて剣を後ろに構える。
何をするのかと俺は警戒し――心の警鐘が鳴り響いた気がした。
「――ぅ!?」
俺は考えるよりも早く。
全力で上昇する。
何もかもを忘れてただひたすらに上へと昇り――瞬間、白い光が周囲を埋め尽くす。
「うあぁ!!?」
機体が激しく揺れた。
が、ダメージは入っていない。
背後で激しい閃光が迸り、奇妙な音が鳴り響いて――逆噴射する。
「あぶ!?」
風圧だけで機体が更に加速していた。
あと一歩で暴風の中に突っ込むところだった。
ギリギリで止まり、旋回して奴の方に視線を向けて――青ざめた。
「な、何だよ、あれ……マジ、か?」
《――》
見れば――全てが消えていた。
光の粒子。青いエネルギーの粒子が泡のように浮いていた。
そこにあった筈の城はごっそりと消えて、花々も自然も消滅し。
ただ中心にて、白い光を纏う聖剣を振るった後のアヴァロンがそこにいた。
見れば装甲の一部が展開されて、白いエネルギーが漏れ出していた。
後部のサークル上の推進装置も幾つかに分離して、その存在感を強くしていた。
アレはお遊び、ここからが本番――第二形態って奴か!?
「ははは! 面白れぇ!! 燃えるなァァ!!」
《――》
奴を見れば、掌を此方に向けて――くいっと動かしてきた。
挑発であり、完全に誘っている。
人が乗っている可能性はゼロだ。
それでも、その動きは本物の人間のようであり。
何処か、雄吾の面影を感じて――俺は目を輝かせる。
「あぁ! 行くぜ! もっともっと――遊ぼうぜッ!!」
《――!!》
アヴァロンから奇妙な鳴き声のようなものが聞こえた。
まるで、アイツも喜んでいるように感じながら。
俺は機体を加速させて――奴へと突っ込む。
奴はエネルギーを迸らせながら、刺突の構えをし――放つ。
瞬間、今まで以上の速度で高濃度のエネルギーが迫る。
俺はそれを自らの勘で避けた。
そうして、最短の距離で奴の間合いに入り――刀で奴の剣を受け流す。
《――!》
「見えるぜ――今なら!」
奴の力をそのまま後方へと流せば、奴は体勢は前に崩れた。
が、奴は片足で地面を揺らすほどの力を加えて、そのまま出鱈目な動きで剣を振るう。
まるで、鞭のように腕がしなり、そのまま白いエネルギーの斬撃を放ってきた。
が、此方はそれを想定して既に受け流しに入っていた。
敵の重く強力な斬撃が刀に触れた。
凄まじい力であり、コックピッド内部にまで強い熱が伝わる。
俺は汗を拭き出しながら、自らの経験を信じて刀を動かし――奴の斬撃を後方へ流す。
《――!》
さきほどの斬撃は全力。
だからこそ、受け流せないと思っていた。
奴の動きは僅かに硬直する。
その隙を活かし、俺は奴の衝撃を利用し回転し、そのままま刀を振るい――攻撃。
「はぁ!?」
《――!》
当たる、そう確信し――剣が反対へと飛ぶ。
奴は俺の攻撃を剣の柄で弾きやがった。
あり得ない、全力の振り抜きから柄の部分だけで攻撃を弾くなんて。
どれだけ勘が良い、どれだけ回転が速い。
驚き目を丸くする。
その間にも、奴は開いた手で拳を握る。
エネルギーを纏わせて拳が白く輝きノーモーションで――叩きこんできた。
俺はそれを頭部をズレすだけで回避。
が、完全には避け切れず僅かに装甲を掠めて頭部の半分が焼かれた。
カメラにノイズが走る。映像が僅かに乱れた。
が、俺はそのまま刀を弾かれた衝撃を利用し回転。
奇妙な動きから攻撃へと繋げて、奴の胴体を切り裂こうと――奴の膝が二つの剣を同時に上へ弾く。
「曲芸かよッ!?」
《――》
ワンモーションで同時に弾くなんてどういう仕組みか。
驚きの連続で脳がバグリかけていた。
が、奴は俺の驚きなど気にせず滑らか過ぎる動きで剣を振るう。
速い、速過すぎる。この異常な対処のスピードは危険だ。
下からの斬撃が迫り――“ステップターンッ!”
《――!》
「まだまだァ!!」
ステップターン――敵の攻撃による風圧を利用した近接戦闘の技。
風に流れる木の葉のように。
機体をベストタイミングで流し。
そのまま流れるようにステップを踏み敵の近くに張り付いたまま攻撃へと繋げる技。
俺はそれを利用して敵へと斬撃を放ち――奴は避けた。
まるで、プロのバレリーナのように腰を曲げていた。
そうして、そのまま片手で剣を振るう。
バチバチとエネルギーが迸り、迫るそれをギリギリで避けるのは困難で――“ジャストショックッ!!”
《――!?》
「まだァァ!!!」
ジャストショック――相手の強力な攻撃に合わせて此方も一撃必殺の攻撃を放つ技。
タイミングと衝撃の角度がズレればただの相打ち。
が、相手の攻撃の緩やかな瞬間に合わせて此方の最高速度の攻撃を適切な角度から打ち込めば。
システムが衝撃計算を誤認し、回避不能の攻撃すらも相殺する技。
アヴァロンが驚いたのが分かった。
が、こんなもんじゃない。
俺が、俺たちが――青春を捧げて手に入れたものはこれだけじゃねぇ!!!
俺はカッと目を見開く。
そうして、超接近戦へと挑み。
一撃必殺の攻撃が繰り出され続ける中で。
俺は今までの経験で会得した全てを――出し尽くす。
ゴーストジャンプ、ステップターン、ジャストショック。
オーバーセンス、多重斬撃、五月雨突き――
一瞬だ。
音速を超えた攻防であり。
流れる汗も、呼吸すらも忘れて――俺たちは舞う。
連続の刺突を弾かれて、敵の攻撃が迫れば相殺。
敵の斬撃をステップで回避し、攻撃へと繋げて相手の動きに合わせて刀を流す。
一進一退の攻防の中で、俺の体が思考が――進化していく。
頭の中では無数の映像が流れて行く。
それらは一つ一つは可能性であり、起こる事がないものがほとんどだ。
そんな中で、俺は頭をフルで回転させて起こりえる未来を手繰り寄せて――予知をする。
相手の攻撃を予測し、ギリギリで回避。
攻撃を放てば、相手が受け流しに入るのを予知しフェイントに変える。
相手は、次の衝撃が来ずそのまま動きを僅かに鈍らせる。
そんな敵に対して、サブスラスターを噴かせながら足へと蹴りを入れる。
瞬間、相手の体勢が僅かにズレる。
俺はそのまま上からの振り下ろしをし――それすらもフェイントにする。
瞬間、敵の斬撃が――俺の残像を切り裂く。
《――!!!》
「いでぇぇ!!」
超短距離でのゴーストジャンプ。
その負荷は想像を絶するものであり、今の衝撃で肋骨がいった。
血反吐を吐き、眼と鼻からも垂れ流しながら。
本体である俺はそのまま“オーバーセンス”によって感覚を強化し。
刺突の体勢で腕部を激しく振動させて――“五月雨突き”を放つ。
まるで、一気に何十もの刺突が飛ぶように。
俺の刺突が奴へと殺到し、奴は無理な態勢で全ての刺突を弾き――僅かに、機体の装甲を掠めた。
俺は好機であると判断し敵へと“多重斬撃”を仕掛ける。
腕部を限界まで振動さえる事によって当たり判定を一時的に増やし。
振り下ろしによって一度に幾重もの斬撃が同時に襲い来る。
攻撃力も衝撃も――およそ2×3で――6倍だァァッ!!
奴は受け流しが出来ない。
回避も不能であるからこそ、剣を構えて俺の振り下ろし受け止めて――轟音が響く。
《――ッ!!》
「沈めェェェ!!!」
俺は叫ぶ。
瞬間、奴の足が大きく地面にめり込む。
ギチギチと奴の機体から悲鳴が上がり。
俺は更にスラスターを噴かせて、刀を押し込み――怖気が走る。
範囲攻撃の気配。
周囲を吹き飛ばしたアレが来る。
が、攻撃の中断も回避も間に合わない――懸けろッ!!。
奴の剣から光が強く迸る。
俺はそのタイミングに合わせるようにその場で機体を回転させて。
全力でエネルギーの粒子を展開する。
僅かな誤差で――即死亡。
この一瞬のタイミングが生死を決める。運命の瞬間で――此処だァァァ!!!
一瞬で全てが白に染まる中で、俺の全力の放出が白の中に青い光を発生させた。
機体が激しく揺れて、コックピット内部にも強力な電気が流れる。
俺は歯を食いしばりながら、それに耐える。
まだだ、まだまだ。
お前はこの程度で――倒れはしないッ!!!
「――――――ッ!!!!!!」
全身から血が噴き出し、それが熱で蒸発し。
脳細胞が死んでいくのを感じながら、俺は限界まで目を見開く。
我慢、我慢、我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢――根性ォォォォ!!!!
激しい痛み、意識を刈り取る激痛。
全ての筋肉がフルで使い俺は必死に耐える。
まだか、まだかまだかまだかまだかまだかまだか――
地獄のような数分間。白い光が――――“晴れた”。
《――――!?》
「は、はは、け、はぁ」
そこにはエネルギーを解放し。
硬直状態になっている無防備なアヴァロンの姿が。
奴はセンサーを点滅させて驚いていた。
俺は少しだけ焦げ臭さを感じながらも――にやりと笑う。
《――!》
「びりっと――来たぁ!!」
エアゾーン――範囲攻撃によるダメージを軽減する技。
タイミングを合わせてスラスターを全力で噴かせて。
周囲にエネルギーの粒子を展開する事によって、エネルギーによる範囲攻撃時の当たり判定を僅かに狂わせる。
以前、月島さんたちとの戦闘で使った技の応用技だ。
濃縮させたエネルギーを分厚く均等に展開し、エネルギー同士を反応させる。
俺が発見し開発した技だ。
強力なエネルギーの攻撃程、システムの演算に掛る負荷はデカい。
だからこそ、ほぼ同時にエネルギーを多量に巻けばダメージ判定時に誤差を生ませられる。
狂気の発想であり、こんな事をするよりもバリアの方が使い勝手が良い。
竜一には笑われて、雄吾の奴も呆れていた。
が、俺だけはこの技の利点を知っている。
バリアの無い俺に対して必殺のカードを切ったのだ。
確殺できると確信できるからこそ――“確かな隙が生まれる”。
神の領域まで極めれば、ほぼゼロにまで出来るかもしれない。
が、音速を超えた戦闘状態であれば――少なからずダメージは負うがな。
システムは警告を発している。
少なくないダメージだ。
が、少し計器がいかれただけだ。
戦闘には何の問題も無い。
そう、問題ない。想定の範囲内で――――この瞬間を、待っていたッ!!!
「使うぜ。必殺――――ッ!!!」
《――!!》
奴は動けない。
そんな中で、俺はムラマサの力を――解放する。
刀身が展開された。
そうして、内部で蓄積されていた赤いエネルギーが俺の腕ごと巡っていく。
俺の機体にもダメージが蓄積されて行くが。
一撃の威力は竜一のお墨付きであり――これで決めるッ!!!
俺はこの1秒にも満たない時間で。
二振りの刀を振りあげる。
そうして、刀の内部で膨張と圧縮を繰り返すそれを――全力で振り下ろすッ!!!
瞬間、まるで竜の咆哮のようなものが空間全体に響き。
クロスされた赤い斬撃が奴の機体を切り裂く。
奴は硬直状態のままそれを全身に受ける。
そうして、そのまま奴の機体は地面を滑っていく。
硬直は解除されていた。
何とかそれを弾こうとしているのが見えた――無理だぜ。
「妖刀ムラマサ。一度喰らった獲物は――死ぬまで逃がさねぇぜ」
《――!!!》
奴は手を弾かれた。
そうして、アヴァロンはそのまま巨大な島の外へと投げ出された。
それでも尚、エネルギーは消える事無く。
奴の体は、そのまま暴風の中へと吸い込まれて行って――俺はだらりと手を下げる。
レーダーで敵の反応がロストしたのを確認。
敵の殺気も完全に消えていた。
確実な勝利であり、完全な決着で――は、はは。
「あぁ、ぁぁ、あああ……うおおおああああぁぁ!!!」
コックピットの中でガントレットを装着したままガッツポーズをする。
全身痛くてだるくて吐き気もして、汗まみれで血まみれで最低最悪な状態だが――叫んでしまう。
勝った。勝ってやった。
勝った勝った勝った勝った勝った――俺が勝ったァァ!!!
嬉しい、嬉し過ぎる。
今まで感じた事がないほどの喜びで。
脳汁が半端じゃない程出ていて。
あのアヴァロンに、雄吾の想いに――――“今度こそ、応えられた”。
月へと一緒に行く願いを果たせず。
無念のままアイツを死なせてしまったこの俺が。
今回は、この戦いだけは……見てるか、雄吾。
「ふ、ふふ、ぅぐ、あぁ、だめ、だ。くそ、ふぅ」
俺は笑う。
が、自然と涙が流れて行く。
鼻血のような鼻水も垂れていた。
泣いてはいるが、これは悲しいからじゃない。
嬉しくて堪らない。
きっと、天国のアイツも――――
《――――まだ生きてるぞッ!!!!!!》
「――――ぇ?」
突如、響いた――竜一の声。
俺は呆気に取られながらも、機体は勝手に動いて――瞬間、島を別つ斬撃が飛んできた。
「――ッ!!?」
凄まじいエネルギー。
巨大な空島を両断するほどのそれが真横で昇っていた。
光が収まれば、島の端から端まで巨大な溝が出来上がっていた。
俺は全身の毛を逆立たせる。
そうして、振り返ろうとし――“奴が、立っていた”。
「は、ぁ?」
《――勇者よ。見事なり》
そこにはアヴァロンがいる。
装甲は傷だらけで、バラバラと欠片になって落ちて行く。
が、内部の配線が露出する事はない。
何故ならば、装甲の下には――別の装甲があった。
まるで、脱皮でもするように。
破壊された装甲を脱ぎ捨てて、その下にあった白い装甲が露になる。
黄金のラインと共に、模様のようなエメラルド色の光が淡く発光している。
頭部も仮面のように砕けて――三つ目の怪物が現れた。
「……っ!」
センサーがカメラのレンズのように動く。
瞳孔が開かれた目のようであり、額のものに至っては縦にセンサーが開かれていた。
白い顔にトライアングルのようにエメラルドの光が走る。
不気味さと神々しさがあり、この世のものとは思えない異様な空気を放っていた。
王冠は崩れ去り、残った一本のブレードアンテナがまるで悪魔の角のようで。
背中で浮かんでいたサークルは完全に分離し、奴の機体に接続されて行った。
腕や足、胴体にも装着されていく。
まるで、本来の使用方法が直接つけるものと言いたげで……何だよ、あれ。
「あんなの知らねぇぞ……竜一! アレは」
《……分からねぇよ。推進装置を分離して直接つけるなんざ……聞いたこともねぇぞ……ビットならいざ知らず。推進装置そのものなんて……っ》
竜一も知らない未知の技術。
俺たちは警戒しながらも、これが最後の戦いだと確信する。
奴の最終形態への換装が終わり、その見た目は最初の王のそれから、神や悪魔のような存在へと変貌した。
更に人間の見た目に近づいた機体に、推進装置だった銀色のサークルのパーツが機体の各所につき。
手足は左右非対称でアンバランスな感じでありながらも、異様な美しさを感じてしまう。
例えるならば、人の理解を超えた超常の姿か……。
警戒はする。
が、奴はまだ動きそうに無い。
だったら、こちらが先に仕掛けてやろうとペダルを踏もうと――動きを止める。
「――ぇ?」
《――な!?》
動きが止まったんじゃない。俺自らの意思で止めた。
何故ならば、奴は既に遥か前方にはおらず。
一瞬の殺気で、俺の機体の背後で俺の肩に剣を当てている――アイツを俺は察知したからだ。
「……ッ!!?」
何だ、これは……見えないんじゃない。まるで、時が止まったかのように……次元が違う。
全身が凍り付き、震えが増す。
歯がガチガチと鳴って恐怖が心を支配する。
勝てない。絶対に勝てない程の――“理不尽な速さ”だ。
それを認識したからこそ、俺の心の火が消えて行くのが分かる。
すると、背後でアヴァロンが――言葉を発した。
《選択の時だ。お前には二つの道がある。意味のない闘争を続けて、我に殺されるか。敗北を認めて、この場所から去り、再び我と――闘うかだ》
「は、ぁ? 負けを認めて、再戦、だと? 何、言って……っ」
俺は戸惑う。
一度だけの勝負の筈だ。
それなのに、敗北を認めれば再戦のチャンスを与えるのか。
運営の判断か、AIが勝手に決めたものか。
分からない。分からない、が……っ。
良い話だ。現状、こいつの手を知れた今。
万全の策を用意して戦う事が出来るのなら、そっちの方が勝算は高い。
手の内が明かされた敵程、倒しやすい敵はいない。
初見であるからこそ、何も分からなかったが。
再戦をすれば、次は必ず…………はは、次、か――くだらねぇ。
俺は奴の剣を弾き、奴から一気に離れる。
そうして、機体を回転させて奴の方を見る。
地面を滑って停止し、奴に対して――刀の切っ先を向けた。
「情け何て真っ平だ!! 俺は全てを懸けてこの場に立った!! だったら、次に意味なんてねぇ!! 死ぬまでやる!! 死ぬ気で勝つ!! だってそうだろ? 初見クリアは――ゲーマーの誉れだッ!!!!」
《……愚かだ……が、この世で最も――気高き言葉だ》
奴は笑った。
そうして、聖剣を振るう。
白いエネルギーの粒子が舞い。
奴は一歩ずつ此方に近寄って来る。
理解した。
奴の今出せる全力を。
俺の推測が正しければ――“亜光速”の領域だ。
人類では到底、到達できることのない領域。
到達する前に死ぬ事になる死の世界だ。
奴は無人機であるからこそ、その領域に立つ事が出来た。
奴に勝つ為には、その領域に俺自身が入らなければならない……やっぱり、お前の意思なのか?
「分かったよ。やってやらぁ――死までの90秒だッ!!!」
《――!》
俺は指を動かし、切り札を発動する。
かちゃりと音がして、シートの後部から何かが出て――俺の頭を貫く。
「――ッ――――…………」
俺の意識は消失し――一瞬で戻る。
が、見えている景色が違う。
今俺が見ているのは、機体そのものが見ている景色で。
俺の肉体は仮死状態に入っている。
肉体と精神の分離。
それにより、90秒の間だけ――亜光速の戦闘を可能とするッ!!
『出鱈目だ!! 出鱈目だからこそ――今、やっと使えるッ!!』
俺は刀を構える。
瞬間、イデアールの装甲がパージされた。
機体は一気に細身になり、コアのエネルギーが限界を超えて稼働する。
肩部のスラスターも装甲を展開し、オーバースペック状態になる。
全エネルギーが凄まじい速度で機体を駆け巡り。
俺はその熱をダイレクトで感じながら――空を舞う。
一瞬にして、遥か上空へと到達。
敵を見れば此方を見ていて――迫って来た。
周りの動きはスローであり。
舞う残骸も、風すらもゆっくりで。
俺たちはそんな中を亜光速で動き――互いに得物を振るう。
何十、何百を超える斬撃。
大空を舞いながら、俺は自らの感覚のみで機体を操作する。
オーバーセンスは常時発動し、生身であれば脳の血管が裂けるレベルだが。
死が確定した90秒の間だけは、如何なるデメリットも無効化できる。
90秒後に俺は死ぬ。
だが、その90秒で――俺は勝つッ!!!
負けられない、負けたくない。
例え死んでも――俺は絶対に勝つッ!!!!!
『最後の大勝負――咲かせてやらァァァ!!!!!』
《来いッ!!! “お前”の全力でッ!!!! “僕”の全力を――超えて見せろッ!!!!!》
互いに互いを見る。
殺意を通して互いの本気を見る。
最終ラウンド――命を燃やせッ!!!!